第6回
「100万台のデータ収集EVを26年末に」、ホンダ・日産が直面する“爆速”開発
名古屋大学未来社会創造機構客員教授の野辺継男氏
日経クロステック/日経Automotive
有料会員限定
全2227文字
ホンダと日産自動車が提携を検討し始めた背景に、中国の新興メーカーや米Tesla(テスラ)の存在がある。ホンダ社長の三部敏宏氏は「新興企業の攻勢は極めて速く、強力だ」と危機感を隠さない。日本の伝統企業はどう巻き返すか。次世代車両の技術動向に詳しい名古屋大学未来社会創造機構客員教授の野辺継男氏に話を聞いた。
(き手は久米 秀尚、本多 倖基=日経クロステック/日経Automotive)
名古屋大学未来創造機構客員教授の野辺継男氏
2004年から2012年まで日産自動車に在籍。ビークル・インフォメーション・テクノロジー事業に従事。その後、インテルに転職し、クルマのICT化から自動運転全般のアーキテクチャー構築に従事した経験を持つ。(写真:日経Automotive)
[画像のクリックで拡大表示]
ソフトウエア定義車両(Software Defined Vehicle:SDV)の観点から、ホンダと日産はどう組むべきか。
重要なのはデータを集めることだ。データ収集を前提とした電気自動車(EV)を共同で開発し、ディープラーニング(深層学習)技術を高める。1つのプラットフォーム(PF)で最低50万台、できれば100万台規模のEVを1年で販売できないと海外との差は縮まらない。
まずは日本で生産・販売し、日本のデータを分析する。50万~100万台規模を早くつくり上げて技術や経験値を蓄積する。クラウドの使い方やディープラーニングの最適化など、急いでやる必要がある。だから、単独で取り組むよりもホンダと日産が一緒にやったほうがいいという認識だ。
私は以前から、経済産業省などにはホンダと日産が一緒にならないといけないと話してきた。できればトヨタ自動車も加わって、日本連合で総力戦をすべきだと。個別にやっていては、これからの時代で競争力を確保できないと考えるからだ。
ホンダと日産による新しい“データ収集EV”は、いつごろまでに市場投入するべきか。
もしかすると、もう間に合わないかもしれない。だからできるだけ早く。2028年には100万台を販売した、という状況になっていないとまずい。だから、2026年の末には発売までにこぎ着けたい。
日本メーカーがクルマを開発すると4~5年はかかりそうだ。
中国の自動車メーカーは2年でクルマを造っている。日本メーカーからすると2026年末というスケジュール感は驚きだが、今の半分くらいの期間で仕上げないといけない。中国勢ができるのだから、いいチャレンジだと捉えたほうがいい。
ホンダと日産のトップは「新興メーカーの追い上げ」が提携の協議に踏み切ったきっかけだと会見で説明していた。だからこそ、中国勢に負けない“爆速”開発で、データ収集できる基盤を構築すると。
ホンダと日産が2024年3月に開いた共同会見
10年後に生き残っていられるか――。両社のトップは危機感を隠さなかった。(写真:ホンダ)
[画像のクリックで拡大表示]
そうだ。さらに言えば、5年から10年くらい一緒にやるだけで、また別れてもいいのではないか。立ち上げ時の今こそ、一緒に取り組む必要があると思う。中国には既に、車両データを吸い上げられる環境があり、SDVの知能がどんどん賢くなっている。このままでは差が開く一方だ。
車両データの活用を含めたSDV化で最も進んでいる自動車メーカーはどこか。