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ボロボロの相手に得点 小川はギリギリ及第点― スポニチ Sponichi Annex サッカー
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【コラム】金子かねこいたるひとし

ボロボロの相手あいて得点とくてん 小川おがわはギリギリ及第きゅうだいてん

[ 2024ねん6がつ8にち 07:00 ]

練習れんしゅうちゅう笑顔えがおせる小川おがわひだり板倉いたくら)(撮影さつえい椎名しいな こう
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 このほど現役げんえき引退いんたいしたラグビーもと日本にっぽん代表だいひょう田中たなか史朗しろうさんには、わすれられない言葉ことばがあるという。

 「かりにわたしが、100メートルダッシュ100ほんをやれとめいじたとする。ほとんどのくにでは、選手せんしゅ中指なかゆびててかえってしまうが、日本人にっぽんじんはやる。不満ふまんはあっても、やることはきっちりとやる。それが日本人にっぽんじんつよみだ」

 田中たなかさんにそうったのは、日本にっぽん代表だいひょう監督かんとくのエディー・ジョーンズだった。

 さて、ミャンマーというくにったことはないが、ひょっとすると、国民こくみんせい日本人にっぽんじんたところがあるのかもしれない。試合しあいながら、そんなことをおもった。

 かれらは、やった。愚直ぐちょくに、あたえられた使命しめいをこなそうとした。愚直ぐちょくすぎて、最後さいごは「こんなにホームゲームで疲労ひろう困憊こんぱい(こんぱい)になってしまうチームはたことがない」と同情どうじょうしたくなるほどの状態じょうたいになっていた。失礼しつれいながら、後半こうはんのこり20ふんあたりからのかれらの守備しゅび中央ちゅうおうは、案山子かかし(かかし)よりはまし、といった程度ていどでしかなかった。

 惨敗ざんぱいしたかれらを嘲笑ちょうしょう(あざわら)いたいわけではない。むしろ、ボロボロになるまで自分じぶんんだことを称賛しょうさんしたいぐらいである。あの姿勢しせい見失みうしなわずにいけば、きっと、ミャンマーはつよくなる。ただ、ボロボロになってしまった相手あいてからゴールをうばったからといって、得点とくてんしゃにボーナスポイントをあげるにはとてもなれない。

 つまり、小川おがわわたるもとかんしては、失格しっかくぎりぎりの及第きゅうだいてんしかつけられない。前半ぜんはんの、まだ元気げんきだったミャンマー相手あいてにはなにもできなかった印象いんしょうほうつよのこる。

 もちろん、どくめんはある。まだ代表だいひょうでの実績じっせきがほとんどない小川おがわを、前半ぜんはんはほとんどだれていなかった。これでは、どんなすぐれたストライカーであってもどうしようもない。

 ただ、かれみずからの意思いしを、意図いとだれかにつたえる努力どりょくをこの数日すうじつあいだでしてきたのだろうか。

 していてもあのありさまだというのであれば、周囲しゅういにも責任せきにんはある。だが、していなかったのであれば、そんなことをせずとも試合しあいになればなんとかなるとかんがえていたのであれば、本人ほんにん怠慢たいまんというしかない。つぎ機会きかいがあれば、相馬そうま以外いがい選手せんしゅとも意図いとかよわせた小川おがわたい。高校こうこう時代じだいから期待きたいつづけている選手せんしゅだけに、つよくそうおもう。

 守田もりたの“コレクター(回収かいしゅうしゃ)”ぶりは素晴すばらしかったし、ボランチから効果こうかてきなパスをした鎌田かまたかった。中村なかむら突破とっぱりょくは、さん笘の不在ふざい完全かんぜんわすれさせてくれた。最初さいしょから最後さいごまで、選手せんしゅゆるみのようなものがられなかったのも評価ひょうかできる。正直しょうじき、3バックを指示しじされたからといっても、あれほど疲弊ひへいした相手あいてにも律義りちぎにシステムをまもらなくても、とおもわないこともなかったが、そこはまた、日本人にっぽんじん長所ちょうしょでもあるのだろう。

 個人こじんてき一番いちばんつよ印象いんしょうけたのは、川村かわむらたくゆめだった。中盤ちゅうばんそこ左利ひだりききのかれはいったことで、展開てんかいのリズム、テンポがはんはやくなったようにかんじられたからだ。みぎきの選手せんしゅ自陣じじんいてボールをけた場合ばあいひだりサイドに展開てんかいするためにはまえ必要ひつようがあるが、川村かわむらはそのままの姿勢しせいすことができる。そのあたりは本人ほんにんもはっきりと自覚じかくしているようで、日本にっぽんにとっては、あらたな選択肢せんたくし誕生たんじょう、といえるかもしれない。

 この勝利しょうりかれる選手せんしゅはいないだろうが、しかし、アジアはい以来いらいいやながれはれたもする。満足まんぞくはできないがわるくもない。そんな5―0ではなかったか。(金子かねこいたるひとし=スポーツライター)

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