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ホンダN-VAN e: L4 プロトタイプ(FWD)【試乗記】 夢は広がる - webCG クルマ好きなら毎日みてる webCG 新車情報・新型情報・カーグラフィック

ホンダN-VAN e: L4 プロトタイプ(FWD)

ゆめひろがる 2024.08.28 試乗しじょう 堀田ほった つよし ホンダから、いよいよ電動でんどうけいワンボックス「N-VAN e:」が登場とうじょう人気にんきの「N-VAN」をベースとしたけい商用しょうよう電気でんき自動車じどうしゃ(EV)は、既存きそんのモデルとはなにがちがい、モビリティーにどんな変化へんかをもたらすのか? 試乗しじょう取材しゅざいとおし、ちいさなはこがたEVの可能かのうせいかんがえた。

「お花屋はなやさん仕様しよう」にあらわれるアドバンテージ

ホンダがめでたく、そしてようやくN-VAN e:を正式せいしき発表はっぴょうした(参照さんしょう)。その存在そんざいあきらかとされてから、およそ1ねんはんでの吉報きっぽう発売はつばいは2024ねん10がつ10日とおかだ。当初とうしょは「発売はつばいは2024ねんはる」とのことだったので半年はんとしおくれの勘定かんじょうだが、いやめでたい。じつにめでたい。

日本にっぽんけいバンEVのマーケットをると、10ねんどころか13ねん選手せんしゅの「三菱みつびしミニキャブEV」が孤軍こぐん奮闘ふんとう状態じょうたいは「ASF2.0」もあるにはあるが、正直しょうじきこちらは、ちまたでお仕事しごとをしている姿すがたたことがない。またライバルとされていたトヨタ・ダイハツ・スズキ連合れんごう車種しゃしゅ参照さんしょう)は「いつるのやら」といったありさまで、記者きしゃとしてはN-VAN e:に、「しん時代じだい旗手きしゅはキミだ!」と勝手かって期待きたいしていたのだ。

そんな当方とうほうがりをってからずか、ホンダが栃木とちぎのテストコースでもよおしたN-VAN e:の先行せんこう取材しゅざいかい試乗しじょうかいは、気合きあいはいりまくっていた。人気にんきのミニバン/コンパクトのイベントもかくやというほどの、はなやかなエキシビション。会場かいじょうにはくら記者きしゃですらアウトドアにさそわれそうな魅惑みわく用品ようひん装着そうちゃくしゃし、そのとなりの「お花屋はなやさん仕様しよう」は、本当ほんとうにフラワーショップにおねがいしてクルマをアレンジしてもらったとか。そしてカーデザイナーみずかがけた背景はいけいのパネルには、“屋内おくないへのれも可能かのう”なEVの特性とくせいかした、ショッピングモールでのバザール(最近さいきんはマルシェってうらしいですわよ、おくさん)の様子ようすえがかれている。なんともはや。自営業じえいぎょうしゃやパーソナルユースのオーナーにも好評こうひょうな、N-VANベースのEVならではのいろどり(いろどり)だ。

たしかに、けいワンボックスのメインターゲットは配送はいそうぎょうなどの大口おおぐち顧客こきゃくだが、その魅惑みわくだい空間くうかんから、これを趣味しゅみ相方あいかたえらひと一定いっていすういる。また個人こじん事業じぎょうぬしあいだでも、「移動いどう販売はんばいしゃをちょっとでもオシャレに」といったニーズは見受みうけられるが、そうした要望ようぼうこたえられるけいバンEVは、いまのところ存在そんざいしなかった。ありていにって、みんななさすぎた。

ホンダはN-VAN e:にたいし、既存きそんのエンジンしゃけい商用しょうようEVの活動かつどう範囲はんいえた、広範こうはん場面ばめん用途ようとでの活躍かつやく期待きたいしているという。そのためには、こうしたカスタマーにえらんでもらうことが大前提だいぜんていだ。個人こじんのオーナーも抵抗ていこうなく使つかえるはなやいだイメージは、このクルマの最大さいだいつよみなんじゃないか……と、上述じょうじゅつのお花屋はなやさんごうまえに、まずはそんなことをかんがえた。

