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画一かくいつてきからの解放かいほうとなえて9ねん。あなたは自分じぶんのボディとどうっている?【連載れんさい・ヴォーグ ジャパンアーカイブ】

メンタルヘルスなどふくめた現代げんだいのビューティーのありかた特集とくしゅうした今月こんげつごうから派生はせいして、今回こんかいかえるのは「IT’S MY BODY」と銘打めいうった2015ねん7がつごうひとからられることを意識いしきした商業しょうぎょうてきなボディよりも、自分じぶんあいせるボディになることが大切たいせつとなえて9ねんわたしたちは変化へんかつづけるボディとしんのバランスをどのようにってきているだろうか。

Photo: Giampaolo Sgura (cover), Shinsuke Kojima (magazine) Model: Rosie Huntington-Whiteley

スポーツなつである。パリオリンピックパラリンピック開催かいさいされる。五輪ごりんをめぐっては巨額きょがく放送ほうそうけんりょう運営うんえいじんのマッチョな体質たいしつ問題もんだいになっている。前回ぜんかい東京とうきょう大会たいかいは、開催かいさい決定けっていしたときには素敵すてきおもてなしまつりでがったものの、当初とうしょのロゴに盗作とうさく疑惑ぎわく、ザハ・ハディドのスタジアムあん白紙はくし東京とうきょう発案はつあん斬新ざんしんな「かぶるかさがたよけの発表はっぴょう会見かいけんでそれをこうむっていた職員しょくいん虚無きょむ、あまりにもひどい開会かいかいしきあん、トップが女性じょせい差別さべつ発言はつげん辞任じにん開催かいさい逮捕たいほしゃるわ組織そしきはとっとと解散かいさんして真相しんそうがうやむやになるわで、全然ぜんぜんさわやかではない話題わだいがあまりにもおおぎたため、アスリートたちの真剣しんけん勝負しょうぶ記憶きおくがかきされんばかりとなった。

それでもまた開催かいさいされれば人々ひとびと毎日まいにち夢中むちゅうになるだろう。日本にっぽんでおなじみのフレーズ「感動かんどうをありがとう」には辟易へきえきするが、スポーツする身体しんたいうつくしい。かずじゅうおく人々ひとびと眼差まなざしがそそがれる競技きょうぎしゃ身体しんたいは、ひとかぎりある時間じかん変化へんかつづける肉体にくたいきているとうとさをおしえてくれる。わたしたちの身体しんたいじつによくできているのだ。アスリートたちのようにきたえられてはいなくても、日々ひびきているのはこの緻密ちみつ精巧せいこう有機物ゆうきぶつかたまりのおかげである。

2015ねん7がつごうでは、自愛じあいとしてのボディメイキングというくち身体しんたいづくりを特集とくしゅうしている。他人たにんから性的せいてき魅力みりょくのあるボディを目指めざすのでも、均整きんせいがとれた肢体したい誇示こじしてひとより優位ゆういとうとするのでもなく、おのおの健康けんこう心地ここちよい身体しんたいのありかたさぐりましょうという提言ていげんだ。

画一かくいつてき商業しょうぎょうてきな「あるべき」からひと身体しんたい解放かいほうしようとするながれはいまつづいているけれど、そのなかすこまえまで強調きょうちょうされていた「どんなカラダもうつくしい」という主張しゅちょうつかれたひとおおいんじゃないだろうか。このごうでも「日本人にっぽんじんの(すすきべったい)からだうつくしい」という特集とくしゅうがある。マーケットの主流しゅりゅうとされる人々ひとびとからて「うつくしくない」とラベリングされてきた身体しんたい自分じぶんもどし「いや、ここにがある」と主張しゅちょうすることはきわめて重要じゅうようだ。だがそのさきには、そもそも身体しんたいうつくしくなければならないのか? といういがかまえている。いまでは、身体しんたい云々うんぬんすること自体じたいから自由じゆうになろうととなえるひとえている。わたし同感どうかんである。をかけようがほったらかしだろうが、自分じぶんるようにすればいいではないか。いのちものなのだから、心地ここちよいのが一番いちばんだ。ただきるためにあるからだでいけない理由りゆうがどこにあろう。おおくのひととはちがからだも、からだいるからだも、ぜんいのちのありようである。更年期こうねんきむかえてからはなおさらそのおもいがつよくなった。

