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渡邉あい子・北村健太郎「京都府の難病患者の生活実態」
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京都きょうと難病なんびょう患者かんじゃ生活せいかつ実態じったい

京都きょうと難病なんびょうれん相談そうだんいんへのインタビューをとおして

渡邉わたなべ あい北村きたむら 健太郎けんたろう 20070916-17
障害しょうがい学会がっかいだいかい大会たいかい 於:立命館大学りつめいかんだいがく

last update: 20151225

要旨ようし
報告ほうこく原稿げんこう


□1.問題もんだい所在しょざい
 日本にっぽんには難病なんびょう患者かんじゃばれるひとたちの患者かんじゃ運動うんどうがあり、その成果せいかとともに現在げんざいいたる。しかし、難病なんびょう患者かんじゃかんする調査ちょうさ研究けんきゅうは、運動うんどう以外いがい側面そくめんふくめても単発たんぱつてき充分じゅうぶん集積しゅうせきされているとはがたい。ここすうねん、ALS(すじ萎縮いしゅくせいがわさく硬化こうかしょう)に注目ちゅうもくした調査ちょうさ研究けんきゅう多数たすうおこなわれているが、依然いぜんとして難病なんびょう患者かんじゃ本人ほんにんやその家族かぞく生活せいかつ実態じったいさえも明確めいかく部分ぶぶんおおい。難病なんびょう患者かんじゃ生活せいかつ実態じったい把握はあく困難こんなんである理由りゆうひとつは、難病なんびょう対策たいさく事業じぎょう実施じっし主体しゅたい都道府県とどうふけん市町村しちょうそんであり、その地域ちいきごとに事業じぎょう内容ないよう窓口まどぐちことなるてん指摘してきできる。きめささやかな調査ちょうさ研究けんきゅうをするためには、その地域ちいき密着みっちゃくした調査ちょうさ必要ひつようである。
 ほん報告ほうこくは、京都きょうと調査ちょうさとして設定せっていし、難病なんびょう患者かんじゃ生活せいかつ実態じったい把握はあく目的もくてきとする。今回こんかいは、難病なんびょう患者かんじゃ全般ぜんぱん比較的ひかくてき共通きょうつうする困難こんなん要望ようぼう析出せきしゅつ主眼しゅがんとするため、とく対象たいしょう疾患しっかん指定していしない。そのうえで、難病なんびょう対策たいさく事業じぎょう利用りようするがわ視点してんから、京都きょうと難病なんびょう団体だんたい連絡れんらく協議きょうぎかい以下いか京都きょうと難病なんびょうれん)の相談そうだんいんにインタビュー調査ちょうさおこない、京都きょうと難病なんびょう対策たいさく現状げんじょう京都きょうと難病なんびょう患者かんじゃとその家族かぞくかれている状況じょうきょう報告ほうこくする。

