特定とくていの主体しゅたいにとって堅持けんじするべき価値かちを脅おびやかすものがない状態じょうたいを「安全あんぜん」と概念がいねん化かするならば、「国家こっかの安全あんぜん」とは区別くべつされた「国民こくみんの安全あんぜん」を観念かんねんできる。このように区別くべつすれば明あきらかなように、この「国家こっかの安全あんぜん」と「国民こくみんの安全あんぜん」とはただならぬ緊張きんちょうをはらむことも疑うたがいえない。この相克そうこくが国家こっかの防衛ぼうえい行動こうどうの予見よけん可能かのう性せいを損そこない、ひいては国家こっかや国民こくみんの安全あんぜんを危あやうくはしないか。本稿ほんこうは、防衛ぼうえい行動こうどうの予見よけん可能かのう性せいの観点かんてんから、国家こっかの安全あんぜんと国民こくみんの安全あんぜんとの調整ちょうせい条件じょうけんを理論りろん的てきに考究こうきゅうすることを目指めざす。

まず第だい１節せつにおいて、国民こくみんの生命せいめい・身体しんたい・財産ざいさんをめぐってその「保護ほご」（「国家こっか安全あんぜん保障ほしょう戦略せんりゃく」）と「犠牲ぎせいの受忍じゅにん」（判例はんれい法理ほうりとしての「戦争せんそう損害そんがい受忍じゅにん論ろん」）という一見いっけんして矛盾むじゅんする言説げんせつの競合きょうごうを概観がいかんする。次つぎに第だい2節せつにおいて、攻撃こうげきを排除はいじょするという局面きょくめんを例外れいがいとして原則げんそく的てきに武力ぶりょくを行使こうししないとする日本にっぽんの専守防衛せんしゅぼうえいについては、「説得せっとく力りょくのある威嚇いかくと説得せっとく力りょくのある約束やくそくのトレード・オフ」から逃のがれられないことを指摘してきする。そのうえで、不合理ふごうりな戦争せんそうを回避かいひするには、専守防衛せんしゅぼうえいの対外たいがい約束やくそくから恣意しい的てきに逸脱いつだつできない国内こくない制度せいど（具体ぐたい的てきには専守防衛せんしゅぼうえいを逸脱いつだつした武力ぶりょく行使こうしを原因げんいんとする国民こくみんの生命せいめい・身体しんたい・財産ざいさんの犠牲ぎせいの補償ほしょう）を整ととのえる必要ひつようを検討けんとうする。そして第だい3節せつにおいて残のこされた課題かだいとして専守防衛せんしゅぼうえい行動こうどうの予見よけん可能かのう性せいの限界げんかいを整理せいりする。

