網走番外地暗い暗い小窓に しょんぼりと 浮かぶあの娘の 泣きボクロ 何処でどうして 居るのやら 一目逢いたい 番外地 「切った張ったで極道すりゃ、行く先ゃ網走番外地…… 此処へ来りゃ、どいつも、こいつも、顔見りゃ一癖あるんだが、 心(しん)から悪い奴ァ居ねえ… 夜更になりゃ小さな星を眺めながら、がんぜない餓鬼のように、 忍び泣いているんだ。こんな俺だって故郷(くに)へ残した 一人暮しのお袋の事を思い出し思いっ切り泣いて見たくなるんだ。 お袋………かんべんしてくれ。」 一人一人暮しの お袋に 極道重ねた 罰あたり すまぬすまぬと 手をついて 涙で祈る 番外地 顔は顔は一癖 あるけれど どいつも こいつも いい奴さ 娑婆の冷たい 風よりも 住めば都さ 番外地 | 水城一狼 | 水城一狼 | 不詳 | | 暗い暗い小窓に しょんぼりと 浮かぶあの娘の 泣きボクロ 何処でどうして 居るのやら 一目逢いたい 番外地 「切った張ったで極道すりゃ、行く先ゃ網走番外地…… 此処へ来りゃ、どいつも、こいつも、顔見りゃ一癖あるんだが、 心(しん)から悪い奴ァ居ねえ… 夜更になりゃ小さな星を眺めながら、がんぜない餓鬼のように、 忍び泣いているんだ。こんな俺だって故郷(くに)へ残した 一人暮しのお袋の事を思い出し思いっ切り泣いて見たくなるんだ。 お袋………かんべんしてくれ。」 一人一人暮しの お袋に 極道重ねた 罰あたり すまぬすまぬと 手をついて 涙で祈る 番外地 顔は顔は一癖 あるけれど どいつも こいつも いい奴さ 娑婆の冷たい 風よりも 住めば都さ 番外地 |
一本刀土俵入り「あの姐(あね)さん。お蔦さんといいなすったが、 すんでの事に死ぬところ、取的さんしっかりおしと 泣いて救けて下すった。なのにこの駒形茂兵衛は、面目ねえ」 角力名乗りを やくざに代えて 今じゃ抱寝の 一本刀 利根の川風 まともに吹けば 人の情を 人の情を 思い出す 「今でもはっきり覚えている。水戸街道は取手の宿の我孫子屋で、 立派な横綱におなりよと、紐に結んで二階から、 櫛かんざしに巾着ぐるみお情けをいただいた、あの時の取的でござんすよ」 忘れられよか 十年前を 胸にきざんだ あのあねさんを 惚れた はれたと 言うてはすまぬ 義理が負目の 義理が負目の 旅合羽 「姐さんッ。堪忍しておくんなさい。おはづかしゅうはござんすが」 見せてあげたい 男の夢も いつか崩れた 一本刀 悪い奴なら おさえて投げて 行くが俺らの 行くが俺らの 土俵入 | 水城一狼 | 高橋掬太郎 | 細川潤一 | | 「あの姐(あね)さん。お蔦さんといいなすったが、 すんでの事に死ぬところ、取的さんしっかりおしと 泣いて救けて下すった。なのにこの駒形茂兵衛は、面目ねえ」 角力名乗りを やくざに代えて 今じゃ抱寝の 一本刀 利根の川風 まともに吹けば 人の情を 人の情を 思い出す 「今でもはっきり覚えている。水戸街道は取手の宿の我孫子屋で、 立派な横綱におなりよと、紐に結んで二階から、 櫛かんざしに巾着ぐるみお情けをいただいた、あの時の取的でござんすよ」 忘れられよか 十年前を 胸にきざんだ あのあねさんを 惚れた はれたと 言うてはすまぬ 義理が負目の 義理が負目の 旅合羽 「姐さんッ。堪忍しておくんなさい。おはづかしゅうはござんすが」 見せてあげたい 男の夢も いつか崩れた 一本刀 悪い奴なら おさえて投げて 行くが俺らの 行くが俺らの 土俵入 |
