2014年ねん5月がつ5日にち(月)げつ

議事ぎじ録ろくあった　外務省がいむしょうが独自どくじメモ

秘密ひみつ保護ほご法ほう有識者ゆうしきしゃ会議かいぎ　慎重しんちょう意見いけんの存在そんざい明あきらかに

「記録きろく廃棄はいき」の主張しゅちょう不自然ふしぜん

　秘密ひみつ保護ほご法ほうづくりの中核ちゅうかくを担になった内閣ないかく情報じょうほう調査ちょうさ室しつ（内うち調ちょう）が、同どう法案ほうあんの基本きほん設計せっけいを行おこなった重要じゅうよう会議かいぎのメモを“廃棄はいきした”と主張しゅちょうしている問題もんだいで、この会議かいぎに参加さんかした外務省がいむしょうはメモを保有ほゆうしていたことが４日にち、本紙ほんしが情報じょうほう公開こうかいで入手にゅうしゅした資料しりょうなどで判明はんめいしました。メモには、内うち調ちょうの公表こうひょう資料しりょうにはのっていない慎重しんちょう意見いけんがあったことを記録きろくしており、他た省しょうが会議かいぎメモを保存ほぞんしているにもかかわらず事務じむ局きょくの内うち調ちょうが“廃棄はいきした”不自然ふしぜんさと異常いじょうさが浮うき彫ぼりになっています。

　（矢野やの昌弘まさひろ）

　問題もんだいの会議かいぎは、内うち調ちょうが事務じむ局きょくとして取とり仕切しきった「秘密ひみつ保全ほぜんのための法制ほうせいの在あり方かたに関かんする有識者ゆうしきしゃ会議かいぎ」。２０１１年ねんに６回かい行おこなわれました。

　政府せいふは、この会議かいぎでの発言はつげんを要約ようやく・抜粋ばっすいした「議事ぎじ要旨ようし」を作成さくせいしたものの議事ぎじ録ろくを作成さくせいしていません。「要旨ようし」のもとになった内うち調ちょう職員しょくいんのメモも内閣ないかく官房かんぼうのホームページに「要旨ようし」を掲載けいさいした後のちは「廃棄はいきした」と主張しゅちょうしています。会議かいぎの仕切しきり役やくが、議論ぎろんの記録きろくを残のこさないという異常いじょうぶりです。

　市民しみんからの情報じょうほう公開こうかい請求せいきゅうに、内うち調ちょうは「内うち調ちょうの書庫しょこ、机つくえ、パソコン等とうを探索たんさくしたが、（メモは）確認かくにんできなかった」としています。

　ところが、この会議かいぎにオブザーバーで参加さんかした外務省がいむしょうは会議かいぎメモを作成さくせいし、保存ほぞんしていたのです。

（写真しゃしん）外務省がいむしょうが公開こうかいした有識者ゆうしきしゃ会議かいぎのメモの表紙ひょうし部分ぶぶん。２枚まい目め以降いこうから、議事ぎじ録ろくの形式けいしきで会議かいぎの様子ようすが記録きろくされています（黒くろ塗ぬり部分ぶぶんは外務省がいむしょうによるもの。外務省がいむしょうの幹部かんぶ名めいなどの一部いちぶも、編集へんしゅう局きょくで白しろ塗ぬりしています）

　外務省がいむしょうメモには、議事ぎじ録ろくの体裁ていさいで会議かいぎでの発言はつげんが記載きさいされ、幹部かんぶ１７人にんが回覧かいらんし、参考さんこうにしたと見みられます。

　メモでは、“秘密ひみつ”を扱あつかう人物じんぶつを調査ちょうさする際さい、家族かぞくや病院びょういんに問とい合あわせることについて「個人こじんや機関きかんに応答おうとう義務ぎむまで負おわせられないのではないか」と「要旨ようし」にはない慎重しんちょう意見いけんがあったことを記しるしています。

　本紙ほんしが入手にゅうしゅした別べつの資料しりょうからも疑問ぎもん点てんが。１１年ねん５月がつ２７日にちに防衛ぼうえい省しょうが内うち調ちょうに対たいして、同年どうねん４月がつの会議かいぎでの有識者ゆうしきしゃの発言はつげんをもとに意見いけんをのべると、内うち調ちょうは「ご指摘してきの委員いいんの発言はつげんは法人ほうじんとしての適性てきせい評価ひょうかの在あり方かたを（中略ちゅうりゃく）取とり上あげることを求もとめていないと理解りかいしている」と答こたえています。

　メモがないはずなのに、発言はつげんを要約ようやくした「要旨ようし」だけで、発言はつげんの意図いとや細こまかい意味いみを答こたえたことは、きわめて疑問ぎもんです。

　本紙ほんしの取材しゅざいに内閣ないかく官房かんぼうの内閣ないかく参事官さんじかんは、防衛ぼうえい省しょうとのやりとりについて「議事ぎじ要旨ようしと出席しゅっせきした参加さんか者しゃの記憶きおくによるもの」と回答かいとう。記憶きおくで発言はつげんの内容ないようを正確せいかくに答こたえることができるのか聞きくと、「廃棄はいきとの前後ぜんご関係かんけいについて、今こんお答こたえできない」と、これまでの説明せつめいとの食くい違ちがいをみせました。