2024ねん10がつ10日とおか発売はつばい予定よていの「ホンダN-VAN e:」。「e:CONTAINER(移動いどう蓄電ちくでんコンテナ)」というコンセプトのもと、「電気でんきはしらせて はたらく らすをひろげる」(報道ほうどう資料しりょうより)を目的もくてき開発かいはつされた。
2024年10月10日発売予定の「ホンダN-VAN e:」。「e:CONTAINER(移動蓄電コンテナ)」というコンセプトのもと、「電気で走らせて はたらく 暮らすを広げる」(報道資料より)を目的に開発された。拡大かくだい
取材しゅざいかい会場かいじょう展示てんじされた、移動いどうフラワーショップ仕様しようの「N-VAN e:」。こののために、本物ほんもののフラワーショップにアレンジしてもらったという。
取材会の会場に展示された、移動フラワーショップ仕様の「N-VAN e:」。この日のために、本物のフラワーショップにアレンジしてもらったという。拡大かくだい
車内しゃないにはたたしきのテーブルとイスも装備そうび徳島とくしま自動車じどうしゃ整備せいびとくそう用品ようひん開発かいはつ会社かいしゃがけたもので、ホンダアクセスが純正じゅんせい用品ようひんとしてあつかっている。
車内には折り畳み式のテーブルとイスも装備。徳島の自動車整備・特装・用品開発会社が手がけたもので、ホンダアクセスが純正用品として取り扱っている。拡大かくだい
こちらはホンダアクセスの用品ようひん満載まんさいしたアウトドア……というか“移動いどうしきちゃ仕様しよう。ベースしゃは4にんりの上級じょうきゅうグレード「e: FUN」で、同車どうしゃおなじく4にんりの「e: L4」なら、こうしたパーソナルユースもようになる。
こちらはホンダアクセスの用品を満載したアウトドア……というか“移動式茶の間”仕様。ベース車は4人乗りの上級グレード「e: FUN」で、同車や同じく4人乗りの「e: L4」なら、こうしたパーソナルユースも様になる。拡大かくだい
「N-VAN e:」のラインナップは4にん仕様しようの「e: FUN」(写真しゃしん)と「e: L4」、1人ひとり仕様しようの「e: G」、2人ふたり仕様しようの「e: L2」の4種類しゅるい。ただし、e: Gとe: L2は、あくまで法人ほうじんけのリース販売はんばい車両しゃりょうとなる。
「N-VAN e:」のラインナップは4人乗り仕様の「e: FUN」(写真)と「e: L4」、1人乗り仕様の「e: G」、2人乗り仕様の「e: L2」の4種類。ただし、e: Gとe: L2は、あくまで法人向けのリース販売車両となる。拡大かくだい
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ヤマト運輸やまとうんゆとの実証じっしょう実験じっけんきたえた機能きのうせい

もちろん、機能きのうめんでもN-VAN e:にはいろいろなアドバンテージがある。フロントエンジン……もといフロントモーターしゃならではのていゆか大空おおぞらあいだに、圧巻あっかんのピラーレスだい開口かいこう助手じょしゅせきたおしてられる前後ぜんごちょう2635mmのフラットなゆかめんなどは、いずれもライバルにはないN-VAN e:の魅力みりょくだ。宅配たくはい現場げんばさい重視じゅうしされるしつ容量ようりょうも、「120サイズのダンボールが71はこ」ともうぶんナシ。また運転うんてんせきのみの1人ひとり仕様しよう運転うんてんせきとそのせきのタンデム2にん仕様しようなど、ユニークなシートレイアウトを用意よういするのも同車どうしゃ特徴とくちょうで、このあたりは、ともに実証じっしょう実験じっけんおこなったヤマト運輸やまとうんゆ宅配たくはい現場げんばでも好評こうひょうだったそうだ。

またヤマトとの実証じっしょう実験じっけんでは、しつ機能きのうせいくわえて、当然とうぜんながら電動でんどうパワートレインの実用じつようせいきたえられた。たとえば安全あんぜん配送はいそうだいいちとする宅配たくはい現場げんばでは、きゅう発進はっしんきゅう加速かそく厳禁げんきん事故じこにはならずとも、くずれなどで大事だいじ配送はいそうぶつきずつけるおそれもあるのだ。そこでN-VAN e:では、発進はっしんおだやかとなるよう加速かそく制御せいぎょ調整ちょうせい。いっぽう駆動くどうトルクについては、たとえフル積載せきさいでもさかのぼれないとはなしにならないので、横浜よこはま神戸こうべ長崎ながさき……と、各地かくちはしんで実証じっしょうおこなったという。

