抄録
広島大学東広島キャンパスは、大規模な水の再利用システムを有する数少ない大学の一つであり、多量に発生する実験に使用した器具の洗浄排水である一般実験系排水は環境安全センターで浄化された後に再利用水(中水)として学内のトイレのフラッシング水等に再利用されている。中水の水質を適正に維持するためには、有害物質等を含む実験廃液を研究室内に確実に貯留し、一般実験系流しに流さないことが必要であるが、溶媒留去の目的でアスピレーター等の水流ポンプが依然として利用され、一般実験系排水に溶媒が混入するという実態があった。そこで広島大学では、一般実験系排水の処理・再利用施設への揮発性有機化合物混入防止のため、水流ポンプのダイヤフラムポンプへの切り替えを研究者が自主的に進めるだけでなく、2009年度に全学経費を用いて実施した。全ての水流ポンプの切り替えは行えなかったが、使用量の多いポンプを優先的に切り替え、その効果を一般実験系排水および処理水における揮発性有機化合物濃度の2003年度から2016年度の14年間のモニタリング結果から検証した。流入水中のベンゼン、クロロホルム、およびジクロロメタンの濃度はポンプ切り替え前で1.2~459.0μg/L、0.2~3128.0μg/L、および0.1~4131.3μg/Lであったが、ポンプの導入が完了した2010年度以降(2013年度まで)< 0.1μg/L、1.0~77.0μg/L、および0.2~520.0μg/L まで大幅に低減した。処理水中のこれらの濃度についても、ポンプの導入前で最大7.7μg/L、137.8μg/L、および212.3μg/Lであったが、ポンプ導入後< 0.1μg/L、18.0μg/L、および11.0μg/Lまで低減した。2009年度に実施した施策は効果的に働いたと考えられる。