10代のころちがった。だい性徴せいちょうおそかったわたしは、いつまでってもばしのような自分じぶん体型たいけいいやでたまらなかった。ようやくむねにわずかな標高ひょうこうしょうじたものの優美ゆうび曲線きょくせんにはめぐまれず、干潟ひがたのようなほねボネしいデコルテをるとかなしくなった。いまでも、むねまる弾力だんりょくのあるにくかたまりがついているのはどんなかんじだろうとあこがれる気持きもちはある。もう、これから成長せいちょうすることはないとわかっているから「ああ今回こんかい人生じんせいでは経験けいけんできずじまいだったなあ」という寂寥せきりょうかん見舞みまわれるのである。ひとはみんな、がついたらまれていて、えらんだわけでもない身体しんたいきなくちゃならない。そして時間じかんにはかぎりがある。いまわたし肉体にくたい各所かくしょしぼみつつある。最近さいきん眉間みけん目尻めじりにはボトックスをはじめたが、それだっていをめることはできない。たかいクリームをってよろこぶのとおなじで、いっとき心地ここちよくはなるが、いのち時計とけいもどるわけではない。

だからこそ、しむのだ。そうながいおいはできないのがこの身体しんたいだ。なすがままにときまれつつ、との名残なごりしむ。大切たいせつにし、感謝かんしゃして一緒いっしょごすのだ。念入ねんいりにお化粧けしょうしながらごしたいひともいるし、およいだりはしったりしてたのしみたいひともいる。やがてほろびてしまうのだから、いまある身体しんたいとちょっとでもいい時間じかんごしたいじゃないか。

満載まんさいだれかのインスタをていて、せつなくなることがある。そうだよね、今日きょう自分じぶんまたたえてしまうのだから、おりの自分じぶんをたくさんのひと目撃もくげきしてほしいし、記録きろく記憶きおくめたいとおもうのだろうなと。やすみなく代謝たいしゃつづけるなまのカラダは、いっときもおながたをとどめていることはない。どれほど手入ていれをしても変化へんかしてしまうものなのだ。

生成せいせいAIの飛躍ひやくてき進歩しんぽによって、やがてうつひとからだのほとんどはいなくなるだろう。仕事しごと社交しゃこうも、おもどおりにできる仮想かそう身体しんたいでこなせるようになる。生身なまみ身体しんたい名前なまえをなくして、あなたのいゆく身体しんたいはあなただけの秘密ひみつになる。愛想あいそきても、どこかにりにすることはできない。いやでも同居どうきょしなくちゃならないのだ。だから相性あいしょうがよかろうとそうでなかろうと、ほどほどに仲良なかよくしておくにしたことはない。このなつは、アスリートたちの挑戦ちょうせんたたえつつ、見慣みなれたおのれ身体しんたいにもいたわりと感謝かんしゃささげよう。

Photos: Shinsuke Kojima (magazine) Text: Keiko Kojima Editor: Gen Arai

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それはファッション? それともアート? り、まとうことの価値かちについての再考さいこう連載れんさい・ヴォーグ ジャパンアーカイブ】

ファッションとアート。そのどちらもながあいだわたしたち人類じんるいしんとらえ、所有しょゆうしたいとおもったり、たりたりすることでひと社会しゃかいとのつながりをかんじさせてくれるもの。2008ねん3がつごうの「Style Art! はるのドレスコードは“アート”」をとおして「まとうことはなぜよろこびなのか」をつめなおしてみよう。

ヴォーグ ジャパンアーカイブ
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あなたのおしゃれと、環境かんきょうすくかぎふるきよきヴィンテージを味方みかたに【連載れんさい・ヴォーグ ジャパンアーカイブ】

ファッションにおける貴重きちょうなアーカイブを展示てんじする2024ねんのMETガラから派生はせいさせ、ヴィンテージをテーマにした2024ねん6がつごう。それにわせ今回こんかいかえるのは、2004ねん11がつごうの『Old is New/彼女かのじょは、ヴィンテージ・クイーン!』だ。「ヴィンテージは個人こじんのスタイルのひとつ」としてとらえられていた当時とうじから、現代げんだいではアナログへのあこがれや環境かんきょうへの配慮はいりょなど、その役割やくわり変化へんかしている。

ヴォーグ ジャパンアーカイブ