大利根月夜あれをごらんと 指差す方に 利根の流れを 流れ月 昔笑うて ながめた月も 今日は 今日は涙の 顔で見る 「………何たる哀れよ。二十三夜の月は今も昔も変わらぬに、 変り果てる我が姿。よしや病床に伏すとはいえ、平手造酒ともあろう身が、 やくざ渡世の用心棒とは」 愚痴じゃなけれど 世が世であれば 殿のまねきの 月見酒 男平手と もてはやされて 今じゃ 今じゃ浮世を三度笠 「その浮世の義理故に、三十年の生涯の、幕を引く時が来た。 合図の鐘が鳴ったなら、長曽根虎徹よ、お前も一緒に喧嘩場の、 利根の河原へ行ってくれ」 もとを正せば 侍そだち 腕は自慢の 千葉じこみ 何が不足で 大利根ぐらし 故郷(くに)じゃ 故郷じゃ妹が 待つものを 「妹よッ。倖せに暮してくれえッ」 | 水城一狼 | 水城一狼 | 長津義司 | | あれをごらんと 指差す方に 利根の流れを 流れ月 昔笑うて ながめた月も 今日は 今日は涙の 顔で見る 「………何たる哀れよ。二十三夜の月は今も昔も変わらぬに、 変り果てる我が姿。よしや病床に伏すとはいえ、平手造酒ともあろう身が、 やくざ渡世の用心棒とは」 愚痴じゃなけれど 世が世であれば 殿のまねきの 月見酒 男平手と もてはやされて 今じゃ 今じゃ浮世を三度笠 「その浮世の義理故に、三十年の生涯の、幕を引く時が来た。 合図の鐘が鳴ったなら、長曽根虎徹よ、お前も一緒に喧嘩場の、 利根の河原へ行ってくれ」 もとを正せば 侍そだち 腕は自慢の 千葉じこみ 何が不足で 大利根ぐらし 故郷(くに)じゃ 故郷じゃ妹が 待つものを 「妹よッ。倖せに暮してくれえッ」 |
男のエレジー街の灯影に 背中を向けて 一人吹かした たばこの苦さ 渡る世間を せばめてすねて 生きる男の 身の辛さ こんなやくざに 誰がした 義理と人情の 渡世に生きて 酒とケンカに やつれた命 ほほのキズあと 淋しくなぜて 月に語ろうか 身の上を こんなやくざに 誰がした 泣ける思いも 笑ってかくす 青いソフトの 横顔淋し 今の姿じゃ 帰れもすまい 恋し母住む ふる里へ こんなやくざに 誰がした | 水城一狼 | 石本美由起 | 岡晴夫 | | 街の灯影に 背中を向けて 一人吹かした たばこの苦さ 渡る世間を せばめてすねて 生きる男の 身の辛さ こんなやくざに 誰がした 義理と人情の 渡世に生きて 酒とケンカに やつれた命 ほほのキズあと 淋しくなぜて 月に語ろうか 身の上を こんなやくざに 誰がした 泣ける思いも 笑ってかくす 青いソフトの 横顔淋し 今の姿じゃ 帰れもすまい 恋し母住む ふる里へ こんなやくざに 誰がした |
唐獅子牡丹義理と人情を 秤(はかり)にかけりゃ 義理が重たい 男の世界 幼なじみの 観音様にゃ 俺の心は お見通し 背中(せな)で吠えてる 唐獅子牡丹 親の意見を 承知ですねて 曲がりくねった 六区の風よ つもり重ねた 不孝のかずを なんと詫(わ)びよか おふくろに 背中で泣いてる 唐獅子牡丹 おぼろ月でも 隅田の水に 昔ながらの 濁らぬ光り やがて夜明けの 来るそれまでは 意地で支える 夢ひとつ 背中で呼んでる 唐獅子牡丹 | 水城一狼 | 水城一狼・矢野亮 | 水城一狼 | | 義理と人情を 秤(はかり)にかけりゃ 義理が重たい 男の世界 幼なじみの 観音様にゃ 俺の心は お見通し 背中(せな)で吠えてる 唐獅子牡丹 親の意見を 承知ですねて 曲がりくねった 六区の風よ つもり重ねた 不孝のかずを なんと詫(わ)びよか おふくろに 背中で泣いてる 唐獅子牡丹 おぼろ月でも 隅田の水に 昔ながらの 濁らぬ光り やがて夜明けの 来るそれまでは 意地で支える 夢ひとつ 背中で呼んでる 唐獅子牡丹 |
