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物書きとして見返したい…因島(いんのしま)(広島県尾道市) : 読売新聞
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物書ものかきとして見返みかえしたい…因島いんのしま(いんのしま)(広島ひろしまけん尾道おのみち

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なんせんれた人間にんげんこえ(こえ)いたか!こゝは内海うちうみしずかな造船ぞうせんみなとだ――――はやし芙美子ふみこ放浪ほうろうぞく放浪ほうろう」(1933ねん改造かいぞうしゃばん

因島公園のテレビ塔展望台からの眺め。左手前がアイメックスの工場。中央の生名島とその奥の岩城島を結ぶ岩城橋が見える
因島いんのしま公園こうえんテレビ塔てれびとう展望てんぼうだいからのながめ。ひだり手前てまえがアイメックスの工場こうじょう中央ちゅうおう生名いきなとうとそのおく岩城いわきとうむす岩城いわききょうえる

 1925ねんがつ×にち自分じぶんてた「しまおとこ」をたずねてはやし芙美子ふみこ瀬戸内海せとないかい因島いんのしまにやってる。おとこつとめる造船ぞうせんしょ目下もっか、ストライキちゅうで、工員こういん家族かぞくおもわれる「子供こどもれたおかみさんやおばあさん」と前後ぜんごしてやま小道こみちのぼる。眼下がんかのドックでは「くろ ありあり のやうな職工しょっこうぐんが、ワンワン うなうな つてゐる」。

しあわせのたねのこしたとらさん…津山つやま岡山おかやまけん

 げると「うみは、ぎんこないて、 もつれもつ れたいろが、シンセンなにおいひをクンクンさせてゐた」。

 のぼった山道さんどうさきにあるのが荒神こうじんしゃ。その背後はいご因島いんのしま公園こうえんがあり、芙美子ふみこ文学ぶんがくつ。きざまれているのは冒頭ぼうとうの「なんせんれた人間にんげんこえこえいたか! こゝは内海うちうみしずかな造船ぞうせんみなとだ」のだ。自伝じでんてき小説しょうせつ放浪ほうろう」には自作じさく多数たすうっている。

 見下みおろした造船ぞうせんしょ大阪おおさか本社ほんしゃがあるだい企業きぎょう大阪おおさか鉄工てっこうしょのち日立ひたち傘下さんか日立造船ひたちぞうせん因島いんのしま工場こうじょうとなり、現在げんざいはボイラーやディーゼルエンジンを製造せいぞうする子会社こがいしゃアイメックスの工場こうじょうだ。工場こうじょう姿すがたえたが、そのこうにひろがるうみかがやき、周囲しゅうい木々きぎいろいまおなじ。

因島と、本州寄りの向島を結ぶ1270メートルの因島大橋。下を大型船が通るため、海面からの高さは50メートルある
因島いんのしまと、本州ほんしゅうりの向島むこうじまむすぶ1270メートルの因島いんのしま大橋おおはしした大型おおがたせんとおるため、海面かいめんからのたかさは50メートルある

 おとこはこのしま出身しゅっしん明治大学めいじだいがくすすんだおとこって芙美子ふみこ上京じょうきょう同棲どうせいどうせい するが、家族かぞく結婚けっこん反対はんたいされ、おとこ1人ひとり帰郷ききょう造船ぞうせんしょ就職しゅうしょくした。

 東京とうきょうのこされた芙美子ふみこ童話どうわきながらしょく転々てんてんとする。露天商ろてんしょう、セルロイド工場こうじょう工員こういん、カフェの女給じょきゅう……。

 こうした内容ないようの「じゅうはちさいごろから、じゅうさんさいごろまでの日記にっき」から文章ぶんしょうして「放浪ほうろう」と「ぞく放浪ほうろう」はまれた。

 再会さいかいしたおとこにすがろうとする芙美子ふみこだが、おとこにはすでに妻子さいしがいた。

 荒神こうじんしゃのぼ石段いしだん腰掛こしかけて2人ふたりはなんでいたという目撃もくげきだんのこる。石段いしだんちかくで理髪りはつてんいとな村井むらい賢司けんじさん(77)がおしえてくれた。「むかし造船ぞうせんしょひとからいたはなしじゃがね」

