もしも自分が先立ったら、残されたこのペットはどうなってしまうのか……そんな不安を抱いている人も少なくないだろう。そういった事態に備える制度が「ペット信託」だが、具体的にどういうものなのか。実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【質問】
私は犬を飼っていますが、自分の死後、ペットの世話を誰がしてくれるのかとても心配です。親きょうだいはすでに他界し、私には子供もいません。
最近、「ペット信託」という制度があることを知りましたが、どのような制度なのでしょうか。利用するメリット、デメリットを教えてください。(石川県・70才・アルバイト)
【回答】
「信託」とは、一定の目的のために他人に財産を預けて管理や処分を任せ、その目的を実現するための制度です。信託する財産を預ける委託者、預かって管理や処分をする受託者、その利益を得る受益者で構成されます。
ご質問の場合、飼い主であるあなたが委託者になり、受託者が経費を生み出す信託財産(多くは現金)を預かってペットの世話をし、世話されるペットが受益者になれば簡単ですが、ペットは人間ではないので受益者になれません。
その場合、受益者のいない「目的信託」になりますが、これは、受託者になれるのは純資産が5000万円以上の法人で、期間も上限20年と制約が多く、実際の利用例は希です。