河内仁義手前生国 発します 金剛山は 吹きおろし 河内音頭を 子守唄に 聞いて育った ガキ大将 人に頭を下げられりゃ いやとは云えない 性分で たとえ我が身を 殺しても 尽す男の 心意気 熱い血潮が 燃えている 義理と人情の 男伊達 生れついての がさつもの 見かけ通りの かけ出しで 松の緑と 末永く 今日嚮(きょうこう)万端 よろしく おたの申します ガキの頃から 無鉄砲で 親分なしの 子分なし 稼業いまだに 未熟でも 河内極道にゃ 骨がある 吹けばとぶよな 身体でも 筋目の通った 喧嘩なら たとえ相手が どいつでも 男一匹 受けて立つ これが誠の 義侠心 虎は死んだら 皮残る 人は死んだら 名を残す 生駒桜は散ろうとも 河内男の ど根性で きっと立派に 咲かせる 男花 | 水城一狼 | 正岡三明・水城一狼 | 水城一狼 | | 手前生国 発します 金剛山は 吹きおろし 河内音頭を 子守唄に 聞いて育った ガキ大将 人に頭を下げられりゃ いやとは云えない 性分で たとえ我が身を 殺しても 尽す男の 心意気 熱い血潮が 燃えている 義理と人情の 男伊達 生れついての がさつもの 見かけ通りの かけ出しで 松の緑と 末永く 今日嚮(きょうこう)万端 よろしく おたの申します ガキの頃から 無鉄砲で 親分なしの 子分なし 稼業いまだに 未熟でも 河内極道にゃ 骨がある 吹けばとぶよな 身体でも 筋目の通った 喧嘩なら たとえ相手が どいつでも 男一匹 受けて立つ これが誠の 義侠心 虎は死んだら 皮残る 人は死んだら 名を残す 生駒桜は散ろうとも 河内男の ど根性で きっと立派に 咲かせる 男花 |
勘太郎月夜唄影か柳か 勘太郎さんか 伊那は七谷 糸ひく煙り 棄てて別れた 故郷の月に しのぶ今宵の ほととぎす 「ありがてえ。せめて別れと人知れず、 夜道を忍んで帰って来たが、よかった。 生まれ故郷は昔のままで、俺は抱きしめてくれたんだ」 形(なり)はやくざに やつれていても 月よ見てくれ 心の錦 生れ変って 天竜の水に うつす男の 晴れ姿 「おっお母さん………喜んでおくんなさい。勘太郎は、 きっと立派んなって帰って来ます……お達者でえッ……」 菊は栄える 葵は枯れる 桑を摘む頃 逢おうじゃないか 霧に消えゆく 一本刀 泣いて見送る 紅つつじ | 水城一狼 | 水城一狼 | 清水保雄 | | 影か柳か 勘太郎さんか 伊那は七谷 糸ひく煙り 棄てて別れた 故郷の月に しのぶ今宵の ほととぎす 「ありがてえ。せめて別れと人知れず、 夜道を忍んで帰って来たが、よかった。 生まれ故郷は昔のままで、俺は抱きしめてくれたんだ」 形(なり)はやくざに やつれていても 月よ見てくれ 心の錦 生れ変って 天竜の水に うつす男の 晴れ姿 「おっお母さん………喜んでおくんなさい。勘太郎は、 きっと立派んなって帰って来ます……お達者でえッ……」 菊は栄える 葵は枯れる 桑を摘む頃 逢おうじゃないか 霧に消えゆく 一本刀 泣いて見送る 紅つつじ |
