仙ノ山

石見いわみ銀山ぎんざん、地名ちめいが石いし銀ぎん（いしがね）、仙せんノ山やま

中国ちゅうごく地蔵じぞうを巡拝じゅんぱいしているんですがね。大田おおた市内しないの福ぶく城じょう寺てらに寄よって来きました。
福ぶく城じょう寺てらには格別かくべつ驚おどろかないが、近所きんじょに物部ものべ神社じんじゃがあります。天理てんりの石上いしがみ神社じんじゃと同どう系統けいとうの物部ものべ一族いちぞくの縁えん（ゆかり）と知しって、どうしてこんなところに？
物部守屋もののべのもりやと蘇我馬子そがのうまこは争あらそって、物部ものべ一族いちぞくは負まけて駆逐くちくされたのですが、こんなところで永ながらえていたとは始はじめて知しりました。
さて、福ぶく城じょう寺てら・物部ものべ神社じんじゃから大田おおた市街地しがいちに近ちかづいて、寸前すんぜんで反転はんてんして南みなみへ向むかう。
さすがに世界せかい遺産いさん登録とうろくの成果せいかなのか、道路どうろが新あたらしい。ちょっと古ふるい地図ちずでは、現実げんじつとあまりに大差たいさがあって、ここはどこ、の状態じょうたいになってしまうね。
大森おおもりの市街地しがいちに入はいるもんじゃないよ、駐車ちゅうしゃ場所ばしょがないよ、こんな情報じょうほうを得えていたので、離はなれた場所ばしょの駐車ちゅうしゃ場じょうに向むかうことにする。
新あたらしく、石見いわみ銀山ぎんざん世界せかい遺産いさんセンターという施設しせつが出来できて、そこに無料むりょうの駐車ちゅうしゃ場じょうがあって、なんぼでも駐車ちゅうしゃ可能かのうです。
一番いちばん奥おくの駐車ちゅうしゃ場じょうに入いれて、センターでイラスト地図ちずをもらう。歩あるいて行いくにはどの道みちを行いけばええですか。
毎度まいどのことなのだが、あっちもあります、こっちからも行いけます、いっぱい教おしえてくれるが、全部ぜんぶは覚おぼえきれないよ。
ええ加減かげんに話はなしを受うけ流ながして、大雑把おおざっぱに方向ほうこうをめぐらして、こっちの方ほうだろう。
観光かんこうバスの駐車ちゅうしゃ場所ばしょと山やまぎわの間あいだに案内あんないの杭くいが見みえる。これだ、これだ、銀山ぎんざん公園こうえんまで1.3kmと書かいてある。

谷たに底そこへ降おりて行いく道みちなんだね。階段かいだんをとんとんと降おりて、砂防さぼうダムか砂すな溜ためダム、こいつが谷たにをせき止とめてそびえている。
まむしに注意ちゅうい、と看板かんばんがあるが、道みちの両側りょうがわは広ひろく刈かり込こんである、じゅうぶん広幅ひろはばの歩道ほどうなので、そんな心配しんぱいはしなくてもええよ。
農家のうかが見みえてきてここから舗装ほそう路ろ、すぐにバス道どうと合流ごうりゅうする。
五百羅漢ごひゃくらかんの羅漢寺らかんじの前まえに出でる。観光かんこう客きゃくがいっぱい集あつまっているが、羅漢らかんさんはどうでもええな。
次つぎの角かくに、石見いわみ銀山ぎんざん公園こうえんと門もんがある。ここで、町並まちなみ地区ちくと銀山ぎんざん地区ちくと、おおよそふたつに分わかれるのだそうな。
町並まちなみ地区ちくのほうへは向むかわない。川上かわかみの銀山ぎんざん地区ちくへと進すすんで行いく。
右みぎの道みち、橋はしを渡わたれば銀山ぎんざん地区ちくのハイライトの龍りゅう源げん寺間てらま歩ふへと進すすむ。左ひだりからの道みちは、仙せんノ山やまから降おりてくる林道りんどうと繋つながっている道みちなのだ。
寺てらの山門さんもんなんだが、山吹やまぶき城じょうの城門じょうもんが転用てんようされている。
徳川とくがわ家康いえやすが石見いわみ銀山ぎんざんを直轄ちょっかつにして、山吹やまぶき城じょうを廃止はいしし代官だいかん所しょを設もうけた。
それで城しろを壊こわしたということなら、４００年ねん以上いじょうが経過けいかしていることになる。そんな古色こしょくがあるように見みえるかい。古ふるいような、そこまでは無ないような、判定はんていが難儀なんぎだねぇ。
民家みんかの間あいだに仙せんノ山やまが見みえる。ふぅむ、これから登のぼるのはあの山やまなのだな。