安全あんぜん保障ほしょう研究けんきゅうは伝統でんとう的てきに、国家こっかの軍事ぐんじ的てきな安全あんぜん保障ほしょうを中心ちゅうしん的てきに扱あつかってきた。しかし冷戦れいせん終結しゅうけつを境さかいに、安全あんぜん保障ほしょう研究けんきゅうの範囲はんいの深化しんかと拡大かくだいが見みられ、人間にんげんの安全あんぜん保障ほしょう（human security）のような見解けんかいもある。これまでの様々さまざまな社会しゃかいの前提ぜんていが問とい直なおされている今日きょう、そして今後こんごにおいて、「誰だれ」にとっての「何なに」が安全あんぜん保障ほしょうの課題かだいとして重要じゅうようであろうか。この問といに答こたえる際さいに重要じゅうようなのが「人間にんげん」と「非ひ人間にんげん」という分類ぶんるいである。従来じゅうらいの安全あんぜん保障ほしょう研究けんきゅうでは一般いっぱん的てきに「人間にんげん」である脅威きょういに着目ちゃくもくしてきた。しかし今日きょうにおいて、従来じゅうらいの「人間にんげん」と異ことなり、「非ひ人間にんげん」を安全あんぜん保障ほしょうの文脈ぶんみゃくで議論ぎろんする必要ひつようがあるであろう。これを踏ふまえると、環境かんきょう問題もんだいやAIなどの科学かがく技術ぎじゅつは、それぞれを個別こべつに検討けんとうするだけでなく、「非ひ人間にんげん」として位置付いちづけることで、安全あんぜん保障ほしょうを検討けんとうするための対象たいしょうの構造こうぞう的てきな拡大かくだいを明あきらかにすることができる。上記じょうきの問題もんだい意識いしきを踏ふまえ、「現代げんだい及および今後こんごにおいて国家こっか安全あんぜん保障ほしょうや人間にんげんの安全あんぜん保障ほしょうへの脅威きょういは何なにであるか」をリサーチクエスチョンとする。その上うえで、環境かんきょう問題もんだいやAIなどの科学かがく技術ぎじゅつが国家こっか安全あんぜん保障ほしょうや人間にんげんの安全あんぜん保障ほしょうへの脅威きょういになりうると論ろんじる。本稿ほんこうでは、従来じゅうらい別個べっこに論ろんじられることが多おおかった国家こっか安全あんぜん保障ほしょうと人間にんげんの安全あんぜん保障ほしょうを同列どうれつに論ろんじることで、これらの安全あんぜん保障ほしょうの考かんがえ方かたの架橋かきょうを目指めざす。本稿ほんこうの目的もくてきは現代げんだい的てきもしくは今後こんごの課題かだいの特徴とくちょうを踏ふまえて安全あんぜん保障ほしょうのパラダイムをアップデートすることとする。国家こっか安全あんぜん保障ほしょうや人間にんげんの安全あんぜん保障ほしょうの前提ぜんていを問とい直なおし、環境かんきょう問題もんだいやAIなどの安全あんぜん保障ほしょうへの脅威きょういを検討けんとうする。

本稿ほんこうは、混迷こんめいを深ふかめるパレスチナ・イスラエル情勢じょうせいについて、セトラー・コロニアリズム、人種じんしゅ資本しほん主義しゅぎの歴史れきしの不条理ふじょうりを体験たいけんしてきた先住民せんじゅうみん族ぞく、アフリカ系けいアメリカ人じんから発はっせられる連帯れんたいの動うごきと、これを受うけとめるパレスチナをはじめとするさまざまな人ひとびととの応答おうとうと、多方向たほうこうに越境えっきょうしていくその展開てんかいに注目ちゅうもくする。特とくに先住民せんじゅうみん団体だんたいザ・レッド・ネーション（TRN）、あるいはその参加さんか者しゃによるポッドキャストやティーチインなど、さまざまな媒体ばいたいを通つうじた試こころみを参照さんしょうしながら、入植にゅうしょく者しゃ国家こっかによる国土こくど安全あんぜん保障ほしょう政策せいさくが、植民しょくみん地ち主義しゅぎと人種じんしゅ主義しゅぎを維持いじするためのプロジェクトであることをあきらかにする。そのプロジェクトは、故郷こきょうの土地とちを守まもるべく抵抗ていこうをつづける先住民せんじゅうみん族ぞくを、犯罪はんざい者しゃとして非ひ人間にんげん化かし、抹殺まっさつせんとする暴力ぼうりょくと、凄惨せいさんな抑圧よくあつ構造こうぞうを再さい生産せいさんしてきた。抑圧よくあつに抗あらがう先住民せんじゅうみん族ぞくの生活せいかつ、運動うんどう、研究けんきゅうの現場げんばから生うまれた連帯れんたいのプロセスは、対話たいわを通つうじて異ことなる文脈ぶんみゃくを学まなび、多様たような空間くうかんレベルで交錯こうさくする構造こうぞう的てきな課題かだいに挑戦ちょうせんするためのエネルギーに満みちている。その取とり組くみは、ラディカルなフェミニストとして、社会しゃかい運動うんどうに大おおきな影響えいきょうを与あたえつづける研究けんきゅう者しゃ、アンジェラ・デイヴィスが提唱ていしょうする「闘争とうそうのインターセクショナリティ」の概念がいねんにも通つうじるものである。

