(Translated by https://www.hiragana.jp/)
答えの無い問い--フジヤマ制作所

こたえの~ハートのくにのアリス次元じげん

だいよんしょう それぞれの決着けっちゃく

だいはちせつ 本当ほんとう気持きも

※このかい露骨ろこつではありませんが、わり性的せいてき表現ひょうげんがあるのでご注意ちゅういください。が、キスもなければふくぎません。

滞在たいざい無事ぶじもどってから、おだやかにときながれた。アリスが自室じしつのテラスから夕焼ゆうやけをながめていたときだった。

「そろそろハッキリさせようかとおもうんだ」
 突然とつぜんエースがした。それをいたアリスはこたえの催促さいそくだと気付きづいた。

最初さいしょはペーターさんのものだといたから、きみうばってやろうとおもったんだ」
 いけしゃあしゃあとつづけるかれに、アリスはまるくした。ペーターのことをはなすときだけは、このおとこ子供こどものように感情かんじょうあらわにする。それは反対はんたいにペーターにもえることだった。

けたみたいだろう? おれ、あのひとにだけはけたくないんだ。大事だいじ相手あいて一緒いっしょにいつまでもいられるなんて、うらやましくっててたくなる」

「まるでペーターをられてくやしいってこえる。わたし嫉妬しっとしているみたい」
 そううとバツがわるそうに騎士きし苦笑くしょうした。

「まあ、ね。でもすぐにそれが一方いっぽう通行つうこうだとかって、てて愉快ゆかいだった。ざまあろっておもった」
「あんたっていややつね」

「そのうちいつのにかきみからはなせなくなっていた。ペーターさんよりもずっときみのことがになってた」
 なんでだろうなと本気ほんき不思議ふしぎそうにかれくびかしげている。眉根まゆねせたアリスはしがらみ頬杖ほおづえいた。

「ペーターにってもあんまりうれしくないわ。あなたたちの友情ゆうじょうって銃弾じゅうだんうじゃない。あなたはペーターのこときらいだとおもってた」

エースがひとみじて、しろみみおもいをめぐらせた。口角こうかくえてがっていき、ニヤニヤといやらしいかおつきになる。
なんで? おれ、ペーターさんきだよ? てると自然しぜんわらっちゃうんだぜ?

はらかかえて、ね。普段ふだんあつかいも大分だいぶひどいから、余計よけいそうえてた」
 言葉ことば説得せっとくりょくにさすがのアリスもあきれる。馬鹿ばかにしつつも、このおとこはペーターに好感こうかんいている。しかも本人ほんにんあきらかにいやがるような好感こうかんかただった。

「でもね、たしかにあなたはいつもペーター=ホワイトを意識いしきしてた」
 エースがきょかれたようなかおをした。そしてすぐに底意地そこいじわるそうな表情ひょうじょうわる。
「へえ……ところで気付きづいてたかなあ。おれ、ずっときみころそうとおもってたんだ」

アリスは別段べつだんおどろきはしなかった。いつわったとしても全然ぜんぜんおかしくなかったのだから。現在げんざいまでいちしかけん(とあい)をけられていない事実じじつほう彼女かのじょにとっては奇跡きせきだった。それでも一緒いっしょにいたのはひとえにエースをはなっておけなかったからかもしれない。

最初さいしょからそんなかんじだったわね。でも出会であったときにきみころさないとったわよね?」
 あのとき純粋じゅんすい言葉ことばしんじたわけではない。あまりにも真摯しんしけられたひとみにアリスがさからえなかっただけなのだ。

「ああ、出会であいのときじゃないよ。きみうらやましくて、自分じぶんだけのモノにしたくてころそうとおもったんだ。きみがどんどん大事だいじになって、おれにとってえのきかない存在そんざいになるまえに」
 予想よそう埒外らちがいにあるこたえゆえに、アリスは返答へんとうきゅうした。破滅はめつてきぎるあいである。
「ええと……意味いみからないんだけど」

宇宙うちゅうじんるような彼女かのじょにエースはくすりとわらう。
きみきているかぎり、しんうつろうだろう? おれきでいてくれるうちころしてしまおうかってかんがえた。でも、できなかった。おれきているきみきだから」

――本当ほんとうあやういおとこだ。アリスはしんからそうおもう。いつもそんな物騒ぶっそうなことばかりかんがえているくせに表面ひょうめんじょうさわやかだ。そのギャップが空恐そらおそろしくおもえる。

不意ふい手袋てぶくろほそりょうかたつよつかんだ。
「もう二度にどきみうばわせない」
 アリスのかたちたしかめるようにエースは彼女かのじょきしめた。そしてすん、とかたちはならす。

エースはおそらくさき事件じけんおもしているのだろう。せつなげなこえみみかすめる。あついきみみにかかり、アリスはすくめる。
「もうどこにもかせない。ずっととなりにいて、きみだけをていたい」
「……そんなことしたらペーターがいかくるうわよ」

