低ていスキルITエンジニアのかさむ残業ざんぎょう代だい、悩なやむ社長しゃちょうは「毎月まいつき給与きゅうよを成果せいかで上下じょうげさせたい」

Q．ソフト会社かいしゃの経営けいえい者しゃです。毎月まいつきの給与きゅうよを、成果せいかで上下じょうげさせてよいものでしょうか。スキルの低ひくいエンジニアやプログラマーは作業さぎょう効率こうりつが悪わるくて、残業ざんぎょう手当てあてが増ふえてしまいます。早はやく仕事しごとをこなすエンジニアは残業ざんぎょうが少すくなく、彼かれらから見みれば不公平ふこうへいでしょう。成果せいかに基もとづく給与きゅうよにして、面倒めんどうな労働ろうどう時間じかん管理かんりをやめたいです。

　成果せいかに応おうじて給与きゅうよを支払しはらう制度せいどには、労働ろうどう基準きじゅん法ほうに定さだめられている出来高できだか払ばらい制せいの給与きゅうよがあります。

　会社かいしゃが出来高できだか払ばらい制せいを採用さいようする際さいに、注意ちゅうい点てんがあります。労働ろうどう基準きじゅん法ほう（第だい27条じょう）は「出来高できだか払はらい制せいその他たの請負うけおい制せいで使用しようする労働ろうどう者しゃについては、使用しよう者しゃは、労働ろうどう時間じかんに応おうじ一定いってい額がくの賃金ちんぎんの保障ほしょうをしなければならない」と定さだめています。従業じゅうぎょう員いんに成果せいかがなくても一定いってい額がくの給与きゅうよ（以下いか、保障ほしょう給きゅう）は必要ひつようです。

　保障ほしょう給きゅうについて、明確めいかくな金額きんがくまでは定義ていぎされていません。筆者ひっしゃは、少すくなくとも既定きていの基本給きほんきゅうの6～7割わり以上いじょうは必要ひつようだと考かんがえます。かつ、時間じかん単価たんかに換算かんさんした金額きんがくは、最低さいてい賃金ちんぎんを下回したまわることはできません。就業しゅうぎょう規則きそくには、保障ほしょう給きゅうの考かんがえ方かたや内容ないようを明記めいきしておかなければなりません。

ITエンジニアの仕事しごとは出来高できだか払ばらい制せいにそぐわない

　出来高できだか払ばらい制せいを取とり入いれた給与きゅうよ体系たいけいを持もつ会社かいしゃはあります。出来高できだかとは例たとえば、タクシードライバーや店頭てんとう販売はんばい員いんの営業えいぎょう成績せいせきに応おうじて支給しきゅうされるインセンティブ手当てあてなどです。毎月まいつきの成果せいかがタイムリーに分わかる上うえ、従業じゅうぎょう員いんには、自身じしんの成果せいかによる加算かさん額がくを計算けいさんできるので納得なっとく感かんがあります。

　一方いっぽうで、ITエンジニアは、毎月まいつきの出来高できだか払ばらい制せいだといわれてもピンとこないでしょう。タクシードライバーのように顧客こきゃく獲得かくとくから売うり上あげまでの数値すうち化かを、自分じぶんの裁量さいりょうと責任せきにんで行おこなっているわけではないからです。

　例たとえば、プロジェクトの谷間たにまで仕事しごとがなくて暇ひまだとします。成果せいかがないので給与きゅうよは減へりますが、ITエンジニアたちは納得なっとくするでしょうか？　仕事しごとを用意よういできなかった会社かいしゃが悪わるいとなります。

　そもそもITエンジニアの仕事しごとは、出来高できだかがタイムリーに数値すうち化かされません。仕事しごとの難易なんい度どはプロジェクトの規模きぼや役割やくわりによって異ことなります。難易なんい度どを含ふくめて評価ひょうかされるので、時間じかんがかかります。

　質問しつもん者しゃへは、原則げんそくとして、職責しょくせきや役割やくわり、能力のうりょくに応おうじて年としに1回かい給与きゅうよを改定かいていすることを勧すすめます。年とし1回かいの改定かいていでも、昇格しょうかくや能力のうりょくによる昇給しょうきゅうによって、給与きゅうよ格差かくさは生しょうじてくるものです。質問しつもん者しゃの会社かいしゃには賞与しょうよがあるとのことです。成果せいか分ぶんは、業績ぎょうせき評価ひょうかに基もとづいて賞与しょうよにメリハリをつけて支給しきゅうしてください。

　賞与しょうよは任意にんい的てきな支給しきゅうです。法的ほうてきな支給しきゅう義務ぎむはないので、賞与しょうよのない会社かいしゃもあります。ただし、就業しゅうぎょう規則きそくや労働ろうどう契約けいやく書しょ、労働ろうどう条件じょうけん通知つうち書しょに「賞与しょうよあり」としている会社かいしゃには、支給しきゅう義務ぎむがあります。