さらに航続こうぞく距離きょりかんしては、ビッグデータの情報じょうほうかして実用じつようるスペックを算出さんしゅつ当初とうしょは200km程度ていどかんがえていたが、ゆき日光にっこうでも実証じっしょうおこない、冬場ふゆばにヒーターをガンガンたいても確実かくじつに100kmはしれることを想定そうていして、245km(WLTCモード)というカタログみちびしたとか。……もっとも、これについては「宅配たくはい現場げんばではとにかくはしまわるので、冬場ふゆばでもエアコンはあまり使つかわないんですよ。シートヒーターだけで十分じゅうぶんです」(ヤマトの宅配たくはいスタッフ)というこえも。実際じっさいには、ちょっとオーバースペックとなってしまったのかもしれない。

こうして完成かんせいしたN-VAN e:のスペックは、最高さいこう出力しゅつりょくが64PS(4にん仕様しよう)ないし53PS(1人ひとり2人ふたり仕様しよう)、最大さいだいトルクが162N・m。バッテリーのそう電力でんりょくりょうは29.6kWh(そう電圧でんあつ358V、容量ようりょう82.7Ah)で、いち充電じゅうでん走行そうこう距離きょりすんでじゅつのとおり245km。でんは127Wh/km(WLTCモード)である。充電じゅうでんようする時間じかんは3.2kWの普通ふつう充電じゅうでんやく8.5あいだ、6.0kWの普通ふつう充電じゅうでんやく4.5あいだ急速きゅうそく充電じゅうでんは50kWまでの出力しゅつりょく対応たいおうしており、かりに30ふんで20kWh充電じゅうでんできたとすると、航続こうぞく距離きょりは157km回復かいふくする計算けいさんとなる。最大さいだい積載せきさいりょうは、4にん仕様しようが300kg、1人ひとり2人ふたり仕様しようが350kgだ。

「N-VAN e: FUN」のインストゥルメントパネルまわり。インテリアカラーは、e: FUNはベージュ、その仕様しようがグレー。1人ひとりりおよびタンデムシートの2人ふたり仕様しようでは、助手じょしゅせきがわダッシュボードの収納しゅうのうるい撤去てっきょし、よりおおきな室内しつないちょう実現じつげんしている。
「N-VAN e: FUN」のインストゥルメントパネルまわり。インテリアカラーは、e: FUNはベージュ、その他の仕様がグレー。1人乗りおよびタンデムシートの2人乗り仕様では、助手席側ダッシュボードの収納類を撤去し、より大きな室内長を実現している。拡大かくだい
シート表皮ひょうひは「e: FUN」がジャージ、そののグレードがトリコット。背面はいめん耐久たいきゅうせいたかく、よごれにつよいPVCレザーとなっている。
シート表皮は「e: FUN」がジャージ、その他のグレードがトリコット。背面は耐久性が高く、汚れに強いPVCレザーとなっている。拡大かくだい
4にん乗車じょうしゃ仕様しようでも、運転うんてんせきのぞく3は、ごらんのとおりフラットに格納かくのう可能かのう。ピラーレスドアによるはば1580mmのだい開口かいこう自慢じまんだ。
4人乗車仕様でも、運転席を除く3座は、ご覧のとおりフラットに格納が可能。ピラーレスドアによる幅1580mmの大開口も自慢だ。拡大かくだい
しつだかは1365mm、しつはばは1390mm(4にん乗車じょうしゃ)、助手じょしゅせきまでたおしたさい最大さいだい室長しつちょうは2635mmだ。540mmのひくいフロアだか特徴とくちょうとなっている。
荷室高は1365mm、荷室幅は1390mm(4人乗車時)、助手席まで倒した際の最大荷室長は2635mmだ。540mmの低いフロア高も特徴となっている。拡大かくだい
充電じゅうでんこう普通ふつう充電じゅうでんよう急速きゅうそく充電じゅうでんようともにフロントに配置はいちヤマト運輸やまとうんゆ意見いけん参考さんこうに、「スライドドアがひらいた状態じょうたいでも充電じゅうでんができる」「充電じゅうでんちゅうにケーブルが従業じゅうぎょういんあしっかからない」等々とうとう要件ようけんから、この場所ばしょくこととなった。
充電口は普通充電用、急速充電用ともにフロントに配置。ヤマト運輸の意見も参考に、「スライドドアが開いた状態でも充電ができる」「充電中にケーブルが従業員の足に引っかからない」等々の要件から、この場所に落ち着くこととなった。拡大かくだい

