WEDDING / FEATURE

社会しゃかい多様たようせいってなんだろう? プロポーズからきやすくなった世界せかいわたしたちのパートナーシップ Vol.1・後編こうへん

パートナーシップ企画きかくしん連載れんさいがスタート! 人生じんせいをともにあゆむさまざまなカップルのあい物語ものがたりとおして、自由じゆうゆたかなパートナーシップのはぐくかた探求たんきゅう連載れんさいだいいちだん登場とうじょうするのは、出会であって6ねんAKINAERIKO後編こうへんは、パートナーシップにおける転換てんかんてんとおして、二人ふたりつめる「社会しゃかい多様たようせい」。(前編ぜんぺんはこちらから

むすめしあわせでいてくれたらそれでいい

AKINA(ひだり)とERIKO(みぎ)。

VOGUE(以下いか、V) 最初さいしょ拒絶きょぜつされてしまったという家族かぞくとの関係かんけいは、どのようにして変化へんかしていきましたか?

ERIKO っていち週間しゅうかんたったころに、わたしたちは双方そうほう母親ははおや報告ほうこくしました。わたしはは他者たしゃ非難ひなんするようなひとではないのですが、高齢こうれいでもあるからかよっぽど戸惑とまどったみたいで、同性愛どうせいあいたいして「それって気持きもわるくない?」という一言ひとことでした。それからははもむきになってしまい、「職場しょくばではわないほうがいい」だとかメールをしてきて。らちひらかないので「わたしこん大事だいじおもっているひと女性じょせいだけど、あなたのむすめであることはなににもわらないからね」とメールしました。そこからは普通ふつううしはなしはするけど、一切いっさい恋人こいびとのことにはれない状態じょうたい半年はんとしあいだつづきました。

でもある、なんでもない世間せけんはなしなかで、「AKINAとここにって、こんなことがあって面白おもしろかったんだよね」とはははなしたらだい爆笑ばくしょうしてくれて。これかも!っておもったんです。かしこまったかんじではなすわけじゃなく、それからすこしずつAKINAの話題わだい会話かいわむようになって。そして二人ふたりきゅううタイミングがあり、印象いんしょうがよかったのかかえぎわに「これからもよろしくね」とははがAKINAに握手あくしゅしていました。いまはもうはははAKINAのことが大好だいすきです。

AKINA あのとき、グッときました。

ERIKO おや親友しんゆう拒絶きょぜつされると、ふかきずにもなるし、それによってしんのシャッターをめてしまうことってあるとおもうんです。いまははなにかとAKINAのことをにかけてくれるから、それにすくわれていますし、わたしたちは周囲しゅういひとめぐまれているとあらためてかんじます。

AKINA わたしおや拒絶きょぜつはなかったけど、戸惑とまどいはありました。どもはどうするのとかさきのことを心配しんぱいして、「よくかんがえなさい」といったかんじのスタート。でも、二人ふたりしあわせそうにしてる姿すがたをみて、自分じぶんむすめしあわせだったらこれでいいのかもっておもってくれたようで、いまははみずか自分じぶん友達ともだちにERIKOのことを紹介しょうかいしてくれて、ははだけじゃなく、はは親友しんゆうまでもERIKOのことが大好だいすきです。

プロポーズをきっかけにカミングアウト

V って2ねんにAKINAさんからプロポーズされたと。それはどんなかんじだったのでしょうか?

AKINA ERIKOをよろこばせたいとおもって、わたしはずっと準備じゅんびしてて。二人ふたり一緒いっしょうみひろったシーグラスで指輪ゆびわとイヤリングを、ジュエリーデザイナーの友人ゆうじんつくってもらいました。そしてって2ねん記念きねんあさベッドにんで、まえ感極かんきわまっちゃって指輪ゆびわにぎりしめながらいちゃって。「これからも一緒いっしょにいてくれる?」とって指輪ゆびわしました。

