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トンデモ裁判、呆れた論理東電弁護団それを言っちゃあ、おしめえよ(週刊現代) | 現代ビジネス | 講談社(2/6)


2011.12.12
# 雑誌ざっし

トンデモ裁判さいばんあきれた論理ろんり
東電とうでん弁護べんごだんそれをっちゃあ、おしめえよ

「セシウムはだれのものでもない!
だから除染じょせん責任せきにんはない」だって

週刊しゅうかん現代げんだい プロフィール
〔PHOTO〕gettyimages

 裁判さいばん言葉ことばあそびのではない。まして、問題もんだいひといのちかかわる原発げんぱつ事故じこなのだ。「セシウムはウチの所有しょゆうぶつじゃないので、ったぶん責任せきにんてません」。この理屈りくつ本気ほんきってるんですか?

有名ゆうめい弁護士べんごし事務所じむしょ方々かたがた

 法律ほうりつがどうこう以前いぜんに、まずは社会しゃかい常識じょうしき問題もんだいとしてかんがえてしい。

 近所きんじょに、にわでゴミをガンガンやしてくろけむりげているいえがあった。そのけむりのせいで自宅じたく外壁がいへきよごれ、にわえカスとはいだらけ。迷惑めいわくこのうえなく、「自宅じたく外装がいそうえ、にわをキレイにするための費用ひよう弁償べんしょうしてほしい」ともうた。

 すると問題もんだい家主やぬしは、こう主張しゅちょうした。

「ウチからけむりは、もう〝ウチのもの〟ではない。だからどこにんですすちようとったことではない。そんなに掃除そうじしたいなら、自分じぶんですれば」

 こんな人物じんぶつがそのあたりの住宅じゅうたくがいにいたら、正気しょうきうたがうレベルである。いわゆる「モンスター隣人りんじん」といったところだろう。

 だが、ほとんどおなじような主張しゅちょう法廷ほうていでしている企業きぎょうがある。しかも、汚染おせんげんとして問題もんだいになっているのは、ゴミをやすけむりどころではなく、セシウムなのだ。

事故じこした放射ほうしゃせい物質ぶっしつ(セシウム)は、ウチの所有しょゆうぶつじゃない。だから除染じょせんをする義務ぎむもなければ、カネもはらえない」

 そういいはっているのは、福島ふくしまだいいち原発げんぱつ事故じここした東京電力とうきょうでんりょくである。

 このおどろくべき「論理ろんり」がしたのは、福島ふくしま県内けんないでゴルフじょう経営けいえいする企業きぎょうが、東電とうでんたいしてこした裁判さいばんでのことだ。「サンフィールド二本松にほんまつゴルフ倶楽部くらぶ」の山根やまねつとむ代表だいひょう取締役とりしまりやくはこうかたる。

東電とうでんさんとその弁護べんごだんのメチャクチャな主張しゅちょうには、正直しょうじきみみうたがいました。あちらの弁護士べんごしさんは、日本にっぽん有数ゆうすうわれる有名ゆうめい弁護士べんごし事務所じむしょ方々かたがたなのに・・・・・・」

 同社どうしゃのゴルフじょう(サンフィールド二本松にほんまつゴルフ倶楽部くらぶ岩代いわしろコース)は、福島ふくしまだいいち原発げんぱつから西方せいほう45kmに位置いちする丘陵きゅうりょうコース。今年ことしは1~2がつ冬季とうき休業きゅうぎょう期間きかんけ、3月にいよいよオープンしようとした矢先やさきに、東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいきた。

 ゴルフじょうではグリーンが陥没かんぼつしたり、カート専用せんよう道路どうろ亀裂きれつはしったりするなどの被害ひがいたという。それでも自力じりき修復しゅうふくおこない、7がつかりオープンを目指めざしていたが、原発げんぱつかららされた放射ほうしゃせい物質ぶっしつ汚染おせんにより、それも頓挫とんざした。

「6がつ二本松にほんまつ市役所しやくしょ場内じょうない放射線ほうしゃせん濃度のうど測定そくていしてくれたのですが、2つの機器きき平均へいきん数値すうちが、毎時まいじ2.2マイクロシーベルトとどう3.2マイクロシーベルトでした。そのため予定よていされていた公式こうしきせん中止ちゅうしとなり、ならば一般いっぱんのおきゃくさんもれるわけにはいかないという結論けつろんたっし、休業きゅうぎょうめたのです。以来いらい現在げんざいまで営業えいぎょうはしておりません」

 コースないでは、カートあめとい付近ふきん毎時まいじ51マイクロシーベルト以上いじょうというたか放射線ほうしゃせんりょう記録きろくしており、最近さいきんでは芝生しばふくさ検査けんさまわした結果けっか、1kgあたり20まんベクレルという、チェルノブイリの強制きょうせい避難ひなん区域くいきえる汚染おせん箇所かしょがあることもわかったという。

 ただ、休業きゅうぎょうにより経営けいえいかたむいた。サンフィールドしゃは、東電とうでん補償ほしょうもとめる書類しょるい提出ていしゅつしたが、ってもらえなかったという。そのため8がつに、東電とうでんたいやく8700まんえん損害そんがい賠償ばいしょうと、放射ほうしゃせい物質ぶっしつ除染じょせんもとめ、東京とうきょう地裁ちさい仮処分かりしょぶんもうてをおこなったのだ。

 するとこの裁判さいばんにおいて、東電とうでんがわ弁護べんごだん(梅野うめのはれ一郎いちろう荒井あらいきのたかし柳澤やなぎさわひろしてる須藤すとうのぞみさち井上いのうえさとしかく弁護士べんごし)がしてきたのが、前出ぜんしゅつの「セシウムはウチのものではない」といった論理ろんりだ。ここで、
本誌ほんし入手にゅうしゅした裁判さいばん資料しりょうあきらかになった、東電とうでん主張しゅちょう要旨ようし紹介しょうかいしよう。

●「放射線ほうしゃせん測定そくてい精度せいどがそもそも信用しんようできない」

 けんのゴルフじょうでは、前述ぜんじゅつとお二本松にほんまつが、コースないの52ヵ所かしょ放射線ほうしゃせん濃度のうど測定そくていおこなった。ところが東電とうでん弁護べんごだんによれば、「たった52ヵ所かしょ」だとう。

測定そくていおこなわれた場所ばしょは52ヵ所かしょぎず、その結果けっかにばらつきがあることも考慮こうりょすると、前記ぜんき測定そくてい結果けっかのみをもって、本件ほんけんゴルフじょう全体ぜんたい汚染おせんじょうきょう推測すいそくすることはゆるされない〉

 たしかにゴルフじょうひろい。しかし、数ヵ所すうかしょや10ヵ所かしょ程度ていどならともかく、52ヵ所かしょはかった記録きろくもちいるのを「ゆるされない」という主張しゅちょうはかなり強引ごういん印象いんしょうける。しかも、行政ぎょうせい機関きかん測定そくていした公的こうてき数値すうちだ。そんなことをわれたら、たとえ避難ひなん区域くいきないでも大半たいはん場所ばしょが、「賠償ばいしょうなどゆるされない」ことになってしまう。

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