比婆山２

あんた、広島ひろしまの山やまを歩あるき始はじめて、ここが一番いちばん素敵すてきという山やまはどこ？　　　比婆ひば山さんかな。８月はちがつに行いったな。
なら、そこへ行いきましょう。
着ついたよ。途中とちゅうで間違まちがえて、熊野くまの神社じんじゃのほうへ向むかったが、ま、それは愛嬌あいきょう、ここが県民けんみんの森もりなんだよ。
ほぅ、ホテルみたいね、へぇ、泊とまれるの。さすがに今日きょうはウィークデイだから駐車ちゅうしゃしている車くるまも少すくないわね。
橋はしを渡わたって、ほら、広場ひろばの奥おくを見みてみ、あの山やまが比婆ひば山さんなんだよ。もう、色いろが変かわって黄きばんでいるぞ。
出雲いずも峠とうげのほうへ歩あるいていくのね。キャンプの施設しせつもあるのねぇ。

まだこのあたりは下しただから青葉あおばのままだね。頂上ちょうじょうは色いろが変かわっている、ちょっとの高度こうど差さなんだがねぇ。
谷川たにがわから離はなれるのね。あの建物たてものはなに？　トイレと避難ひなん小屋こやなのか。その先さきが出雲いずも峠とうげなのね。
そう、この先さきは島根しまね県けんだよ、今いま、県境けんきょうの道みちを歩あるいているわけだ。
立派りっぱな立たち木ぎの森もりに入はいったわね。あれ、道みちの傍はたの大おおきな樹きの下したにロープが張はってある、迂回うかいする道みちがついているよ。
ほんとだ、８月がつに歩あるいたときにはこんな措置そちはしてなかったよ。大木たいぼくなんで根ね張はりを保護ほごするために、根元ねもとを踏ふまないよう登山とざん者しゃを遠とおざけるのかな。

道みちは山腹さんぷくを渡わたっていくよ、まっすぐ尾根おねを行いけば効率こうりつ的てきだがね、そこはゆるゆると迂回うかいするんだよ、北きたの尾根おねから東ひがしの尾根おねへと取とり付つき尾根おねを取とり替かえて登のぼるんだよ。
一気いっきに登のぼって息いき絶たえ絶だえになるより、優雅ゆうがにゆるゆると登のぼる道みちにしてくれて、ありがたいわね。
梢こずえの先さきに空そらが見みえてきた、頂上ちょうじょうは近ちかいわね。　　そう、風ふう衝で木きが成長せいちょうできなくなってきている、すぐ頂上ちょうじょうだよ。
やぁ、着ついた、頂上ちょうじょうなのね、ここが烏帽子山うぼうしやまなのか。真正面ましょうめんが比婆ひば山さんか。
え、頂上ちょうじょうの岩いわの上うえに行いくの。ほう、谷たに向むこうが吾妻山あづまやまなの、猿政山さるまさやまがあって、その後うしろの山やまが三瓶山さんべさん、へぇ、三瓶山さんべさんまでも見みえるの。宍道湖しんじこまでも見みえるって、どこどこ、ほんとだ、光ひかってる。

ねぇ、あの雲くもがかぶさってる山やまは大山おおやまじゃないかしら、そうよね、大山おおやまだぁ、さすがに大山おおやまは群ぐんを抜ぬいているわねぇ。
ここ烏帽子山うぼうしやまへは、吾妻山あづまやまからも足あしを伸のばしたことがあるんだよ。
県境けんきょうを歩あるいて、吾妻あづま山さんへの道みちを過よぎれば広島ひろしま県内けんないなんだよ。ここからは比婆ひば山さん、比婆ひば郡ぐんを代表だいひょうする山やまなんだね。
このへんからはブナの純じゅん林はやしなのか。ほんとね、ブナの大木たいぼくに囲かこまれているわね。
頂上ちょうじょうにイザナギの御陵ごりょうがある、それをはばかって、伐採ばっさいの斧おのを入いれることなく、そのまま残のこったんだろうね。

