CELEBRITY / SCOOP

トム・クルーズの名演めいえんとスタントアクションがひか傑作けっさく映画えいが20せん

1980年代ねんだいから40ねん以上いじょうものあいだずっとハリウッドのだい一線いっせんつづけるトム・クルーズ出演しゅつえんする大作たいさくのプロデューサーとしても活躍かつやくするオールマイティな映画えいがじんとなったかれあゆみを、代表だいひょうさくからかえってみよう。
トム・クルーズ『トップガン』Tom Cruise on the set of Top Gun directed by Tony Scott.
Photo: Paramount Pictures/Sunset Boulevard/Corbis via Getty Images

『アウトサイダー』(1983)

Photo: Nancy Moran/Sygma via Getty Images

フランシス・フォード・コッポラが、当時とうじスター候補こうほだった若手わかて俳優はいゆうあつめてった1960年代ねんだい舞台ぶたい青春せいしゅん映画えいが貧困ひんこんそう不良ふりょうグループと裕福ゆうふく家庭かていのグループの対立たいりつえがき、トム・クルーズ主人公しゅじんこういえびたっているスティーヴやくえんじる。出番でばんすくないが、血気けっきさかんなキャラを印象いんしょうける熱演ねつえんで、乱闘らんとうシーンではやくはいりすぎて親指おやゆび骨折こっせつしてしまったほど。コッポラものちに、あたえられたちいさなやくを「よりいものにするためにはなんでもやる熱心ねっしんだった」とかたっている。

卒業そつぎょう白書はくしょ』(1983)

Photo: © Warner Brothers/courtesy Everett Collection

最初さいしょ主演しゅえんさく一流いちりゅう大学だいがく目指めざすシカゴの高校生こうこうせいジョエルが、両親りょうしん旅行りょこうちゅうにコールガールをいえんでパーティをひらいて大金たいきんかせぐというストーリー。両親りょうしんおくした自宅じたく1人ひとり、シャツ1まいにブリーフとソックス姿すがたおどりながら、ボブ・シーガーの名曲めいきょくをリップシンクするシーンはそのなんもパロディされためい場面ばめんだ。

ゆかすべるようにフレームインし、ワックスをかけてすべりやすい状況じょうきょうでピタリとねらった位置いちまる方法ほうほう粘着ねんちゃくせいのあるスプレーをゆかける)を考案こうあんしたのはトム本人ほんにんだった。編集へんしゅうしつでショットがてられるプロセスをまなぶなど、あたえられたやくえんじるだけにまらない作品さくひんへのコミットはキャリア初期しょきからはじまっていたことがうかがえる。

Photo: © Warner Brothers/courtesy Everett Collection

撮影さつえい当時とうじ20さいだったトムは4週間しゅうかんで14ポンド(やく6キロ)減量げんりょうし、筋肉きんにくとしたのち運動うんどうせずにすこしだけ脂肪しぼうをつけてどもっぽい体型たいけいにした。手段しゅだんわないこう収入しゅうにゅうたジョエルの行動こうどうには1980年代ねんだいしん自由じゆう主義しゅぎ価値かちかんたいする風刺ふうしめられている。トム自身じしんも1986ねんに『インタビュー』で、ほんさくについて「今日きょう資本しほん主義しゅぎについての作品さくひん」「ジョエルが社会しゃかい探検たんけんし、荒々あらあらしい資本しほん主義しゅぎなみまれていくのをえがいている」とかたっている。ちなみにコールガールのラナをえんじたレベッカ・デモーネイとは、撮影さつえいちゅうの1982ねんから1985ねんまで交際こうさいしていた。

『トップガン』(1986)

