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 エンジンしゃ排気はいきおんした疑似ぎじおんをスピーカーから送出そうしゅつする電気でんき自動車じどうしゃ(EV)が、相次あいついで登場とうじょうしている。「EVのおと表現ひょうげんする技術ぎじゅつ開発かいはつ各社かくしゃすすんでいる」と海外かいがい自動車じどうしゃメーカーの担当たんとうしゃはなす。

 その理由りゆうについて「EVではなにおとなのか、まださだまっていないためだ」と疑似ぎじおん送出そうしゅつする機器ききαあるふぁlive AD」を開発かいはつしたヤマハ発動機やまははつどうき技術ぎじゅつしゃ指摘してきする。エンジンしゃではこう回転かいてんいきびのあるおとや、てい音域おんいき重厚じゅうこうかんのあるおとなど、“おと”の定義ていぎが、ある程度ていどまっていた。とくにスポーツしゃブランドでは、それぞれに特有とくゆうおとがあり、そのおと目的もくてきとして購入こうにゅうする愛好あいこうすくなくない。

 一方いっぽうで、EVはエンジンしゃくら量産りょうさんしゃ歴史れきしあさく、“おと”の方向ほうこうせいをEVメーカーが模索もさくしている段階だんかいだ。かくEVメーカーは、独自どくじおとメーカーに先行せんこうして確立かくりつするため、しのぎをけずって開発かいはつすすめている。疑似ぎじおん技術ぎじゅつ適用てきようすれば、EVのあらたな付加ふか価値かちにつながる。

エンジンしゃおな価値かちかん目指めざしたAbarthはつのEV

 そんななか一石いっせきとうじたのが欧州おうしゅうStellantis(ステランティス)の日本にっぽん法人ほうじんが2023ねん10がつ日本にっぽん発売はつばいしたスポーツしゃブランド「Abarth(アバルト)」はつのEV「Abarth 500e(以下いか、500e)」だ。最大さいだい特徴とくちょうは、エンジンしゃ排気はいきおん再現さいげんした疑似ぎじおん送出そうしゅつすることだ。

EVのAbarth 500e(左)とガソリン車の「Abarth 695 Tributo 131 Rally」(右)
EVのAbarth 500e(ひだり)とガソリンしゃの「Abarth 695 Tributo 131 Rally」(みぎ
Abarth 500eは疑似ぎじおん送出そうしゅつする。(写真しゃしん日経にっけいAutomotive)
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 加速かそくわせて車両しゃりょう下部かぶ配置はいちしたスピーカーからエンジンしゃはっする排気はいきおんのような疑似ぎじおんながす。速度そくどやアクセルひらき音域おんいき音圧おんあつめる。

 「エンジンしゃ排気はいきおん忠実ちゅうじつ再現さいげんした」とStellantisジャパン、アバルトプロダクトマネージャーの阿部あべ琢磨たくま説明せつめいする。疑似ぎじおんのシステムは、StellantisのNVH(クルマの振動しんどうおよび騒音そうおん部門ぶもんにて開発かいはつした。阿部あべは「6000時間じかん以上いじょう開発かいはつついやした」とはなす。

 Abarthの一部いちぶエンジンしゃ搭載とうさいするマフラー「レコードモンツァ」のおと参考さんこうにした。加速かそく減速げんそく高速こうそく旋回せんかいといった多様たよう運転うんてんシーンにおけるエンジンしゃ排気はいきおん収録しゅうろく。そのうえで、かく運転うんてんシーンに最適さいてきおと分析ぶんせきし、疑似ぎじおんやそれを制御せいぎょするソフトウエアを制作せいさくしたという。

 疑似ぎじおんたんに、速度そくどわせて音量おんりょう調節ちょうせつしているだけではない。おと性質せいしつ運転うんてんじょうきょうによって変更へんこうしている。たとえば、クルマが停止ていししているときはレコードモンツァのアイドリング状態じょうたい排気はいきおんせたおと表現ひょうげんする。加速かそくには速度そくどわせて、エンジンしゃ回転かいてんすう上昇じょうしょうするさいおと再現さいげんした。停止ていし状態じょうたいから加速かそく電源でんげんオフといった多様たよう状況じょうきょう疑似ぎじおん変化へんかさせることでエンジンしゃおと価値かちかんちかづけた。

Abarth 500eの疑似ぎじおん
撮影さつえい日経にっけいAutomotive)
Abarth 695 Tributo 131 Rallyの排気はいきおん
レコードモンツァを装備そうびする。(撮影さつえい日経にっけいAutomotive)
疑似音を送出するスピーカー
疑似ぎじおん送出そうしゅつするスピーカー
車両しゃりょう後方こうほうから車体しゃたいをのぞくと確認かくにんできる。(写真しゃしん日経にっけいAutomotive)
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疑似音を制御するシステム
疑似ぎじおん制御せいぎょするシステム
しつがわから様子ようす。(写真しゃしん日経にっけいAutomotive)
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 筆者ひっしゃは、レコードモンツァを搭載とうさいしたエンジンしゃ「Abarth 695 Tributo 131 Rally(以下いか、695)」と500eの両方りょうほう試乗しじょうした。エンジンしゃれた筆者ひっしゃ一般いっぱんてきなEVを運転うんてんすると、エンジンおんはっすることなく加速かそくするため、違和感いわかんかんしゃいすることがすくなくなかった。

 一方いっぽうで500eは、速度そくどとも疑似ぎじおん変容へんようしていくため、一般いっぱんてきなEVよりも自然しぜん加速かそくかんたのしめた。695からえても違和感いわかんすくなかった。

 ただ、手動しゅどう変速へんそく(MT)しゃのようなシフト変速へんそくさいの“だんかん”は表現ひょうげんされていなかった。この“だんかん”を疑似ぎじおん加速かそく表現ひょうげんできるとさらにエンジンしゃ価値かちかんちかづけられるのではないだろうか。

モーターの制御せいぎょでも変速へんそくかんすHyundai

 そのだんかんまで再現さいげんしたEVが、韓国かんこくHyundai Motor(ヒョンデ)が2024ねん6がつ日本にっぽん発売はつばいした高性能こうせいのうEV「IONIQ 5 N(アイオニック 5 N)」である。