商用しょうようしゃには商用しょうようしゃむずかしさがある

さて、いよいよワクワクの実車じっしゃ見取みとり&試乗しじょうである。外観がいかんについては基本きほんてきにN-VANと共通きょうつうだが、「e: FUN」グレードに装着そうちゃくされるハーフキャップきのスチーフホイールがカッコいい。バンパーの廃材はいざいをリサイクルしたという“つぶ模様もよう”のフロントパネルもイカしていて、個人こじんてきにはエンジンしゃのN-VANにも使つかってほしいとおもった……のだが、エンジニアいわく、「わかほうには評判ひょうばんなのですが、なかには『やすっぽい!』とわれるほうもいらっしゃいまして」とのこと。美感びかんひとそれぞれである。

いっぽうインテリアは、「けいバンとしては、ちょっと豪華ごうかすぎた」というN-VANから大々的だいだいてきにつくりえられている。豪華ごうかすぎるからNGというのもへんはなしだが、こうしたクルマにはこうしたクルマの“あんばい”があり、こうえするのもダメなのだとか。とはいえ、全体ぜんたいたてビードのはいった内装ないそうには、適度てきどに“デザインされたかん”があり、これならパーソナルユースでも抵抗ていこうはなさそう。ちなみにこのビード、どのぐらいの間隔かんかくで、どれぐらいの本数ほんすうれるかでデザイナーは苦悩くのうし、ゆめにまでてきたとか(笑)。

運転うんてんせきまわりは、こと4にん乗車じょうしゃ仕様しようかんしてはフル液晶えきしょうメーターにオートエアコン、ホンダコネクトナビ、シートヒーター、センターアームレスト、USB Type-A/Type-Cポート……と、まさにいたれりことごとくせり。意外いがい小物こものれがすくないもしたが、先述せんじゅつ実証じっしょう実験じっけんきょうされた結果けっかのこれなので、案外あんがい宅配たくはい現場げんばではそうした収納しゅうのう使つかわれないのかもしれない。なお、乗用じょうようオーナー&自営業じえいぎょうしゃでモア収納しゅうのうほっするほうも、ホンダアクセスがしこたま用品ようひんをそろえているので、ご安心あんしんを。

センタークラスターはシフトセレクターがスイッチした関係かんけいで、空調くうちょう操作そうさパネルが右寄みぎよりに移動いどう運転うんてんせきからちょいとばして使つかいやすくなった。またシフトのバイ・ワイヤでクラスター下部かぶもスリムになっており、左右さゆうウオークスルーあしせい改善かいぜん。これも商用しょうようしゃとしての機能きのうせいアップに寄与きよしている……。

とまぁ、こんなふう実車じっしゃての印象いんしょうをメモしつつ、自分じぶん試乗しじょうわくつ。コースは高速こうそく道路どうろしたオーバルを2しゅう、くねくねとしたハンドリングを2しゅうというかぎられたものなので、すこしも情報じょうほうらさぬよう、アンテナをおってておかねばなるまい。とくになるのが、EVによる重量じゅうりょうぞう影響えいきょうである。なにせくるまじゅうは1060~1140kgと、だいたいにして150kgはおもくなっているのだ。