Photo: Paramount Pictures/Sunset Boulevard/Corbis via Getty Images

トムがアイドルからスーパースターにステップアップした初期しょき代表だいひょうさくこそが、『トップガン』だ。エリート航空こうくうせん学校がっこう派遣はけんされたアメリカ海軍かいぐんわかきパイロットの成長せいちょう物語ものがたり。トムは天才てんさいてき技術ぎじゅつほこるが、無鉄砲むてっぽう一匹狼いっぴきおおかみ主人公しゅじんこうえんじる。自信じしんにあふれてエネルギッシュという、現在げんざいたもつづけるイメージを確立かくりつさせた名作めいさくだが、じつはトムは主演しゅえんだいいち候補こうほではなかった。トムも当初とうしょ気乗きのりしていなかったが、プロデューサーのけいらいで海軍かいぐん戦闘せんとうせてもらったら、わったそう。

『ハスラー2』(1986)

Photo: © Buena Vista Pictures/Everett Collection

名優めいゆうポール・ニューマンがビリヤードの名手めいしゅえんじた代表だいひょうさく続編ぞくへんで、監督かんとくマーティン・スコセッシ。トムはニューマンえんじる主人公しゅじんこう師弟していのような関係かんけいきずきつつ勝負しょうぶかえわかきハスラー、ヴィンセントをえんじる。キューをまわ生意気なまいき若者わかものやくだが、撮影さつえい現場げんばのトムは先輩せんぱい監督かんとく尊敬そんけいするあまり「サー」とつづけ、居心地いごこちわるかんじたスコセッシにめられたそう。ニューマンをちちのようにしたい、かれならって一時期いちじきカーレースにのめりみ、『デイズ・オブ・サンダー』(1990)に主演しゅえん相手あいてやく抜擢ばってきされたニコール・キッドマン結婚けっこんした。

『レインマン』(1988)

Photo: © United Artists/Everett Collection

自己じこ中心ちゅうしんてき青年せいねんちち莫大ばくだい遺産いさん相続そうぞくしたサヴァン症候群しょうこうぐんあに施設しせつからし、故郷こきょう目指めざすロードムービー。20だいのトムは偉大いだい先輩せんぱいたちと共演きょうえんし、かれらからおおくをまなんでいた。ダスティン・ホフマンと共演きょうえんしたほんさくもそう。そして前作ぜんさく同様どうよう先輩せんぱいアカデミーしょう主演しゅえん男優だんゆうしょう受賞じゅしょうをアシストした。ちなみに名優めいゆうマイケル・ケインはほんさくのトムの演技えんぎだいのおりで、「トムは見事みごとえんじている」「大変たいへん鍛錬たんれん責任せきにん要求ようきゅうされるものだ」と絶賛ぜっさんしている。

『7がつ4にちまれて』(1989)

Photo: Universal Pictures/Sunset Boulevard/Corbis via Getty Images

愛国心あいこくしんつよ海兵かいへいたい入隊にゅうたいしたもののベトナム戦争せんそう負傷ふしょうし、車椅子くるまいす生活せいかつ余儀よぎなくされた帰還きかんへい反戦はんせん活動かつどうんでいく。ロン・コーヴィックの自伝じでん小説しょうせつをオリバー・ストーンが映画えいがし、トムがはじめてアカデミーしょう主演しゅえん男優だんゆうしょう候補こうほになった。トムは、脚本きゃくほん担当たんとうしたコーヴィック本人ほんにん面会めんかいし、アドバイザーとしてスタッフにむかれた。コーヴィックのかたわらですう週間しゅうかん車椅子くるまいすすわったきりで生活せいかつし、ときには演技えんぎ気持きもちがはいりすぎてくずれてしまったこともあったという。

『デイズ・オブ・サンダー』(1990)

Photo: ©Paramount/Courtesy Everett Collection

当時とうじカーレースに夢中むちゅうだったトムが原案げんあん提供ていきょうし、『トップガン』のスコット監督かんとくふたたんだ作品さくひん。ずばけた運転うんてん技術ぎじゅつちながら挫折ざせつ経験けいけんしたドライバー、コールが伝説でんせつてきクルー・チーフのハリーとともにストックカーレース「デイトナ500」のウィンストンはい目指めざす。レースちゅう事故じこでコールがかつまれた病院びょういん治療ちりょうにあたる医師いし、クレアやくのニコール・キッドマンと1990ねん結婚けっこんした。