関東仁義「ご列席のご一統さん 失礼さんにござんす。 私生国と発します 関東にござんす。 関東は江戸 改めまして東京は浅草 花川戸にござんす。 男度胸の二の腕かけて 義理人情の紅い花 彫って入った稼業にござんす。 渡世縁持ちまして天神一家にござんす。 姓は左近寺 名は龍也 通称抜き打ちの龍と発します。 昨今かけ出しの 若輩者にござんす。 今日嚮(きょうこう)万端よろしゅうおたの申します」 お世辞笑いで 生きてくよりは 義理の二文字 抱いて死ぬ 古い男の 誠の道を なんで世間は 馬鹿という 惚れた女に 難くせつけて むける背中に 夜の風 短刀(ドス)を呑んでる この懐(ふところ)に 抱いちゃいけない 堅気花 半端者でも 傷もつ身でも なんで汚(けが)そう こころまで 割って見せたい 五尺の身体 どこに男の 嘘がある | 水城一狼 | 木下龍太郎 | 白石十四男 | | 「ご列席のご一統さん 失礼さんにござんす。 私生国と発します 関東にござんす。 関東は江戸 改めまして東京は浅草 花川戸にござんす。 男度胸の二の腕かけて 義理人情の紅い花 彫って入った稼業にござんす。 渡世縁持ちまして天神一家にござんす。 姓は左近寺 名は龍也 通称抜き打ちの龍と発します。 昨今かけ出しの 若輩者にござんす。 今日嚮(きょうこう)万端よろしゅうおたの申します」 お世辞笑いで 生きてくよりは 義理の二文字 抱いて死ぬ 古い男の 誠の道を なんで世間は 馬鹿という 惚れた女に 難くせつけて むける背中に 夜の風 短刀(ドス)を呑んでる この懐(ふところ)に 抱いちゃいけない 堅気花 半端者でも 傷もつ身でも なんで汚(けが)そう こころまで 割って見せたい 五尺の身体 どこに男の 嘘がある |
兄弟仁義親の血をひく 兄弟よりも かたい契りの 義兄弟 こんな小さな 盃だけど 男いのちを かけて飲む 義理だ恩だと 並べてみたら 恋の出てくる すきがない あとはたのむと かけ出す露路に ふるはあの娘の なみだ雨 俺の目をみろ 何んにもゆうな 男同志の 腹のうち ひとりぐらいは こうゆう馬鹿が 居なきゃ世間の 目はさめぬ | 水城一狼 | 星野哲郎 | 北原じゅん | | 親の血をひく 兄弟よりも かたい契りの 義兄弟 こんな小さな 盃だけど 男いのちを かけて飲む 義理だ恩だと 並べてみたら 恋の出てくる すきがない あとはたのむと かけ出す露路に ふるはあの娘の なみだ雨 俺の目をみろ 何んにもゆうな 男同志の 腹のうち ひとりぐらいは こうゆう馬鹿が 居なきゃ世間の 目はさめぬ |
残侠荒川橋義理で飾った 男の道に 真実(まこと)一つが 掴めない 無理も道理も 仁義の世界 筋を通して 何処までも 残侠一匹 俺は行く 「お前にゃ、苦労ばっかりかけて 何一つ、喜ばす事のできなかったこの俺だ、 かんべんしてくれ、この身体が この命がもう一つありゃ、お前に 全部くれてやりてえ……!!」 強いばかりじゃ 渡世の道は 肩で風など 切れぬもの 受けた恩義に 命を賭けて たとえお前を 泣かせても 意地でつぐなう 義理もある 「泣くなと云う方が無理かも知れねえ、 だが、これが渡世の仁義だ …美恵…後をよろしゅう頼んだぜ!!」 