2015年ねん5月がつ25日にち(月)げつ

可視かし化かは骨抜ほねぬきに　密室みっしつで盗聴とうちょうし放題ほうだい

刑訴法けいそほう等とう改定かいてい案あん　捜査そうさ機関きかんのお手盛てもり

　盗聴とうちょう拡大かくだいと密告みっこく型がた「司法しほう取引とりひき」を盛もり込こんだ刑事けいじ訴訟そしょう法ほう等とうの改定かいてい案あんが、衆院しゅういん法務ほうむ委員いいん会かいで審議しんぎ入いりしました。一部いちぶ報道ほうどうが「可視かし化か義務ぎむづけ法案ほうあん」と呼よぶ同どう法案ほうあんですが、条文じょうぶんを読よんでみると、可視かし化かの“義務ぎむづけ”どころか、抜ぬけ穴あなだらけで骨抜ほねぬき。さらに、警察けいさつの盗聴とうちょうも野放のばなしにするものとなっており、捜査そうさ機関きかんのお手盛てもりぶりが浮うき彫ぼりになっています。（矢野やの昌弘まさひろ）

　同どう法案ほうあんでは取とり調しらべの様子ようすが録画ろくが・録音ろくおんされるのは、裁判さいばん員いん裁判さいばんの対象たいしょう事件じけんや検察けんさつが独自どくじに捜査そうさする事件じけんだけで、全ぜん事件じけんのわずか２％でしかありません。

例外れいがいだらけ

　その２％すら、捜査そうさ機関きかんの思惑おもわくで、録画ろくがしたりしなかったりができる内容ないようです。

　刑事けいじ訴訟そしょう法ほうの改定かいてい案あん（３０１条じょうの２）では、録画ろくがしなくてもよい“例外れいがい”を設もうけています。

　一ひとつ目めは、取とり調しらべを録画ろくがすると、被疑ひぎ者しゃが“十分じゅうぶんな”供述きょうじゅつをしないと、警察けいさつ・検察けんさつの取調とりしらべ官かんが判断はんだんした場合ばあいです。

　何なにをもって“十分じゅうぶんな”供述きょうじゅつをしないと見みなすのか、判断はんだんするのは捜査そうさ機関きかん。被疑ひぎ者しゃが否認ひにんすることが予想よそうされる取とり調しらべを、記録きろくしない危険きけんがあります。

　二ふたつ目めは、被疑ひぎ者しゃの供述きょうじゅつなどが“明あきらかになった場合ばあい”、被疑ひぎ者しゃやその親族しんぞくが困惑こんわくする恐おそれがあると、取調とりしらべ官かんが判断はんだんした場合ばあいとしています。

　法案ほうあんの提出ていしゅつ経緯けいいに詳くわしい小池こいけ振一郎しんいちろう弁護士べんごしは「“明あきらか”になると、困惑こんわくする恐おそれというが、録画ろくがしたものを明あきらかにしなければいいだけの話はなし。録画ろくがしないでいい理由りゆうにならない」と批判ひはんします。

　また、法案ほうあん（３２２条じょうの１）は、自白じはく調書ちょうしょとセットで、その調書ちょうしょ作成さくせい時じの取とり調しらべ映像えいぞうを裁判さいばんに提出ていしゅつしなければならないとしています。

　小池こいけ弁護士べんごしは「裁判さいばんに出でる映像えいぞうは、自白じはくした回かいの取とり調しらべだけ。それまで脅おどしすかして、自白じはくを迫せまる映像えいぞうはなく、『観念かんねんしました』という自白じはく映像えいぞうだけが使つかわれるおそれがある。捜査そうさ機関きかんのメリット、デメリットで可視かし化かする、しないが決きめられる。法案ほうあんが可視かし化かを前進ぜんしんさせるとはとても言いえません」と指摘してきします。

　盗聴とうちょう（通信つうしん傍受ぼうじゅ）法ほうの拡大かくだい法案ほうあんは、盗聴とうちょう対象たいしょうの大幅おおはば拡大かくだいと通信つうしん事業じぎょう者しゃの立たち会あいがなくなることが大おおきな柱はしらとなっています。（図ず参照さんしょう）

盗聴とうちょう一般いっぱん化か

　盗聴とうちょう法ほうに詳くわしい岩田いわた研けん二郎じろう弁護士べんごしは「今いままでは通信つうしん事業じぎょう者しゃが立たち会あうため、東京とうきょうの施設しせつでしか行おこなえなかったものが、立たち会あいをなくすために各かく道みち府県警ふけんけい本部ほんぶでいつでも、容易よういに盗聴とうちょうできるようになるので、盗聴とうちょうが一般いっぱん的てきな捜査そうさ手法しゅほうになる」と強調きょうちょうします。