著名ちょめい映画えいが評論ひょうろんのロジャー・エバートは、1980年代ねんだいのトムの主演しゅえん映画えいがについて「わか世間せけんらずだが、才能さいのうある主人公しゅじんこう年長ねんちょう男性だんせいすぐれた女性じょせい主人公しゅじんこうみがくべき技術ぎじゅつ試練しれんかれまなぶべき秘訣ひけつ知識ちしき軌跡きせき遍歴へんれき最初さいしょてき主人公しゅじんこうにとっての最終さいしゅうてきてき」という公式こうしきがあるとしるしたが、ほんさくにはそのすべてがそろっている。未熟みじゅくなコールはハリーのもとで成長せいちょうするが、20だいのトムもコールと同様どうよう年長ねんちょう名優めいゆうたちとの共演きょうえんでスキルをみがいていた。トムは自分じぶんでレースカーを運転うんてんすることを希望きぼうしたが、保険ほけんじょう理由りゆう実現じつげんせず、大半たいはんをプロのドライバーが担当たんとうした。

『ア・フュー・グッドメン』(1992)

Photo: ©Columbia Pictures/Courtesy Everett Collection

キューバにあるグアンタナモまいぐん基地きちきたわか兵士へいし死亡しぼう事件じけん真相しんそうせま軍事ぐんじ裁判さいばん法廷ほうていげきめい脚本きゃくほんアーロン・ソーキンが20だいわかさでがけた戯曲ぎきょく映画えいがで、『スタンド・バイ・ミー』や『恋人こいびとたちのかん』のロブ・ライナーが監督かんとくつとめ、ジャック・ニコルソンがグアンタナモの基地きち司令しれいかん、ジェサップ大佐たいさえんじる。トムは、良家りょうけ出身しゅっしんでハーバードを卒業そつぎょうしたエリート弁護士べんごしのダニエル・キャフィ中尉ちゅうい好演こうえん

軍隊ぐんたいない規律きりつみだものへの暴力ぼうりょくてき制裁せいさい(コードR)による事件じけん裁判さいばんで、被告ひこく兵士へいし2にん弁護べんごめいじられ、デミ・ムーアえんじるギャロウェイ少佐しょうさとケヴィン・ポラックえんじるワインバーグ中尉ちゅういむ。ダニエルは裁判さいばん型通かたどおりにませようとして、真摯しんしむギャロウェイ少佐しょうさ衝突しょうとつする。生意気なまいきさわがしい自信じしんえんじるのはトムの得意とくいわざで、女性じょせいであるギャロウェイ少佐しょうさたいするダニエルのった態度たいどじつ苦々にがにがしい。そこから真実しんじつ追求ついきゅうするキャラクターへの変貌へんぼうあざやかにえんじ、ゴールデン・グローブしょう主演しゅえん男優だんゆうしょうしょうにノミネートされた。

『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』(1994)

Photo: Francois Duhamel/Sygma via Getty Images

18世紀せいきアメリカを彷徨ほうこう2人ふたりのヴァンパイアの物語ものがたり。トムはブラッド・ピットえんじる農場のうじょうぬしルイをヴァンパイアにえた主人公しゅじんこうレスタトやくで、人間にんげん良心りょうしんのこしたルイをきつけるように、欲望よくぼうのまま残忍ざんにん行動こうどうするあく魅力みりょくてきえんじた。演技えんぎしんせまっているが、動物どうぶつドキュメンタリーでライオンがシマウマをおそうところを参考さんこうにしたそう。当初とうしょ原作げんさくしゃのアン・ライスはキャスティングにこととなえたが、完成かんせいさく意見いけんくつがえし、トムに連絡れんらくして自分じぶん間違まちがっていたことをみとめ、謝罪しゃざいした。

『ザ・エージェント』(1996)

