河合純一さん | JICA海外協力隊

応募おうぼのきっかけ

17歳さいから6回かいのパラリンピックに出場しゅつじょう。
すべてを出だし切きった先さきに、次つぎのステージがあった。

小学しょうがく1年生ねんせいで水泳すいえい部ぶに入はいり、3年生ねんせいになる頃ころには毎日まいにちのように泳およぎました。中学ちゅうがくに入学にゅうがくした頃ころ、わずかに見みえていた右目みぎめの視力しりょくも落おち、3年生ねんせいになる頃ころには全盲ぜんもうに。それでも水泳すいえいは続つづけ、一般いっぱんの県けん大会たいかいの決勝けっしょうに出場しゅつじょう。卒業そつぎょう後ごは、教師きょうしになる夢ゆめを抱かかえて単身たんしんで東京とうきょうの盲学校もうがっこうに進学しんがくし、水泳すいえい部ぶに入はいりました。17歳さいでバルセロナ大会たいかいに出場しゅつじょうして以来いらい、パラリンピックには連続れんぞく6回かい出場しゅつじょう。大学だいがく3年生ねんせいの時とき、2度目どめのアトランタ大会たいかいで目標もくひょうだった金きんメダルを獲得かくとくしました。4年ねん分ぶんの練習れんしゅうが凝縮ぎょうしゅくされた、パラリンピックのステージ。水泳すいえいは、自分じぶんらしさを表現ひょうげんする手段しゅだんであり、自分じぶんが生いきてきたすべてが現あらわれる場ばでした。

大学だいがく卒業そつぎょう後ご、公立こうりつ中学校ちゅうがっこうの教師きょうしを務つとめながら、視覚しかく障さわがいのある子こどもたちに向むけた無料むりょうの水泳すいえい教室きょうしつを始はじめました。10年ねんほど継続けいぞくするなかで、「自分じぶんの経験けいけんやノウハウが生いきるのなら行いってみたい」と、2006年ねんにJICA海外かいがい協力きょうりょく隊たい（短期たんき派遣はけん）に参加さんかしました。もともと大学だいがく時代じだいのゼミ仲間なかまに協力きょうりょく隊たい経験けいけん者しゃがいたことも、後押あとおしとなったのです。

現地げんちでの活動かつどう

日本にっぽんでできるなら、世界せかいでも教おしえられる。
どこかで同おなじ思おもいをしている人ひとの、力ちからになれるように。

赴任ふにん先さきのマレーシアでは、上級じょうきゅうレベルの選手せんしゅのほか、盲学校もうがっこうの子こどもたちにも泳およぎを教おしえました。彼かれらの多おおくはイスラム教徒きょうとでしたので、長袖ながそで長ちょうズボンでプールに入はいります。泳およげる人ひとでも着衣ちゃくいでの水泳すいえいは大変たいへんですから、頭あたまを抱かかえました。とはいえ、基本きほん的てきな指導しどう方法ほうほうは日本にっぽんと変かわりません。大事だいじなのは、浮うくことでなく、潜くぐること。潜くぐることができれば恐怖きょうふ心しんがなくなり、泳およげるようになります。僕ぼくが水みずの中なかで指ゆびを出だし、「触さわって何なん本ほんか当あててごらん」というように、楽たのしみながら潜くぐる練習れんしゅうをしました。能力のうりょくに合あわせて少すこし難むずかしい目標もくひょうを立たてると、必死ひっしに挑戦ちょうせんする。その姿すがたを見みた時とき、何なにかを達成たっせいする喜よろこびは、世界せかい共通きょうつうなのだと感かんじました。

帰国きこく後ごのキャリア

東京とうきょう大会たいかいが、僕ぼくにとってのバルセロナであるように。
価値かち観かんを揺ゆさぶられる瞬間しゅんかんを皆みなさんに届とどけたい。

2週間しゅうかんのJICA海外かいがい協力きょうりょく隊たい経験けいけんは、「サポートがあれば、自分じぶんにもできる」という自信じしんにつながりました。一方いっぽうで、世界せかいには、障さわがいがあることで必要ひつような情報じょうほうや優すぐれた指導しどう者しゃに出会であえない人ひともたくさんいます。その改善かいぜんのために、何なんらかの協力きょうりょくをしていきたいという気持きもちが芽生めばえました。

その後ご、2008年ねんからアジアパラリンピック委員いいん会かいのアスリート委員いいんを務つとめることに。原点げんてんには、マレーシアでの気きづきがあったと思おもいます。

