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北村 健太郎「「ヘモフィリア友の会全国ネットワーク」の結成」
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北村きたむら 健太郎けんたろう「「ヘモフィリアともかい全国ぜんこくネットワーク」の結成けっせい

障害しょうがい学会がっかいだいかい大会たいかい報告ほうこく要旨ようし 於:立命館大学りつめいかんだいがく
20090927


報告ほうこく要旨ようし

 北村きたむら 健太郎けんたろう立命館大学りつめいかんだいがく衣笠きぬがさ総合そうごう研究けんきゅう機構きこうポストドクトラルフェロー)
 「「ヘモフィリアともかい全国ぜんこくネットワーク」の結成けっせい

  ほん報告ほうこくでは、日本にっぽん血友病けつゆうびょう患者かんじゃかい/コミュニティの最新さいしん状況じょうきょう報告ほうこくする。
  血友病けつゆうびょう患者かんじゃかい医療いりょう施設しせつまたは地域ちいきごとに結成けっせいされ、活動かつどうつづけてきた。しかし、いわゆる「薬害やくがいエイズ」から深刻しんこく影響えいきょうけ、患者かんじゃかい活動かつどう縮小しゅくしょうあるいは停止ていしせざるをない状況じょうきょうまれたところもすくなくなく、全国ぜんこくヘモフィリアともかい休止きゅうし状態じょうたいとなっている。
  けれども、あたらしい血友病けつゆうびょうしゃ確実かくじつまれ、血友病けつゆうびょうをめぐるしょ問題もんだいえないなか血友病けつゆうびょうしゃ本人ほんにんこえたばねる必要ひつよう実感じっかんしつつあった。他方たほう医療いりょうしゃがわは2004ねんからまいはる日本にっぽん血栓けっせん止血しけつ学会がっかい学術がくじゅつ標準ひょうじゅん委員いいんかい血友病けつゆうびょう部会ぶかい主催しゅさいによる「患者かんじゃ医療いりょうしゃとの血友病けつゆうびょう診療しんりょう連携れんけいについての懇談こんだんかい」を開催かいさいしてきた。かく地域ちいき代表だいひょうしゃは、懇談こんだんかい意見いけん交換こうかんかさね、徐々じょじょ全国ぜんこく組織そしき再建さいけん必要ひつようせい共通きょうつう認識にんしきとして確認かくにんした。同時どうじに、あらたな全国ぜんこく組織そしきは、かく地域ちいき独自どくじせいまえたゆるやかな連絡れんらくたい、ネットワーク形式けいしきとする趣旨しゅし確認かくにんされた。2007ねん3がつ、メーリングリストを活用かつようしたネットワーク準備じゅんびかい発足ほっそくし、すうめい世話人せわにんによる運営うんえいはじまった。
  よく2008ねん初頭しょとう、「特定とくていフィブリノゲン製剤せいざいおよ特定とくてい血液けつえき凝固ぎょうこだいIX因子いんし製剤せいざいによるCがた肝炎かんえん感染かんせん被害ひがいしゃ救済きゅうさいするための給付きゅうふきん支給しきゅうかんする特別とくべつ措置そちほう」の国会こっかい審議しんぎにあたってどう準備じゅんびかい中心ちゅうしんどうほう不備ふび指摘してきする「意見いけんしょ」を提出ていしゅつした。代表だいひょう世話人せわにんである佐野さの竜介りゅうすけ京都きょうとヘモフィリアともかい会長かいちょう)が衆参しゅうさん厚生こうせい労働ろうどう委員いいんかい意見いけん陳述ちんじゅつおこない、国会こっかい決議けつぎにつながるなど早々そうそうにネットワークの実効じっこうせい証明しょうめいされた。同年どうねん3がつ全国ぜんこく20の患者かんじゃかいで「ヘモフィリアともかい全国ぜんこくネットワーク」が正式せいしき発足ほっそくし、現在げんざいは25である。ネットワークは、国会こっかい決議けつぎもとづいて厚生こうせい労働省ろうどうしょうとCがた肝炎かんえん問題もんだい協議きょうぎつづけている。2009ねん2がつ1にちからだいVII 因子いんし血液けつえき製剤せいざい「ノボセブン」の薬価やっか大幅おおはばげの問題もんだいでも、情報じょうほう集約しゅうやくとうおこなっている。ネットワークの今後こんご活動かつどうにも注目ちゅうもくしていきたい。