Photo: Andrew Cooper/TriStar P/courtesy Everett Collection

敏腕びんわんスポーツ・エージェントの挫折ざせつ再生さいせいえんじ、「Show me the money」(大金たいきんせろ)の流行りゅうこうまれたキャメロン・クロウ監督かんとくのコメディ・ドラマ。自己じこ中心ちゅうしん主人公しゅじんこう成長せいちょう一緒いっしょ会社かいしゃげたシングルマザーとの恋愛れんあいなど共感きょうかんたかやくで、2度目どめのオスカー主演しゅえんしょう候補こうほに。トムの資質ししつひとつは共演きょうえんしゃ名演めいえんすことだが、ほんさくでも無名むめいだったレネー・ゼルウィガー相手あいてやくえんじて一躍いちやく脚光きゃっこうび、キューバ・グッディングJr.はアカデミーしょう助演じょえん男優だんゆうしょう受賞じゅしょうした。

『ミッション・インポッシブル』(1996)

Photo: Murray Close/Getty Images

1960〜70年代ねんだい人気にんきドラマの映画えいがとしてはじまり、現在げんざい進行しんこうちゅうのシリーズ。はじめてプロデューサーぎょう進出しんしゅつした作品さくひんでもある。トムといえば、命知いのちしらずのスタントアクションがいまやトレードマークだが、そのはしりとなったのもほんさく。CIAの諜報ちょうほう部隊ぶたいのエージェントとして、強風きょうふうさらされながら列車れっしゃにしがみついたり、宙吊ちゅうづりになって機密きみつ情報じょうほうぬすすシーンはいま時代じだいならミーム間違まちがいなしのアイコニックなめい場面ばめんだ。ほんさく以降いこうみずからハードルをつづけて毎回まいかい超人ちょうじんてきなアクションに挑戦ちょうせんしている。

『マグノリア』(1999)

Photo: ©New Line Cinema/Courtesy Everett Collection

はなやかな映画えいがスターであると同時どうじに、性格せいかく俳優はいゆうとしても突出とっしゅつした才能さいのうぬしであることを証明しょうめいしたのが、ポール・トーマス・アンダーソン監督かんとく群像ぐんぞうげき『マグノリア』だ。トムは監督かんとく前作ぜんさく『ブギーナイツ』(1997)に魅了みりょうされ、次回じかいさくへの出演しゅつえん監督かんとく直談判じかだんぱんして実現じつげんした。かれえんじたフランク・T・J・マッキーは、男性だんせいたちのあいだでカリスマてき人気にんきほこるナンパ指南しなん。あやしげな自著じちょ教材きょうざいにセミナーをひらき、「誘惑ゆうわくしてねじせろ」とくにこたえない女性じょせい蔑視べっし言動げんどうあつまった男性だんせいきゃくたちをあおって荒稼あらかせぎしている。

セミナーの合間あいまけるインタビュー取材しゅざいするど追及ついきゅうする女性じょせい記者きしゃとの心理しんりせんせる表情ひょうじょう秀逸しゅういつだが、圧巻あっかん名優めいゆうジェイソン・ロバーズがえんじる病床びょうしょうちち・アールとの対面たいめんシーン。死期しきせまるアールの枕元まくらもとで、フランクははは自分じぶんてたちち積年せきねんうらみをぶちまける。のろうように悪態あくたいをつきつづけるうちに、おもいがけずちちした気持きもちがあふれ姿すがたしんさぶられる。

アールの看護かんごフィルやく共演きょうえんしたフィリップ・シーモア・ホフマンによると、セリフはほぼトムの即興そっきょうだそうだ。脚本きゃくほんのセリフに違和感いわかんがあるというトムのもうに、監督かんとくはトム自身じしん父親ちちおやくなったときのことをかんがえるようにうながし、めいシーンが誕生たんじょうした。2人ふたり見守みまもるフィルの振舞ふるまいは演技えんぎではなく、感情かんじょうさらすトムの姿すがたしんたれたフィリップの反応はんのうそのままだという。トムはほんさくだい72かいアカデミーしょう助演じょえん男優だんゆうしょうにノミネートされ、ゴールデン・グローブしょう助演じょえん男優だんゆうしょう受賞じゅしょうした。