恋が女の生き甲斐ならば 意地は 男の 命杖 からむ未練の 荒川土堤(づつみ) 真実(まこと)一つを 懐に 渡る 戸田橋 月もない | 水城一狼 | 水城一狼 | 水城一狼 | | 義理で飾った 男の道に 真実(まこと)一つが 掴めない 無理も道理も 仁義の世界 筋を通して 何処までも 残侠一匹 俺は行く 「お前にゃ、苦労ばっかりかけて 何一つ、喜ばす事のできなかったこの俺だ、 かんべんしてくれ、この身体が この命がもう一つありゃ、お前に 全部くれてやりてえ……!!」 強いばかりじゃ 渡世の道は 肩で風など 切れぬもの 受けた恩義に 命を賭けて たとえお前を 泣かせても 意地でつぐなう 義理もある 「泣くなと云う方が無理かも知れねえ、 だが、これが渡世の仁義だ …美恵…後をよろしゅう頼んだぜ!!」 恋が女の生き甲斐ならば 意地は 男の 命杖 からむ未練の 荒川土堤(づつみ) 真実(まこと)一つを 懐に 渡る 戸田橋 月もない |
残侠吉良常「私、生れも育ちも、三州吉良の港 姓は太田、名は常吉、通称人呼びまして、 吉良常と申します!」 義理と人情の 花散る港 此処は三州 吉良の町 意地が 燃え立つ 五尺の身体 潮の香りが しみている 誰れが付けたか ケチな手前を 吉良常と 「叔父の仁吉のように、人様に惜しまれる人間は、 皆んな早死にをすらあな……!!」 貧乏くじだと、分っちゃいても 引かにゃならない 時もある 惚れた女房を 義理故 すてて 叔父の仁吉は 花と散る 文句抜きだよ これが誠の 男伊達 「若けえ頃はこの祭り太鼓の音に 大そう意気がったもんだ」 三河太鼓の 波立つ音に 暴れ火祭り 空を焼く 喧嘩するような 年ではないが 誠仁義を 一筋に 後生大事に 抱いて死にます 吉良常は | 水城一狼 | 水城一狼 | 水城一狼 | | 「私、生れも育ちも、三州吉良の港 姓は太田、名は常吉、通称人呼びまして、 吉良常と申します!」 義理と人情の 花散る港 此処は三州 吉良の町 意地が 燃え立つ 五尺の身体 潮の香りが しみている 誰れが付けたか ケチな手前を 吉良常と 「叔父の仁吉のように、人様に惜しまれる人間は、 皆んな早死にをすらあな……!!」 貧乏くじだと、分っちゃいても 引かにゃならない 時もある 惚れた女房を 義理故 すてて 叔父の仁吉は 花と散る 文句抜きだよ これが誠の 男伊達 「若けえ頃はこの祭り太鼓の音に 大そう意気がったもんだ」 三河太鼓の 波立つ音に 暴れ火祭り 空を焼く 喧嘩するような 年ではないが 誠仁義を 一筋に 後生大事に 抱いて死にます 吉良常は |
人生劇場やると思えば どこまでやるさ それが男の 魂(たましい)じゃないか 義理がすたれば この世はやみだ なまじとめるな 夜の雨 あんな女に 未練はないが なぜか涙が 流れてならぬ 男ごころは 男でなけりゃ わかるものかと あきらめた 時世時節(ときよじせつ)は 変ろとままよ 吉良(きら)の仁吉は 男じゃないか おれも生きたや 仁吉のように 義理と人情の この世界 | 水城一狼 | 佐野惣之助 | 古賀政男 | | やると思えば どこまでやるさ それが男の 魂(たましい)じゃないか 義理がすたれば この世はやみだ なまじとめるな 夜の雨 あんな女に 未練はないが なぜか涙が 流れてならぬ 男ごころは 男でなけりゃ わかるものかと あきらめた 時世時節(ときよじせつ)は 変ろとままよ 吉良(きら)の仁吉は 男じゃないか おれも生きたや 仁吉のように 義理と人情の この世界 |