□2.難病なんびょう対策たいさく事業じぎょう京都きょうと実施じっしじょうきょう
 難病なんびょう患者かんじゃかんする医療いりょう福祉ふくししょ制度せいど基本きほんてき枠組わくぐみを簡単かんたん確認かくにんする。難病なんびょう患者かんじゃ利用りようできる医療いりょう福祉ふくし制度せいどとしては、医療いりょう保険ほけん介護かいご保険ほけん障害しょうがいしゃ自立じりつ支援しえんほう難病なんびょう対策たいさく事業じぎょうがある。これらは、疾患しっかん年齢ねんれいによって適用てきようされる制度せいどことなる。特定とくてい疾患しっかん該当がいとうする疾患しっかんでは、小児しょうに慢性まんせい特定とくてい疾患しっかん治療ちりょう研究けんきゅう事業じぎょう特定とくてい疾患しっかん治療ちりょう研究けんきゅう事業じぎょうによる医療いりょう公費こうひ負担ふたん、そして障害しょうがいしゃ自立じりつ支援しえんほう(65さい未満みまん)、介護かいご保険ほけん(65さい以上いじょう)にもとづくサービスをけられる。ただし、厚生こうせい労働省ろうどうしょうさだめる16特定とくてい疾患しっかんかぎっては、40さい以上いじょうからだい2ごう保険ほけんしゃとして、介護かいご保険ほけんによるサービスをけることができる。特定とくてい疾患しっかん該当がいとうしない疾患しっかん重度じゅうど障害しょうがいになった場合ばあい重度じゅうど障害しょうがいしゃ医療いりょう助成じょせい制度せいどなどの医療いりょう助成じょせい障害しょうがいしゃ自立じりつ支援しえんほう(65さい未満みまん)や介護かいご保険ほけん(65さい以上いじょう)によるサービスがけられる。障害しょうがいしゃ福祉ふくし施策しさく介護かいご保険ほけん共通きょうつうする在宅ざいたく介護かいごサービスは、介護かいご保険ほけんけることが原則げんそくとなる(介護かいご保険ほけん優先ゆうせん原則げんそく)。生活せいかつ保護ほごけている患者かんじゃ場合ばあい生活せいかつ保護ほごほうより法律ほうりつ制度せいど優先ゆうせんして適用てきようされるため、医療いりょう扶助ふじょ介護かいご扶助ふじょけるさいには、特定とくてい疾患しっかん治療ちりょう研究けんきゅう事業じぎょう障害しょうがいしゃ自立じりつ支援しえんほう介護かいご保険ほけん制度せいど申請しんせいをする必要ひつようがある。
 つぎに、京都きょうとにおける難病なんびょう対策たいさく事業じぎょう実施じっしじょうきょうをごく簡単かんたんておく。京都きょうと難病なんびょう相談そうだん支援しえんセンター(以下いか難病なんびょうセンター)は、京都きょうと右京うきょう国立こくりつ病院びょういん機構きこう宇多野うたの病院びょういんない設置せっちされている。難病なんびょうセンターの「センターニュース」(2006ねん10がつ15にち発行はっこう)によれば、京都きょうと隣接りんせつする京都きょうと乙訓おとくに(おとくに)保健所ほけんじょ管内かんないでは在宅ざいたく療養りょうようへのスムーズな移行いこう在宅ざいたく療養りょうよう充実じゅうじつ緊急きんきゅう入院にゅういん体制たいせい確立かくりつ目的もくてきとして、在宅ざいたく療養りょうよう手帳てちょう配付はいふ難病なんびょう医療いりょうネットワークの構築こうちく」がすでにされており、「乙訓おとくに医師いしかいには特定とくてい疾患しっかん対策たいさく委員いいんかい設置せっちされ、3めい地域ちいき医療いりょう担当たんとう理事りじがおられ、在宅ざいたく療養りょうようはじめるさい地域ちいき主治医しゅじい(かかりつけ)の調整ちょうせいおこなうとともに、在宅ざいたく療養りょうよう支援しえんチームないでの医療いりょう情報じょうほう共有きょうゆう治療ちりょう介護かいごでの目標もくひょう設定せってい」をおこなっている。難病なんびょうセンターは、府下ふか全域ぜんいきにおける「専門せんもん医療いりょう機関きかん地域ちいき主治医しゅじい(かかりつけ)の連携れんけいによる難病なんびょう医療いりょうネットワークの構築こうちくさい重要じゅうよう課題かだい」とし、その第一歩だいいっぽとして「神経しんけい難病なんびょうかんするアンケート調査ちょうさ」を実施じっしした(2006ねん10がつ末日まつじつ締切しめきり)。難病なんびょうセンターは難病なんびょう対策たいさく事業じぎょう供給きょうきゅうがわとして、こうしたみをおこなっている。しかし重要じゅうようなことは、難病なんびょうセンターのみを難病なんびょう事業じぎょう利用りようしゃがわからたとき、充分じゅうぶん納得なっとくできる内容ないようなのかというてんである。京都きょうと難病なんびょうれん相談そうだんいんにインタビューをおこなうのも、そうした問題もんだい関心かんしんによる。