マーシャル諸島しょとう共和きょうわ国こくは1986年ねんに独立どくりつを果はたすまで１世紀せいきの間あいだ、ドイツ・日本にっぽん・米国べいこくの支配しはい下かに置おかれ、太平洋戦争たいへいようせんそうと冷戦れいせんの過酷かこくな被害ひがいがもたらされた。ドイツは1914年ねんに日本にっぽん軍ぐんにより追放ついほうされ、マーシャル諸島しょとうは国際こくさい連盟れんめい委任いにん統治とうち領りょうとして1921年ねんに日本にっぽんに委ゆだねられた。戦後せんごは国際こくさい連合れんごう信託しんたく統治とうち領りょうとして米国べいこくに託たくされた。1946年ねんから1958年ねんに67回かい繰くり返かえされた核かく実験じっけんや1959年ねんに始はじまったミサイル実験じっけんなどの軍事ぐんじ活動かつどうは、先進せんしん国こくの安全あんぜん保障ほしょうの名なのもとに国連こくれん組織そしきに正当せいとう化かされた構造こうぞう的てき、直接的ちょくせつてき、文化ぶんか的てき暴力ぼうりょくと捉とらえられる。本稿ほんこうは、軍事ぐんじ活動かつどうの影響えいきょうに苦くるしむロンゲラップとクワジェリンの被害ひがい住民じゅうみんが積極せっきょく的てきに参加さんかした、太平洋たいへいよう島嶼とうしょ民みんによる太平洋たいへいよう非核ひかく独立どくりつ運動うんどうに、太平洋たいへいよう教会きょうかい協議きょうぎ会かい(PCC)や世界せかい教会きょうかい協議きょうぎ会かい(WCC)が継続けいぞく的てきに関与かんよしたことに着目ちゃくもくする。本稿ほんこうの目的もくてきは、キリスト教きょう系けい地域ちいき・グローバル組織そしきPCCやWCCが、国際こくさい社会しゃかいに声こえを持もたない被害ひがい住民じゅうみんという弱者じゃくしゃの側がわに立たち、太平洋たいへいよう非核ひかく独立どくりつ運動うんどうという地域ちいきの政治せいじ運動うんどうと協きょう働はたらかした過程かていと、地域ちいきや欧米おうべいの市民しみん社会しゃかいとの連帯れんたいと支援しえんを動員どういんした役割やくわりを検討けんとうすることにある。この役割やくわりを「公共こうきょう宗教しゅうきょう」という宗教しゅうきょう社会しゃかい学がくの概念がいねんに沿そって考察こうさつすることで、国家こっかや権力けんりょく、核兵器かくへいき開発かいはつを正当せいとう化かする古ふるい宗教しゅうきょうとは異ことなる、市民しみん社会しゃかいに根ねざした公共こうきょう宗教しゅうきょうという新あらたな様態ようたいとして捉とらえる。PCCとWCCが、軍事ぐんじ活動かつどう被害ひがい者しゃの運動うんどうに精神せいしん的てき支柱しちゅうと組織そしき的てき支柱しちゅうを提供ていきょうしたことを明あきらかにし、トランスナショナルな公共こうきょう宗教しゅうきょうの可能かのう性せいを提示ていじする。

フェミニスト平和へいわ教育きょういく研究けんきゅう者しゃ、ベティ・リアドン（Betty A. Reardon）は、平和へいわ教育きょういくとフェミニズムの観点かんてんから平和へいわ安全あんぜん保障ほしょうに先駆せんく的てきに取とり組くんだ。本稿ほんこうは、リアドンの教育きょういく実践じっせん、安全あんぜん保障ほしょうの再さい定義ていぎ、制度せいど変革へんかくのための直接ちょくせつ行動こうどうに着目ちゃくもくし、学習がくしゅうや変革へんかくを重視じゅうしするフェミニスト平和へいわ研究けんきゅうに基もとづく安全あんぜん保障ほしょう論ろんとその実践じっせんを明あきらかにする。