○○スミダ。××ニダ。
へぇぇ、韓国かんこくからの団体だんたいだぜ。石見いわみ銀山ぎんざんにやってくるとは、ずいぶんと渋しぶ好このみのツァだねぇ。これも世界せかい遺産いさん登録とうろくの効果こうかなんだろうね。
交通こうつう止どめのバリケードがある。がけ崩くずれで車両しゃりょうは通行つうこう不能ふのうなのだそうな。もちろんバスも運行うんこう中止ちゅうし、路線ろせんはここまで。
道標どうひょうがあって、山吹やまぶき城跡じょうせき登山とざん口こうはここなのだな。まむし注意ちゅういと案内あんないがあるので、ちょっと引ひいてしまう。
この先さきは完全かんぜんに通行止つうこうどめ、車両しゃりょうだけじゃないよ、人ひとも通行止つうこうどめで、見張みはりの人ひとを置おいて誘導ゆうどうしている。
川かわ沿ぞいの歩道ほどうを歩あるきながら車道しゃどうを観察かんさつしていたのだが、どこもがけ崩くずれしたような様子ようすは見みえないよ。
しばらく進すすむと、防護ぼうごネットが張はってあって落石らくせき防止ぼうしの工事こうじをしていた。ははぁ、あの交通こうつう止どめの区間くかんは落石らくせきがひんぱんな区間くかんなんだ。
それなら、車両しゃりょうだけじゃない、人ひとが通かよって落石らくせきの直撃ちょくげきを食くらうこともじゅうぶんあることだよね。
ここが龍りゅう源はじめ寺てら間あいだ歩ふ（まぶ）、この中なかを歩あるいて通過つうかできるのだが、GPSには不向ふむきなのだよ。GPSはトンネル・物陰ものかげで人工じんこう衛星えいせいを見失みうしなうと都合つごうが悪わるい。
引ひき返かえして、佐さ毘賣山やま（さひめやま）神社じんじゃのほうへ歩あるいて行いこう。
標識ひょうしきは、山神さんじん社しゃ、山神さんじん宮みやとあって、通常つうじょうはこんな名前なまえで呼よばれていたのだろうな。

佐さ毘賣山やま（さひめやま）神社じんじゃは、益田ますだ市しの比礼振山ひれふりやまでも見みたことがあるので、なにやら親したしみを感かんじる。
神社じんじゃの石段いしだんの手前てまえで道標どうひょうがある、出土しゅつど谷だに・仙せんノ山やま、神社じんじゃから行いきたかったのだが、道標どうひょうに従したがわねば、しぶしぶここで角かくを曲まがる。
脇道わきみちを進すすむが、神社じんじゃへ誘導ゆうどうする道みちもある。やっぱり寄より道みちして神社じんじゃを見みておきたい。へぇぇ、これが本殿ほんでんなのかい。
天気てんきはよくないのですよ。降ふったり止やんだりの定さだまらない天気てんきで、濡ぬれた草くさでズボンがビッショリになるのではなかろうか。
どうもそうでもないみたい。草刈くさかりがじゅうぶんで、草くさに触ふれずに歩あるいていけるみたいだよ。
入口いりくちには警告けいこくの看板かんばんがある、間あいだ歩ふ（まぶ）や坑口こうこうに近寄ちかよらないこと。
間あいだ歩ふ（まぶ）とはわたしの世代せだいでも生いきてる言葉ことばなんですよ。
間あいだ歩ふ（まぶ）とは横穴よこあなのこと、縦穴たてあなはダメ、それもかなり深ふかくなきゃいけない、奥おくから水みずが湧わいていればなおよろしい。都会とかい地ちの防空壕ぼうくうごうのようなもんですね。
年寄としよりが普通ふつうにマブと呼よんでいた。そのまま口伝くちづたえしてきたが、次つぎの世代せだいにこの言葉ことばを渡わたしたかというと、かなり怪あやしい。横穴よこあなの奥おくが潰つぶれて、使つかえなくなった穴あなが増ふえたということもあるのだよ。
斜面しゃめん一帯いったいは竹たけの林はやしの中なかを進すすむ。竹たけは自然しぜんには増ふえないのだよ。必かならず人ひとの手てで移うつしてやらないと繁殖はんしょくしない。昔むかしはこの斜面しゃめんは人里ひとざとだった証拠しょうこだよ。

