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新関良夫「障害分野におけるナレッジ・マネジメント導入の試み――APCDUプロジェクトにおけるSbKM」
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障害しょうがい分野ぶんやにおけるナレッジ・マネジメント導入どうにゅうこころみ――APCDUプロジェクトにおけるSbKM

新関にいぜき 良夫よしお
独立どくりつ行政ぎょうせい法人ほうじん国際こくさい協力きょうりょく機構きこう国際こくさい協力きょうりょく専門せんもんいん北陸先端科学技術大学院大学ほくりくせんたんかがくぎじゅつだいがくいんだいがく 知識ちしき科学かがく研究けんきゅう博士はかせ後期こうき課程かてい
20090927 障害しょうがい学会がっかいだいかい大会たいかい 於:立命館大学りつめいかんだいがく


報告ほうこく要旨ようし

 ナレッジ・マネジメントというと経営けいえい理論りろんであり、障害しょうがい分野ぶんやとどのようなかかわりがあるのだろうと疑問ぎもんおもわれるであろう。たしかにナレッジ・マネジメントは、日本にっぽん製造せいぞうぎょう経営けいえい分析ぶんせきからみちびかれた理論りろんであり、近年きんねんおおくの民間みんかん企業きぎょうにおいて激動げきどう時代じだい対応たいおうする経営けいえい理論りろんとして導入どうにゅうこころみられている。しかし、ナレッジ・マネジメントの根幹こんかんは、個人こじん暗黙あんもくみなもととする知識ちしき創造そうぞうのプロセスであり、知識ちしき創造そうぞうともな活動かつどうにはすべて適用てきよう可能かのう非常ひじょう普遍ふへんせいのある理論りろんなのである。
 今回こんかい発表はっぴょうでは、まずナレッジ・マネジメントの本質ほんしつべ、障害しょうがい分野ぶんやにおけるナレッジ・マネジメント導入どうにゅうこころみとして、JICA(国際こくさい協力きょうりょく機構きこう)が実施じっししているアジア太平洋たいへいよう障害しょうがいしゃセンター(APCD=Asia-Pacific Development Center on Disability;以下いか、APCDプロジェクト、とりゃくす)の事例じれいげる。
 APCDプロジェクトは、障害しょうがいしゃのエンパワーメントと社会しゃかいのバリアフリー目指めざし、2002ねんだい1フェーズが開始かいしされた、拠点きょてんをバンコクに広域こういきプロジェクトであり、現在げんざいだい2フェーズを実施じっしちゅうである。
 ナレッジ・マネジメントでは、知識ちしき暗黙あんもく形式けいしき分類ぶんるいし、両者りょうしゃ変換へんかんによって、あらたな知識ちしき創造そうぞうするが、あらたな知識ちしき根源こんげんは、個人こじん暗黙あんもくである。そこで、障害しょうがいしゃつさまざまなおもいや経験けいけん暗黙あんもくとしてとらえ、それらをいかに共有きょうゆうして活用かつようするかについて、ナレッジ・マネジメント理論りろん適用てきようすることをこころみた。
 具体ぐたいてきには、障害しょうがいしゃ障害しょうがいしゃ組織そしき活動かつどうを、障害しょうがいしゃ暗黙あんもく共有きょうゆう活用かつようされていく過程かていとしてとらえ、それをビデオ・ストーリーとしてりまとめ、作成さくせいしたビデオをつうじて、あらたな行動こうどううながす、というこころみである。ストーリー創造そうぞうもとづくナレッジ・マネジメントであるのでSbKM(Story-based Knowledge Management)と命名めいめいした。
 すでに、数カ国すうかこく対象たいしょうにビデオ・ストーリーが作成さくせいされ、ラオスでは、はじめての障害しょうがいしゃかかわるビデオとして国営こくえい放送ほうそう放映ほうえいされた。フィリピンのNHE(Non Handicapped Environment)をテーマとして作成さくせいされたビデオ・ストーリーは、バリアフリー啓発けいはつビデオとして映画えいがかんでの上映じょうえい見込みこまれ、年間ねんかん700まんにんると想定そうていされるほか、パキスタンで作成さくせいちゅうのビデオは12月3にち国際こくさい障害しょうがいしゃデーに政府せいふ要人ようじんむかえて、完成かんせいセレモニーを開催かいさいすることが予定よていされている。
 知識ちしき創造そうぞう成果せいかぶつとして作成さくせいされるビデオ・ストーリー自体じたい重要じゅうようであることはもちろんであるが、知識ちしき創造そうぞうのプロセスであるビデオを作成さくせいする過程かてい重要じゅうようである。APCDプロジェクトの支援しえんもとで、障害しょうがいしゃたちがみずからの活動かつどうみずからビデオ・ストーリーとしてまとげていくプロセスもまた、障害しょうがいしゃおもいをひろ関係かんけいしゃ共有きょうゆうしていくプロセスでもあるからである。