フェミニスト平和へいわ研究けんきゅうは、軍事ぐんじ的てき国家こっか安全あんぜん保障ほしょうが階層かいそう的てき関係かんけいや「他者たしゃ」を生うみ出だし、ジェンダー抑圧よくあつや戦争せんそうを永続えいぞく化かする抑圧よくあつ的てきシステムであると指摘してきする。そして軍事ぐんじ主義しゅぎとジェンダー権力けんりょく関係かんけいの不可分ふかぶん性せいを論ろんじる。フェミニストの安全あんぜん保障ほしょうは「人々ひとびと、コミュニティ、生命せいめいを維持いじする地球ちきゅう全体ぜんたいのウェルビーイング」の実現じつげんを原則げんそくとし、「他者たしゃ」を作つくらず、危害きがいを加くわえない関係かんけいの構築こうちくを重視じゅうしする。その理論りろん的てき基盤きばんにはリアドンの「有機ゆうき的てき平和へいわ（organic peace）」概念がいねんがあり、生命せいめいの尊厳そんげんやウェルビーイングを尊重そんちょうし、紛争ふんそうを成長せいちょうの源みなもとに転換てんかんする学習がくしゅうプロセスを意味いみする。この概念がいねんは一ひとつのシステムに共存きょうぞんする生命せいめいの価値かちの平等びょうどう性せいと相互そうご性せい、問題もんだいの関連かんれん性せいを捉とらえるホリスティックな視点してんに基もとづく。

本稿ほんこうは、米国べいこくの平和へいわ運動うんどう、「真しんの安全あんぜん保障ほしょうを求もとめる女性じょせいたち（WGS）」の活動かつどうを分析ぶんせきし、文脈ぶんみゃくや関係かんけい性せいを重視じゅうしして不平等ふびょうどうな構造こうぞうを運動うんどう内部ないぶから転換てんかんするフェミニストの安全あんぜん保障ほしょう実践じっせんを提示ていじする。これらフェミニストの理論りろん・実践じっせんは、暴力ぼうりょくや脅威きょういを生うみ出ださない平和へいわのシステムを不断ふだんに学習がくしゅうし構築こうちくしていく「有機ゆうき的てきな安全あんぜん保障ほしょう」と言いえる。

日本にっぽん政府せいふは、2022年ねん12月に閣議かくぎ決定けっていした国家こっか安全あんぜん保障ほしょう戦略せんりゃくなど安全あんぜん保障ほしょう3文書ぶんしょをもとに「防衛ぼうえい力りょくの抜本ばっぽん的てき強化きょうか」へと突つき進すすんでいる。憲法けんぽう9条じょうの下したでの「専守防衛せんしゅぼうえい」政策せいさくは本質ほんしつ的てきに転換てんかんされた。

戦後せんご約やく80年ねんが経たち、軍事ぐんじ的てき「抑止よくし力りょく」を肯定こうていする意識いしきはかなり主流しゅりゅう化かした。本稿ほんこうでは、そこにみられる軍事ぐんじ力りょく中心ちゅうしん主義しゅぎを批判ひはん的てきに検証けんしょうし、それから脱却だっきゃくするための視点してんを探さぐる。

筆者ひっしゃが共同きょうどう座長ざちょうをつとめる「平和へいわ構想こうそう提言ていげん会議かいぎ」（2022年ねん10月がつ発足ほっそく）が出だしてきた提言ていげんや関連かんれんの声明せいめいを踏ふまえ、まず軍事ぐんじ力りょく増強ぞうきょうが戦争せんそうのリスクをむしろ高たかめることを指摘してきする。そして、東ひがしアジアで戦争せんそうが起おきたらどうなるかを論ろんじ、それを回避かいひするための軍縮ぐんしゅくと緊張きんちょう緩和かんわ、信頼しんらい醸成じょうせいの必要ひつよう性せいを説とく。