『アイズ・ワイド・シャット』(1999)

Photo: Warner Brothers/Getty Images

つまだったニコール・キッドマンとの共演きょうえん3さくは、巨匠きょしょうスタンリー・キューブリック監督かんとく遺作いさくとなった。倦怠期けんたいきむかえた医師いし夫妻ふさいが、友人ゆうじんたくのパーティーであやしい世界せかいさそまれていく。トムはニコールをともなって監督かんとく直談判じかだんぱんした結果けっか出演しゅつえんまった。英国えいこく在住ざいじゅう監督かんとくのためにトムたちがわたりすぐるし、1ねん以上いじょうにもおよなが撮影さつえい期間きかんはギネス記録きろくにもなった。げきちゅう関係かんけい強調きょうちょうするために監督かんとく2人ふたり別々べつべつ演出えんしゅつし、このときの経験けいけん一因いちいんとなってか、トムとニコールは映画えいが公開こうかいから2ねん離婚りこんした。

『バニラ・スカイ』(2001)

Photo: ©Paramount/Courtesy Everett Collection

スペインのアレハンドロ・アメナーバル監督かんとくの『オープン・ユア・アイズ』のリメイクで、『ザ・エージェント』(1996)のクロウ監督かんとくとのさいタッグさく。オリジナルでヒロインをえんじたペネロペ・クルスおなやく出演しゅつえんしている。ニューヨークを舞台ぶたいに、大手おおて出版しゅっぱんしゃ後継こうけいしゃでプレイボーイの主人公しゅじんこうデヴィッド・エイムスをえんじた。

物語ものがたりはデヴィッドが殺人さつじん容疑ようぎ逮捕たいほされ、自動車じどうしゃ事故じこ重傷じゅうしょうったかおをマスクでおおった姿すがた精神せいしん分析ぶんせき会話かいわするかたちすすんでいく。自分じぶん誕生たんじょうパーティーで友人ゆうじんれてきたソフィアに一目惚ひとめぼれしたが、以前いぜんからっていた女性じょせい嫉妬しっとつのらせ、かれ道連みちづれに自動車じどうしゃ事故じこによる無理心中むりしんじゅうはかったこと。いのちをとりとめたもののかお修復しゅうふく不可能ふかのうきずって自暴自棄じぼうじきになり、ソフィアの献身けんしんてきささえで事故じこのトラウマをえたこと。回想かいそうなか順調じゅんちょう回復かいふくしていたデヴィッドだが、次第しだい悪夢あくむなやまされて殺人さつじんおかしたこと、さらに驚愕きょうがく真実しんじつあきらかになる。

撮影さつえいちゅうからトムとペネロペにはロマンスのうわさながれ、トムはクランクアップまえにニコール・キッドマンとの破局はきょく発表はっぴょう撮影さつえい終了しゅうりょうにペネロペとの交際こうさいはじまり、関係かんけいは2004ねんまでつづいた。デヴィッドとソフィアがなかふかめていく描写びょうしゃには、演技えんぎえたトムとペネロペの関係かんけい垣間見かいまみえる親密しんみつさがただよっている。虚実きょじつはいこんじる複雑ふくざつ構造こうぞう壮大そうだいなスケールで映像えいぞうしたシーンもどころだ。デヴィッドがだれもいないニューヨークのまちけ、無人むじん状態じょうたいのタイムズスクエアにたたず場面ばめんはCGIなどではなく、実際じっさい通行止つうこうどめをして日曜にちよう早朝そうちょう短時間たんじかん撮影さつえいおこなった。

『マイノリティ・リポート』(2002)