 「おのみちはやし芙美子ふみこ顕彰けんしょうかい」の吉岡よしおかしゅんさん(69)は「物書ものかきとしてきていくよくて、見返みかえしたいとのおもいがいたのでは」と、因島いんのしま芙美子ふみこしんうち想像そうぞうする。

 東京とうきょうかえるためふねった芙美子ふみこ財布さいふは5、6まいの10えんさつふくらんでいた。おとこあにいえでもらったのだ。そのわけは? 手切てぎきんのようにめるが、実際じっさいほんすための援助えんじょだったという。

  はやし芙美子ふみこ (はやし・ふみこ)
 1903~51ねん福岡ふくおかけん門司もじげん北九州きたきゅうしゅう門司もじまれ。本名ほんなフミコ。実父じっぷいえ芸者げいしゃまわせ、はは義父ぎふとなる男性だんせい九州きゅうしゅう各地かくち行商ぎょうしょう。16ねん一家いっか尾道おのみちに。22ねん女学校じょがっこう卒業そつぎょう恋人こいびと岡野おかの軍一ぐんいちって東京とうきょうへ。翌年よくねん婚約こんやく解消かいしょう俳優はいゆう詩人しじん同棲どうせい、26ねんから学生がくせい手塚てづかみどりさとしらす。28ねん雑誌ざっし女人にょにん芸術げいじゅつ」に「あきたんだ―放浪ほうろう」を掲載けいさい。30ねん、「放浪ほうろう」「ぞく放浪ほうろう刊行かんこう。47ねん、「放浪ほうろうだいさん連載れんさい開始かいしに「ばんきく」「浮雲うきぐも」など。51ねん心臓しんぞうマヒで死去しきょ

 ぶんもり恭彦やすひこ
 写真しゃしん鷹見たかみ安浩やすひろ

海賊かいぞくせん村上むらかみ水軍すいぐん」の根城ねじろ

海戦の戦法会議を武者人形で再現、展示している(因島水軍城で)
海戦かいせん戦法せんぽう会議かいぎ武者むしゃ人形にんぎょう再現さいげん展示てんじしている(因島いんのしま水軍すいぐんじょうで)

 戦前せんぜんから戦後せんごにかけて造船ぞうせんぎょうさかえた因島いんのしまだが、戦国せんごく時代じだいまでさかのぼると、ふねふねでも村上むらかみ海賊かいぞく、あるいは村上むらかみ水軍すいぐんばれた海賊かいぞくふね根城ねじろにしたしまだった。

 村上むらかみ海賊かいぞく因島いんのしまむら上家うわや能島のうじまむら上家うわや来島くるしまむら上家うわやの3いえかれ、平時へいじには水先案内みずさきあんない海上かいじょう警固けいご運輸うんゆ従事じゅうじ。ひとたびせんになれば 手榴弾しゅりゅうだんしゅりゅうだん のような 焙烙ほうろく火矢ひやほうろくひやはなっててき水軍すいぐん撃破げきはした。毛利もうり味方みかたして織田おだ信長のぶなが水軍すいぐん大阪おおさかわんたたかったこともある。

 かれらのふねりたくて、村上むらかみ海賊かいぞくしろをイメージした資料しりょうかん因島いんのしま水軍すいぐんじょう」をたずねた。スタッフの大谷おおや裕子ゆうこさん(63)が「小回こまわりがきくしょうはや全長ぜんちょうやく11メートル。主力しゅりょくだい阿武あぶせんは26メートルほど」と模型もけいまえ説明せつめいしてくれた。

 因島いんのしまむら上家うわや信仰しんこうで、五百羅漢ごひゃくらかん石像せきぞうなら白滝しらたきさん標高ひょうこう227メートル)にのぼってみた。眼下がんか瀬戸内海せとないかいするふねや、しまなみ海道かいどうつたってしまからしまわた自動車じどうしゃちいさくえる。

因島と、本州寄りの向島を結ぶ1270メ白滝山山頂の五百羅漢。「五百」というが実際は約700体の石像がある
因島いんのしまと、本州ほんしゅうりの向島むこうじまむすぶ1270メ白滝しらたきさん山頂さんちょう五百羅漢ごひゃくらかん。「ひゃく」というが実際じっさいやく700たい石像せきぞうがある