軍事ぐんじ力りょくそのものへの根本こんぽん的てき批判ひはんとして、(1) 軍拡ぐんかく競争きょうそうと安全あんぜん保障ほしょうのジレンマ、(2) 軍拡ぐんかくの機会きかい費用ひよう、(3) 抑止よくしと威嚇いかくの関係かんけい、(4) 人権じんけんと民主みんしゅ主義しゅぎ、(5) 軍事ぐんじ力りょくが問題もんだいを何なんら解決かいけつしないといった論点ろんてんを挙あげる。

そこからの脱却だっきゃくには、第だい一いちに防衛ぼうえい・安保あんぽ政策せいさくの決定けっていプロセスの民主みんしゅ化か、第だい二にに東ひがしアジアの信頼しんらい醸成じょうせいのための対話たいわ、第だい三さんに平和へいわ的てき生存せいぞん権けんや紛争ふんそうの平和へいわ的てき解決かいけつといった原則げんそくの復権ふっけんが必要ひつようである。

世界せかいを「西側にしがわ」対たい「それ以外いがい」の二に項こう対立たいりつでとらえ、日本にっぽんが米国べいこくとの「同盟どうめい強化きょうか」一辺倒いっぺんとうで進すすむのは危険きけんである。アジア近隣きんりん諸国しょこくや非ひ同盟どうめい諸国しょこくとの連携れんけいを強つよめ、市民しみん社会しゃかいが参加さんかする多元的たげんてきな安全あんぜん保障ほしょうを追求ついきゅうすべきである。

本稿ほんこうは平和へいわ構想こうそう提言ていげんが提案ていあんしている地域ちいき安全あんぜん保障ほしょう構想こうそうについて軍事ぐんじ同盟どうめいの危険きけん性せいを指摘してきする。

現在げんざいの地域ちいきの軍事ぐんじ的てき緊張きんちょうの高たかまりの原因げんいんについて、日本にっぽんのメディアではほとんど報道ほうどうされないが、ユン大統領だいとうりょう就任しゅうにん以来いらい多おおくの米べい韓かん軍事ぐんじ演習えんしゅうが行おこなわれて、これに対たいして北朝鮮きたちょうせんがミサイルや人工じんこう衛星えいせいの発射はっしゃ実験じっけんをしているという、相互そうごに影響えいきょう関係かんけいの把握はあくが重要じゅうようである。台湾たいわん問題もんだいでも、中国ちゅうごくの武力ぶりょく侵攻しんこうの可能かのう性せいが強調きょうちょうされるが、ペロシ下院かいん議長ぎちょう訪問ほうもんや米国べいこくの台湾たいわんへの武器ぶき売却ばいきゃくなどの中国ちゅうごくに対たいする挑発ちょうはつにより、台湾たいわんをめぐる米べい中ちゅうの緊張きんちょうは激化げきかしているのも事実じじつだ。もちろん日本にっぽんの敵てき基地きち攻撃こうげき能力のうりょくへの強化きょうかも緊張きんちょう激化げきかの一端いったんを担になっている。

米国べいこくの軍事ぐんじ同盟どうめいは、中国ちゅうごく・北朝鮮きたちょうせん・ロシアを敵国てきこくと想定そうていしており、相互そうご不信ふしんを生しょうじさせている原因げんいんとなっている。西欧せいおう、ロシアのOSCEについても、ウクライナ戦争せんそうにおいて中立ちゅうりつ性せいが疑うたがわれ紛争ふんそう抑止よくしのために機能きのうしなかった。アジアの場合ばあい、日本にっぽん、韓国かんこくだけでなく、フィリピン、タイも米国べいこくと軍事ぐんじ同盟どうめいを結むすんでいる。AUKUSやQUADのネットワークは南シナ海みなみしなかいにも緊張きんちょうを創つくり出だしている。ASEANのインド太平洋たいへいよう構想こうそう（AOIP） においても、軍事ぐんじ同盟どうめいに対たいして実効じっこう性せいのある政策せいさくを実行じっこうしていけるかが課題かだいである。