Photo: CBS via Getty Images

フィリップ・K・ディックの同名どうめい短編たんぺん小説しょうせつスティーヴン・スピルバーグ監督かんとく映画えいが2人ふたり以前いぜんから一緒いっしょ仕事しごとしたくて企画きかくさがしていたところ、トムが原作げんさくつけてきた。殺人さつじん予知よちシステムが実用じつようされたきん未来みらい世界せかいで、つぎ殺人さつじんおかすと予見よけんされた刑事けいじをトムがえんじ、無実むじつつみらそうと孤軍こぐん奮闘ふんとうする主人公しゅじんこう熱演ねつえん。スピルバーグは「きみがどのスタントをやるのかめるのはわたしだ」とトムが危険きけんすぎるスタントにいどまないよう契約けいやくしたが、結局けっきょくほとんどトム自身じしんがこなしている。

『ラストサムライ』(2003)

Photo: ©Warner Brothers/Everett Collection

明治維新めいじいしん政府せいふぐんまねかれて来日らいにちしたアメリカ軍人ぐんじんが、政府せいふ対立たいりつする士族しぞくたちの侍魂さむらいだましいかれて行動こうどうをともにする物語ものがたり親日しんにちでもあるトムは準備じゅんびに2ねんをかけ、「武士ぶしどう」など関連かんれん書籍しょせきみあさり、かたなりかざす筋肉きんにくをつけて大幅おおはば増量ぞうりょうし、毎日まいにち数時間すうじかん剣術けんじゅつ訓練くんれんはげんだ。クランクインまえには自宅じたくのテニスコートで野営やえい生活せいかつをしたことも。共演きょうえんしゃたちの名演めいえんし、渡辺わたなべけんがアカデミーしょう助演じょえん男優だんゆうしょう候補こうほとなった。真田さなだ広之ひろゆきほんさくにハリウッドに進出しんしゅつ現在げんざいいたるまで活躍かつやくつづけている。

『コラテラル』(2004)

Photo: ©DreamWorks/Courtesy Everett Collection

『ヒート』(1995)やTVシリーズ「TOKYO VICE』」(2019)など硬派こうはなアクションをがけるマイケル・マン監督かんとくのもと、冷血れいけつころという本格ほんかくてき悪役あくやく挑戦ちょうせんした作品さくひん。ロサンゼルスのタクシー運転うんてんしゅマックスが偶然ぐうぜんせたきゃくじつはヒットマンで、はんして殺人さつじんミッションの片棒かたぼうかつがされた一夜いちや物語ものがたりだ。ジェイミー・フォックスえんじるマックスに高額こうがく料金りょうきん提示ていじし、かれ運転うんてんするタクシーでまちちゅうまわり、一夜いちやのうちに複数ふくすうのミッションをこなすヴィンセントをえんじた。

銀髪ぎんぱつにグレイスーツのヴィンセントは目立めだたず神出鬼没しんしゅつきぼつという設定せっていだが、監督かんとくだいスターのトムが周囲しゅういづかれずに行動こうどうすることは可能かのうなのか疑問ぎもんかんじていた。そこでトムに宅配たくはい便びん配達員はいたついんとして荷物にもつとどけるというおだいしたところ、トムはUPSのユニフォームをてロサンゼルスのセントラルマーケットのひとごみにまぎれ、だれにも正体しょうたいさとられずにミッションを遂行すいこうし、監督かんとく感心かんしんさせたという。

また、ヴィンセントが椅子いすげてガラスかべやぶるシーンで、かれげた椅子いすにつまずくが、これは演出えんしゅつではなく撮影さつえいちゅうのアクシデントだった。トムはそのまま演技えんぎつづけ、その異様いよう迫力はくりょくった監督かんとくはそのまま本編ほんぺん使つかった。ロサンゼルスのよる鮮明せんめいえがくために、当時とうじはまだめずらしかったこう解像度かいぞうどカメラによるデジタル撮影さつえいおこなわれた。ヴィンセントたちのくるままえをコヨーテが横切よこぎるシーンがあるが、これはロケ現場げんばちかくに偶然ぐうぜんあらわれたコヨーテを照明しょうめいなしで撮影さつえいしたショットを使用しようしたものだ。