　わずか１カ月かげつの審議しんぎで、法案ほうあんの問題もんだい点てんを隠かくしたまま、自公じこう両りょう党とうが強行きょうこう成立せいりつさせた秘密ひみつ保護ほご法ほうは、立法りっぽう過程かていに重大じゅうだいな問題もんだいがあります。

　外務省がいむしょうメモの存在そんざいからは、内うち調ちょうの情報じょうほう隠かくしの責任せきにんと真相しんそう解明かいめいがあらためて問とわれます。

外務省がいむしょうメモでみえた秘密ひみつ法ほう会議かいぎ

推進すいしん一色いっしょく「要旨ようし」で演出えんしゅつ

　秘密ひみつ保護ほご法ほうの考かんがえ方かたをまとめた重要じゅうよう会議かいぎなのに会議かいぎ録ろくもなければ、メモも捨すてた―。こうした内閣ないかく情報じょうほう調査ちょうさ室しつ（内うち調ちょう）の説明せつめいをひっくり返かえす会議かいぎメモの存在そんざい。本紙ほんしが情報じょうほう公開こうかいで入手にゅうしゅした外務省がいむしょうメモからは、これまで闇やみのベールに包つつまれてきた秘密ひみつ保護ほご法ほうをめぐる有識者ゆうしきしゃ会議かいぎの一端いったんが見みえてきました。

　２０１１年ねんに行おこなわれた「秘密ひみつ保全ほぜんのための法制ほうせいの在あり方かたに関かんする有識者ゆうしきしゃ会議かいぎ」の内容ないようで、公式こうしきに明あきらかにされているのは、内閣ないかく官房かんぼうが公開こうかいする「議事ぎじ要旨ようし」のみです。

　「要旨ようし」は、発言はつげんを要約ようやく・抜粋ばっすいしたものをＡ４用紙ようし２～３枚まいにまとめたもの。誰だれの発言はつげんかが一切いっさい不明ふめいで、議論ぎろんの形成けいせい過程かていがわかりません。

　また「要旨ようし」が紹介しょうかいする発言はつげんは、「過失かしつによる漏ろうえい行為こういを処罰しょばつするべき」「自衛隊じえいたい法ほうの防衛ぼうえい秘密ひみつが参考さんこうになるのではないか」などといった、会議かいぎ事務じむ局きょくである内うち調ちょうの提案ていあんに肯定こうてい的てきな意見いけんが大半たいはんを占しめています。

　ところが、入手にゅうしゅした外務省がいむしょうメモでは、慎重しんちょうな意見いけんもあったことがわかりました。

　例たとえば、“秘密ひみつ”を扱あつかっていい人物じんぶつかの身辺しんぺん調査ちょうさを行おこなう「適性てきせい評価ひょうか」で、調査ちょうさ対象たいしょうが通かよう病院びょういんや金融きんゆう機関きかん、家族かぞくに答こたえる義務ぎむがあるかどうかの議論ぎろんです。

　この問題もんだいをめぐっては、日本にっぽん共産党きょうさんとうの仁じん比ひ聡さとし平ひら議員ぎいんが参院さんいん国家こっか安全あんぜん保障ほしょう特別とくべつ委員いいん会かい（１３年ねん１２月じゅうにがつ２日にち）で追及ついきゅう。照会しょうかいを受うけた病院びょういんは、患者かんじゃのプライバシー情報じょうほうであっても拒否きょひできないことが明あきらかになり、その危険きけん性せいが浮うき彫ぼりになりました。

　外務省がいむしょうメモは「照会しょうかいを受うけた個人こじんや機関きかんに応答おうとう義務ぎむまで負おわせられないのではないか」という発言はつげんを記しるしています。

　しかし「要旨ようし」には、第三者だいさんしゃへの照会しょうかいについて「妥当だとうな仕組しくみであろう」などといった意見いけんを紹介しょうかいしたのみ。異論いろんがあったことはうかがえません。

　この他ほかにも、“秘密ひみつ”を漏もらした国会こっかい議員ぎいんへの罰則ばっそくを会議かいぎでは議論ぎろんしたのに、「要旨ようし」には一言ひとこともなし。

　さらに、外務省がいむしょうメモでは、会議かいぎを内うち調ちょうが完全かんぜんに主導しゅどうしていたことがうかがえます。誰だれかが発言はつげんすると、内うち調ちょうが答こたえ、また誰だれかが発言はつげんするとまた内うち調ちょうが答こたえる…。こうしたやりとりからは、有識者ゆうしきしゃ会議かいぎが、内うち調ちょうの設計せっけいする法案ほうあんに“お墨付すみつき”を与あたえる名なばかりだった実態じったいが浮うかびあがってきます。

（写真しゃしん）委員いいんと内うち調ちょうによる“一いち問もん一いち答とう”のような形かたちで有識者ゆうしきしゃ会議かいぎが進すすんだことがわかる外務省がいむしょうメモ（右みぎ）と、「応答おうとう義務ぎむまで負おわせられないのではないか」と慎重しんちょうな意見いけんがあったことを示しめす一文いちぶん（左ひだり）