□3.難病なんびょう患者かんじゃをめぐる論点ろんてん
 難病なんびょう患者かんじゃ本人ほんにんやその家族かぞく困難こんなん集約しゅうやくすることは容易よういではないが、とく重大じゅうだい決定的けっていてき場面ばめん限定げんていすれば、いくつかの重要じゅうよう論点ろんてん指摘してきできる。やや強引ごういん一言ひとことえば、それは「医療いりょう行為こうい」と「コミュニケーション」である。難病なんびょうセンターが「神経しんけい難病なんびょうかんするアンケート調査ちょうさ」を実施じっししたのも、神経しんけい難病なんびょう患者かんじゃ療養りょうよう生活せいかつに「医療いりょう行為こうい」と「コミュニケーション」の論点ろんてん鮮明せんめいることを充分じゅうぶん認識にんしきしているからと推察すいさつされる。上記じょうきふたつの生命せいめい直接ちょくせつかかわる論点ろんてん中心ちゅうしんに、看護かんごとヘルパーの職域しょくいきをめぐる問題もんだい家族かぞく介護かいご暗黙あんもく前提ぜんていとした制度せいど設計せっけいなどおおくの問題もんだいからっている。また、難病なんびょう対策たいさく事業じぎょう実施じっし主体しゅたい都道府県とどうふけん市町村しちょうそんであることから、その地域ちいきごとの課題かだいがあるのではないかと推測すいそくされる。京都きょうと難病なんびょうれん相談そうだんいんへのインタビュー調査ちょうさから、京都きょうと難病なんびょう患者かんじゃ生活せいかつ実態じったい関連かんれんする京都きょうと府下ふか地域ちいき特性とくせい有無うむすこしでもあきらかにし、報告ほうこくする予定よていである。


 
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渡邉わたなべあい北村きたむら健太郎けんたろうは、京都きょうと難病なんびょう患者かんじゃ療養りょうよう生活せいかつについて、とく制度せいど事業じぎょう側面そくめんから実態じったい報告ほうこくします。

報告ほうこく目的もくてき
 1972ねん難病なんびょう対策たいさく要綱ようこう策定さくていされ、難病なんびょう対策たいさくとしてげる疾病しっぺいは、だいいちに、原因げんいん不明ふめい治療ちりょう方法ほうほう確立かくりつであり、かつ後遺症こういしょうのこすおそれがすくなくない疾病しっぺいであること、だい経過けいか慢性まんせいにわたり、たん経済けいざいてき問題もんだいのみならず介護かいごとういちじるしく人手ひとでようするために家族かぞく負担ふたんおもく、また精神せいしんてきにも負担ふたんおおきい疾病しっぺいであることに整理せいりされています。さらに、調査ちょうさ研究けんきゅう推進すいしん医療いりょう設備せつびとう整備せいび医療いりょう負担ふたん軽減けいげん地域ちいきにおける保健ほけん医療いりょう福祉ふくし充実じゅうじつ連携れんけい、QOLの向上こうじょう目指めざした福祉ふくし施策しさく推進すいしんの5てんすすめていくこととされています。難病なんびょう対策たいさく事業じぎょう実施じっし主体しゅたい都道府県とどうふけん市町村しちょうそんであるため、地域ちいきごとにみや連携れんけい仕方しかた窓口まどぐち、その名称めいしょうことなります。また、情報じょうほう共有きょうゆうわけかち難病なんびょう患者かんじゃ団体だんたい組織そしき地域ちいき一律いちりつ存在そんざいしているわけではありません。そのようななかで、今回こんかい京都きょうと府下ふか難病なんびょう患者かんじゃ具体ぐたいてきにどのような状況じょうきょうかれているのか、ALS(すじ萎縮いしゅくせいがわさく硬化こうかしょう)を具体ぐたいれいとして念頭ねんとうきつつ、とく発症はっしょうからのしゅ訴、療養りょうよう生活せいかつささえる制度せいど事業じぎょうとの関係かんけい着目ちゃくもくし、実態じったいあきらかにすることを目的もくてきとしました。

