直球磨き チームにV2を
創志学園高校のエースとして春夏連続で甲子園に出場したプロ野球・元巨人の
高田萌生
投手(26)が、地元・岡山のクラブチームで奮闘している。今月下旬には連覇がかかる全国大会の予選があり、「チームを勝たせる投球がしたい」と意気込んでいる。(中安真人)
6月下旬、美作市の山間地にあるグラウンドで、高田投手は懸命に腕を振っていた。実戦形式の練習では、打者を押し込む力強い投球も披露。プロ野球時代に対戦経験もある亀沢恭平監督は「クラブチームというカテゴリーでは、彼の球は十分勝負できる」と評す。
高田投手は新見市出身。高校3年だった2016年に春の選抜、夏の甲子園でマウンドに上がり、同校に甲子園初勝利をもたらした。球速が150キロを超える本格派右腕としてプロから注目を浴び、ドラフト5位で巨人に入団した。
巨人では、二軍で最多勝に輝くなど才能の一端は見せた。だが一軍のレベルは「全く違った」。17年から20年途中まで登板3試合、計7イニング9失点に終わった。その後、トレードで加入した楽天でも思うように結果が残せず、23年のシーズン終了後に退団が決定。「苦しくてうまくいかないことがすごく多かった」と振り返る。
それでも野球をやめようとは思わなかった。「まだまだ技術は上がる。自分の一番良い時を見ずに終わるのはもったいない」と同年11月のトライアウトを受験。全日本クラブ選手権を制していたショウワコーポレーション(美作市)から誘われ、入団を決めた。
今、注力しているのが、直球を磨くことだ。高校時代は自信を持って投げていた球は、プロでは球速も回転数も突出していなかった。簡単にはじき返されることもあり、次第に変化球中心の投球に。もう一度自分の特徴を見つめ直し、打者にとって浮き上がるように見える直球を求めてフォームを変えたり、筋力を付けたりしている。
巨人時代のチームメートとは今でも連絡を取り合っている。中でも「刺激を受けている」というのが、同い年で同期入団の左腕・大江竜聖投手。ドラフトでは高田投手に続く6位だった。将来の先発候補として期待された2人は当時、ブルペンで並ぶと「先にはマウンドを降りない」と意識しあって投げ続けるライバルであり、一緒に食事にも行く良き友人でもあった。
大江投手は現在、先発ではなく、リリーフとして巨人投手陣の中で居場所を築こうとしている。打者が打ちづらいように、フォームも横手投げに変えた。高田投手は「今の大江は僕が思い描いていた将来像とは全く違うが、どんな場所でも戦う大切さを感じた」と話す。
亀沢監督は「もう一度(プロの)マウンドに立つためには精神的に強くならないといけない」と伝えているという。高田投手もチームでリリーフを担う。「与えられた場で結果を出すことができないと、自分が求めている場には行けない。役割を果たす中で、(プロ野球への復帰も)最終的に見えてきたらいい」と内に秘めた闘志を燃やしている。