旅姿三人男「野郎ッ。小せえと思ってナメやがって。 でっけえとこのあるのを知らねえな。束(たば)んなってかかって来いッ」 清水港の 名物は お茶の香りと 男伊達 見たか聞いたか あの啖呵 粋な小政の 粋な小政の 旅姿 「小政が一番か。仕様がねえや、あいつァ手が早えからな。 でもまだ諦めないよ俺は、二番があるんだから」 富士の高嶺の 白雪が とけて流れる 真清水(ましみず)で 男みがいた 勇み肌 なんで大政 なんで大政 国を売る 「アア、二番は大政か。これも仕様がねえな。あいつ槍を使うんだよ槍を。 俺はどうなってんだい。何?今度は俺だって。待ってました」 腕と度胸じゃ 負けないが 人情からめば ついほろり 見えぬ片眼に出る涙 森の石松 森の石松 良い男 「でも石松は馬鹿だって?がっかりさせやがんなァ」 | 水城一狼 | 宮本旅人 | 鈴木哲夫 | | 「野郎ッ。小せえと思ってナメやがって。 でっけえとこのあるのを知らねえな。束(たば)んなってかかって来いッ」 清水港の 名物は お茶の香りと 男伊達 見たか聞いたか あの啖呵 粋な小政の 粋な小政の 旅姿 「小政が一番か。仕様がねえや、あいつァ手が早えからな。 でもまだ諦めないよ俺は、二番があるんだから」 富士の高嶺の 白雪が とけて流れる 真清水(ましみず)で 男みがいた 勇み肌 なんで大政 なんで大政 国を売る 「アア、二番は大政か。これも仕様がねえな。あいつ槍を使うんだよ槍を。 俺はどうなってんだい。何?今度は俺だって。待ってました」 腕と度胸じゃ 負けないが 人情からめば ついほろり 見えぬ片眼に出る涙 森の石松 森の石松 良い男 「でも石松は馬鹿だって?がっかりさせやがんなァ」 |
妻恋道中好いた女房に 三下り半を 投げて長どす 永の旅 怨むまいぞえ 俺らのことは またの浮世で 逢うまでは 「お菊……堪忍してくれ、嫌で別れた仲じゃねぇ…… これも渡世の義理故だ。泣けるおめえーの辛さより、 泣けぬ俺らの胸の内割って見せてやりてえ……」 惚れていながら 惚れないそぶり それがやくざの 恋とやら 二度と添うまい 街道がらす 阿呆阿呆で 旅ぐらし 「泣くもんけえ、たとえ妻恋鳥が鳴こうとも」 泣いてなるかと 心に誓や 誓う矢先に またほろり 馬鹿を承知の 俺等の胸を 何故に泣かすか 今朝の風 | 水城一狼 | 藤田まさと | 阿部武雄 | | 好いた女房に 三下り半を 投げて長どす 永の旅 怨むまいぞえ 俺らのことは またの浮世で 逢うまでは 「お菊……堪忍してくれ、嫌で別れた仲じゃねぇ…… これも渡世の義理故だ。泣けるおめえーの辛さより、 泣けぬ俺らの胸の内割って見せてやりてえ……」 惚れていながら 惚れないそぶり それがやくざの 恋とやら 二度と添うまい 街道がらす 阿呆阿呆で 旅ぐらし 「泣くもんけえ、たとえ妻恋鳥が鳴こうとも」 泣いてなるかと 心に誓や 誓う矢先に またほろり 馬鹿を承知の 俺等の胸を 何故に泣かすか 今朝の風 |
