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第1回:トヨタ・クラウン スポーツ(前編) 【カーデザイン曼荼羅】 - webCG クルマ好きなら毎日みてる webCG 新車情報・新型情報・カーグラフィック

だい1かい:トヨタ・クラウン スポーツ(前編ぜんぺん

2023.11.16 カーデザイン曼荼羅まんだら ふち 健太郎けんたろう清水しみず くさいち
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序文じょぶん ―カーデザインをろんずるにあたいするものとするために―

とう連載れんさいは、ながらくカーデザインの現場げんば活躍かつやくしてきた識者しきしゃまじえ、話題わだい新型しんがたしゃのデザインをかたぱしからろんずる企画きかくである。……もう一度いちどおう。「デザインをろんずる企画きかく」である。

自動車じどうしゃ評論ひょうろんというと、心地ごこち動力どうりょく性能せいのう燃費ねんぴ経済けいざいせいなどについては常々つねづねかたられる。しかし、クルマの魅力みりょく直結ちょっけつするはずのデザインについて出来でき不出来ふできべた批評ひひょうとなると、もうちょっとで自動車じどうしゃ編集へんしゅうれき20ねんという当方とうほう記憶きおくらしても、そのれいじつまれ(まれ)だ。おそらくは評価ひょうかじく普遍ふへん物差ものさしというものが存在そんざいしないとおもわれているからだろう。それがなければ、デザインひょうはしょせん個人こじんこのみにたよった“き/きらい”の水掛みずかろんにしかならない。

しかしである。ホントにカーデザインに評価ひょうかじく存在そんざいしないのか? むしろ、はしりや心地ごこちといった視覚しかくできないモヤモヤしたものより、評価ひょうかしやすいはずではないのか? なにせデザインはカタチであり、自動車じどうしゃのボディーとして、あるいはインテリアとして、げんとしてそこに存在そんざいしているのだから。だれかが「このクルマはキャラクターとデザインがっていない」とべた場合ばあい、そこにはかなら根拠こんきょがあり、その違和感いわかん原因げんいんとなる造形ぞうけいじょう要因よういんがあるはずだ。そうした要因よういんさぐり、つまびらかにし、収集しゅうしゅうしていくことで、わたしたちはデザインの評価ひょうかじく、その真理しんりちかづいていけるのではないか。

よいデザインとはなにか? カッコイイとはどういうことか? この連載れんさいわたしたちと読者どくしゃ諸兄しょけいあねひとしくひらけさとるいたらしめることをねがいつつ、最初さいしょいちだいげたい。

記念きねんすべきだい1かいのおだいは、「トヨタ・クラウン スポーツ」である。

トヨタの新型しんがたクロスオーバーSUV「クラウン スポーツ」。4車種しゃしゅからなる新型しんがたクラウンシリーズにおいて、とくにスポーティーなイメージをまとうモデルとなっている。
トヨタの新型クロスオーバーSUV「クラウン スポーツ」。4車種からなる新型クラウンシリーズにおいて、特にスポーティーなイメージをまとうモデルとなっている。拡大かくだい
ボディーサイズは全長ぜんちょう×全幅ぜんぷく×全高ぜんこう=4720×1880×1565mm。全長ぜんちょう同門どうもんの「トヨタ・ハリアー」にちかいが、こちらのほうがはばひろく、ぜんこうは10cmちかひくい。(写真しゃしん山本やまもとけいわれ
ボディーサイズは全長×全幅×全高=4720×1880×1565mm。全長は同門の「トヨタ・ハリアー」に近いが、こちらのほうが幅が広く、全高は10cm近く低い。(写真:山本佳吾)拡大かくだい
インテリアのイメージはさきの「クラウン クロスオーバー」などにじゅんじたもの。各部かくぶ造形ぞうけいかくれており、あつみのうすいダッシュボードともあいまって、圧迫あっぱくかんおさえたデザインとなっている。
インテリアのイメージは先出の「クラウン クロスオーバー」などに準じたもの。各部の造形は角が取れており、厚みの薄いダッシュボードとも相まって、圧迫感を抑えたデザインとなっている。拡大かくだい
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まずはしのおおさに脱帽だつぼう

清水しみずくさいち以下いか清水しみず):ふちさん、自動車じどうしゃデザイナーとしてクラウン スポーツをどうましたか?

ふち健太郎けんたろう以下いかふち):もう退職たいしょくしているので「現役げんえき」デザイナーとはえないですけど。

webCGほった(以下いか、ほった):ぼう国産こくさんメーカーを退職たいしょくされたのはいつです?