■ 報告ほうこく原稿げんこう パワーポイント

障害しょうがい分野ぶんやにおけるナレッジ・マネジメント導入どうにゅうこころ
− APCDUプロジェクトにおけるSbKM −

冒頭ぼうとう番号ばんごうはパワーポイント発表はっぴょう資料しりょうのページ番号ばんごう対応たいおうしています。)

1.みなさんこんにちは。国際こくさい協力きょうりょく機構きこう国際こくさい協力きょうりょく専門せんもんいんつとめている新関にいぜき良夫よしお(ニイゼキヨシオ)です。障害しょうがい学会がっかいでの発表はっぴょう今回こんかいはじめてです。よろしくおねがいします。
 本日ほんじつは「障害しょうがい分野ぶんやにおけるナレッジ・マネジメント導入どうにゅうこころみ」とだいしてJICAがタイのバンコクを拠点きょてんとして実施じっししているAPCD(エーピーシーディー)プロジェクトU(フェーズ2)におけるSbKM(エスビーケイエム)について報告ほうこくします。

2.わたしつとめている国際こくさい協力きょうりょく機構きこうは、日本にっぽん政府せいふっている発展はってん途上とじょうこくへの援助えんじょ実施じっしする組織そしきで、英語えいご名称めいしょうはJapan International Cooperation Agency、略称りゃくしょうはJICA(ジャイカ)です。APCDは、アジア太平洋たいへいよう障害しょうがいしゃセンター、Asia-Pacific Development Center on Disability の略称りゃくしょうで、SbKMは、ストーリー創造そうぞうもとづくナレッジ・マネジメント、Story-based Knowledge Managementの略称りゃくしょうです。

3.ナレッジ・マネジメントとくと経営けいえい理論りろんであり障害しょうがい分野ぶんやとどのような関係かんけいがあるのかと疑問ぎもんをもたれるとおもいます。たしかにナレッジ・マネジメントは、一橋大学ひとつばしだいがく大学院だいがくいん国際こくさい企業きぎょう戦略せんりゃく研究けんきゅう野中のなかいく次郎じろう名誉めいよ教授きょうじゅ竹内たけうちひろしだか教授きょうじゅが1996ねん発表はっぴょうした、日本にっぽん製造せいぞうぎょう経営けいえい分析ぶんせきからみちびかれた理論りろんであり、おおくの組織そしきにおいて経営けいえい理論りろんとして導入どうにゅうされています。しかし、ナレッジ・マネジメントの根幹こんかんは、個人こじん暗黙あんもくみなもととする知識ちしき創造そうぞうのプロセスであり、知識ちしき創造そうぞうともな活動かつどう適用てきよう可能かのう汎用はんようせいのある理論りろんなのです。
 