ERIKO 最初さいしょ、かわいいアンティークの巾着きんちゃくみたいなのが枕元まくらもといてあるのがえて、ママからもらったなにかをおもしてきゅうはじめたのかとおもって心配しんぱいしていたら、まさかの指輪ゆびわてきてすごく感動かんどうしました。いまでもおもすとほっこりします。

このプロポーズがきっかけとなり、わたしはすべてのひとたいしてカミングアウトすることができました。これまでも“かれ”という一人称いちにんしょう使つかったことないし、“パートナー”や“相方あいかた”といういいかたをしていたのですが、みんな勝手かってにそれがかれだとおもっていていてなんだかうそをついているみたいな気持きもちで……。でもプロポーズのつぎから、いままでえなかった仕事しごとさきひとなどにもえるようになり、みな祝福しゅくふくしてくれてめちゃくちゃきやすくなりました。どこかコソコソきていたんだと自覚じかくしました。こうもわるきっかけをつくってくれて本当ほんとう感謝かんしゃです。

AKINA わたし最初さいしょから全員ぜんいんにオープンだから、ERIKOのようななやみはなくて。でもあのときをさかいに、おたがいのことをだれかに紹介しょうかいするときの他者たしゃとの距離きょりかんつかめてきたがします。

ERIKO カミングアウトするまえは「う」「わない」ので、っていないと裏切うらぎっているかんがどこかありました。たとえば、たまたまったAKINAのいに、AKINAから恋人こいびととして紹介しょうかいしてもらえないとすこにしている自分じぶんがいましたが、いざカミングアウトしたら、“あえて”わなくてもいいこともえ、まったにならなくなりました。

同性どうせいカップルは入居にゅうきょできない? 家探やさがしの困難こんなん

V のパートナーシップ制度せいど提出ていしゅつしてわったことはありますか

AKINA 2021ねん4がつ1にちわたしたちがでもパートナーシップ制度せいどはじまることがわかり、だい1ごうになろう!とおもったら、1ごうになるには抽選ちゅうせんがあることがわかり、結局けっきょく11ごうでした。もうすでに10くみいたことがぎゃくうれしかったです。

ERIKO 自分じぶんたちのなかのひとつのかたちとして提出ていしゅつしたので、制度せいど期待きたいしたわけではないのですが、もしも婚姻こんいん平等びょうどうじゅんずる権利けんりられる選択肢せんたくしがあったら、それはそれでうれしいなとおもいます。パートナーシップ制度せいどがあると、携帯けいたい家族かぞくわり使つかえたり、市営しえい住宅じゅうたくもう権利けんりがあったりしますが、法律ほうりつじょう相続そうぞくできないですし、危篤きとく状態じょうたいになったときに病院びょういんれてもらえない可能かのうせいはあります。

AKINA ERIKOはどういう制度せいどがあったらいいとおもう?

ERIKO 一番いちばん家探やさがしの問題もんだいかな。よくある「二人ふたり入居にゅうきょ」という物件ぶっけん条件じょうけんは、結婚けっこん前提ぜんていとしたカップルじゃないとダメなんです。ふる慣習かんしゅう名残なごりで、旦那だんなさんが一人ひとりでも家賃やちんはらえるということ。もちろん、ルームシェア物件ぶっけんだったら大丈夫だいじょうぶなのですが、そういった物件ぶっけんすくなくて。二人ふたり関係かんけいせいはなしたら、「大家たいかさんがちかくにんでいるので」という理由りゆうことわられたこともあります。

AKINA もうむところまではなしすすんでいたのに、わたしたちの関係かんけいつたえた瞬間しゅんかんきゅう顔色かおいろえて対応たいおうわり……。自体じたい大変たいへんなことなのに、またことわられるんじゃないかという不安ふあんにエネルギーをられます。はパートナーシップ制度せいどしているけれど、本当ほんとう意味いみしているのか疑問ぎもんかんじることもあります。

ERIKO 多様たようせい重視じゅうしされる時代じだいだけど、そもそも世界せかい多様たようであるから、LGBTQ+とくくる必要ひつようがなくなることが目指めざすべき未来みらいかとおもいます。

家族かぞく”になっていくのを実感じっかんした中国ちゅうごくへのたび

V パートナーシップのなかで、ポジティブな変化へんか実感じっかんした出来事できごとはありましたか?