竹たけやぶを透すかしてみると、石垣いしがきで段々だんだんが出来できている。ひとの住すまい跡あとなんだろうね。
道みちの両りょう脇わきに墓地ぼちがあって墓石はかいしが草くさに埋うずもれている。
今いままでの山腹さんぷくをジグザグに登のぼる道みちから、稜線りょうせん・尾根おねを進すすむ道みちに変かわった。
稜線りょうせんにあるこの岩いわは米べいカミ岩がんと言いうのだそうな。
なんで名前なまえが米べいカミかはともかくも、この尾根おね近辺きんぺんは岩いわの露頭ろとうだよ。地中ちちゅう深ふかくの核心かくしんを探さぐるには露頭ろとうが頼たよりだよね、イケル、ダメ、の判定はんていに使つかうのだろうか。
尾根おねから離はなれて水平すいへい道どうに変化へんかしてきた。
このあたりも、自然しぜんの平たいらとは思おもえない。土木どぼく工事こうじで埋うめたり切きり出だしたりで均ならしたように見みえるぞ。
再ふたたび、竹たけやぶに入はいって行いく。巨大きょだいな竹たけやぶで、歩あるいても歩あるいても竹たけやぶの中なかだよ。
これはわたしの仮説かせつだが、<竹たけは人ひとが栽培さいばいしたものだ>理論りろんによると、人家じんかがあった痕跡こんせき・証拠しょうこなんだよね。
竹たけやぶを抜ぬけて、ぽっかりと空閑地くうかんちに出でてきた。井戸いどの石組いしぐみもあるし、池いけを掘ほって石垣いしがきで補強ほきょうしてある。説明せつめいの看板かんばんはないが、ここは集落しゅうらくの跡あとだよ。
空閑地くうかんちを抜ぬけて、次つぎの草原そうげんに道標どうひょうがある。石いし銀ぎん（いしがね）集落しゅうらく跡あと、石いし銀ぎん（いしがね）千畳敷せんじょうじき、佐さ毘賣山やま（さひめやま）神社じんじゃ。

ここから降おりて、石いし銀ぎん集落しゅうらく跡あとへ行いってみよう。土木どぼく工事こうじで造成ぞうせいして平たいらにしてある。住居じゅうきょ跡あとなんだそうな。
住すまいだったり、銀ぎん精錬せいれんの職場しょくばだったり、職しょく住じゅう混在こんざいの街まちだったのだそうな。
最盛さいせい期きには、石見いわみ銀山ぎんざんの人口じんこうは２０万まん人にんだったのだそうな。佐さ毘賣山やま（さひめやま）神社じんじゃの斜面しゃめんの石垣いしがき、ここの平面へいめん、山やまのあちこちに住すまいして、２０万まん人にんの話半分はなしはんぶんとしても、大勢おおぜいの人間にんげんがこんな住ずまいをしていたのだよなぁ。
そうそう、石いし銀ぎん（いしがね）とは地名ちめいなのだそうな。このあたり一帯いったい、銀ぎんの石いしを掘ほる人ひとが住すむから地名ちめいが石いし銀ぎん（いしがね）、明快めいかいな命名めいめいだよねぇ。
石いし銀ぎん（いしがね）千畳敷せんじょうじきはここより高たかい位置いちにあるから頂上ちょうじょうに近ちかいだろう。そっちへ行いってみよう。
説明せつめい書がきによると、ここには銀ぎんの精錬せいれん所しょがあったのだそうな。
間あいだ歩ふ（まぶ）もあり、ちょっと下したに大おおきな間あいだ歩ふ（まぶ）の坑口こうこうが開ひらいている。
どうなんだろう、精錬せいれん所しょは間あいだ歩ふ（まぶ）それぞれにあったのだろうか。腕うでのええ職人しょくにんのところへ、あちこちの間あいだ歩ふ（まぶ）から銀鉱ぎんこう石せきを運はこんだのだろうか。
鉱石こうせきは僅わずかで大だい部分ぶぶんがガラ石せきだもの、輸送ゆそうの効率こうりつからすると、間あいだ歩ふ（まぶ）それぞれで精錬せいれんしたと考かんがえるほうがムダが少すくないよね。
間あいだ歩ふ（まぶ）それぞれが請うけ負おいだったちゅうことは、掘ほって運はこび出だして精錬せいれんして銀塊ぎんかいにするまでが一貫いっかんした工程こうていだったということだろうな。

