多飯が辻山２

人影ひとかげ静しずかな多飯おおいいが辻山つじやま（おおいがつじやま）２

今いま、中国ちゅうごく薬師くすしを巡拝じゅんぱいしているんですよ。第だい１３番ばんの徳とく雲寺くもでらを参拝さんぱいしたところです。
どこか近所きんじょの山やまにも登のぼりたいものだね。地図ちずを見渡みわたすと、多飯おおいいが辻山つじやま、ここは以前いぜんに登のぼったことがあるが、もういっぺん登のぼってみてもええだろう。
徳とく雲くも寺てらから直接ちょくせつの道みちをたどったので、えらく迷まよったが、そんな苦労くろうはせぇでもええのにね、東城とうじょう近ちかくから覚おぼえた道みちを進すすめばよかったのにね。
いぃや、迷まよっても、ほら、見覚みおぼえのある風景ふうけいが出でてきたぞ。ここが多飯おおいいが辻山つじやまの山麓さんろくの道みちだよ。
登山とざん口こうの農家のうかのところ、ここに駐車ちゅうしゃしたのでは邪魔じゃまになるかもしれない、少すこし北側きたがわに道みちが膨ふくれた駐車ちゅうしゃスペースがあるんだよ。

さぁ、これでええ、車くるまを止とめて、歩あるいて登山とざん口こうまで引ひき返かえそう。
多飯おおいいが辻山つじやま登山とざん口こうと看板かんばんが出でている。ススキの中なかに地蔵じぞうさんが座すわっているが、磨すり減へって年号ねんごうまでは読よめないね。
谷たに沿ぞいの道みちを進すすむ、登山とざん口こうの農家のうかの水源すいげんの桶おけが見みえる、それを横目よこめに通とおり過すぎる。
急きゅうに登のぼり下くだりの坂さかになるのは砂防さぼうダムのせいなんだよ。ダムがなければ平坦へいたんな谷たに沿ぞいの道みちなんだがね。
涸かれ谷だにで、水流すいりゅうに洗あらい流ながされて大おおきな岩いわが累々るいるいと重かさなっている。これでは砂防さぼうダムを設置せっちしとかないと安心あんしんできないね。

間伐かんばつの杉すぎの木きを並ならべて谷たにを渡わたる、水みずのない谷たにを渡わたるのに大おおげさな感かんじがするんだが、雨あめの日ひでないのを感謝かんしゃするんだよ。雨あめなら激流げきりゅうの谷たにだろうさ。
見渡みわたす限かぎり植林しょくりんで、林はやし床ゆかにほとんど草木くさきがないぞ。こんな状態じょうたいでは、雨あめが降ふると地面じめんをそのまま流ながれて一挙いっきょに激流げきりゅうになってしまうだろうな。
ここまで裸はだか地ちの林はやし床ゆかは、ほかで見みたことがないぞ。
地面じめんに丸まるい粒々りゅうりゅうが落おちているだろう。ウサギやシカのうんこじゃないよ、ヒノキの実じつなんだよ。
あらま、そうなの。へぇぇ、ウサギの糞くそだと思おもっていた。大量たいりょうに糞くそだらけで、どれだけウサギがいるんだろうと考かんがえていたとこなのよ。

道標どうひょうがある、斜ななめ上じょうを指さしているが、訂正ていせいが入はいって横よこ方向ほうこうに進すすむようにと上書うわがきしてあるぞ。
珍めずらしくここは笹原ささはらの中なかを進すすむようになるね。笹ささで泳およぐのもここだけだな。抜ぬけると、また裸はだかの林はやし床ゆかの植林しょくりんが続つづくよ。
山腹さんぷくを横断おうだんして、左ひだりから右みぎへと進すすんで行いく、結局けっきょく、また左ひだりへゆり戻もどって行いくんだね。
これからが水平すいへい道どうなのね。山頂さんちょうのすぐ下かを鉢巻はちまきに巻まいてたどって行いった、憶おぼえてる。
道みちに敷石しきいしを敷しいて参道さんどうらしくしてあるのだが、石いしが凸凹おうとつでかえって歩あるきにくいのだがね。

案内あんない板ばんには大仙だいせん寺てらとあっただろ、これはどう見みても神社じんじゃなんだがね。奥おくに本殿ほんでんがあって、手前てまえに拝殿はいでんがある。
今いまにも崩くずれそうに辛かろうじて立たっているよ、雪ゆきの多おおいところだから、拝殿はいでんの軒のきを支ささえたり、本殿ほんでんを四方しほうから突つっ張ぱったり、こりゃぁ大変たいへんだ。
地蔵じぞうがあって文化ぶんかと年号ねんごうが刻きざんである、1800年代ねんだい初頭しょとう、さっきの水平すいへい道どうのところにも地蔵じぞうがあって、年号ねんごうが安永やすなが、1700年代ねんだい後期こうき、江戸えど期きからお山やま信仰しんこうが盛さかんになったということなんだろうね。
山頂さんちょう１．５分ふんと書かいてあるよ。
そんなに短みじかいはずはないよ、山頂さんちょうに５分ふん、にの字じがかすれているので、１、と読よめてしまったんだな。

木きの階段かいだんをとんとんと上あがって、さぁ、山頂さんちょうだ。ここが多飯おおいいが辻山つじやまだよ。
西にしの方向ほうこうへ歩あるくと、ベンチがあったはず、あった、あった。
ここは小学校しょうがっこう、保育園ほいくえんの遠足えんそくで登のぼってくるんだね。車くるまで山頂さんちょう近ちかくまでの林道りんどうがあるんだそうな、登山とざん道どうを歩あるかず、ショートカットの道みちを使つかうんだそうな。
今日きょうは空気くうきが水蒸気すいじょうきっぽくて見通みとおしが悪わるい。周囲しゅういの山やまが全然ぜんぜん見みえないね。麓ふもとの集落しゅうらくが見みえるのでせいぜいだな。
東ひがしへ見渡みわたす切きり開びらきがあったはずだよ。あんまり歩あるかれていないねぇ、イバラが茂しげって歩あるきにくいのなんの。止とめよう、引ひき返かえそう。

ＧＰＳのログも削除さくじょして、行いかなかったことにしようぜ。
とんとんとんと降おりて行いくんだが、降おりると判わかるよ、登のぼりがけっこうきつかったのが身みに沁しみる、なかなかの傾斜けいしゃの道みちだったんだね。
さて、戻もどったぞ。
取とり付つきからお宮みやのところまで、ずぅっと植林しょくりんの中なかだったな、風景ふうけいとしては同おなじで、変化へんかの乏とぼしいコースだったな。
小奴可おぬかりんご園えんの看板かんばんがあるわね、帰かえる前まえによってりんごを買かって帰かえろうよ。

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