タイヤサイズは145/80R13。EVによってしたくるまじゅうささえるため、またより大型おおがたのブレーキを装備そうびするため、エンジンしゃの「N-VAN」(145/80R12)よりサイズアップしている。
タイヤサイズは145/80R13。EV化によって増した車重を支えるため、またより大型のブレーキを装備するため、エンジン車の「N-VAN」(145/80R12)よりサイズアップしている。拡大かくだい
充電じゅうでんこうおさめるフロントの装飾そうしょくパネルには、バンパーのリサイクル素材そざい採用さいよう通常つうじょうなら除去じょきょされる塗膜とまくをあえてぜることで、独自どくじ風合ふうあいを表現ひょうげんしているほか、はしにリサイクルマークをしるすなど、再生さいせい素材そざいもちいていることを積極せっきょくてきにアピールしているてん面白おもしろい。
充電口を収めるフロントの装飾パネルには、バンパーのリサイクル素材を採用。通常なら除去される塗膜粉をあえて混ぜることで、独自の風合いを表現しているほか、端にリサイクルマークを記すなど、再生素材を用いていることを積極的にアピールしている点が面白い。拡大かくだい
インストゥルメントパネルまわりでは、レバータイプのシフトセレクターをはいすることで設計せっけい効率こうりつ。パーキングブレーキは足踏あしぶしきだ。
インストゥルメントパネルまわりでは、レバータイプのシフトセレクターを排することで設計を効率化。パーキングブレーキは足踏み式だ。拡大かくだい
ダッシュボードまわりをのぞくと収納しゅうのうるいひかえめな印象いんしょうだが、そのぶんルーフコンソールにメッシュポケット(写真しゃしん)、アームレストコンソールにコンビニフック……と、ホンダアクセスが豊富ほうふにアクセサリーを用意よういしている。
ダッシュボードまわりを除くと収納類は控えめな印象だが、そのぶんルーフコンソールにメッシュポケット(写真)、アームレストコンソールにコンビニフック……と、ホンダアクセスが豊富にアクセサリーを用意している。拡大かくだい
たてビードのほどこされた専用せんようのインテリアトリムは、強度きょうどたもちつつ素材そざい肉薄にくはく実現じつげん。エンジニアに「わざわざ設計せっけいなおして、コストは大丈夫だいじょうぶ?」とうたところ、「肉薄にくはく材料ざいりょうおさえているので、量産りょうさん効果こうかかえせる」とのことだった。
縦ビードの施された専用のインテリアトリムは、強度を保ちつつ素材の肉薄化も実現。エンジニアに「わざわざ設計し直して、コストは大丈夫?」と問うたところ、「肉薄化で材料費を抑えているので、量産効果で取り返せる」とのことだった。拡大かくだい

はしればわかるEVの恩恵おんけい

試乗しじょうでは、まずは比較ひかくのために用意よういされたN-VANの自然しぜん吸気きゅうき(NA)モデルを運転うんてんした。で、さっそく感嘆かんたんした。これでなんの不足ふそくもありません。NAなので加速かそくはおっとりしているし、おとも「ぐわーん」とにぎやかだが、巡航じゅんこういたれば走行そうこう安定あんていせい抜群ばつぐんになる騒音そうおん風切かざきおんおもとなり、100km/hでのゆるやかな高速こうそく旋回せんかいでも、神経質しんけいしつかじとにらめっこする必要ひつようはない。ハンドリングでもその印象いんしょう良好りょうこうで、たとえば旋回せんかいのロールはおおきめだがおだやか。凹凸おうとつやうねりをえたさい上下動じょうげどうもたおやかだ。荷物にもつにも、ドライバーのおしりにもやさしいクルマとお見受みうけした。

このよさがEVばんにもあるといいな、とおもいつつN-VAN e:にえる。グレードは乗用じょうよう想定そうていした64PS仕様しようの「e: L4」で、一番いちばんかんじたのはやはり重量じゅうりょう……ではなく、モーターとエンジンの加速かそくちがいだった。体感たいかんだと2ばい、3ばいはe:のほうがパワフルで、目算もくさんだが80km/h、100km/hに到達とうたつするまでの距離きょり段違だんちがいにみじかい。比較ひかく対象たいしょうのN-VANがNAだったこともあるが、かりにピークパワーがおなじターボしゃ相手あいてだったとしても、これならe:に軍配ぐんばいだろう。パワートレインのおとしずかで、乗員じょういん気疲きづかれをさそう“頑張がんばってますよかん”も皆無かいむ。この加速かそく高速こうそく巡航じゅんこう安楽あんらくさは、EVならではだ。ちなみに、こうした場面ばめんでのしずかさには床下ゆかした電池でんち一役ひとやくっているとのこと。ゴツいバッテリーモジュールがロードノイズを抑制よくせいしてくれるのだ。

くわえてかんじたのが操舵そうだかんちがいで、e:のほうがわりがよく、操舵そうだの“がえり”もちょっとつよ印象いんしょうだった。おもわずエンジニアに「パワステえてます?」といてしまったが、もちろんそんなことはなく、重量じゅうりょうぞうわせてセッティングをえただけとのこと。はサイズアップしたタイヤの影響えいきょうなんかもあるのだろう。個人こじんてきにはこちらのほうがこのましいし、このくらいの手応てごたえのほうがつかれもすくなそうだけど、まちなかでねんがら年中ねんじゅうハンドルをぐるぐるまわ配送はいそうドライバーとしては、どっちがありがたいのだろう? 当事とうじしゃたるかれらの意見いけんを、ちょっといてみたくなった。