ここから先さきには案内あんないも何なにもないが、竹たけやぶの竹たけに赤あかテープ白しろテープが結むすんである。尾根おねへ登のぼるコースを誘導ゆうどうしている。
竹たけやぶが密集みっしゅうしている中なかを切きり開ひらきの道みちが伸のびている。尾根おねをたどりながら、谷たにの頭あたまを踏ふんで別べつの尾根おねに向むかっていると判わかる。大おおきく湾曲わんきょくしながら進すすむのですよ。
三角さんかく点てんがある。何なんの標示ひょうじもないが、ここが仙せんノ山やまの頂上ちょうじょうなんですよ。展望てんぼうは？密林みつりんの中なかだ、なんにも見みえやしませんよ。
三角さんかく点てんと三角さんかく点てんを結むすぶ、観測かんそく用ようの切きり開ひらき、この見通みとおしのラインの果はてに見みえるのが矢滝城山やたきしろやまではなかろうか。他たの切きり開びらきは潰つぶれて見みえやしない。
さぁて、戻もどろうか。
竹たけやぶの道みちを引ひき返かえして千畳敷せんじょうじきまで戻もどったぞ。
仙せんノ山やまへの道みちと反対はんたい方向ほうこうに道みちが見みえる。
そっちへ進すすめば、道標どうひょうがあって、本谷ほんや・大久保おおくぼ間あいだ歩ふ（まぶ）、於紅ヶ谷だに、於紅ヶ谷だには谷たに底そこへ向むかうので論外ろんがい、このまま砂利じゃり道どうの林道りんどうを進すすんで行いく。
すぐに、本谷ほんや・大久保おおくぼ間あいだ歩ふ（まぶ）への分岐ぶんきにさしかかる。
ここで反省はんせい、この林道りんどうを歩あるいて降おりたのだが、展望てんぼうはないのに長ながい道みち、ここで大久保おおくぼ間あいだ歩ふへ道みちを変かえていればもっと面白おもしろかったかもしれない。

林道りんどうの両りょう脇わきは樹きが繁しげって、ほとんど展望てんぼうがないのですよ。
わずかに、切きれ目めがあって正面しょうめんに三瓶山さんべさんが見みえる。他たでは見みえないから、ここで存分ぞんぶんに堪能たんのうしてね。
足許あしもとの梢こずえの切きれ目めから駐車ちゅうしゃ場じょうが見みえる。あそこから出発しゅっぱつしたんだよ。
曲まがり角かどに鉄てつパイプで櫓ろを組くんである。展望てんぼう台だいなんだね。この上うえに登のぼっても、降おりて地面じめんの上うえからも、そんなに展望てんぼうは違ちがわなかった。
何なによりも目めを惹ひくのは要害山ようがいさん・山吹やまぶき城跡じょうせき、背後はいごの鋭するどい稜線りょうせんの山やまが高山たかやま・馬路うまじ高山たかやま、谷たに底そこを見みれば、大森おおもりの町並まちなみ地区ちく、ここが林道りんどうの唯一ゆいいつのハイライトだね。
地図ちずを見みてほしいのだが、出発しゅっぱつ点てん近ちかくと仙せんノ山林さんりん道どうとの間あいだに道みちがある。帰かえりはショートカットでこの道みちを利用りようするつもりでした。
その山道さんどうの分岐ぶんきには道標どうひょうもないし、進すすめるのか不通ふつうなのかが不明ふめいで、歩あるくのを止とめたのですよ。
麓ふもと側がわには一軒家いっけんやがあって、そこには千せん人にん壷つぼと道標どうひょうがあったのを覚おぼえています。
あとで調しらべたところでは、千せん人にん壷つぼとは、罪人ざいにんなどを処刑しょけいのあと、穴あなに放ほうり込こんだ、そんな場所ばしょなんだそうです。
観光かんこうとしてはマイナス材料ざいりょうなので、パンフレットから削除さくじょ、石見いわみ銀山ぎんざん資料しりょう館かんからも撤去てっきょ、非公開ひこうかいとしたのだそうです。
結果けっか論ろん、そんな気味きみの悪わるいところなら行いかなくてよかった。林道りんどうをこのまま歩あるいて行いこう。

どんどん歩あるいて、もとの舗装ほそう路ろ、観光かんこうの道みちまで戻もどってきた。
五百羅漢ごひゃくらかんから一軒家いっけんやの前まえまで戻もどる。ここにある千せん人にん壷つぼの道標どうひょうはいずれ撤去てっきょされるだろうな。千せん人にん壷つぼは闇やみの歴史れきしとして覆おおい隠かくされてしまうだろう。
一軒家いっけんやの前まえから仙せんノ山やまが見みえる。
そりゃまぁ、仙せんノ山やまは地下ちかには銀ぎんが埋うまっていて石見いわみ銀山ぎんざんの核心かくしんだし、歴史れきしを体感たいかんするにはええのだが、登のぼってみて面白おもしろい山やまとは言いえないね。
小こぶりではあるが、要害山ようがいさん・山吹やまぶき城址じょうしのほうが展望てんぼうも広ひろがるし、そっちへ登のぼるのをお勧すすめするね。

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