難病なんびょう支援しえん理想りそう現実げんじつ
 京都きょうと難病なんびょう相談そうだん支援しえんセンターの季刊きかん(H18,10.15発行はっこう)には、京都きょうと隣接りんせつする京都きょうと乙訓おとくに(おとくに)保健所ほけんじょ管内かんないでは在宅ざいたく療養りょうようへのスムーズな移行いこう在宅ざいたく療養りょうよう充実じゅうじつ緊急きんきゅう入院にゅういん体制たいせい確立かくりつ目的もくてきとして、在宅ざいたく療養りょうよう手帳てちょう配付はいふ難病なんびょう医療いりょうネットワークの構築こうちく」がなされていると記載きさいされており、府下ふか全域ぜんいきにおける「専門せんもん医療いりょう機関きかん地域ちいき主治医しゅじい(かかりつけ)の連携れんけいによる難病なんびょう医療いりょうネットワークの構築こうちくさい重要じゅうよう課題かだい」と設定せっていしています。
 しかし、実際じっさいには、症状しょうじょう不安ふあんかか病院びょういん転々てんてんとしながら病名びょうめいにたどりくまでがとおく、診断しんだん確定かくていすれば、当然とうぜんおおきなショックをけます。その、とにかくサービスにアクセスするため難病なんびょう支援しえん窓口まどぐちである保健所ほけんじょ相談そうだんくも、管轄かんかつ担当たんとうによってうことがちがっていたり、医療いりょう介護かいご保険ほけん自立じりつ支援しえんほうにまつわる手続てつづきが煩雑はんざつかつ窓口まどぐちべつのため、かなり混乱こんらんしサービスをけるまえ疲弊ひへいし、病気びょうきたいするおそれと不安ふあん増大ぞうだいしてしまう状況じょうきょうにあるのです。
 この理想りそう現実げんじつのギャップについて京都きょうと難病なんびょう団体だんたい連絡れんらく協議きょうぎかい相談そうだんいんたずねると、
保健所ほけんじょ難病なんびょう担当たんとう難病なんびょう患者かんじゃのコーディネートにあたるが、うまくコーディネートできていないのが現状げんじょうである
・ ケアマネージャーは介護かいご保険ほけんから、保健所ほけんじょ担当たんとう難病なんびょう対策たいさくから制度せいど運用うんようかんがえるが、両者りょうしゃ併用へいようすることについては、うとひとおお
保健所ほけんじょごとにうことがちがてんについては、保健所ほけんじょごとに勉強べんきょうかいをするので、そのみの浸透しんとう度合どあいが保健所ほけんじょべつあらわれ、いままさにしん制度せいど勉強べんきょうをしている最中さいちゅうであること
制度せいど併用へいようがスムーズにいかない問題もんだい現実げんじつおおくあり、それはつねに「潜在せんざい」している。
という趣旨しゅし見解けんかいしめされました。
 なおすのに困難こんなんせいともな難病なんびょう患者かんじゃ不安ふあんとおそれをすこしでも軽減けいげんし、生活せいかつしつ維持いじするためには、できるだけはや必要ひつようなサービスにアクセスできることが重要じゅうようです。しかし、患者かんじゃ本人ほんにん家族かぞく難病なんびょう罹患りかんした衝撃しょうげきめられずさきえない状況じょうきょうで、かく窓口まどぐちくことになりがちです。かく窓口まどぐち対応たいおうがスムーズでないとなん診断しんだんしょりにいくことになります。あるALS患者かんじゃ家族かぞくは、かえ診断しんだんしょりにいったことを「診断しんだんしょ貧乏びんぼうになった」とっています。しかし、これはたん費用ひよう問題もんだいではなく、手間てまがかかることで心身しんしんともに疲弊ひへいすることがおおきな問題もんだいです。