4.そこで今回こんかい報告ほうこくは、ナレッジ・マネジメントの説明せつめいからはじめたいとおもいます。
ナレッジ・マネジメントには知識ちしき管理かんり知識ちしき経営けいえいという日本語にほんごやくがあります。知識ちしき管理かんりはITをつうじた既存きそん知識ちしき共有きょうゆう活用かつよう中心ちゅうしんです。知識ちしき経営けいえいでは個人こじん経験けいけんおもいにもとづくあらたな知識ちしき創造そうぞう重要じゅうようです。わたし担当たんとうする研修けんしゅうでナレッジ・マネジメントから連想れんそうするキーワードをたずねると、情報じょうほう知識ちしき共有きょうゆう、ITの活用かつようといった回答かいとうおおかれます。これは知識ちしき管理かんりのことです。しかし、ナレッジ・マネジメント本来ほんらい特徴とくちょうとらえた訳語やくご知識ちしき経営けいえいです。
 ナレッジ・マネジメントでは知識ちしき暗黙あんもく形式けいしき分類ぶんるいします。暗黙あんもくとは、ってはいるがかたることがむずかしい知識ちしきであり、水泳すいえい自転車じてんしゃかたのみならず個人こじんてき体験たいけん経験けいけんおもいや信念しんねんなどをふくみます。言葉ことば文章ぶんしょう明確めいかく表現ひょうげんできる知識ちしき形式けいしきです。知識ちしき 管理かんり形式けいしき知識ちしき経営けいえい暗黙あんもく注目ちゅうもくしているといえます。
 ナレッジ・マネジメントの中核ちゅうかくは、暗黙あんもく形式けいしきをもとにしてあらたな知識ちしき創造そうぞうするプロセスにあり、SECI(セキ)とばれます。形式けいしき暗黙あんもくのどちらか一方いっぽうのみが重要じゅうようなのではなく、両者りょうしゃ補完ほかんてきであって両方りょうほう重要じゅうようです。

5.SECIにはよっつのながれがあります。個々人ここじん暗黙あんもく共通きょうつう体験たいけんつうじてたがいに共感きょうかんしあう共同きょうどう。Socialization(ソシアライゼーション)といいます。共有きょうゆうした暗黙あんもくから言葉ことば表現ひょうげんされた形式けいしきとしてのコンセプトを創造そうぞうするのが表出ひょうしゅつ。Externalization(エクスタナリゼーション)です。3番目ばんめが、創造そうぞうされたコンセプトをもとに既存きそん形式けいしき活用かつようして体系たいけいされたあらたな形式けいしき創造そうぞうする結合けつごう。Combination(コンビネーション)です。体系たいけいされた形式けいしき体験たいけんして暗黙あんもくとしてからだするのが内面ないめん。Internalization(インターナリゼーション)です。英語えいご頭文字かしらもじをとって、SECIとびます。
 わかりやすくうと「おもいを言葉ことばに、言葉ことばかたちに、そしてかたちをノウハウに」となります。
 SECIで重要じゅうようなのは継続けいぞくです。知識ちしき創造そうぞう参加さんかすることでゆたかになった個人こじん暗黙あんもくをもとにさら知識ちしき創造そうぞう継続けいぞくすることで知識ちしき創造そうぞうのスパイラルがこります。

6.知識ちしき創造そうぞうには「」(バ)という重要じゅうよう概念がいねんがあります。知識ちしき創造そうぞうひとおこないますからひとあつまる必要ひつようがあります。過去かこ会議かいぎおもしていただければ、ひとあつまれば価値かちある知識ちしきつくりだされるわけではないことを理解りかいいただけるとおもいます。多様たよう意見いけんった人々ひとびとあつめることで、より価値かちある知識ちしき創造そうぞう可能かのうになりますが、そこが知識ちしきすための「」になるためには「信頼しんらい共感きょうかん」が必須ひっすです。
 組織そしきとして知識ちしき創造そうぞう活動かつどう継続けいぞくてきおこなうには、組織そしきとしての知識ちしき創造そうぞうのビジョンを提示ていじするナレッジ・リーダーシップも重要じゅうようであることを最後さいごべておきます。

7.ナレッジ・マネジメントが、知識ちしき創造そうぞうという汎用はんようせいのあるかんがかたふくんでいることをご理解りかいいただけたでしょうか?
 「おもいを言葉ことばに、言葉ことばかたちに、そしてかたちをノウハウに」をナレッジ・マネジメントの本質ほんしつとしてしんめていただきたいとおもいます。