海賊に捕らわれた娘の伝承が残る「地蔵鼻」近くの浅瀬。もりで獲物を狙う
海賊かいぞくらわれたむすめ伝承でんしょうのこる「地蔵鼻じぞうばなちかくの浅瀬あさせ。もりで獲物えものねら

 しまなみ海道かいどう島々しまじまはしむすやく60キロのうみみち。サイクリングもさかんだ。

 豊臣とよとみ秀吉ひでよし海賊かいぞく停止ていしれい(1588ねん)ののち因島いんのしまむら上家うわや長州ちょうしゅう毛利もうり家臣かしんとなる。その太平たいへい因島いんのしまから全国ぜんこくをはせたのが囲碁いご本因坊ほんいんぼうしゅうさく(1829~62ねん)だ。

 マンガ「ヒカルの」にも登場とうじょうするしゅうさく史上しじょう最強さいきょうともいわれる棋士きしだ。

 島内とうないには本因坊ほんいんぼうしゅうさく囲碁いご記念きねんかんもうけられている。館長かんちょう木村きむら修二しゅうじさん(73)がかん隣接りんせつして再現さいげんされたしゅうさく生家せいか案内あんないしてくれた。「囲碁いご対局たいきょく茶会ちゃかい使つかってもらうことも可能かのうで、2016ねんには本因坊ほんいんぼうせんおこなわれたのですよ」

 ためしにしまった旅行りょこうしゃたずねてみた。はやし芙美子ふみこの「放浪ほうろう」をんだひとはゼロだったが、「ヒカルの」や和田わだりゅう小説しょうせつ村上むらかみ海賊かいぞくむすめ」、そのマンガほん読者どくしゃが「現地げんちきたられて感激かんげき」と感想かんそうはなしてくれた。

 ●ルート 東京とうきょうから福山ふくやままで新幹線しんかんせんで3あいだはん福山ふくやま駅前えきまえから因島いんのしま土生はぶこうまえまでバスで1あいだ10ふん

 ●わせ 因島いんのしま観光かんこう協会きょうかい=(でん)0845・26・6111、因島いんのしま水軍すいぐんじょう=(でん)0845・24・0936、本因坊ほんいんぼうしゅうさく囲碁いご記念きねんかん=(でん)0845・24・3715

あじ]8ほんあし八方はっぽうてきらう」ゲンかつ

 そのむかし村上むらかみ海賊かいぞく水軍すいぐん)は出陣しゅつじん前夜ぜんや浜辺はまべなべかこんで酒盛さかもりをした。

 なべ中身なかみはタコが必須ひっす。そのはい魚介ぎょかいるい海藻かいそうなど。タコは8ほんあしなので八方はっぽうてきらうというゲンかつぎだったとか。

 この「水軍すいぐんなべ」をホテルいんのしま((でん)0845・22・4661)でべられる=写真しゃしん=。

 しょうゆベースの 出汁だしだし はややいめ。煮立にたったところにタコのほか、エビ、カニ、ハマグリ、タイ、アナゴ、そして料理りょうりちょう稲角いなずみいなずみ 尚也なおやさん(55)によれば「瀬戸内海せとないかいしょうさかなかならず」ということでホゴメバル(カサゴ)をダイコン、サトイモとともに一気いっき投入とうにゅう特注とくちゅうのかぶとのかたちのふたをする。

 「豪快ごうかいにつくるのがコツ」と稲角いなずみ料理りょうりちょう注文ちゅうもんは2人前にんまえから。1人ひとりぶん5500えんよう予約よやく

ひとこと…見逃みのがしたベストセラー

 作家さっか仲間なかま平林ひらばやしたいによれば、はやし芙美子ふみこは「放浪ほうろう」の原稿げんこう最初さいしょ読売新聞よみうりしんぶんんだ。文化ぶんかしでねむっていたそれをしたのは記者きしゃしたしい作家さっかさんじょう 於菟吉おときちおときちつまげき作家さっか長谷川時雨はせがわしぐれ主宰しゅさいする雑誌ざっし女人にょにん芸術げいじゅつ」に連載れんさいさせた。わが先輩せんぱい記者きしゃ残念ざんねんながらだいベストセラーを見逃みのがしたわけだ。

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4468707 0 たび 2023/08/27 05:20:00 2023/08/22 14:21:55 /media/2023/08/20230817-OYT8I50012-T.jpg?type=thumbnail

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