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- オンライン会見に出席した陸上男子短距離の山縣(スクリーンショット)
陸上男子100メートル日本記録保持者の山縣亮太(31=セイコー)が16日、オンライン会見を開き、今夏のパリオリンピック(五輪)を断念する意向を示した。3月から右脚に違和感があり、五輪代表選考会を兼ねた日本選手権(6月27~30日)への出場を回避すると説明。これにより4大会連続の五輪代表の可能性がなくなった。
会見の冒頭で「現在まで万全な状態で走ることができていません。その中でも試合に出場してベストパフォーマンスは発揮できない。チーム内で協議し、現在は違和感の原因の特定と治療に専念することになりました」と説明した。
山縣は12年ロンドン五輪から3大会連続で代表入り。16年リオデジャネイロ五輪では400メートルリレーの1走を務め、過去最高の銀メダルを獲得した。21年東京五輪では日本選手団主将を歴任した。
6月に32歳を迎える中、パリ五輪へは「絶対に出たい、逃せないという思いが強かった」と強い思いを抱いていた。その可能性が消滅し「非常に残念。ただただ自分の力不足を痛感する。今は喪失感も大きい。こういう決断をしないといけないことが大変残念」と率直な思いを口にした。
21年10月には右膝を手術し、翌22年シーズンはリハビリに専念。23年シーズンから復帰し、今季へ照準を定めてきた。その間は体の仕組みや動きを見直し、「体のことにちょっとずつ詳しくなっていって、トレーニング方法を変えて、着実に成長していけていた」と手応えも感じていた。
今年1月には、「9秒8台」が目標タイムと宣言。21年6月に日本記録となる9秒95をマークしたが、追い風2・0メートルの好条件下とあり「9秒台を出せたのはうれしいが、出し切れた1本ではなかった」と満足はしていない。この日の会見でも「タイム自体にはそこまで意味がない」としつつ、「9秒台」と繰り返し言及。「できると思っているから、競技を続ける意味がある。(9秒台は)自己ベストを更新し続けることの延長線上にある数字」と、記録更新へのこだわりをのぞかせた。
25年9月には東京・国立競技場で世界選手権(世界陸上)が開催される。「足の状態次第ですが、2025年に全てを出し切って終わりたい」と見据え、28年ロサンゼルス五輪については「出ないと思います。先のことを考えながらやることが難しい。1年1年、全力でどれだけできるかになってきている。先がある状態は好ましくない。そういう意味で五輪を目指す気はないです」と言及した。【藤塚大輔】
◆男子100メートルのパリ五輪への道 出場枠は最大「3」。昨夏の世界選手権で6位入賞したサニブラウン・ハキーム(東レ)は、6月30日までの参加標準記録(10秒00)を切れば即内定。ほかの選手については、参加標準を突破した上で日本選手権で優勝すれば内定。標準未突破や2位以下の場合でも、同選手権や6月末時点での世界ランキング次第で代表入りとなる。