しょ制度せいど適用てきよう関係かんけい
 一方いっぽう、サービス提供ていきょうがわ制度せいど改変かいへんについてけず把握はあくできていない現状げんじょうがあるようなので、関係かんけい制度せいど整理せいりしてみました。
 難病なんびょう患者かんじゃ適用てきようされる医療いりょう福祉ふくし制度せいど疾患しっかんめい年齢ねんれいによりわってきます。なお、ここでは対象たいしょう成人せいじん以上いじょう限定げんていして活用かつようできる医療いりょう助成じょせい制度せいど福祉ふくし制度せいどしめしています。医療いりょう助成じょせいは45の特定とくてい疾患しっかんひょう)に指定していされている18さい未満みまん*ならば小児しょうに慢性まんせい特定とくてい疾患しっかん治療ちりょう研究けんきゅう事業じぎょう、18さい以上いじょう特定とくてい疾患しっかん治療ちりょう研究けんきゅう事業じぎょうからなされます。福祉ふくし制度せいどでは65さい未満みまん自立じりつ支援しえんほう、65さい以上いじょうだと介護かいご保険ほけんだいごう保険ほけんしゃ適用てきようになります。ただし、40さい以上いじょう介護かいご保険ほけんの16種類しゅるい特定とくてい疾患しっかんひょう)に該当がいとうする場合ばあいだいごう保険ほけんしゃとして、介護かいごサービスがけられますが、自立じりつ支援しえんほう共通きょうつうする居宅きょたく介護かいごサービスについては介護かいご保険ほけんサービスが優先ゆうせんして適応てきおうされます。
 しかしながら生活せいかつ保護ほごける場合ばあいはまたべつです。保護ほごしゃで65さい以上いじょう場合ばあい介護かいご保険ほけんりょう加算かさんもあり自動的じどうてきだい1ごう保険ほけんしゃになれますが、40さいから65さい未満みまん保護ほごしゃ場合ばあい国民こくみん健康けんこう保険ほけんから除外じょがいされるためだい2ごう保険ほけんしゃにはなれません。健保けんぽなどの国保こくほ以外いがい医療いりょう保険ほけん加入かにゅうしている場合ばあいだい2ごうになれますが、それはまれです。介護かいごけられないのは、すべての国民こくみん保障ほしょうされる最低さいてい限度げんど生活せいかつ内容ないよう介護かいご保険ほけん加入かにゅう有無うむとうによりことなることは生活せいかつ保護ほご制度せいど趣旨しゅし目的もくてきらして適切てきせつでないことから、全額ぜんがく介護かいご扶助ふじょによりサービスが給付きゅうふされます。さらに生活せいかつ保護ほごにはほう優先ゆうせん保護ほご補足ほそくせい)の原則げんそくがあり、自立じりつ支援しえんほうさき使つかい、不足ふそくぶん介護かいご扶助ふじょおぎなうことになります。ケアプランの作成さくせいについては、生活せいかつ保護ほごほう指定してい介護かいご機関きかん委託いたくします。65さい以上いじょうだい2ごうでも保険ほけんしゃとなれる場合ばあい介護かいご保険ほけんほうもとづき作成さくせいし、自己じこ負担ふたんぶんの1わりぶん生活せいかつ保護ほご支給しきゅうされます。ですが生活せいかつ保護ほご受給じゅきゅうして介護かいごサービスを使つかうユーザーがわからすると、どちらにしても負担ふたんはなく、介護かいご時間じかん保障ほしょう給付きゅうふはや開始かいししてしいという単純たんじゅんはなしで、煩雑はんざつ手続てつづきをスムーズにするには社会しゃかい福祉ふくし事務所じむしょのワーカーやケアマネージャーとうみつ連携れんけい必要ひつようになってくるということになるのです。また、だい2ごう該当がいとうする難病なんびょう患者かんじゃ制度せいど併用へいようむずかしさから在宅ざいたく移行いこうできない、医療いりょう介護かいご難民なんみんにもすくなからず存在そんざいすると推測すいそくされ、生活せいかつ保護ほご制度せいど介護かいごりょう特別とくべつ基準きじゅん他人たにん介護かいご加算かさん活用かつようされるべきですが、この詳細しょうさいべつ機会きかいゆずります。
 はなし介護かいご保険ほけん自立じりつ支援しえんほう併用へいようもどします。介護かいご保険ほけん保険ほけんしゃであるなら介護かいご保険ほけんサービスを自立じりつ支援しえんほうより優先ゆうせんさせる原則げんそくについて、自立じりつ支援しえんほう施行しこうされてから全国ぜんこく混乱こんらんがあり2007ねん3がつまつ厚労省こうろうしょうは「一律いちりつ介護かいご保険ほけんサービスを優先ゆうせんさせない」むね通達つうたつしました。したがって市町村しちょうそん介護かいご資源しげん状況じょうきょう個別こべつ利用りよう意向いこうにより判断はんだんすることになります。装具そうぐについても介護かいご保険ほけんくるまいすとう保険ほけん給付きゅうふとして既製きせいひんなかからえら貸与たいよされる福祉ふくし用具ようぐではなく、個別こべつ身体しんたい状況じょうきょう対応たいおうすることが必要ひつよう場合ばあい装具そうぐ支給しきゅうされつくることができます。このような変更へんこうがまだ現場げんば浸透しんとうしていない状況じょうきょうであり、介護かいご保険ほけん使つからないと使つかえないとおもっている市町村しちょうそんおおくあります。このような緩和かんわさくこうじられたのは介護かいご保険ほけん優先ゆうせんになっているがための弊害へいがい実際じっさいにあるからで、これは24あいだ介護かいご必要ひつよう重度じゅうど障害しょうがいしゃ難病なんびょう患者かんじゃおおてはまります。介護かいご保険ほけんよう介護かいご認定にんていのしくみと進行しんこうせい難病なんびょうのそぐわなさも指摘してきできます。