地域ちいき安全あんぜん保障ほしょう構想こうそうにおいては、非ひ同盟どうめい・多国たこく間あいだ主義しゅぎを中心ちゅうしん的てきコンセプトにし、軍事ぐんじ同盟どうめいとは一線いっせんを画かくする、BRICSや非ひ同盟どうめい諸国しょこく運動うんどうとの連携れんけいも必要ひつようである。地域ちいきの安全あんぜん保障ほしょうへの市民しみん社会しゃかいの関与かんよについては、市民しみん間あいだの国際こくさい的てきなネットワークの構築こうちく、安全あんぜん保障ほしょうの理念りねんとして平和へいわ権けんという人権じんけんアプローチも強調きょうちょうした。

部会ぶかい4は、従来じゅうらい認みとめられないとされてきた「反撃はんげき能力のうりょく」（敵てき基地きち攻撃こうげき力りょく）を憲法けんぽう9条じょう下かでの自衛じえい力りょくに含ふくめるという重大じゅうだいな憲法けんぽう解釈かいしゃく変更へんこうを含ふくむ2022年ねん安保あんぽ3文書ぶんしょ改定かいていを問題もんだい視しし、かような軍拡ぐんかく姿勢しせいへのオルタナティブとして「平和へいわ構想こうそう提言ていげん会議かいぎ」による「平和へいわ構想こうそう提言ていげん」（2023年ねん）の可能かのう性せいを探究たんきゅうするものであった。青井あおい未帆みほ会員かいいんによる「平和へいわについて憲法けんぽう論ろんにできること－安保あんぽ3文書ぶんしょ改定かいていを経へて」報告ほうこくは、市民しみん主体しゅたいの平和へいわ構想こうそうをめぐり、論理ろんりの問題もんだいとしてのみならず、いかにして安全あんぜん保障ほしょうという現実げんじつ的てきな文脈ぶんみゃくへの対応たいおう力りょくを示しめすことができるかという視座しざの重要じゅうよう性せいを指摘してきするものであった。川崎かわさき哲あきら会員かいいん「「抑止よくし論ろん神話しんわ」からの脱却だっきゃく」報告ほうこくは、「軍事ぐんじ力りょくのもつ弱点じゃくてんや危険きけん性せい」をめぐる認識にんしきに基もとづき、「軍事ぐんじ力りょく中心ちゅうしんではない形かたちで戦争せんそうを防止ぼうしし国際こくさい安全あんぜん保障ほしょうを向上こうじょうさせる道筋みちすじ」の具体ぐたい的てき内容ないようとして、朝鮮半島ちょうせんはんとうの平和へいわ・非核ひかく化か、日にち中ちゅう関係かんけいの安定あんてい化か、核兵器かくへいきの禁止きんしと廃絶はいぜつ、信頼しんらい醸成じょうせいと紛争ふんそう予防よぼうのための市民しみん外交がいこう等とうを挙あげる。いずれも重要じゅうような内容ないようだが、実際じっさいに侵攻しんこうを受うけた場面ばめんを想定そうていした「対応たいおう力りょく」を持もつものとは言いえない。そこで筆者ひっしゃは非ひ武装ぶそう市民しみんによる抵抗ていこうに基もとづく非ひ軍事ぐんじ的てき安全あんぜん保障ほしょう論ろんとしての市民しみん的てき防衛ぼうえい論ろんと「平和へいわ構想こうそう提言ていげん」の接続せつぞく可能かのう性せいをめぐる問題もんだい提起ていきを行おこなうとともに、ロシアの侵攻しんこうを受うけるウクライナのKIISによる世論せろん調査ちょうさが市民しみん的てき防衛ぼうえいの視点してんを多分たぶんに含ふくむことにふれ、これに対たいするウクライナ市民しみんの回答かいとうを参照さんしょうした。