東京流れもの流れ流れて 東京を そぞろ歩きは 軟派でも 心にゃ硬派の 血が通う 花の一匹 人生だ ああ 東京流れもの 夜の暗さに はぐれても 若い一途な 純情は 後生大事に 抱いて行く 浪花節だよ 人生は ああ 東京流れもの 曲りくねった 道だって こうと決めたら まっすぐに 嘘とお世辞の ご時世にゃ いてもいいだろ こんな奴 ああ 東京流れもの | 水城一狼 | 永井ひろし | 不詳 | | 流れ流れて 東京を そぞろ歩きは 軟派でも 心にゃ硬派の 血が通う 花の一匹 人生だ ああ 東京流れもの 夜の暗さに はぐれても 若い一途な 純情は 後生大事に 抱いて行く 浪花節だよ 人生は ああ 東京流れもの 曲りくねった 道だって こうと決めたら まっすぐに 嘘とお世辞の ご時世にゃ いてもいいだろ こんな奴 ああ 東京流れもの |
任侠観音菩薩男素肌に 観音菩薩 手前生まれは 浅草六区 餓鬼のころから 奥山育ち 見掛け通りの がさつな野郎で 親を泣かせた 親を泣かせた 罰当り 「懐かしいなァ、遊び馴れたこの境内、いまじゃ変り果てたこの姿、 勘弁してくれ、おっ母さん………」 情からんだ 観音菩薩 惚れちゃならない 仁義もあるさ ままになるなら この手に抱いて 逢いたかったと 打明けたいが 義理という字が 義理という字が 邪魔をする 「お嬢さん………もう何んにも、おっしゃらないでおくんなさい……… こんな奴でも、せめて一度ぐらい、世間様のために命を張ります……… それじゃ、お達者で………」 男素肌の 観音菩薩 止めてくれるな いまさら無駄さ やると定めたら 三社の氏子 馬鹿を承知で 出て行くからにゃ どうせ覚悟は どうせ覚悟は 出来ている | 水城一狼 | 水城一狼・矢野亮 | 水城一狼 | | 男素肌に 観音菩薩 手前生まれは 浅草六区 餓鬼のころから 奥山育ち 見掛け通りの がさつな野郎で 親を泣かせた 親を泣かせた 罰当り 「懐かしいなァ、遊び馴れたこの境内、いまじゃ変り果てたこの姿、 勘弁してくれ、おっ母さん………」 情からんだ 観音菩薩 惚れちゃならない 仁義もあるさ ままになるなら この手に抱いて 逢いたかったと 打明けたいが 義理という字が 義理という字が 邪魔をする 「お嬢さん………もう何んにも、おっしゃらないでおくんなさい……… こんな奴でも、せめて一度ぐらい、世間様のために命を張ります……… それじゃ、お達者で………」 男素肌の 観音菩薩 止めてくれるな いまさら無駄さ やると定めたら 三社の氏子 馬鹿を承知で 出て行くからにゃ どうせ覚悟は どうせ覚悟は 出来ている |
番場の忠太郎「旅の鳥でも烏でも母の乳房が忘られず、せめてひと目と面影を、 瞼に描いて旅の空、たづね歩いて十五年。どこにどうしていなさるか。 逢いてえ。」 姿やくざな 番場の鳥も 人の顔見りゃ 涙ぐせ 生きておいでか お達者か 昔恋しい 母の顔 「ア? その顔は? おかみさんは覚(おぼ)えがあるんだ。 所は江州馬場宿(しゅく)で、六代続いた旅籠(はたご)渡世(とせい) の置長屋(おきながや)。あんたがそこへ嫁(かた)づいて生んだ子が、 あっしでござんす。忠太郎でござんす。お母さん ええ?人違いだと仰っしゃるんでござんすか」 来てはいけない 水熊横丁 愚痴じゃないけど なんで来た 親と名乗れず 子と言えず これも浮世の 罪とやら 「そうでござんすか………瞼と瞼をピッタリ合わせ、 じっとこうして考えてりゃア、いつでもどこでも瞼の底に、 母の姿が浮んで来るんだ。それでいいんだ。 逢いたくなったら眼をつぶらア………」 呼んで呉れるな 情の声よ 河原すすきも とめたがる どこへ飛ぼうと 忠太郎 母は瞼に 御座います | 水城一狼 | 藤間哲郎 | 桜田誠一 | | 「旅の鳥でも烏でも母の乳房が忘られず、せめてひと目と面影を、 瞼に描いて旅の空、たづね歩いて十五年。