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急増きゅうぞうする梅毒ばいどくの患者かんじゃ数すう

梅毒ばいどくは、日本にっぽんでは1990年代ねんだい以降いこうの患者かんじゃ数すうは年間ねんかん1000人にんを下回したまわっていました。しかし、2013年ねん、梅毒ばいどくの患者かんじゃ数すうは1200人にんを超こえ、その後ご、年々ねんねん増加ぞうかしています。2015年ねんは2690人にん、2016年ねんは4575人にんと、ここ数すう年ねんで爆発ばくはつ的てきに増ふえています。

若わかい女性じょせいが特とくに急増きゅうぞうしている

梅毒ばいどくの増加ぞうかが止とまりません。特徴とくちょう的てきなのは、20代だいの若わかい女性じょせいの患者かんじゃが増ふえていることです。はっきりとした原因げんいんはわかっていませんが、SNSなどを通つうじて出会であいの場ばが増ふえ、不ふ特定とくてい多数たすうの相手あいてと性せい交渉こうしょうの機会きかいが増ふえていることも原因げんいんの一ひとつとみられます。
女性じょせいの場合ばあいは、妊娠にんしん中ちゅうに胎盤たいばんを通つうじて胎児たいじに感染かんせんし重ちょう篤あつな症状しょうじょうを引ひき起おこす「先天せんてん梅毒ばいどく」の恐おそれもありますので、特とくに注意ちゅういが必要ひつようです。

梅毒ばいどくの原因げんいん・感染かんせん経路けいろ・予防よぼう法ほう

梅毒ばいどくは、梅毒ばいどくトレポネーマと呼よばれる細菌さいきんに感染かんせんして起おこる性せい感染かんせん症しょうです。性せい感染かんせん症しょうとは、性的せいてき接触せっしょくによって感染かんせんする病気びょうきのことです。

梅毒ばいどくの感染かんせん経路けいろとなる性的せいてき接触せっしょくには、普通ふつうの性器せいきの接触せっしょくによる性交せいこうだけでなく、オーラルセックスやアナルセックスなど、性的せいてきな接触せっしょくすべてが含ふくまれ、粘膜ねんまくや皮膚ひふから感染かんせんします。特殊とくしゅな状況じょうきょうでの感染かんせんだけでなく、日常にちじょう生活せいかつの性的せいてき行動こうどうで誰だれでも感染かんせんする可能かのう性せいがあります。

さらに、妊にん婦ふが感染かんせんしている場合ばあいは胎盤たいばんを介かいして母子ぼし感染かんせんし、胎児たいじにも影響えいきょうを及およぼします。母体ぼたいが無む治療ちりょうの場合ばあい、40％は流産りゅうざんや死産しざんとなり、生うまれた場合ばあいも、梅毒ばいどく感染かんせんによる障害しょうがいが見みられ、これは先天せんてん梅毒ばいどくと呼よばれます。障害しょうがいの程度ていどは、感染かんせんの期間きかんによって異ことなります。

梅毒ばいどくの感染かんせんを防ふせぐためには、不ふ特定とくてい多数たすうの人ひととの性せい交渉こうしょうはしないことや、コンドームを使用しようすることなどが大切たいせつです。

梅毒ばいどくの経過けいかと症状しょうじょう

梅毒ばいどくは、症状しょうじょうが現あらわれたり消きえたりを繰くり返かえしながら徐々じょじょに全身ぜんしんを侵おかしていく感染かんせん症しょうです。症状しょうじょうがいったん消きえるため、見逃みのがされやすく、さらに感染かんせんを広ひろげてしまう危険きけん性せいが大おおきいといえます。

経過けいかは第だい1期きから第だい4期きに分わけられます。梅毒ばいどくは感染かんせんしてすぐには症状しょうじょうが現あらわれません。感染かんせん後ご、3週間しゅうかん前後ぜんこうで最初さいしょの症状しょうじょうが現あらわれてきます。これが第だい1期きで、感染かんせんが起おきた局所きょくしょにしこりや潰瘍かいようなどが現あらわれます。第だい1期きの症状しょうじょうは、治療ちりょうをしなくても数すう週間しゅうかんで消きえてしまいます。

感染かんせんから3か月げつほど経たつと新あらたな症状しょうじょうが現あらわれ、第だい2期きとなります。第だい2期きでは、全身ぜんしんに赤あかい発疹はっしんが出でたり、性器せいきや肛門こうもんに扁平へんぺい（へんぺい）コンジローマと呼よばれる平たいらなできものが現あらわれます。第だい2期きの症状しょうじょうも、治療ちりょうをしなくても数すう週間しゅうかんで再ふたたび消きえます。

感染かんせんから3年ねんほど経過けいかすると、新あらたな症状しょうじょうが現あらわれ、第だい3期きとなります。第だい3期きでは、結節けっせつやゴム腫しゅと呼よばれる、ゴムのような柔やわらかいできものが、皮膚ひふや筋肉きんにく、骨ほねなどにできます。