2020年ねん1月がつに日本にっぽんパラリンピック委員いいん会かいの委員いいん長ちょうに就任しゅうにんし、今いまの目標もくひょうは、日本にっぽん選手せんしゅが活躍かつやくする環境かんきょうを作つくり、東京とうきょうパラリンピックの全ぜん会場かいじょうを満員まんいんにし、大会たいかいを成功せいこうさせることです。それによってメディアの報道ほうどう量りょうが増ふえ、見みる人ひとが増ふえれば、皆みなの意識いしきも高たかまる。それは、過去かこの大会たいかいでも証明しょうめいされていることです。

僕ぼくは、パラリンピックは「人間にんげんの可能かのう性せいの祭典さいてん」だと思おもいます。来きて体感たいかんして、選手せんしゅと出会であうことで、価値かち観かんが揺ゆさぶられる瞬間しゅんかんがある。それこそがパラリンピックの目指めざすところです。人間にんげんの想像そうぞうを超こえたパフォーマンスに出会であうことで、自分じぶんが無意識むいしきに感かんじていた限界げんかいに気きづき、壁かべを壊こわすきっかけとなる。パラリンピックは選手せんしゅの可能かのう性せいを目撃もくげきすると同時どうじに、自分じぶん自身じしんの可能かのう性せいを再さい認識にんしきする場ばなのです。今回こんかいの東京とうきょうでは、そんな“本物ほんもの”に触ふれる機会きかいを提供ていきょうしたいですし、会場かいじょうや選手せんしゅ村むら、ホスピタリティにおいても、そのことを感かんじてもらえる大会たいかいになるはずです。

僕ぼくは1992年ねんのバルセロナ大会たいかいに参加さんかしたときの驚おどろきと感動かんどうを今いまでも覚おぼえています。当時とうじの日本にっぽんではパラリンピックに関かんする報道ほうどうはなく、オリンピックとはまったく違ちがう扱あつかいでした。しかし、スペインではオリンピックと同おなじ会場かいじょうで試合しあいをし、多おおくの観客かんきゃくが観戦かんせんし、TVで放映ほうえいされたのです。その状況じょうきょうに、17歳さいの僕ぼくは「いつか日本にっぽんもこんな風ふうになったらいいな。そうしたい」と思おもいました。

バルセロナ大会たいかいから約やく30年ねんが経たち、ようやく日本にっぽんも当時とうじ以上いじょうの環境かんきょうになってきました。今こん大会たいかいでは、パラリンピック最多さいたの170近ちかい国くにと地域ちいきから選手せんしゅたちが参加さんかする予定よていです。初はじめてパラリンピックに参加さんかする選手せんしゅや国くにもあるでしょう。その時ときに、彼かれらにとっての東京とうきょうが僕ぼくにとってのバルセロナのようになってほしいと思おもっています。

東京とうきょうパラリンピックでは、全国ぜんこくの「共生きょうせい社会しゃかいホストタウン」にパラリンピアンが来日らいにちし、当地とうちでの練習れんしゅうを経へて、本番ほんばんを迎むかえます。今回こんかいサポートを経験けいけんするホストタウンが、その県けんのロールモデルとなり、今後こんご、共生きょうせい社会しゃかいを進すすめていってほしいと思おもいます。同おなじ気持きもちを持もった人ひとが増ふえることが、それぞれの国くにや地域ちいきを発展はってんさせていくのだと信しんじています。

日本にっぽんパラリンピック委員いいん会かいでは、子こどもたち向むけにパラリンピックを題材だいざいとしたインクルーシブな学まなびを促うながす国際こくさいパラリンピック委員いいん会かい公認こうにん教材きょうざい「I'mPOSSIBLE（アイムポッシブル）」を、全国ぜんこくすべての小中しょうちゅう高校こうこう、特別とくべつ支援しえん学校がっこうなどに配布はいふしています。授業じゅぎょうに必要ひつようなものがすべてそろったパッケージで、パラリンピックのことをあまりご存ぞんじなくても負担ふたんなく授業じゅぎょうできるようになっていますので、日本にっぽん国内こくないで学校がっこうの先生せんせいをしておられる関係かんけい者しゃの皆様みなさまにはぜひご活用かつよういただければと思おもいます。

また海外かいがいの学校がっこうでの任務にんむに当あたっていらっしゃる隊員たいいんの皆様みなさまには、是非ぜひ国際こくさい版ばん（英語えいご）の「I'mPOSSIBLE」を学校がっこうでご活用かつよういただければと思おもいます。I'mPOSSIBLEの授業じゅぎょうを行おこなっていくことで、地域ちいきの障さわがい者しゃへの理解りかいが深ふかまり、彼かれらの社会しゃかい参加さんかが促進そくしんされることに繋つながったという報告ほうこくもあります。是非ぜひ赴任ふにん国こくのパラリンピック委員いいん会かいにお問合といあわせいただき、共ともにパラリンピックムーブメントの推進すいしんにご協力きょうりょくいただければ幸さいわいです。