どこにどうしていなさるか。 逢いてえ。」 姿やくざな 番場の鳥も 人の顔見りゃ 涙ぐせ 生きておいでか お達者か 昔恋しい 母の顔 「ア? その顔は? おかみさんは覚(おぼ)えがあるんだ。 所は江州馬場宿(しゅく)で、六代続いた旅籠(はたご)渡世(とせい) の置長屋(おきながや)。あんたがそこへ嫁(かた)づいて生んだ子が、 あっしでござんす。忠太郎でござんす。お母さん ええ?人違いだと仰っしゃるんでござんすか」 来てはいけない 水熊横丁 愚痴じゃないけど なんで来た 親と名乗れず 子と言えず これも浮世の 罪とやら 「そうでござんすか………瞼と瞼をピッタリ合わせ、 じっとこうして考えてりゃア、いつでもどこでも瞼の底に、 母の姿が浮んで来るんだ。それでいいんだ。 逢いたくなったら眼をつぶらア………」 呼んで呉れるな 情の声よ 河原すすきも とめたがる どこへ飛ぼうと 忠太郎 母は瞼に 御座います |
名月赤城山「誰方(どなた)さんも御免なさんせ。赤城颪(おろし)を子守唄に、 阪東太郎利根川で生湯を使った男一匹。 上州は佐位郡国定忠治でござんすと、たとえ仁義を切ろうとも、 今の忠治ァ、関八州に五尺の体の置き場もねぇ―」 「赤城の山も今宵限り、繩張りを捨て国を捨て、 可愛い子分の手前達とも別れ別れになる門出だ。 見ろ。雲一つねえ空の果て、どこが塒(ねぐら)か知らねえが、 雁が啼いてとんでゆく。俺とおんなじ身の上の――」 男心に 男が惚れて 意気がとけ合う 赤城山 澄んだ夜空の まんまる月に 浮世横笛 誰が吹く あの笛の音も何故か寂しい。ありゃア日光の円蔵か、 あいつも故郷の空が恋しいのだろう……定八、鉄。別れるぞゥ。 バッタと共に草枕、当ても涯てしもねえ旅に出るのだ――」 意地の筋がね 度胸のよさも 何時か落目の 三度笠 言われまいぞえ やくざの果てと さとる草鞋に 散る落葉 「………泣くねえ見っともねえ。風にまかせた命なら、 運ぷ天ぷで行くだけよ。流れる星を道連れに……」 渡る雁がね 乱れて啼いて 明日は いづこの 塒やら 心しみじみ 吹く横笛に またもさわぐか 夜半の風 | 水城一狼 | 矢島寵児 | 菊池博 | | 「誰方(どなた)さんも御免なさんせ。赤城颪(おろし)を子守唄に、 阪東太郎利根川で生湯を使った男一匹。 上州は佐位郡国定忠治でござんすと、たとえ仁義を切ろうとも、 今の忠治ァ、関八州に五尺の体の置き場もねぇ―」 「赤城の山も今宵限り、繩張りを捨て国を捨て、 可愛い子分の手前達とも別れ別れになる門出だ。 見ろ。雲一つねえ空の果て、どこが塒(ねぐら)か知らねえが、 雁が啼いてとんでゆく。俺とおんなじ身の上の――」 男心に 男が惚れて 意気がとけ合う 赤城山 澄んだ夜空の まんまる月に 浮世横笛 誰が吹く あの笛の音も何故か寂しい。ありゃア日光の円蔵か、 あいつも故郷の空が恋しいのだろう……定八、鉄。別れるぞゥ。 バッタと共に草枕、当ても涯てしもねえ旅に出るのだ――」 意地の筋がね 度胸のよさも 何時か落目の 三度笠 言われまいぞえ やくざの果てと さとる草鞋に 散る落葉 「………泣くねえ見っともねえ。風にまかせた命なら、 運ぷ天ぷで行くだけよ。流れる星を道連れに……」 渡る雁がね 乱れて啼いて 明日は いづこの 塒やら 心しみじみ 吹く横笛に またもさわぐか 夜半の風 |