ふちつい先日せんじつです。

ほった:ほいじゃ“もと”をけるのも微妙びみょうなレベルですね~。

ふち今回こんかいはフリーの立場たちばはじめてショー(=ジャパンモビリティショー2023)を見学けんがくしたので、とても新鮮しんせんでした。

清水しみずクラウン スポーツにはビビビときましたか?

ふちクラウン スポーツは今回こんかいのジャパンモビリティショーではじめて実物じつぶつたんですけど、それ以前いぜんに、クラウンっていうブランドから4モデルもるっていうのがおどろきだし、しかもその4モデルすべてで、デザインの構成こうせいかたがしっかりちがうところがスゴいとおもいますね。

清水しみずスゴいですよね。こんなに次々つぎつぎして、デザイン部門ぶもん疲弊ひへいしてしまうんじゃないかと心配しんぱいになります。

ほった:「GA-K」プラットフォームのSUVだけでなに車種しゃしゅあるよ? てばなしですからね。

ふち本当ほんとうしんじられないぐらいありますね。トヨタはデザインのしのりょうおおいです。員数いんずうおおいっていうのもありますけど、本当ほんとう感心かんしんします。

2022ねん7がつにお披露目ひろめされた4モデルの新型しんがた「クラウン」。すでに「クロスオーバー」「スポーツ」「セダン」は正式せいしき発表はっぴょうみで、のちは「エステート」が上市かみいちされれば、全車ぜんしゃがマーケットに投入とうにゅうされることとなる。
2022年7月にお披露目された4モデルの新型「クラウン」。すでに「クロスオーバー」「スポーツ」「セダン」は正式発表済みで、後は「エステート」が上市されれば、全車がマーケットに投入されることとなる。拡大かくだい
トヨタは「クラウン スポーツ」を、クラウンシリーズのなかでも「うつくしいデザイン」と「たのしいはしり」を追求ついきゅうしたモデルと説明せつめいしている。
トヨタは「クラウン スポーツ」を、クラウンシリーズのなかでも「美しいデザイン」と「楽しい走り」を追求したモデルと説明している。拡大かくだい
じつは「クラウン スポーツ」(写真しゃしんかってひだり)と「クラウン クロスオーバー」(どうみぎ)は、おなじ“エンジンよこき”の「GA-K」プラットフォームをベースとしている。それどころか、今後こんご登場とうじょう予定よていの「クラウン エステート」もどうプラットフォームがベースとなりそうだ。同門どうもんでは「ハリアー」も「RAV4」もGA-Kベースだし、レクサスのSUVや海外かいがい専売せんばいモデルもふくめたら、そのかず両手りょうてゆびではりないほどだろう。(写真しゃしん山本やまもとけいわれ
実は「クラウン スポーツ」(写真向かって左)と「クラウン クロスオーバー」(同右)は、同じ“エンジン横置き”の「GA-K」プラットフォームをベースとしている。それどころか、今後登場予定の「クラウン エステート」も同プラットフォームがベースとなりそうだ。同門では「ハリアー」も「RAV4」もGA-Kベースだし、レクサスのSUVや海外専売モデルも含めたら、その数は両手の指では足りないほどだろう。(写真:山本佳吾)拡大かくだい

日本にっぽんしゃにはめずらしい欧風おうふうのプロポーション

清水しみずで、クラウン スポーツのデザインですが。

ふちクラウンシリーズのなかでもこのスポーツは、もっと欧州おうしゅうしゃてきな佇(たたず)まいですよね。キャビンとロアボディー、でかいタイヤの比率ひりつ構成こうせいなどが、かなり。

ほった:名前なまえどおりにスポーティー?

ふちここまでしっかりしたかん日本にっぽんしゃは、めずらしいんじゃないかとおもいました。日本にっぽんしゃ欧州おうしゅうしゃたいして、はばせまいのに室内しつないひろいというディメンションがほとんどですけど、このクルマにはそれがない。キャビンは結構けっこうちいさめで、そのしたのロアボディーががっちりしてる。だから、基本きほんてきなプロポーションがいいとかんじるんです。

清水しみずいかにもはしりそうなかたちですね。

ふちよくわれるのが、フェラーリの「プロサングエ」とているというてんですけど、それも結局けっきょく、プロポーションがしっかりしているからそうえるんです。ヘッドランプまわりの構成こうせいまでていますけど。

清水しみずわたしも「ええっ!?」とおもいました。どっちがさきたかも微妙びみょうでしたし。

ふちたまたまだとおもいますけど、すごいところと類似るいじしましたね(笑)。

清水しみずクラウンとくクルマが、フェラーリとてるんですから。

ほった:ついこのあいだまで、おたが一番いちばんとおいところにいましたからねぇ。

ふち一方いっぽうで、クラウン スポーツのデザインでちょっとになるところをげるとしたら、前後ぜんごのバンパーとタイヤとの関係かんけいが、もうちょっとプロポーションてきによくまみえれば、よりよくなったのかなとおもいました。

ほった:というと?