子供こどもじみた独占どくせん宣言せんげん微笑びしょうして、エースのあたまでた。本音ほんねされるようにゆるゆると騎士きしくちしまりがなくなる。同時どうじくちびる首筋くびすじりていく。ろくな抵抗ていこうもできず、彼女かのじょこえむのに必死ひっしで、されるがままになっていた。

吐息といきじりのかすごえがアリスのみみでる。

「ああ、かれきみ唯一ゆいいつ案内あんないじんで、特別とくべつきずながあることはかってる。アリスしかえてない、くんくるったウサギさん。だから『あいしている』となんおうと、それはつたわらない。アリスのことなんでもっててわかっているくせに恋愛れんあいにはならない。まるでおやとか保護ほごしゃみたいだ」

おおきながエプロンドレスをりにかかったときだった――。パンとかわいたおと部屋へやひびき、うごきをめたエースの一筋ひとすじあかえがかれる。銃口じゅうこうをこちらにけたペーターがとびらまえっていた。

「ペーター……」
「エースくん。あなたにたいんですか?」
 いかりをあらわにした形相ぎょうそうても、エースは別段べつだんおどろくでもなくたりまえこたえた。
「……野暮やぼだなあ、ペーターさんは。これからがいところだったのに」
いところ……」
 アリスがいまさっきの事態じたい認識にんしきし、赤面せきめんする。

ペーターが乱入らんにゅうしてこなければ、どうなっていたのだろう。事態じたいにはおおいに困惑こんわくしたが、たしかにつづきを期待きたいしていたことにも困惑こんわくしていた。

アリスがあかくなったりあおくなったりしているあいだにエースがしゃあしゃあとのたまう。
「アリスはいやがっていないし、ペーターさんのことについてはおれはただおもったことをっただけだよ」

しろ逆立さかだてて、つかつかとペーターがあゆってくる。
たしかにぼく本当ほんとうあいとはなにかをりません。でもだれなにわれようとも、アリスはぼく一番いちばん大切たいせつひとです。ぼくにはアリスしかいません」

しろウサギがいきおくエースのかたつかみ、ドンとばす。そしてこわものあつかうかのように、アリスの洋服ようふくととのえていく。それがわると、そっといとしいひとった。

ぼくはあなたのしあわせをねがってやみません。あなたがしあわせになりさえすればだれえらぼうがかまいません。ただかれだけは例外れいがいです」

エースをにらみつけながら、朱色しゅいろまったひとみきそうだった。夕日ゆうひにした騎士きしだまってかれつめがえしていた。
「あなたの誘拐ゆうかいすらはばめない、非力ひりき騎士きしだなんて。いくらりょくつよくても肝心かんじんなときにまもれないなんて。……あなたをまかせられるわけないじゃないですか」

アリスがウサギのぶと、かれ両手りょうてできゅっ、と彼女かのじょにぎった。やさしくさとすようにき、彼女かのじょはフワフワしたしろみみでる。逆立さかだったながれに沿ってでつけていく。

「……わたし、ペーターがきよ。だれよりも一番いちばん心配しんぱいして、わたし裏切うらぎらないでいてくれる。だれよりも多分たぶんわたしのことをわかってくれる」
 ちいさな両手りょうてあたまつつみ、花弁はなびらのようなくちびるがくれた。以前いぜんペーターがしてくれたように純粋じゅんすい親愛しんあいけるかたちかえした。

――あなたのことはえらべない、と。

「……だからわかってくれるよね?」
 口調くちょうはどこまでもやさしく、けれども有無うむわさぬひびきがそこにあった。嗚咽おえつをこらえるようにペーターがいきんだ。うつむいたなが睫毛まつげふるえる。

かれはいつかかならずあなたをころしてしまう。間違まちがいなく不幸ふこうになるとおもいます。それでも――」
 これ以上いじょうていたら、えられなくとでもうかのようにかたまぶたじられた。
かりました、あのときに。エースくんたれたときに、本当ほんとう見捨みすてようかとおもっていました。けれどぼくかれたすけました。ぼく唯一ゆいいつの……あなたがのぞむから」

アリスはふかうなずいた。しろ手袋てぶくろがキュ、とおとてた。

大事だいじなことを告白こくはくするのは、いつだっておもくなる。だがこのタイミング以外いがいはありないと彼女かのじょわかっていた。
「このさいだから、ここでこたえようとおもうんだけど……。そのまえはなしたいことがあるの」

首肯しゅこうするエースを横目よこめにペーターがいかける。
「……なんばなしですか、アリス?」
わたしがこの世界せかいまるかどうかってばなし
 時間じかんまったような世界せかいいきおとだけがひびいた。

まえにもったとおもうけど。わたしもと世界せかいひところしてしまったの」
 けっしてくちにしたアリスにたいして、二人ふたり反応はんのう大分だいぶうすい。かっていたことだが人殺ひとごろしの認識にんしきちがいすぎる。

エースがあまり興味きょうみなさそうにこたえた。
「そうみたいだね。んだひとたいして、そこまでかなしめるなんてきみやさしいよな」
 だれらないひとよりアリスの無事ぶじほうかれらにとっては重要じゅうよう問題もんだいである。

