launchdは、デーモン、アプリケーション、プロセス、スクリプトの起動・停止・管理を行う、オープンソースのサービス管理フレームワークである。AppleのDave Zarzyckiによって作られ、Mac OS X Tiger (Mac OS X v10.4) で導入された。Apache Licenseのもとで公開されている。
launchdデーモンは基本的に以下を置き換えるものである:
Appleはlaunchdを推進し、上記のすべてのサービスを廃止するとした。[1]
これらのデーモンが扱っていたほとんどのプロセスが、Mac OS X v10.4でlaunchdに移行された。すべてのlaunch serviceを一つのプログラムに統合することで、launchdは遅いコンピュータでもブート時間を著しく短くする。
launchdシステムには、launchdとlaunchctlという二つの主なプログラムがある。
launchdはシステムレベルとユーザレベルの両方でデーモンを管理する。xinetdと同様に、launchdはオンデマンドでデーモンを起動できる。またwatchdogdのように、デーモンが確実に動作しつづけているかを監視する。macOSにおいて、launchdはPID 1としてinitのかわりにブート時のシステムの開始を取り扱う。
設定ファイルはlaunchdが実行するサービスのパラメータを定義する。約30の設定可能なキーをもつプロパティリストファイルが、ライブラリフォルダ以下のLaunchAgentsとLaunchDaemonsというサブディレクトリに置かれる。
launchctlはデーモンのロードとアンロード、launchdが管理するジョブの開始と停止、launchdや子プロセスのためのシステム利用統計の取得、環境設定に使用されるコマンドラインアプリケーションである。
launchdには、システムのブートと、サービスをロードし維持するという二つの主なタスクがある。
PowerPC MacにおけるMac OS X Tigerのシステムの起動の概略を以下に示す。(Intel Macでは、Open FirmwareはEFIに、BootXは boot.efi
にそれぞれ置き換えられている):
- Open Firmwareがハードウェアを初期化し、それからBootXをロードする。
- BootXがカーネルをロードし、スピンカーソルを表示、すべての必要なカーネル機能拡張をロードする。
- カーネルがlaunchdをロードする。
- launchdは
/etc/rc
を実行し、/System/Library/LaunchDaemons
と /Library/LaunchDaemons
を参照して、必要に応じてplistにもとづいた動作を行い、ログインウインドウを起動する。
ステップ4でlaunchdはジョブを実行するために二つのフォルダを参照する。LaunchDaemonsフォルダには、rootとして実行する(ふつうバックグラウンドの)プロセスの項目がある。LaunchAgentsフォルダには、ユーザかユーザランドのコンテキストで実行される、エージェントアプリケーションと呼ばれるジョブがある。これらはスクリプトかフォアグランド項目かもしれないし、ユーザインタフェースを含めることもできる。これらのディレクトリはすべてmacOSのライブラリフォルダの中に置かれる。
launchdは、ブート時にすべてのデーモンを立ち上げるとはかぎらない点でSystemStarterと非常に異なっている。launchdの重要な考えかたであり、またxinetdと類似している点が、デーモンをオンデマンドで起動するということである。ブート時にジョブplistを参照したとき、launchdはそれらのジョブで要求されたすべてのポートを確保しlistenする。plistに"OnDemand"キーが指定されると、そのときデーモンは実際にはロードされず、launchdがポートをlistenして必要に応じてデーモンを起動したり終了したりする。デーモンがロードされたあと、launchdはその経過を追い、必要なあいだ確実に動作を継続させる。この方式はwatchdogdに似ており、プロセスがかってにforkしたりデーモン化したりしないようにするというwatchdogdの要件と共通している。もしプロセスがバックグラウンドに入ると、launchdは追跡を失い、プロセスの再起動を試みる。
その結果、Mac OS X Tigerはこれまでよりずっと速くブートする。システムはデーモンを実際に立ち上げるのではなく、登録だけすればよい。事実、ブート中にみえるプログレスバーはほんとうに時間の経過以外なにも示さない(WaitingForLoginWindowと名づけられた[2])見せかけのアプリケーションである。
launchdのブートの中でいちばんの管理の難所は依存関係である。SystemStarterには、起動項目のplistの中に"Uses", "Requires", "Provides" キーを用いたとてもシンプルな依存関係のシステムがあった。Tigerにおいてソフトウェアの立ち上げの依存関係を確立するとき、二つの主なやりかたがある。プロセス間通信を使うと、デーモンどうしのあいだで互いに通信して依存関係を解決することが許容される。あるいは、ファイルやファイルパスの変更を監視することもできる。プロセス間通信を使うことは、SystemStarterのキーよりもはるかにとらえにくいもので開発者により多くの負担をもとめるが、しかしより簡潔で速い起動に結びつくかもしれない。SystemStarterはまだサポートされているオプションだが、Mac OS X Tigerではその重要性は減っており、将来的には利用できなくなるかもしれない。
既存のしくみによるサービス制御についての不満の一つは、それらを集中管理するための方法がなく、OS上に散らばっているということである。Appleはlaunchctlでこれに対処した。
launchctlはそれ自身、コマンドラインや、標準入力、対話モードから操作可能なコマンドである。~/.launchd.conf や /etc/launchd.conf に書くことでコマンドを保存できる。スーパーユーザー権限でlaunchctlはシステム全体の変更ができる。
プロパティリスト (plist) はAppleがプログラムの設定に用いる形式である。launchdがフォルダを参照したときやlaunchctlを使ってジョブがサブミットされたとき、どのようにプログラムを実行するかが書かれたplistファイルを読む。
よく使われるキーを以下に示す。すべてが載ったリストは、launchd.plistについてのAppleによるマニュアルを参照。[3]
キー
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説明
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必須かどうか
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Label
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ジョブの名称。慣習により、ジョブの名称は.plist拡張子を除いたplistのファイル名とおなじ。
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必須。
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Program