「クラウン スポーツ」のフォルムは、ボリュームかんのあるロアボディーに比較的ひかくてきちいさなキャビンをうしりにせた、いかにもスポーティーな形状けいじょうとなっている。
「クラウン スポーツ」のフォルムは、ボリューム感のあるロアボディーに比較的小さなキャビンを後ろ寄りに載せた、いかにもスポーティーな形状となっている。拡大かくだい
テールランプのうえのCピラーに注目ちゅうもくおおきくしたリアフェンダーにたいし、いかにキャビンの後端こうたんしぼまれているかがかる。
テールランプの上のCピラーに注目。大きく張り出したリアフェンダーに対し、いかにキャビンの後端が絞り込まれているかが分かる。拡大かくだい
「クラウン スポーツ」の発表はっぴょうに「てる!」と一部いちぶさわがれた「フェラーリ・プロサングエ」。……デビューのタイミングをかんがみても、どちらかがどちらかをマネたなんてことは、さすがにないだろうが。
「クラウン スポーツ」の発表時に「似てる!」と一部で騒がれた「フェラーリ・プロサングエ」。……デビューのタイミングを鑑みても、どちらかがどちらかをマネたなんてことは、さすがにないだろうが。拡大かくだい
「フェラーリ・プロサングエ」との類似るいじせいかんじさせる一因いちいんにもなっている、Cがたのヘッドランプ。トヨタでは「クラウン」シリーズのほかのモデルにくわえ、「プリウス」などにもおなじデザインをもちいている。(写真しゃしん山本やまもとけいわれ
「フェラーリ・プロサングエ」との類似性を感じさせる一因にもなっている、C字型のヘッドランプ。トヨタでは「クラウン」シリーズの他のモデルに加え、「プリウス」などにも同じデザインを用いている。(写真:山本佳吾)拡大かくだい

こまかいけどになるバンパーの

ふちたとえばポルシェの「マカン」とくらべてみましょう。ポルシェはどのクルマでもプロポーションをすごく重視じゅうししていて、「プロポーションだけ!」ってってもいいぐらいにこだわっています。たとえばななまえからながめたときの、かくれているがわ前輪ぜんりんとバンパーの位置いち関係かんけいなんですが、マカンはどのビューでもしっかりまとまったシルエットになっているんですよ。一方いっぽうクラウン スポーツは、タイヤにたいして、ちょっとだけシルエットが解離かいりしている。

清水しみずえ? わかりません(笑)。

ふちもうすこしフロントバンパーのかくけずれていたら、よりプロポーションがよくえたはずなんです。ちょっとだけタイヤがうちはいってえてしまう。

清水しみずう~ん、そうですかね。

ほった:プラットフォームのちがいもあるでしょうけど、クラウン スポーツのほうが前輪ぜんりんおくまってえるというか、フロントオーバーハングがながえますね。われてみれば。

ふちただ、クラウン スポーツのこういうてんは、歩行ほこうしゃ保護ほご要件ようけんとか設計せっけい要件ようけんで、この部位ぶい(バンパーのえん)をさざるをなかったりするんですよ。わたしもデザイナーとしてつね苦労くろうしていました。なかなかポルシェみたいなプロポーションにはならない。

清水しみずマカンってそんなにプロポーションいいですか?