試乗しじょうは「オーバルは100km/hまで、ハンドリングはストレートで80km/hまで」という制約せいやくのもとにおこなわれたが、その車速しゃそくいきでは「N-VAN e:」は余裕よゆうしゃくしゃく。助手じょしゅせきのエンジニアいわく「125km/hでも走行そうこう安定あんていしている。唯一ゆいいつてきは、やっぱり横風おうふう」とのことだ。
試乗は「オーバルは100km/hまで、ハンドリング路はストレートで80km/hまで」という制約のもとに行われたが、その車速域では「N-VAN e:」は余裕しゃくしゃく。助手席のエンジニア氏いわく「125km/hでも走行は安定している。唯一の敵は、やっぱり横風」とのことだ。拡大かくだい
フロントに搭載とうさいされるモーターは、けいのターボしゃゆうえる162N・mの最大さいだいトルクを発生はっせい。エンジンしゃよりおもいクルマ(N-VAN<FFしゃ>が930~970kg、N-VAN eが1060~1140kg)をスムーズに加速かそくさせる。
フロントに搭載されるモーターは、軽のターボ車を優に超える162N・mの最大トルクを発生。エンジン車より重いクルマ(N-VAN<FF車>が930~970kg、N-VAN eが1060~1140kg)をスムーズに加速させる。拡大かくだい
「e: FUN」と「e: L4」にそなわる7インチの液晶えきしょうメーター。「『ECON』をオンにしたら航続こうぞく距離きょりなにkmびて、エアコンをオフにしたらさらになにkmびる」といった計算けいさんもしてくれる。
「e: FUN」と「e: L4」に備わる7インチの液晶メーター。「『ECON』をオンにしたら航続距離が何km延びて、エアコンをオフにしたらさらに何km延びる」といった計算もしてくれる。拡大かくだい
摩擦まさつブレーキには油圧ゆあつではなく電動でんどうのサーボを採用さいようしており、よりおおくのエネルギーを回生かいせいすることで航続こうぞく距離きょり拡大かくだい寄与きよ。ブレーキサイズのアップにより、エンジンしゃ同等どうとうたいフェード性能せいのう実現じつげんしている。
摩擦ブレーキには油圧ではなく電動のサーボを採用しており、より多くのエネルギーを回生することで航続距離の拡大に寄与。ブレーキサイズのアップにより、エンジン車と同等の耐フェード性能も実現している。拡大かくだい

電動でんどうひろがる自動車じどうしゃ可能かのうせい

前述ぜんじゅつのとおり、加速かそく高速こうそく走行そうこうではパワーがまさるN-VAN e:だが、ハンドリング走行そうこうでは、さすがにおもさがかおす。操舵そうだかん足腰あしこしのしっかりかんではこちらのほうが上手じょうずだが、旋回せんかいにはエンジンしゃよりすこつよめにアンダーステアが、うねりをえたさい上下動じょうげどうも……なんともうしますか、なんだかちょっと“路面ろめん追従ついしょうせいたかい”感覚かんかくなのだ。いいクルマ指数しすうはアップしたが、荷物にもつへのやさしさ指数しすうでいうと、エンジンしゃが100だとしたらこちらは98、といったかんじだ(もちろん、クルマ単体たんたいれば十分じゅうぶん以上いじょう包容ほうようりょくですが)。

また荷物にもつへのやさしさといえば、あえてなましたという加速かそく制御せいぎょわれなければづかぬ程度ていどで、特段とくだんじれったくはかんじなかった。たしかにはししのいきおいはおさえられているが、こうした制御せいぎょはよそのEVでもやっていること。それらとくらべてなおトロいという印象いんしょうはない。そもそもエンジンしゃくらべれば、吸気きゅうき燃料ねんりょう噴射ふんしゃ爆発ばくはつ変速へんそく……といった各種かくしゅ手続てつづきがないぶん、確実かくじつうごしははやい。N-VAN e:のパワートレインは、ストップ&ゴーをかえ配送はいそうドライバーのストレスを、おおいに軽減けいげんしてくれることだろう。