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実行ファイルへのパス。シンプルな起動に役立つ。
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ProgramかProgramArgumentsのどちらか一つが必須。
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ProgramArguments
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unixコマンドを表した文字列。はじめの文字列はふつう実行ファイルへのパスで、あとの文字列はオプションやパラメータを含む。
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UserName
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ここで与えられたユーザでジョブを実行する。必ずしもそれをlaunchdにサブミットしたユーザでなくてもよい。
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オプション。デフォルトではrootかカレントユーザ。
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OnDemand
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10.5では非推奨。ジョブを持続的に実行するかどうかを定義するブーリアンフラグ。
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オプション。デフォルトではtrue。
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RunAtLoad
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launchdにジョブがロードされたときすぐにタスクを起動するかどうかを定義するブーリアンフラグ。
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オプション。デフォルトではfalse。
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StartOnMount
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新しいファイルシステムがマウントされたときにタスクを起動するかどうかを定義するブーリアンフラグ。
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QueueDirectories
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新しいファイルがないかディレクトリを監視する。開始するにはディレクトリは空でなければならない。また、QueueDirectoriesがふたたびタスクを起動するまえに空の状態にもどさなければならない。
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オプション。
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WatchPaths
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変更がないかファイルかフォルダのパスを監視する。
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StartInterval
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ジョブをくり返して実行するスケジュールにする。実行のあいだのウェイト秒数として指定される。
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StartCalendarInterval
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ジョブスケジューリング。構文はcronと同様。
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RootDirectory
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ジョブを実行するまえにこのディレクトリにchrootする。
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WorkingDirectory
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ジョブを実行するまえにこのディレクトリにchdirする。
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StandardInPath, StandardOutPath, StandardErrorPath
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立ち上げたプロセスのための入出力ファイルを定義するキー。
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LowPriorityIO
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ファイルシステムI/Oをするときタスクの優先度が低いことをカーネルにしらせる。
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AbandonProcessGroup
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launchdによって立ち上げられたタスクが起動したサブプロセスを、タスクがおわったときにkillするかどうかを定義するブーリアンフラグ。短いタスクが長いサブタスクを起動するところで役立つが、ゾンビプロセスを生じるかもしれない。
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オプション。デフォルトではfalse。
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Google Summer of Code Project in 2005の一環としてFreeBSDに移植された。
2006年にUbuntuはlaunchdを使用することを考えていたが、当時はApple Public Source Licenseで公開されていたので「回避不能なライセンス問題」があるとしてこのオプションはリジェクトされた。[4]
2006年8月にAppleは、launchdをほかのオープンソース開発者がより簡単に採用できるようApache License, Version 2.0のもとでライセンスした。[5]
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