制度せいど
 自立じりつ支援しえんほうのなかでとく難病なんびょう患者かんじゃ対象たいしょうとなるのが「重度じゅうど訪問ほうもん介護かいご」と「重度じゅうど障害しょうがいしゃとう包括ほうかつ支援しえん」です。重度じゅうど訪問ほうもん介護かいごでは障害しょうがい程度ていど区分くぶん6で四肢しし麻痺まひがあり、人工じんこう呼吸こきゅう使用しようしているひと対象たいしょうに15%の加算かさんがあります。には保健所ほけんじょ窓口まどぐちになっている難病なんびょう患者かんじゃとう居宅きょたく生活せいかつ支援しえん事業じぎょうがあり、こちらでもホームヘルプサービスや日常にちじょう生活せいかつ用具ようぐ給付きゅうふ事業じぎょう展開てんかいされています。ここでの難病なんびょう患者かんじゃ難治なんじせい疾患しっかん克服こくふく研究けんきゅう事業じぎょう対象たいしょう疾患しっかん(121疾患しっかん)および関節かんせつリウマチの患者かんじゃとなっており、制度せいど重複じゅうふくしている場合ばあいなど使つかえるのかどうかが非常ひじょうにわかりにくくなっています。また、福祉ふくし事務所じむしょ窓口まどぐち進行しんこうせいすじ萎縮いしゅくしょうしゃ療養りょうよう給付きゅうふがありますが、これを申請しんせいするには身体しんたい障害しょうがいしゃ手帳てちょう交付こうふけていなければなりません。このように難病なんびょうをとりまく制度せいど事業じぎょう非常ひじょうにややこしく、どういった手順てじゅんめばいいのか患者かんじゃ本人ほんにんやその家族かぞくがわからないのは当然とうぜんのこととえましょう。

窓口まどぐちチャート
そこで、サービスと窓口まどぐちにしてみました。
特定とくてい疾患しっかん治療ちりょう研究けんきゅう事業じぎょう、つまり医療いりょう公費こうひ負担ふたん相談そうだん難病なんびょう患者かんじゃ居宅きょたく生活せいかつ支援しえん事業じぎょう保健所ほけんじょ
身体しんたい障害しょうがいしゃ手帳てちょう福祉ふくし事務所じむしょへ、そのうえ進行しんこうせいすじ萎縮いしゅくしょうしゃ療養りょうよう給付きゅうふ申請しんせい可能かのうです。
介護かいご保険ほけんによるサービスの相談そうだん市町村しちょうそん窓口まどぐちたとえば地域ちいき包括ほうかつ支援しえんセンター・居宅きょたく介護かいご支援しえん事業じぎょうしゃおこない、よう介護かいご認定にんていける必要ひつようがあります。
障害しょうがいしゃ自立じりつ支援しえんほうによるサービス相談そうだん京都きょうと区役所くやくしょ支所ししょ支援しえん支援しえん保護ほご、または障害しょうがいしゃ地域ちいき生活せいかつ支援しえんセンターになり、介護かいご給付きゅうふ希望きぼうする場合ばあい障害しょうがい程度ていど区分くぶん認定にんていされなければなりません。
これらは申請しんせいするのに主治医しゅじい診断しんだんしょ意見いけんしょ)が必要ひつよう事項じこうになります。