以上いじょうが、N-VAN e:のプチ試乗しじょうかんじた記者きしゃのインプレッションである。途中とちゅうで「……けいバンの購入こうにゅう検討けんとうしゃって、試乗しじょうなんかに興味きょうみあるのかな??」などとかなしいことにおもいたったが、たとえとう記事きじまずにわれても(泣)なき、オーナー/ドライバーを不幸ふこうにしないだけの快適かいてきせいとドライバビリティーを、N-VAN e:はそなえていたとおもう(まだ公道こうどうためせていないので、断定だんていけます)。

で、試乗しじょうえ、あらためて「お花屋はなやさん仕様しよう」のN-VAN e:をかんがえた。近所きんじょ公園こうえんやショッピングモールに、このクルマのアイスクリームさんがてたりしたら、結構けっこうステキだな。

内燃ないねん化石かせき燃料ねんりょうあいする記者きしゃゆえ(参照さんしょう)エンジンしゃ否定ひていするつもりはないが、稼働かどうはいガスと騒音そうおんはなつモビリティーではれない空間くうかん時間じかんが、のなかにはたしかにある。このちいさなはこがたEVが、そうした、既存きそんのモビリティーではとどかなかったすきめ、自動車じどうしゃ可能かのうせいをよりひろげてくれる存在そんざいとなるのなら、それは素晴すばらしいことではないか。

ひょっとしたらN-VAN e:って、すごくホンダらしい製品せいひんなのかもしれない。

ぶん=webCG堀田ほったつよし<webCG”Happy”Hotta>/写真しゃしん本田技研工業ほんだぎけんこうぎょう、webCG/編集へんしゅう堀田ほったつよし

「N-VAN e:」のオーナーには、リモート充電じゅうでん給電きゅうでんをサポートする「Honda CONNECT」のサービスを無償むしょう期間きかん制限せいげん提供ていきょうしん機能きのうとして、充電じゅうでんのブレーカーちなどを予防よぼうする「最大さいだい電流でんりゅうりょう設定せってい」などが採用さいようされた。
「N-VAN e:」のオーナーには、リモート充電・給電をサポートする「Honda CONNECT」のサービスを無償・期間無制限で提供。新機能として、充電時のブレーカー落ちなどを予防する「最大電流量設定」などが採用された。拡大かくだい
駆動くどうようバッテリーの電気でんきは、ソケットやコネクターにくわえ、AC車外しゃがい給電きゅうでんようコネクター(写真しゃしん)を使つかえば、充電じゅうでんこうからもしが可能かのう。“使つかいすぎ”がきないよう、「Honda CONNECT」のアプリでは外部がいぶ給電きゅうでん下限かげんSOC(充電じゅうでんりつ)も設定せっていできるようになっている。
駆動用バッテリーの電気は、ソケットやコネクターに加え、AC車外給電用コネクター(写真)を使えば、充電口からも取り出しが可能。“使いすぎ”が起きないよう、「Honda CONNECT」のアプリでは外部給電の下限SOC(充電率)も設定できるようになっている。拡大かくだい
上級じょうきゅうモデルの液晶えきしょうメーターには、ちょっとおもしろいエンタメ機能きのうも。カレンダーを起動きどうすると、ランダムで国内こくない100カ所かしょ観光かんこう画像がぞう表示ひょうじされるのだ。ちなみにとう記事きじ取材しゅざいなつの8がつだが、このとき表示ひょうじされたのは、ゆきおおわれたふゆ函館はこだてだった。
上級モデルの液晶メーターには、ちょっとおもしろいエンタメ機能も。カレンダーを起動すると、ランダムで国内100カ所の観光地の画像が表示されるのだ。ちなみに当記事の取材日は夏の8月だが、このとき表示されたのは、雪に覆われた冬の函館だった。拡大かくだい
カーデザイナーがえがいたという、ショッピングモールでのマルシェの様子ようす消防しょうぼうほうにより、エンジンしゃ屋内おくないれることは実質じっしつ不可能ふかのうとなっているが、EVではそれができるのだ。
カーデザイナーが描いたという、ショッピングモールでのマルシェの様子。消防法により、エンジン車を屋内に乗り入れることは実質不可能となっているが、EVではそれができるのだ。拡大かくだい
「パーソナルユースにも使つかえる、けいワンボックスのEV」というクルマが、どれほどの可能かのうせいっているのか。「N-VAN e:」は、いろいろと期待きたいふくらませられるいちだいだった。
「パーソナルユースにも使える、軽ワンボックスのEV」というクルマが、どれほどの可能性を持っているのか。「N-VAN e:」は、いろいろと期待を膨らませられる一台だった。拡大かくだい