これがその御陵ごりょうなのね。あ、囲がこいの真まん中なかの巨石きょせきがそのシルシなのか。なんか気味きみが悪わるいというか、落おち着つきにくいところね。
圧迫あっぱく感かんがあるよな、さっさと離はなれようか。
ブナの黄葉こうようて、遠とおくから見みると茶色ちゃいろく冴さえない色いろなんだが、近ちかづいて見みるとけっこう鮮あざやかな黄色きいろなのね。
西日本にしにほんの山やまは全体ぜんたいでは茶色ちゃいろに変色へんしょくするね、クリやクヌギに代表だいひょうされるように地味じみな色いろだね、東北とうほく地方ちほうや北きたアルプスの鮮あざやかな変身へんしんとは大だい違ちがいだね。

比婆ひば山さんを降おりた最低さいてい鞍部あんぶが越原おっばら越えつ(オッパラゴエ)なんだね、ここから管理かんりセンターへショートカットすることもできる、この先さきの分岐ぶんき、尾根おね道どうを行おこなって、池いけの段だんに向むかおうか。
ここが池いけの段だん、草原そうげんになっているだろ。ここからの展望てんぼうがええんだよ。
そうよね、あれが比婆ひば山さん、烏帽子山うぼうしやまは比婆ひば山さんに隠かくれているのね。ならんで吾妻山あづまやまかぁ。あっちからこっちへ県境けんきょうの山やまがさえぎるものなく見晴みはらせるのは素晴すばらしいよね。
池いけの段だんの岬みさき台地だいちの先さきに険けわしい山やまが見みえるだろ、福田ふくだの頭あたま、県境けんきょうの山やまより南みなみが険けわしく見みえる珍めずらしい例れいなんだよ。
で、この先さきが立烏帽子山たてえぼしやまなのね、頂上ちょうじょうの展望てんぼうはないって？展望てんぼうがなきゃつまらんな、麓ふもとに道みちがあるの？なら、そっち。

中国ちゅうごく自然しぜん歩道ほどうか、頂上ちょうじょうをバイパスする道みちだけど、なかなか味あじのある道みちじゃないの。
出でたよ、立たて烏帽子えぼし駐車ちゅうしゃ場じょう、さっきからひとに出会であうのは、ここから出発しゅっぱつするからなのね。
駐車ちゅうしゃ場じょうの先さきに黄色きいろいロープで封鎖ふうさしてある道みちが見みえるやろ、ここから管理かんりセンターへ向むかうんだよ。
ここから道みちが長ながいんだよ。延々えんえんと歩あるかなきゃならない、という印象いんしょうが残のこってるよ。
笹ささの尾根おね、という道みちなんだとさ、最初さいしょは笹ささが生はえてる尾根おねなんだと理解りかいしていたんだよ、ガイドブックを読よみ返かえして、笹ささの尾根おねという固有名詞こゆうめいしなんだと、やっと気きがついたのさ。

そうよね、道みちは広ひろくて、笹ささに覆おおわれた道みちという印象いんしょうはないわね。
展望てんぼうが開ひらく箇所かしょに差さし掛かかった、見みえるのは道後山どうごやまだろうな、お、あれは大山おおやまだ、はっきりと見みえる。
尾根おねをユーターンして、山腹さんぷくを渡わたって、次つぎの尾根おねへ移うつって行いくんだよ。この尾根おねも回まわって迂回うかいして、ここで分岐ぶんきになる。
上うえ・下した、どっちへ行いくの？
下したと思おもうだろ、上うえへ行いくと展望てんぼうの園地えんちなんだよ。そっちへ向むかおう。

展望てんぼう園地えんちの展望てんぼうはあんまり大たいしたもんじゃないんだよ。出雲いずも峠とうげから毛無山けなしざんが見みえるくらい、遠とおくに猫山ねこやまが見みえるくらいだね。
そうね、肝心かんじんの烏帽子山うぼうしやま比婆ひば山さんは木々きぎに隠かくれて見みえないのね。
あとは降おりていくだけなんだが、右みぎへ左ひだりへ、ジグザグに折おれ曲まがりながら降おりて行いくんだよ。
さぁ、ここ、広場ひろばが見みえる、管理かんりセンターが見みえる、やっと駐車ちゅうしゃ場じょうまで降おりてきたよ。

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