報告ほうこく原稿げんこう

  ほん報告ほうこくでは、全国ぜんこく組織そしき「ヘモフィリアともかい全国ぜんこくネットワーク」結成けっせいいたるまでの経緯けいいと、日本にっぽん血友病けつゆうびょう患者かんじゃかい/コミュニティの最新さいしん状況じょうきょう報告ほうこくする。

  血友病けつゆうびょう医療いりょうにとって画期的かっきてき血液けつえき製剤せいざい登場とうじょうしたのをきっかけに、1966ねん各地かくち次々つぎつぎ患者かんじゃかいまれた。各地かくち患者かんじゃかい結集けっしゅうして、1967ねん3がつ10日とおか東京とうきょう千代田ちよだ全国ぜんこく町村ちょうそん会館かいかんやく400にん参集さんしゅうして、全国ぜんこくヘモフィリアともかい以下いかぜんとも)が創立そうりつされた。地域ちいき患者かんじゃかいは、当時とうじ血液けつえき製剤せいざい「AHGとう新薬しんやくのよりやす価格かかく、よりおお供給きょうきゅうを」という要求ようきゅう結束けっそくした。その血友病けつゆうびょうしゃやその家族かぞくにとって、1960年代ねんだい後半こうはんから1970年代ねんだい発展はってんてき楽観らっかんてき時代じだいつづいた。★01 しかし、1980年代ねんだいはいって、血友病けつゆうびょうしゃやその家族かぞくは、きびしい状況じょうきょうをくぐりけなければならなかった。

  血友病けつゆうびょうしゃたちの一部いちぶは、血友病けつゆうびょう患者かんじゃへの偏見へんけん差別さべつ助長じょちょう懸念けねんしながらも、1989ねん5がつ大阪おおさかで、同年どうねん10がつ東京とうきょう国家こっか賠償ばいしょう訴訟そしょう提起ていきした。これによって、血友病けつゆうびょうしゃとHIVとの邂逅かいこうは、訴訟そしょうという輪郭りんかくって、おおくの人々ひとびと記憶きおくされることになった。「薬害やくがいエイズ」というづけは、被害ひがい告発こくはつする運動うんどう文脈ぶんみゃくでは効果こうかてきであった。しかし、ぎゃく血友病けつゆうびょう患者かんじゃかい/コミュニティに強烈きょうれつ分断ぶんだん破線はせんき、HIV感染かんせん血友病けつゆうびょうしゃへの眼差まなざしを欠落けつらくさせることになった。★02
  「エイズ」といえば、とスキャンダラスな感染かんせんしょうだというあやまったイメージが印象いんしょうづけられた1980年代ねんだい当時とうじ差別さべつきびしい社会しゃかい状況じょうきょうなか地域ちいき患者かんじゃかい萎縮いしゅくして、その活動かつどう縮小しゅくしょうあるいは停止ていしせざるをない状況じょうきょうまれたところもすくなくない。地域ちいき患者かんじゃかいたばねていたぜんとも休止きゅうし状態じょうたいとなり、日本にっぽん血友病けつゆうびょう患者かんじゃかい/コミュニティは凝集ぎょうしゅうりょくうしなった。

  おおくの血友病けつゆうびょうしゃ存在そんざいわらない現実げんじつであり、次世代じせだい血友病けつゆうびょうしゃ確実かくじつまれている。血友病けつゆうびょうしゃやその家族かぞくは、近年きんねん自己じこ負担ふたん増加ぞうか方向ほうこうにある医療いりょう政策せいさくに、すくなからぬ不安ふあんいている。実際じっさい、2004ねん11月、大阪おおさか栃木とちぎ静岡しずおか京都きょうと広島ひろしまかく府県ふけん代表だいひょうらが「『小児しょうに慢性まんせい特定とくてい疾患しっかん治療ちりょう研究けんきゅう事業じぎょう』の法制ほうせいともな血友病けつゆうびょう患者かんじゃ医療いりょう自己じこ負担ふたん導入どうにゅうについての緊急きんきゅう要望ようぼうしょ」をきょ作成さくせいして、11月22にち尾辻おつじ秀久ひでひさ厚生こうせい労働ろうどう大臣だいじんあて緊急きんきゅう要望ようぼうしょ提出ていしゅつふじ雇用こよう均等きんとう児童じどう家庭かてい局長きょくちょうらとの面談めんだんおこなっている。その結果けっか、「血友病けつゆうびょうおよ類縁るいえん疾患しっかん対象たいしょう除外じょがい」となった。★03 しかし、こうした対外たいがいてき局面きょくめんにこそ、全国ぜんこく組織そしき必要ひつようだという認識にんしき徐々じょじょたかまっていた。

