6月30日に公表された政府税制調査会の答申レポートには、給与所得控除や退職所得控除といった会社員に欠かせない控除制度の見直しを示唆する内容が記載された。同レポートでは「働き方などの選択肢に中立的な税制の構築」という方針が掲げられており、これらの控除制度の見直しは、会社員と個人事業主との税負担の差をなくすための取り組みであるとされている。
岸田文雄・首相は、7月25日の宮沢洋一・自民党税制調査会長との面会で、会社員の税負担を大きくする“サラリーマン増税”について、「全く考えていない」と発言している。しかし、首相の諮問機関である政府税調の答申レポートが「中立的な税制の構築」を掲げる以上、これらの答申の中身が将来の税制改正につながっていくと見るのは自然なことだろう。特に名指しで標的にされているのは、会社員の「給与」と「退職金」だ。政府税調の答申に沿うかたちでサラリーマン増税が実施された場合、どのような影響があるのか見ていこう。
給与所得控除の減額は会社員にとって大きな打撃に
会社員の給与所得は、原則として個人事業主のように必要経費を計上することができない仕組みとなっている。しかし、勤務先に通勤するための衣服や自家用車など、会社員にも経費として認められるべき費用はあるはずだ。そういった費用を計上する代わりに収入から控除する仕組みを「給与所得控除」という。
給与所得控除の金額は「収入の3割程度」が目安とされ、年収400万の人は31%、年収700万円の人は約26%の控除が認められている。そのため、必要経費の計上が難しい会社員にとって欠かせない控除制度といえるだろう。