ほった:正直しょうじき、あんまり意識いしきしたことなかったですね。

清水しみずポルシェのSUVという時点じてんでもう、カーマニアてき亜流ありゅうとしかていなかったりするし。

ふちプロポーションにとくにこだわってるメーカーといえば、ポルシェとボルボとマツダ、それとランドローバー。ここらへんはめちゃくちゃ使つかってます。BMWとかメルセデス・ベンツよりも、プロポーションてきにはいいとおもいます。そのあたりが、一般いっぱんユーザーがても、「あ、このクルマかっこいいね」というのにつながる。クラウン スポーツは、そこがもうちょっとで、もどかしさをかんじました。

清水しみずかんがえもしなかったポイントです(笑)。

後編こうへんつづく)

かたり=ふち健太郎けんたろうぶん清水しみずくさいち写真しゃしんトヨタ自動車とよたじどうしゃ山本やまもとけいわれ花村はなむら英典ひでのり、webCG/序文じょぶん編集へんしゅう堀田ほったつよし

「トヨタ・クラウン スポーツ」とおなじようなサイズの「ポルシェ・マカン」。寸法すんぽうてきには、すこしだけクラウン スポーツのほうが全長ぜんちょうながく、全幅ぜんぷくせまい(といっても、りょうくるまともはばは1.9mクラスだが)。(写真しゃしん花村はなむら英典ひでのり
「トヨタ・クラウン スポーツ」と同じようなサイズの「ポルシェ・マカン」。寸法的には、少しだけクラウン スポーツのほうが全長が長く、全幅が狭い(といっても、両車とも幅は1.9mクラスだが)。(写真:花村英典)拡大かくだい
前輪ぜんりんかくもあるので単純たんじゅん比較ひかくはできないが、「クラウン スポーツ」ではバンパーリップやフォグランプまわりのしもあって、実寸じっすん以上いじょうに「ポルシェ・マカン」よりフロントオーバーハングがながえる。(写真しゃしん山本やまもとけいわれ
前輪の切れ角もあるので単純比較はできないが、「クラウン スポーツ」ではバンパーリップやフォグランプまわりの張り出しもあって、実寸以上に「ポルシェ・マカン」よりフロントオーバーハングが長く見える。(写真:山本佳吾)拡大かくだい
こうしたバンパーのとつしは、安全あんぜん要件ようけん密接みっせつかかわるものがおおい。ひとたってしまったさい、これでひとうえにすくいげてボンネットでめたり、衝撃しょうげきおさえたりするのだ。
こうしたバンパーの凸部や張り出しは、安全要件に密接に関わるものが多い。人と当たってしまった際、これで人を上にすくい上げてボンネットで受け止めたり、衝撃を抑えたりするのだ。拡大かくだい
ふち「ちなみにですが、『クラウン スポーツ』はリアバンパーもしていて、ちょっとフォルムの一体いったいかんくずしちゃっているんですよ」 
ほった「安全あんぜんせいとデザインの両立りょうりつは、げにムズカシイのですね……」
渕野「ちなみにですが、『クラウン スポーツ』はリアバンパーも張り出していて、ちょっとフォルムの一体感を崩しちゃっているんですよ」 
	ほった「安全性とデザインの両立は、げにムズカシイのですね……」拡大かくだい
 
第1回:トヨタ・クラウン スポーツ(前編)の画像拡大かくだい
渕野 健太郎

ふち 健太郎けんたろう

20ねん選手せんしゅだったカーデザイナーを「体力たいりょく限界げんかい」ということで現役げんえき引退いんたい現役げんえき時代じだいは「自称じしょう」エースかくとしてさまざまな試合しあい投入とうにゅうされ、結果けっかしてきた(とおもう)。引退いんたい監督かんとくやコーチにはならず、チームをはなれセカンドキャリアを選択せんたく。これまでそだててくれた自動車じどうしゃ業界ぎょうかいへの恩返おんがえしとして、自動車じどうしゃ訴求そきゅう活動かつどうおこなう。福岡ふくおかけん出身しゅっしん日本にっぽん大学だいがく芸術げいじゅつ学部がくぶ卒業そつぎょう

清水 草一

清水しみず くさいち

わらいフェラーリ文学ぶんがくである『そのフェラーリください!』(さん推社/講談社こうだんしゃ)、『フェラーリをかいふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本にっぽんでただ一人ひとり高速こうそく道路どうろジャーナリストとして『首都高しゅとこうはなぜ渋滞じゅうたいするのか!?』(さん推社/講談社こうだんしゃ)、『高速こうそく道路どうろなぞ』(扶桑社ふそうしゃ新書しんしょ)といった著書ちょしょつ。慶大けいだいそつ編集へんしゅうしゃてフリーライター。最大さいだい趣味しゅみ自動車じどうしゃ購入こうにゅうで、現在げんざいまで通算つうさん47だい、うち11だいがフェラーリ。本人ほんにんいわく「『タモリ倶楽部くらぶ』に首都高しゅとこう研究けんきゅうとしてばれたのが人生じんせい金字塔きんじとう」とのこと。

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