  他方たほう小児しょうに慢性まんせい特定とくてい疾患しっかん治療ちりょう研究けんきゅう事業じぎょう法制ほうせいおよび段階だんかいてき自己じこ負担ふたん発表はっぴょうされたおなじ2004ねんからまいはる日本にっぽん血栓けっせん止血しけつ学会がっかい学術がくじゅつ標準ひょうじゅん委員いいんかい血友病けつゆうびょう部会ぶかい主催しゅさいによる「患者かんじゃさま医療いりょうしゃとの血友病けつゆうびょう診療しんりょう連携れんけいについての懇談こんだんかい」が開催かいさいされはじめた。これまでの経過けいか以下いかとおりである。
2004ねん2がつ8にちだい1かい 患者かんじゃさま医療いりょうしゃとの血友病けつゆうびょう診療しんりょう連携れんけいについての懇談こんだんかい
2005ねん3がつ20日はつかだい2かい 患者かんじゃさま医療いりょうしゃとの血友病けつゆうびょう診療しんりょう連携れんけいについての懇談こんだんかい
2006ねん3がつ5にちだい3かい 患者かんじゃさま医療いりょうしゃとの血友病けつゆうびょう診療しんりょう連携れんけいについての懇談こんだんかい
2007ねん3がつ11にちだい4かい 患者かんじゃさま医療いりょうしゃとの血友病けつゆうびょう診療しんりょう連携れんけいについての懇談こんだんかい
2008ねん3がつ23にちだい5かい 患者かんじゃさま医療いりょうしゃとの血友病けつゆうびょう診療しんりょう連携れんけいについての懇談こんだんかい
2009ねん2がつ15にちだい6かい 患者かんじゃさま医療いりょうしゃとの血友病けつゆうびょう診療しんりょう連携れんけいについての懇談こんだんかい

  「懇談こんだんかい」が着実ちゃくじつあゆみをてきたことは、案内あんないじょう文面ぶんめんからも推察すいさつすることができる。以下いか案内あんないぶんとプログラムの抜粋ばっすいである。
2004ねん だい1かい
  血友病けつゆうびょうのような慢性まんせい疾患しっかん診療しんりょうでは、患者かんじゃさま医療いりょうしゃ連携れんけい重要じゅうようですが、地域ちいきによっては専門医せんもんいかずすくなく十分じゅうぶん情報じょうほう提供ていきょうできていないところもあるのが実際じっさいです。(中略ちゅうりゃく)コミュニケーションをきめこまかく密接みっせつなものにして、うつわる医療いりょうについて両者りょうしゃ相互そうご理解りかいいながらあゆんでくための(中略ちゅうりゃく)「患者かんじゃさま医療いりょうしゃとの血友病けつゆうびょう診療しんりょう連携れんけいについての懇談こんだんかい」を計画けいかくいたしました。
2005ねん だい2かい
  前回ぜんかい懇談こんだんかい意見いけんっただけで本来ほんらい懇談こんだんにはいたらなかったため、今回こんかい時間じかんながくとりましたので、意見いけん交換こうかん具体ぐたいてき問題もんだい検討けんとうすることが出来できるといとおもいます。
2006ねん だい3かい
  今回こんかい患者かんじゃさまからご意見いけんかせていただく時間じかん話題わだい提供ていきょうなか用意よういしてみました。(中略ちゅうりゃく)これまでは医療いりょうしゃがわからの話題わだい提供ていきょうばかりでしたので、今回こんかい患者かんじゃさまからのご発表はっぴょう期待きたいしております。
  そして、だい4かい転回てんかいてんとして、血友病けつゆうびょう患者かんじゃかい日本にっぽん血栓けっせん止血しけつ学会がっかいぞくする「懇談こんだんかい」を積極せっきょくてきに「利用りようする」ようになっていく。2007ねんだい4かいのプログラムに、現在げんざいの「ヘモフィリアともかい全国ぜんこくネットワーク」につながる項目こうもく明記めいきされる。
2007ねん だい4かい
  プログラム
  7. いまこそヘモフィリアのきずなふかめよう――血友病けつゆうびょう患者かんじゃかい全国ぜんこくてきなネットワーク創設そうせつ提案ていあん 三重みえさかえともかい京都きょうとらくともかい有志ゆうし
  これまでは情報じょうほう提供ていきょうにとどまることがおおかったので、今回こんかい患者かんじゃさまとの意見いけん交換こうかんがさらにおおくできるようにしたいとかんがえております。
2008ねん だい5かい
  プログラム
  3. 血友病けつゆうびょう患者かんじゃかい全国ぜんこくてきなネットワーク創設そうせつのその
  今回こんかい患者かんじゃさまからのご意見いけんかせていただく時間じかん話題わだい提供ていきょうなか用意よういしてみました。(中略ちゅうりゃく)これまでは情報じょうほう提供ていきょうにとどまることがおおかったので、今回こんかい患者かんじゃさまとの意見いけん交換こうかんがさらにおおくできるようにしたいとかんがえております。
2009ねん だい6かい
  プログラム
  5. 血友病けつゆうびょう患者かんじゃかい全国ぜんこくてきなネットワークの近況きんきょう 松本まつもと剛史たけし
  6. 肝炎かんえん問題もんだい血友病けつゆうびょうネットワーク 全国ぜんこくヘモフィリアネットワーク世話人せわにん
  これまでは情報じょうほう提供ていきょうとともにおおくの患者かんじゃさま意見いけんかせていただきたいとぞんじます。