『ナイト&デイ』(2010)

Photo: ©20thCentFox/Courtesy Everett Collection

トムが『バニラ・スカイ』(2001)以来いらい、9ねんぶりにキャメロン・ディアスと共演きょうえんしたアクション・ロマンティック・コメディ。平凡へいぼん女性じょせいジューンが空港くうこう偶然ぐうぜん出会であった笑顔えがお素敵すてきなロイは、じつ特殊とくしゅ任務にんむ遂行すいこうちゅうのCIAエージェントで、そこから彼女かのじょ国際こくさいてき陰謀いんぼううずまれていく。どころはなんといっても迫力はくりょく満点まんてんのアクションだ。トムはもちろん、キャメロンも運動うんどう神経しんけい抜群ばつぐんくるま運転うんてん得意とくいとあって、ほとんどのスタントを自分じぶんたちでえんじている。

スペインのセビリヤで2人ふたりりのバイクで疾走しっそうしながら、キャメロンがきをえて後続こうぞくしゃ銃弾じゅうだんむシーンは、トムのアイデア。さらにうし登場とうじょうさせればがるとかんがえ、牛追うしおまつ開催かいさいちゅう設定せっていくわわった。どんな危険きけんなアクションも嬉々ききとしてえんじるトムだが、実際じっさいせまとおりをうしたちとはしける撮影さつえいでは「うしろにキャメロンをせているんだ。絶対ぜったいころぶな」と自分じぶんにいいきかせていたそうだ。

さらに撮影さつえいまえから「一緒いっしょたのしいことをしよう」とはなっていた2人ふたりす、いきったかけいも最高さいこうはげしい銃撃じゅうげきせん最中さいちゅう、ロイがジューンにあゆってキスするシーンでは銃弾じゅうだんがまったくかれ命中めいちゅうしない。映画えいがでしかありない奇跡きせきえてやってのける、トムとキャメロンならではのスターパワーが炸裂さくれつする王道おうどうのエンタメさくだ。

『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(2014)

Photo: David James/©Warner Bros. Pictures/Everett Collection

日本にっぽん同名どうめいライトノベルを脚色きゃくしょくきん未来みらい地球ちきゅう突然とつぜんあらわれた宇宙うちゅう生物せいぶつギタイの猛攻もうこう対抗たいこうする統合とうごう防衛ぼうえいぐん女性じょせい軍曹ぐんそうリタ・ヴラタスキと、戦闘せんとう経験けいけんゼロながらタイムループ能力のうりょくにつけて戦場せんじょう生死せいしかえ広報こうほうかんウィリアム・ケイジ少佐しょうさ物語ものがたり勇敢ゆうかんなヒーローやくエミリー・ブラントまかせて、トムは凄腕すごうで広報こうほうかんだが戦闘せんとうだい苦手にがてという設定せっていで、普段ふだんとはちが表情ひょうじょうられる。リアルなパワードスーツの制作せいさくではトムも開発かいはつくわわった。

『トップガン マーヴェリック』(2022)

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ウィングマン(僚機)をけっして見捨みすてないという信念しんねんのもと、ブラザーフッドや友情ゆうじょう忠誠ちゅうせいしんかくにしたマーヴェリックとわかきトップガンたちの物語ものがたりとしてつくられた『トップガン マーヴェリック』。『トップガン』(1986)の続編ぞくへんのぞこえが30ねん以上いじょうえなかったが、トムはスタジオに「すべてを実際じっさい撮影さつえいする」と宣言せんげん可能かのうかぎりのリアリズムを追求ついきゅうし、キャストたちは実際じっさい飛行ひこうちゅうのF/A-18のコックピットで演技えんぎをし、セリフをはなしているのが前作ぜんさくとのおおきなちがいだ。トムは、空母くうぼUSSセオドア・ルーズベルトのデッキからの離陸りりくシーンを実演じつえんしている。

Text: Yuki Tominaga

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