やさしくないわよ。やさしくないから……きっところしたのよ。あのひとのためと誤魔化ごまかして、実際じっさい自分じぶんのことしかかんがえてなかったから」
 それは彼女かのじょ本心ほんしんだった。大好だいすきなひと一緒いっしょにいるのがからかったから。

おれなんか物心ぶっしんつくころにはなににもかんがえてなくてもすで人殺ひとごろしだよ。この世界せかいじゃ全然ぜんぜんめずらしいことじゃないんだけどな」
 エースがまるで子供こどもころ失敗談しっぱいだんなにかのようにかたる。

なににもかんがえてなくて……」
 それはかなりひどい。人間にんげんとして色々いろいろ致命ちめいてきである。どちらの世界せかいでもはありふれているが、身近みぢかかの問題もんだいなのであろう。たと重要じゅうようなものであってもおびただしくなるとにならなくなるものだ。――おそろしいことに。

わたしはげしく後悔こうかいしたの。けれどもつぐないをませることなく、わたしはこちらの世界せかいれてきたられた。かえ方法ほうほうもよくからないまま、ここにいるのよ」
 つめむほどこぶしにぎめ、アリスはエースにいかけた。
つみからげているとおもう?」

――こたえにはしばらくのあいだがあった。
きみつみわすれたことがあるかい? わすれられなくて後悔こうかいすることはげてることになる?」
 エースがかんがえをまとめながら、ぽつりぽつりとはなしていく。かれ経験けいけんもとづいたこたえなのかもしれない。

おれころしたひとかおすらおぼえていないけど、人殺ひとごろしっていうつみ永遠えいえんえないとおもうよ。げたければげればいい。おれやくからのがれられないようにつみからものがれることは不可能ふかのうだよ」

エースはかくしはするがかったことにはしていない。けっしてせないけれど、それはおりのようにわだかまっている。すべれ、制裁せいさいけるこくっている。
 だがだればっしてくれない世界せかいのルールは、かれ行動こうどうたいするばちあたえないわりにゆるしもしないし解放かいほうもしない。

「だから結論けつろんとしてきみげてない。けっしてげられないから」
 けれど、と騎士きしくわえる。
「――おれきみまもるよ。きみつみつぶされそうになったらきみかかえてげてあげる」

だい真面目まじめにユーモアをばすエースに、アリスはした。ひめたてとなり、がすのではなく一緒いっしょげるあたりがかれらしい。

「そこはたたかってくれるわけじゃないのね」
肩代かたがわりできるものでもないんだろう? できるのなら、してあげたいけどさ」
正論せいろんね。さすがは騎士きしさま
 自然しぜん彼女かのじょほおゆるんだ。

「あなたに……最初さいしょからつみなどありません。ぼくすべてをていますから」
 うつむいたしろウサギのあたまを、アリスはでてやる。

どちらの現実げんじつにも不幸ふこうはあるし、幸福こうふくもある。どちらをえらぶかは自分じぶん次第しだい

アリスがエースになおる。最後さいごダメ押だめおしをしてみるために――。かれけて、あしいちした。

わたし、このさき一生いっしょうウジウジとなやつづけるわ。きっとすごく鬱陶うっとうしい。それでもいの?」
 エースのほういちした。
「ぜーんぜんかまわないよ。鬱陶うっとうしくてもい。なやんで進歩しんぽできないほうおれ安心あんしんできる。きみがどこへもかないのなら、それでい」
 騎士きしむかえるようにりょううでひろげた。いつか青空あおぞらのような笑顔えがおでのたまう。

「だってこのさき一生いっしょうきみまもってあげられるだろう?」
「この鬼畜きちく! あんたのせいで、もうかえれないんだから!」
 満面まんめん笑顔えがおかべたアリスが盛大せいだい悪態あくたいをつきながら、エースのくびびついた。

エピローグ

こんな世界せかい以上いじょうわらうしかない。いまもエースはそのようにかんがえている。

けれども余所者よそもの少女しょうじょ出会であって、すこしだけ変化へんかおとずれた。行動こうどう指針ししん今更いまさらえるつもりもないけれど、その行動こうどう意味いみまれた。

――人生じんせいこたえをさがたびのようなものだ。こたえはきっとぬときにる。いつか復讐ふくしゅうほのおかれる、そのときに。

ちかいをむねに、エースはきることをめた。


あとがき

 えっらいながいことかかりました。作品さくひん自体じたい出来できてたんですが、アリスの新作しんさくたび公開こうかいをためらっていました。プレイしていないから、原作げんさくおおきな齟齬そごてしまうのではないかとこわかったのです。

ですが……この作品さくひんはクローバーまでしかプレイしていなかったわたしいたものです。そういう前提ぜんてい公開こうかいすればかったのです。大筋おおすじ早々はやばやわらないので、こまかな齟齬そごであればなおそうとおもいます。

ものすごい期間きかんをあけて完結かんけつしましたが、これは大好だいすきなエースをくためだけの小説しょうせつでした。おもれはあります。--2016/5

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