さらに進行しんこうすると第だい4期きになります。第だい4期きまで進行しんこうすると、血管けっかんや神経しんけいが侵おかされ、動脈どうみゃくりゅう、大動脈だいどうみゃく炎えん、進行しんこうまひ、脊髄せきずいろうなどの深刻しんこくな症状しょうじょうが現あらわれ、日常にちじょう生活せいかつにも支障ししょうを来きたすことがあります。進行しんこうまひは、中枢ちゅうすう神経しんけい系けいが侵おかされ、記憶きおく力りょくの低下ていかや性格せいかくの変化へんかが起おこり、進行しんこうしてまひを起おこすもので、脊髄せきずいろうは、脊髄せきずいが侵おかされて痛いたみや運動うんどう失調しっちょうが起おこるものです。

梅毒ばいどくは見逃みのがされやすい

梅毒ばいどくは、1990年代ねんだいから患者かんじゃ数すうが年間ねんかん1000人にんを下回したまわり、「過去かこの病気びょうき」とされることもありました。そのため、若わかい医師いしでは梅毒ばいどくを診察しんさつしたことがない人ひとが多おおく、発疹はっしんなどの症状しょうじょうが現あらわれてもすぐに梅毒ばいどくを疑うたがうのは難むずかしいのが現状げんじょうです。また、アトピー性せい皮膚ひふ炎えんなど、もともと皮膚ひふの病気びょうきがある人ひとでは、見分みわけるのが難むずかしい場合ばあいがあります。

さらに、オーラルセックスなどで唇くちびるや口くちの中なか、のどにも梅毒ばいどくの症状しょうじょうが現あらわれる人ひともいますが、梅毒ばいどくの症状しょうじょうが口くちやのどに現あらわれるということがあまり知しられていないため、見逃みのがされやすい状況じょうきょうです。まずは、梅毒ばいどくを疑うたがって検査けんさをすることが大切たいせつです。

梅毒ばいどくの検査けんさ

梅毒ばいどくかもしれないと思おもったら、皮膚ひふ科か、感染かんせん症しょう専せん門もんの科か、泌尿器ひにょうき科か、産婦人科さんふじんかなどを受診じゅしんしましょう。自治体じちたいによっては、保健所ほけんじょでHIVの検査けんさと一緒いっしょに梅毒ばいどく検査けんさをしているところがあるので、確認かくにんしてみると良よいでしょう。

梅毒ばいどくの検査けんさは、梅毒ばいどくの診断しんだんには、血液けつえき検査けんさで、抗体こうたいを検出けんしゅつするための血清けっせい診断しんだんを行おこないます。梅毒ばいどくの血清けっせい反応はんのうには、梅毒ばいどくトレポネーマの抗原こうげんを用もちいる方法ほうほう「ＴＰ抗原こうげん法ほう」と非特異ひとくい的てきな脂質ししつ抗原こうげん（カルジオライピン）を用もちいる方法ほうほう「脂質ししつ抗原こうげん法ほう」の2種類しゅるいがあり、この2つを組くみ合あわせて検査けんさします。ＴＰ抗原こうげん法ほうは特異とくい抗体こうたいなので、梅毒ばいどく感染かんせんの証拠しょうことなり確定かくてい診断しんだんに必要ひつようです。脂質ししつ抗原こうげん法ほうは、治療ちりょうによる変化へんかがわかるため、病気びょうきの進行しんこうの程度ていどや治療ちりょう効果こうかの判定はんていに有効ゆうこうです。

どちらの検査けんさも、感染かんせんから約やく4週しゅう以上いじょう経過けいかしないと陽性ようせい反応はんのうが出でないため、症状しょうじょうが現あらわれてすぐに検査けんさをしても陰性いんせいになる場合ばあいがあります。その場合ばあいは、2週間しゅうかんほど間あいだをあけて再さい検査けんさを行おこないます。

梅毒ばいどくの薬くすりによる治療ちりょう

2021年ねんにペニシリン系けいの抗菌こうきん薬やく「ベンジルペニシリンベンザチン」の筋肉きんにく注射ちゅうしゃが承認しょうにんされました。早期そうき梅毒ばいどく（1期き・2期き）でしたら、1回かいの注射ちゅうしゃで完治かんじが望のぞめます。3期きまで症状しょうじょうが進すすんでも、1週間しゅうかん間隔かんかくで3回かいほどの注射ちゅうしゃで効果こうかが見みられます。
ただし、ペニシリン系けいのアレルギーを持もつ方ほうは使用しようすることができません。

梅毒ばいどくの予防よぼうの基本きほんは、不ふ特定とくてい多数たすうとの性せい交渉こうしょうを避さけること、コンドームを使用しようすることです。しかし、コンドームだけでは100パーセント防ふせぐことはできません。さまざまな性行為せいこういによって感染かんせんが広ひろがるからです。
また、梅毒ばいどく以外いがいにも性せい感染かんせん症しょうは多おおく存在そんざいします。一人ひとり一いち人にんが性せい感染かんせん症しょうの正ただしい知識ちしきを持もつことは必須ひっすです。また、性教育せいきょういくにも力ちからを入いれるなど、社会しゃかい全体ぜんたいで性せい感染かんせん症しょう対策たいさくしていくことが大切たいせつです。

梅毒ばいどくのQ＆A