  さらに、2008ねんだい5かい懇談こんだんかい」からは、その前日ぜんじつに、血友病けつゆうびょうしゃとその家族かぞくあつまりがたれるようになり、「交流こうりゅうかい」と「懇談こんだんかい」がセットになりつつある。また、「交流こうりゅうかい」がはじまったとしは、後述こうじゅつする「特定とくていフィブリノゲン製剤せいざいおよ特定とくてい血液けつえき凝固ぎょうこだいIX因子いんし製剤せいざいによるCがた肝炎かんえん感染かんせん被害ひがいしゃ救済きゅうさいするための給付きゅうふきん支給しきゅうかんする特別とくべつ措置そちほう」(Cがた肝炎かんえん特別とくべつ措置そちほう)が成立せいりつしたとしでもある。★04
2008ねん3がつ22にちだい1かい 全国ぜんこく血友病けつゆうびょう患者かんじゃ家族かぞく交流こうりゅうかい
2009ねん2がつ14にちだい2かい 全国ぜんこく血友病けつゆうびょう患者かんじゃ家族かぞく交流こうりゅうかい

  2007ねん3がつだい4かい懇談こんだんかい」での三重みえさかえともかい京都きょうとらくともかい提起ていきけて、かくかい代表だいひょうしゃつらなったメーリングリストによるネットワーク準備じゅんびかい発足ほっそくし、すうめい世話人せわにんによる運営うんえいはじまった。このときはまだ、メーリングリストの必要ひつようせいたいする切迫せっぱくかんうすかったようにおもわれる。
  2008ねん1がつ、ネットワーク準備じゅんびかい先天せんてんせい凝固ぎょうこ異常いじょうしょうCがた肝炎かんえん感染かんせんしゃたいする救済きゅうさい不備ふびかんする「「特定とくていフィブリノゲン製剤せいざいおよ特定とくてい血液けつえき凝固ぎょうこだいIX因子いんし製剤せいざいによるCがた肝炎かんえん感染かんせん被害ひがいしゃ救済きゅうさいするための給付きゅうふきん支給しきゅうかんする特別とくべつ措置そちほうあんたいする意見いけんしょ」を地域ちいき患者かんじゃかい連名れんめい提出ていしゅつ。また、代表だいひょう世話人せわにんである佐野さの竜介りゅうすけ京都きょうとヘモフィリアともかい会長かいちょう)が衆議院しゅうぎいんおよび参議院さんぎいん厚生こうせい労働ろうどう委員いいんかい意見いけん陳述ちんじゅつおこない、国会こっかい決議けつぎにつながるなど、早々そうそうおもわぬかたちでネットワークの実効じっこうせい証明しょうめいされた。★05
  2008ねん3がつだい1かい交流こうりゅうかい」、だい5かい懇談こんだんかい」をて、全国ぜんこく20のメーリングリストに参加さんかしている地域ちいき患者かんじゃかい基礎きそに「ヘモフィリアともかい全国ぜんこくネットワーク」が正式せいしき結成けっせいされる。そのあらたなメンバーがくわわり、現在げんざい参加さんかは25である。「ネットワーク」は、血友病けつゆうびょうしゃとその家族かぞく血友病けつゆうびょう患者かんじゃかい相互そうご連携れんけい強化きょうかすることを目指めざしている。「懇談こんだんかい」「交流こうりゅうかい」の回数かいすうかさねることで、全国ぜんこく組織そしき再建さいけん必要ひつようせいかく地域ちいき患者かんじゃかい共通きょうつう認識にんしきとして浸透しんとうした。同時どうじに、あらたな全国ぜんこく組織そしき上意下達じょういかたつしき形態けいたいではなく、あくまでも地域ちいき患者かんじゃかい独自どくじせいまえ、横断おうだんするゆるやかな連絡れんらくたいとすべきであるという趣旨しゅし確認かくにんされた。

