【三宅みやけ一生かずおさんから受うけ取とったものVol.4】安達あだち市三いちぞう／コルクルーム代表だいひょう

　三宅みやけ一生かずお氏しの訃報ふほうを受うけ、多おおくの人ひとがSNSなどに追悼ついとうメッセージを上あげている。そのエピソードを通つうじて三宅みやけ氏しの功績こうせきや人柄ひとがら、「イッセイ　ミヤケ（ISSEY MIYAKE）」というブランドの哲学てつがくを改あらためて知しる人ひとは多おおいだろう。この連載れんさいでは特とくにゆかりの深ふかい人ひとたちに三宅みやけ氏しへのメッセージをつづってもらう。今回こんかいは市場いちばリサーチなどを軸じくにした日本にっぽんの企画きかく会社かいしゃの先駆さきがけであり、既製きせい服用ふくようのダミー開発かいはつにも関かかわったコルクルームの安達あだち市三いちぞう氏しに聞きく。桑くわ沢さわデザイン研究所けんきゅうじょの学生がくせい時代じだいに多摩美術大学たまびじゅつだいがくに在籍ざいせき中ちゅうの三宅みやけ氏しと知しり合あい、1959年ねんに一緒いっしょに「青年せいねん服飾ふくしょく協会きょうかい」を立たち上あげた。

　訃報ふほうを聞きいてから、三宅みやけさんとのいろいろな出来事できごとを思おもい出だしていました。出会であいは1958年ねんごろだったでしょうか。たまたま新聞しんぶんで三宅みやけさんの投書とうしょを見みたのです。1960年ねんに開催かいさい予定よていだった、日本にっぽんで初はじめて開催かいさいされる「世界せかいデザイン会議かいぎ」に衣服いふくが含ふくまれないことを指摘してきした熱あつい投書とうしょでした。感銘かんめいを受うけて手紙てがみを送おくったところ、返事へんじの手紙てがみには「入院にゅういん中ちゅうだから病室びょうしつに来きてほしい」と書かかれていて、病室びょうしつで初はじめて会あい、とても話はなしが盛もり上あがったことを覚おぼえています。

　多摩美術大学たまびじゅつだいがくの図案ずあん科か（当時とうじ）の学生がくせいだったにもかかわらず、当時とうじ軽かるく見みられがちだった「ファッション」を時代じだいや文化ぶんかを象徴しょうちょうする重要じゅうようなものとして捉とらえ、その上うえでファッションデザインに関かかわる自分じぶんたちのレベルアップが必要ひつようだと考かんがえていた三宅みやけさんは、文化服装学院ぶんかふくそうがくいんや桑くわ沢さわデザイン研究所けんきゅうじょに在籍ざいせきしていた学生がくせいたちにも声こえをかけ、1959年ねんに有志ゆうしの研究けんきゅうグループ「青年せいねん服飾ふくしょく協会きょうかい」を立たち上あげました。

　服ふくの作つくり方かただけでなく、デザインの歴史れきしや文化ぶんか的てきな背景はいけいを学まなび、研究けんきゅうするためのこのグループには文化服装学院ぶんかふくそうがくいんなどの学生がくせいだった高田たかだ賢三けんぞうさんやコシノ・ジュンコさん、松田まつだ光弘みつひろさん、金子かねこ功いさおさんらが集あつまりました。夜間やかんに文化服装学院ぶんかふくそうがくいんの教室きょうしつを借かりて桑くわ沢さわ洋子ようこさんや「ハイファッション」の編集へんしゅう長ちょうを招まねいた勉強べんきょう会かいをしました。勉強べんきょう会かいの後のちにも新宿しんじゅくの居酒屋いざかやなどに場所ばしょを変かえ、終電しゅうでんがなくなった後のちにさらに明治めいじ神宮じんぐう歩あるいて移動いどうし、そこで始発しはつの出でる明あけ方がたまで再ふたたび議論ぎろんを交かわしたことを覚おぼえています。講師こうしの費用ひようを捻出ねんしゅつするためにダンスパーティなどを開催かいさいしたこともありました。

　その後ごは三宅みやけさんがパリに住すんでいた頃ころに、私わたしもたまたまパリに行いくことがあって、当時とうじ装そう苑えん編集へんしゅう部ぶのパリ支局しきょくにいた久田ひさた尚子しょうこさん（元もと「装そう苑えん」編集へんしゅう長ちょう、元もとCFD議長ぎちょう）に連絡れんらくを取とってもらい、パリ市内しないのいろいろな場所ばしょを案内あんないしてもらって、そこでも「これからは既製きせい服ふくの時代じだいではないのか？」などの熱あつい議論ぎろんを交かわしました。

　私わたしはその後ごは企画きかく会社かいしゃを立たち上あげ、三宅みやけさんは皆みなさんご存知ぞんじの通とおりのデザイナーとして世界せかいで活躍かつやくするなど、別々べつべつの道みちを歩あるき、昔むかしのように会あうことはなくなりましたが、ときどき原宿はらじゅくの路上ろじょうやイベントでお会あいすると、お互たがいの近況きんきょうを報告ほうこくしていました。最後さいごに顔かおを見みたのは、2016年ねんの国立こくりつ新しん美術館びじゅつかんの展覧てんらん会かいだったかもしれません。私わたしが会場かいじょうに行いくと、三宅みやけさんも偶然ぐうぜんいて、「お互たがいもっと頑張がんばろう」なんて話はなしました。本当ほんとうに残念ざんねんです。ご冥福めいふくをお祈いのりします。