新NISAの拡充などで株式投資ブームが到来している。一方で株価は乱高下を繰り返し、投資初心者にとっては判断が難しい場面も多い。だからこそ、株式投資で億単位の資産を築いた「億り人」たちの考え方が参考になるケースもある。今、異色の投資法で注目されるのが、「街歩き」をベースとした投資先選びで資産7億円を築いた専業投資家「www9945氏」である。新著『年収300万円、掃除夫だった僕が7億円貯めた方法』(宝島社)が話題のwww9945氏に、話を聞いた――。
大学卒業後、茨城県の食品メーカーに勤務していたwww9945氏が投資を始めたのは、入社2年目の頃だった。
「“金儲けの神様”と呼ばれる香港出身の実業家・邱永漢さんのコラムを読んで、株式投資に興味を持ちました。配当金で暮らすことを夢見てあくせく働き、必死に貯めた100万円で『宇部興産(現・UBE)』と『北陸電力』の株を初めて購入しましたが、翌日に宇部興産株は値下がりし、その後、半値以下で売る羽目に。北陸電力株も結局は損切りに追い込まれました」(www9945氏、以下同)
最初の投資で失敗したのち、体調を崩して会社を退職したが株への情熱は消えず、無職の期間を経て清掃会社に入社してからも株を買い続けた。年収300万円ながら家賃5万円の公団住宅を借りて生活費を削り、仕事の合間にラジオたんぱの株式情報を聴いて投資先を探した。
「安定収入を得たことで投資に回せる資金が徐々に増え、経済指標やマーケットを読む力もついていきました。浮き沈みはありましたがコツコツと株を買い、2005年の郵政相場や2012年のアベノミクスによる株価上昇の波に乗り、2012年11月末に資産1億円を突破しました。ちなみに最初に“元手2倍”を達成したのは飲食チェーン店を運営する『プレナス』の株で、私のハンドルネームはプレナスの証券コード9945からつけました(笑)」
その後も手広く投資を続け、100万円から始めた投資資産は現在7億円を超える。
投資のための「街歩き」
そんなwww9945氏の投資の着眼点は、政治情勢や金利、為替といったマクロの観点から株価の動向を占うのではなく、ミクロの日常生活からヒントを見つけるというもの。中でも力を入れているのが「街歩き」だ。ぶらぶらと街を歩きながら周囲に目を配ることで、「世の中の流れ」が最初はぼんやりと、それからくっきりと見えてくるという。
「あちこちキョロキョロしながら歩いていると、流行や人気の店が見えてきます。例えば以前、私がよく通る道沿いにあった『業務スーパー』に急に人だかりができるようになり、駐車場もいつも満杯であることに気づきました。そこで調べてみると、業務スーパーを経営する『神戸物産』は当時ブームになりかけていたタピオカの原料を台湾から輸入する業務も行なっていて、“これは来る”と思って株を即買いしました。その後、タピオカブームで神戸物産の株価が上昇し、大きな利益を得ることができました」
街角ウォッチをする際は、老若男女を問わず道行く人が多く、流行の発信地になりやすいエリアを選ぶとより効果的になる。www9945氏はもっぱら「池袋」を歩くという。
「埼玉県の玄関口で人通りが多く、起業家精神を持つ人がたくさんいて店舗の新陳代謝が盛ん。変化のスピードが速いので、会社四季報を読むよりも早く“ナマの情報”を入手できます。僕が歩き始めた頃の池袋は女子高生たちがプリクラに行列を作り、撮影した画像をアプリで補正したり携帯の待ち受け画面にしたりして盛り上がっていた。そこでプリントシール機を製造販売する『フリュー』に目をつけて投資し、儲けることができました」
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