本稿ほんこうは,広東かんとん省しょうの省しょう城じょう広州こうしゅうを事例じれいとし,「城しろ防ぼう」(城壁じょうへき都市としの守備しゅび・治安ちあん維持いじ)という面めんから清きよし代だい城郭じょうかく都市としの一端いったんを明あきらかにしようとするものである。帝政ていせい時代じだいの中国ちゅうごくでは,一般いっぱんに官庁かんちょう所在地しょざいちは城壁じょうへきによって囲かこまれており,行政ぎょうせい拠点きょてんである城しろの守備しゅびを目的もくてきとして軍隊ぐんたい・防衛ぼうえい施設しせつが設置せっちされていた。清しん代だいの広州こうしゅう城じょうには,八はち旗はた・緑みどり営の双方そうほうが駐屯ちゅうとんし,更さらに緑みどり営の中なかでも,一般いっぱん緑みどり営軍制せいの一部いちぶとして各かく城しろに配置はいちされる城しろ守もり協きょうのほか,八はち旗はた将軍しょうぐん直属ちょくぞくの緑みどり営軍隊たいや,広東かんとん巡じゅん撫なで(1746年ねんから両りょう広こう総督そうとくも広州こうしゅうに移駐いちゅう)及およびその直属ちょくぞくの緑みどり営軍隊たいも広州こうしゅう城じょうに駐屯ちゅうとんしていた。城しろ防ぼうは異ことなる系統けいとうの軍隊ぐんたいによって行おこなわれており,諸しょ系統けいとうが各自かくじの管轄かんかつ区域くいきを持もち,互たがいの間あいだに直接ちょくせつ・間接かんせつの上下じょうげ関係かんけいがあった。八はち旗はたの緑みどり営に対たいする監かん視し・コントロールや諸しょ系統けいとうの相互そうごの制御せいぎょ・協力きょうりょくから見みれば,このような城しろ防ぼうは緊密きんみつに構造こうぞう化かされた体系たいけいではなく,むしろそれぞれが中央ちゅうおうと結むすびついた各種かくしゅの軍隊ぐんたいからなる緩ゆるい集合しゅうごう体たいであった。長ながい平和へいわ期きの間あいだに,柔軟じゅうなん性せいを持もつ城しろ防ぼうシステム内部ないぶでは,状況じょうきょうに対応たいおうしつつ様々さまざまな調整ちょうせいが行おこなわれており,その過程かていで,八はち旗はたの駐屯ちゅうとんはより象徴しょうちょう的てきな存在そんざいとなってきたといえる。