テストしゃのデータ

ホンダN-VAN e: L4

ボディーサイズ:全長ぜんちょう×全幅ぜんぷく×全高ぜんこう=3395×1475×1960mm
ホイールベース:2520mm
くるまじゅう:1130kg
駆動くどう方式ほうしき:FWD
モーター:交流こうりゅう同期どうき電動でんどう
最高さいこう出力しゅつりょく:64PS(47kW)
最大さいだいトルク:162N・m(16.5kgf・m)
タイヤ:(まえ)145/80R13 82/80N LT/()145/80R13 82/80N LT(ヨコハマ・ブルーアース バンRY55)
いち充電じゅうでん走行そうこう距離きょり:245km(WLTCモード)
交流こうりゅう電力でんりょくりょう消費しょうひりつ:127Wh/km(WLTCモード)
価格かかく:269まん9400えん/テストしゃ=--まんえん
オプション装備そうび:--

テストしゃとししき:--としがた
テスト開始かいし走行そうこう距離きょり:1062km
テスト形態けいたい:トラックインプレッション
走行そうこう状態じょうたい市街地しがいち(--)/高速こうそく道路どうろ(--)/山岳さんがく(--)
テスト距離きょり:--km
消費しょうひ電力でんりょくりょう:--kWh
参考さんこう電力でんりょく消費しょうひりつ:--km/kWh

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堀田 剛資

堀田ほった つよし

ねことバイクと文庫本ぶんこぼん、そして東京とうきょう多摩たま地区ちくをこよなくあいするwebCG編集へんしゅうしゃきな言葉ことば反骨はんこつきらいな言葉ことば権威けんい主義しゅぎ今日きょうもダッジとトライアンフで、奥多摩おくたまかいわいをお散歩さんぽする。

試乗しじょう新着しんちゃく記事きじ
  • シトロエン・ベルランゴMAX BlueHDi(FF/8AT)【試乗しじょう 2024.10.4 「……だれだっけ?」「ぼくですよ、ぼく!」。そんなやりとりが必要ひつようなくらいにデザインが一変いっぺんした「シトロエン・ベルランゴ」が日本にっぽんにやってきた。もちろんわったのはかおだけではなく、各部かくぶ機能きのうもきちんとアップデートをたしている。ロングドライブで進化しんかのほどをたしかめた。
  • ベントレー・コンチネンタルGTスピード/コンチネンタルGTCスピード【海外かいがい試乗しじょう 2024.10.3 “ベントレーといえば”のW12エンジンにわかれをげ、世代せだい交代こうたいとともに、しん開発かいはつのV8プラグインハイブリッドシステムをれた「コンチネンタルGT」シリーズ。スイスではつ試乗しじょうしてわかった、新型しんがたはしりの特徴とくちょうは?
  • フェラーリ12チリンドリ(FR/8AT)【海外かいがい試乗しじょう 2024.10.2 象徴しょうちょうてきな“12気筒きとう”というくるまめいをいただく、フェラーリの新型しんがたしゃ「12チリンドリ」。“”のDNAを完璧かんぺき体現たいげんしたというはしりは、どのようなものなのか? 公式こうしき試乗しじょうかい開催かいさいされた、欧州おうしゅうはルクセンブルクからの第一報だいいっぽう
  • フォルクスワーゲンTクロスTSI Rライン(FF/7AT)【試乗しじょう 2024.10.1 日本にっぽん道路どうろ環境かんきょうにフィットする「ポロ」クラスのコンパクトSUVとして人気にんきはくした「フォルクスワーゲンTクロス」がマイナーチェンジ。うち外装がいそう質感しつかんアップと充実じゅうじつした装備そうび採用さいようをセリングポイントにかかげる、ジャーマンSUVの進化しんかたしかめた。
  • 日産にっさんGT-RプレミアムエディションT-spec(4WD/6AT)【試乗しじょう 2024.9.30 ながいこと「ご家族かぞくしたしいひとんでください」状態じょうたいだった「日産にっさんGT-R」がついにだい往生おうじょうげた。2007ねん発売はつばいのクルマがこんなにもかがやいてえるのは「アルティメイトメタルシルバー」のボディーカラーのせいだけではないはずだ。最終さいしゅうがたの2025ねんモデルをためす。
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