申請しんせいのアクセシビリティ
 難病なんびょう患者かんじゃ療養りょうよう生活せいかつささえる医療いりょう福祉ふくししょ制度せいどは、基本きほんてき申請しんせい主義しゅぎっています。難病なんびょう患者かんじゃ本人ほんにんもしくは家族かぞくなどの申請しんせいもとづき、様々さまざま制度せいどなかから適用てきようする制度せいど決定けっていします。しかし、これまでてきたように、いろいろな制度せいど複雑ふくざつんでいます。そのため、難病なんびょう患者かんじゃ本人ほんにんやその家族かぞくが、みずからにとって必要ひつよう使つかいやすい医療いりょう福祉ふくし制度せいど判断はんだんすることは容易よういではありません。やはり、保健ほけん、ケアマネージャー、医療いりょう福祉ふくし行政ぎょうせい担当たんとうしゃなどのアドバイスが重要じゅうようになってきます。ところが、これらの「専門せんもん」とみなされるひとたちでも、最近さいきんはげしい制度せいど改変かいへんいついてないのが現状げんじょうです。
 難病なんびょう患者かんじゃ本人ほんにんやその家族かぞくかられば「専門せんもん」とみなされるひとたちやその現場げんばがうまく機能きのうしなければ、難病なんびょう患者かんじゃ本人ほんにんやその家族かぞく必要ひつようとする医療いりょう福祉ふくしサービスを享受きょうじゅできないまま放置ほうちされることになります。医療いりょう福祉ふくしサービスを享受きょうじゅするまでに時間じかんがかかれば、おくれたぶんだけ症状しょうじょう悪化あっかさせることも容易よういかんがえられます。
 難病なんびょう政策せいさくは、その制度せいど設計せっけい段階だんかいから、根幹こんかんとなる医療いりょう福祉ふくし制度せいど隙間すきまめるようなかたちでつくられたために、医療いりょう福祉ふくし制度せいどよりもかりにくい制度せいどです。しかし、申請しんせい主義しゅぎっている以上いじょう制度せいど申請しんせいしゃである難病なんびょう患者かんじゃ本人ほんにんやその家族かぞくにとって、かりやすく、アクセスしやすいものであるべきです。難病なんびょう患者かんじゃ本人ほんにんやその家族かぞく心身しんしんともにつら状態じょうたいから申請しんせいしてきます。難病なんびょう患者かんじゃ生活せいかつささえるという制度せいど本来ほんらい趣旨しゅしかえれば、アクセスしやすい工夫くふう必要ひつようです。そのひとつが、まえた「難病なんびょう医療いりょうネットワークの構築こうちく」だとおもいますが、まだ現実げんじつ使つかえるようにはなっていません。

○「難病なんびょう制度せいどのパッケージング」
 かりにくい理由りゆうひとつに、窓口まどぐちおおさがあります。ひとつの窓口まどぐち申請しんせいわりません。下手へたをすれば、窓口まどぐち転々てんてんとすることになり、申請しんせいしゃである難病なんびょう患者かんじゃ本人ほんにんやその家族かぞく心身しんしんともに消耗しょうもうしてしまいます。難病なんびょう患者かんじゃ本人ほんにんやその家族かぞくたすけるべき制度せいどが、ぎゃく難病なんびょう患者かんじゃ本人ほんにんやその家族かぞく消耗しょうもうさせるならば本末転倒ほんまつてんとうです。そこで、わたしたちは「難病なんびょう制度せいどのパッケージング」を提案ていあんします。
 「難病なんびょう制度せいどのパッケージング」とは、ひとつの窓口まどぐちけば、申請しんせいがすべてわるような受付うけつけ体制たいせい構想こうそうしたものです。関係かんけい書類しょるい一式いっしきをどの関係かんけい窓口まどぐちにも設置せっちする、難病なんびょう関連かんれん疾患しっかん)や年齢ねんれい(ライフコース)などのグループごとに書類しょるいをまとめておく、診断しんだんしょ1まい通用つうようするように書式しょしき工夫くふうする、などです。もちろん、これらが機能きのうするためには、関係かんけい機関きかんのネットワーク構築こうちく必須ひっすです。それらのネットワークを申請しんせい書類しょるいのレベルからかんがえたのが「難病なんびょう制度せいどのパッケージング」です。「難病なんびょう制度せいどのパッケージング」が本当ほんとう機能きのうするためには、今後こんごのこされた課題かだいがたくさんあります。しかし、1まい申請しんせい書類しょるい難病なんびょう患者かんじゃ生命せいめいにかかわる以上いじょう申請しんせい書類しょるいを「たかが紙切かみきれ1まい」と軽々けいけいかんがえてはならないことだけはたしかです。ネットワークが理想りそうにおわらないために、らくつながっていける工夫くふう必要ひつようだとおもわれます。今後こんごはまず職域しょくいき問題もんだい難病なんびょう患者かんじゃのコミュニケーションと情報じょうほう共有きょうゆう発信はっしんについて調査ちょうさすすめてまいりたいとおもいます。
 以上いじょうで、わたしたちの報告ほうこくわります。清聴せいちょうありがとうございました。


UP:20070808 REV:20070905
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