  では、なぜあらたな全国ぜんこく組織そしきは「ネットワーク形式けいしき」なのだろうか。はしてきえば、それが現実げんじつてきだからである。だいいちに、全国ぜんこく点在てんざいするかく地域ちいき患者かんじゃかい仕切しきるような強力きょうりょくなリーダーてき患者かんじゃかいないし個人こじんがいない。また、いち患者かんじゃかい一個人いっこじん負担ふたんがかかって、活動かつどう停止ていししてしまうことは全国ぜんこく組織そしき再建さいけんのぞかく地域ちいき患者かんじゃかいにとって本意ほんいではない。だいに、HIV/HBV/HCV重複じゅうふく感染かんせんという稀有けう経験けいけんをしてきた血友病けつゆうびょうしゃは、その複雑ふくざつ多様たよう経験けいけんから多様たよう価値かちかん生成せいせいされた。また、ぜんとも活動かつどう休止きゅうししてから20ねんちかつづけてきたかく地域ちいき患者かんじゃかい独自どくじ活動かつどうには、軽視けいしできないおもみがある。強力きょうりょくなリーダーの不在ふざい多様たようせい尊重そんちょう。このてんかく患者かんじゃかいとも実感じっかんしているからこそ、「ネットワーク形式けいしき」としてまとまっていったとかんがえられる。
  ここで視点してんえてみよう。そもそも「懇談こんだんかい」は、日本にっぽん血栓けっせん止血しけつ学会がっかい学術がくじゅつ標準ひょうじゅん委員いいんかい血友病けつゆうびょう部会ぶかい一部いちぶである。それが近年きんねんだい5かい懇談こんだんかい」、だい6かい懇談こんだんかい」は、「ヘモフィリアともかい全国ぜんこくネットワーク」総会そうかいのような様相ようそうになっている。この現状げんじょうたいして、「ネットワーク」結成けっせい契機けいきつくったともえる医療いりょうしゃがわはどのようにかんがえているのか。報告ほうこくしゃは「懇談こんだんかい」の参与さんよ観察かんさつおこない、複数ふくすう医療いりょうしゃかんがえをたずねてみた。すると、そうじて「いことだとおもう」「患者かんじゃさんがまとまるのは医療いりょうしゃがわとしてもありがたい」といった肯定こうていてき意見いけんであった。穿ほじくった見方みかたをすれば、医療いりょうしゃがわ患者かんじゃかいのネットワークを「利用りよう」して血友病けつゆうびょう医療いりょう情報じょうほう提供ていきょうしようとかんがえているのかもしれない。

  「ヘモフィリアともかい全国ぜんこくネットワーク」が、現在げんざいかかえている案件あんけんおおきくふたつある。だいいちに、Cがた肝炎かんえん特別とくべつ措置そちほう成立せいりつ衆議院しゅうぎいん決議けつぎ「ウイルスせい肝炎かんえん問題もんだい全面ぜんめん解決かいけつかんするけん」、参議院さんぎいん決議けつぎ肝炎かんえん対策たいさくにおける総合そうごうてき施策しさく推進すいしんかんする決議けつぎ」にもとづくネットワークと厚生こうせい労働省ろうどうしょうとのはないが現在げんざい継続けいぞくちゅうである。また、将来しょうらいけて、血友病けつゆうびょう全般ぜんぱんかんする協議きょうぎ継続けいぞく確認かくにんされている。