ERIKO 去年きょねんの10がつにはじめてAKINAの故郷こきょうである上海しゃんはいったこと。それはにん関係かんけいをまたおおきくえてくれた旅行りょこうでした。わたしたちは中国人ちゅうごくじん日本人にっぽんじんのカップルですが、わたし日本にっぽんのメディアをそだったので、正直しょうじきなところ中国ちゅうごくたいしてのイメージがあまりいいものではなく、どこか自分じぶん中国ちゅうごくはなしてかんがえていたので、みずかこうとおもったことがあまりありませんでした。ずっと一緒いっしょにいること、相手あいて人生じんせいをひっくるめて大切たいせつおもっていることはたしかなのに、なぜか必要ひつようはないとおもっていて……。でも、いざってみたら想像そうぞうもしていなかったまちひろがっていました。先進せんしんてきで、洗練せんれんされていて、まち活気かっきあふれ、一見いっけん無愛想ぶあいそうえてもじつやさしいひと非常ひじょうおおかった印象いんしょうです。だれかの情報じょうほう鵜呑うのみにして、否定ひていてきにジャッジしていた自分じぶんをすごくじた経験けいけんでもありました。自分じぶんて、体感たいかんしてはじめて中国ちゅうごくのことがすこしだけわかったがしました。

AKINAのおかあさんのなか友達ともだちにもえて、言葉ことばまったくわからないけど、みなたのしそうにわらっていて、とてもあたたかい気持きもちになれました。それはきっと、いまのAKINAの一部いちぶ間違まちがいなくつくってくれたひとたちにえたうれしさからだとおもいます。また、くなったおじいちゃんとむかしよくったという場所ばしょ実際じっさいち、おじいちゃんとごした幼少ようしょうおもばなしをそのいたとき、おさなころのAKINAを想像そうぞうして、ジーンときたこともありました。わたしたちのなかにもっとふかつながりができたとかんじるたびでしたし、こうやって家族かぞくになっていくんだなとかんじました。

AKINA 自分じぶんのすべてをれてもらえるってすごいことなんだと実感じっかんしたし、自分じぶんのアイデンティティをもっと大切たいせつにしたいとおもたびでした。自分じぶんのこれまでの人生じんせいを、パートナーであるERIKOに肯定こうていしてもらえたようにかんじて、そこからパートナーシップもどんどんいい方向ほうこうすすんでいるようにかんじます。

ERIKO 元々もともとリスペクトしていたし、AKINAの存在そんざいそのものにちからをもらっていたけど、あの上海しゃんはいたびさかいに、パートナーシップにたいする意識いしきわりました。自分じぶんのことも相手あいてのことももっと大事だいじにするようになったことで、これからさきも“ずっと一緒いっしょごしていく”ということに現実味げんじつみしたおおきなひとつのきっかけでした。

AKINA 今後こんごあたらしいビジョンもあり、わたし中国ちゅうごく機会きかいえそうですが、物理ぶつりてきにたとえ距離きょりはなれてもふかいところでつながっているところに安心あんしんかんがあります。こんなふう自分じぶん可能かのうせいをもっとひろげたいとつよおもうようになったのも、自分じぶんよわみだとおもっているところを、つよみとしてとらえてくれるERIKOの存在そんざいおおきいです。

ERIKO なにをしてくれていても、なにもしてくれなくても、AKINAの価値かちはなにひとつわらず、わたしはAKINAという人間にんげんそのものをただただ大切たいせつおもっています。わたしがダメなモードになったとしても、AKINAのハグでもういちかい頑張がんばろうとおもえるほど、AKINAのおおきなあいささえられている日々ひび大袈裟おおげさじゃなく、こんでこのひと出会であえたことをほこりにおもっています。

前編ぜんぺんはこちら

Photo: Courtesy of AKINA & ERIKO Text: Mina Oba Editor: Mayumi Numao