   だいに、「注射ちゅうしゃようノボセブン採算さいさんひんさい算定さんてい」による薬価やっかげにかかわることがある。2008ねん7がつまつ遺伝子いでんしぐみ製剤せいざい注射ちゅうしゃようノボセブン」を製造せいぞうしているノボノルディスクファーマしゃは、厚生こうせい労働省ろうどうしょうたいして「現行げんこう薬価やっかのままでは近々ちかぢか供給きょうきゅう停止ていしせざるをない」というつよ意志いししめした。その、2009ねん1がつ14にちみず)、中央ちゅうおう社会しゃかい保険ほけん医療いりょう協議きょうぎかい総会そうかいにおいて、薬価やっかみとめられて供給きょうきゅう停止ていし回避かいひされた。しかし、ノボノルディスクファーマしゃが「供給きょうきゅう停止ていし」をして薬価やっか交渉こうしょうおこなったことに、日本にっぽん血友病けつゆうびょう患者かんじゃかい/コミュニティは同社どうしゃたいするいかりや不信ふしんかんつのらせた。ノボノルディスクファーマ日本にっぽん支社ししゃは、2009ねん5がつ24にち)に大阪おおさかで、2009ねん7がつ20日はつかしゅくがつ)に東京とうきょうで「血友病けつゆうびょう患者かんじゃさまとの懇話こんわかい」を開催かいさいしたが、一度いちどうしなった「信頼しんらい」を回復かいふくすることは容易よういではない。これをに、「ネットワーク」では、患者かんじゃかい製薬せいやく企業きぎょうとのコミュニケーションについて模索もさくしている。★06

  「ヘモフィリアともかい全国ぜんこくネットワーク」の活動かつどうは、いままさにこっていることである。今後こんごも「ネットワーク」をめぐるしょ論点ろんてんかんがえていきたい。


ちゅう
★01 北村きたむら 2006
★02 北村きたむら 200902
★03 北村きたむら 2006
★04 北村きたむら 200802
★05 北村きたむら 200810
★06 北村きたむら 200910

参考さんこう文献ぶんけん
北村きたむら 健太郎けんたろう 2009/10/** 「「いたみ」への眼差まなざし――血友病けつゆうびょうしゃをめぐる論点ろんてん構図こうず櫻井さくらい 浩子ひろこ堀田ほった 義太郎よしたろうへん 出生しゅっしょうをめぐる倫理りんり 生存せいぞんがく研究けんきゅうセンター報告ほうこく 2009ねん10がつ下旬げじゅん刊行かんこう予定よてい
◆――――― 2009/02/25 「侵入しんにゅうしゃ――いま、〈ウイルス〉はどこに?」 生存せいぞんがく』vol.1:373-388
 http://www.livingroom.ne.jp/kk/virus.htm
◆――――― 2008/11/01 救済きゅうさいするほうほう?」 現代げんだい思想しそう36-14(2008-11):238
◆――――― 2008/10/10 「Cがた肝炎かんえん特別とくべつ措置そちほうかれるひとたち」山本やまもと たかし北村きたむら 健太郎けんたろうへん 不和ふわに就て――医療いりょう裁判さいばん×せい同一どういつせい障害しょうがい身体しんたい×社会しゃかい:69-70. 生存せいぞんがく研究けんきゅうセンター報告ほうこく3,199p. ISSN 1882-6539 ※
◆――――― 2008/02/01 「C型肝炎しーがたかんえん特別とくべつ措置そちほう功罪こうざい現代げんだい思想しそう』36-2(2008-2):143-147(特集とくしゅう医療いりょう崩壊ほうかい――生命せいめいをめぐるエコノミー) http://www.livingroom.ne.jp/kk/gs0802.htm
◆――――― 2006/03/31 「全国ぜんこくヘモフィリアともかい創立そうりつ公費こうひ負担ふたん獲得かくとく運動うんどう」『コア・エシックス』vol.2:89-102
 http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsce/ce/2006/kk01b.pdf


作成さくせい
UP:20090904 REV:20090921
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