8.ほん報告ほうこく舞台ぶたいであるAPCDプロジェクトを紹介しょうかいします。
 アジア太平洋たいへいよう地域ちいきにはおよそ4おくにん障害しょうがいしゃがいるといわれており、10にん一人ひとり障害しょうがいしゃであるということになります。そのおおくは、教育きょういく就労しゅうろうなどの社会しゃかい参加さんか機会きかいとぼしく、必要ひつようなサービスもけられない状況じょうきょうにあるとされています。このため国連こくれんによる「障害しょうがいしゃじゅうねん(1983ねん〜1992ねん)」につづき「アジア太平洋たいへいよう障害しょうがいしゃの10ねん(1993ねん〜2002ねん)」が開始かいしされ、現在げんざいは「だいアジア太平洋たいへいよう障害しょうがいしゃじゅうねん」にあたります。日本にっぽんはこの決議けつぎ共同きょうどう提案ていあんこくとなっており、障害しょうがいしゃ支援しえん分野ぶんやかんする国際こくさい協力きょうりょくにおいて指導しどうてき役割やくわりたすことがもとめられていました。
 このような背景はいけいのなかでアジア太平洋たいへいよう地域ちいき障害しょうがいしゃ支援しえんのためのセンターの設立せつりつ希望きぼうするこえたかまり、JICAは2002ねん8がつから5年間ねんかんにわたり、アジア太平洋たいへいよう地域ちいきにおける障害しょうがいしゃのエンパワーメントとバリアフリー社会しゃかい促進そくしん目指めざし、バンコクに拠点きょてん技術ぎじゅつ協力きょうりょくプロジェクトを開始かいししました。これがAPCDプロジェクトです。
 このプロジェクトのげでは「障害しょうがい当事とうじしゃ障害しょうがい当事とうじしゃにサービスを提供ていきょうする」という従来じゅうらいかんがかたから「障害しょうがい当事とうじしゃから障害しょうがい当事とうじしゃへ」という見直みなおしがおこなわれ、JICAにとってもおおきなまなびのとなりました。

9.APCDプロジェクトは5年間ねんかんのプロジェクト実施じっし期間きかんちゅう、アジア太平洋たいへいようの32カ国かこく対象たいしょうとして、政府せいふ機関きかんおよ政府せいふ機関きかん代表だいひょうしゃ招聘しょうへいし、障害しょうがい人権じんけん自立じりつ生活せいかつとピア・カウンセリング、障害しょうがいしゃやさしいまちづくり、自助じじょ団体だんたい育成いくせい障害しょうがい指導しどうしゃ育成いくせい視覚しかく障害しょうがいしゃ対象たいしょうとした情報じょうほう技術ぎじゅつ障害しょうがいしゃやさしいウェブづくとう研修けんしゅうおこなうなど、ネットワークづくり・きょうはたらけ情報じょうほう支援しえん人材じんざい育成いくせいかんしてたか評価ひょうかされる実績じっせきをあげ、2007ねん7がつにフェーズ1を終了しゅうりょうしました。
 そのような成果せいかたいし、周辺しゅうへんこく関係かんけいしゃからプロジェクトの活動かつどう継続けいぞくつよ希望きぼうするこえおおくあり、APCDの組織そしき能力のうりょく一層いっそう強化きょうか従来じゅうらいのネットワーク活動かつどうおよ研修けんしゅう活動かつどうをより多様たようなニーズにこたえるように強化きょうかするべく、JICAは2007ねんがつから5年間ねんかん予定よていで、ほん報告ほうこく舞台ぶたいであるAPCDプロジェクトフェーズ2を開始かいししました。

10.にストーリー創造そうぞう中核ちゅうかくとしたナレッジ・マネジメント、SbKM、について説明せつめいします。
 発端ほったんは2007ねん12月にJICAの人間にんげん開発かいはつからAPCDプロジェクトフェーズ2の支援しえん依頼いらいされたことです。
 「APCDフェーズ1開始かいし以降いこうさまざまないインパクトが発現はつげんしているが、コンサルタントが作成さくせいしたレポートではそのプロセスや要因よういんくわからない。それらをあきらかにすると同時どうじに、プロジェクトのメンバーが理解りかいし、プロジェクトの今後こんごかせるような仕組しくみを定着ていちゃくさせたい」ナレッジ・マネジメントの出番でばんだと直感ちょっかんしました。
まず暗黙あんもく形式けいしき変換へんかんする仕組しくみをさがそうとかんがえました。しかしこのプロセスは簡単かんたんではありません。サントリーの事例じれいでは4ねんかかりました。暗黙あんもく形式けいしきする場合ばあいすべての暗黙あんもく対象たいしょうにするわけではありません。メタファーやアナロジーを駆使くしして表出ひょうしゅつおこないますが文学ぶんがくてきセンスや素養そよう必須ひっすです。インパクト発現はつげん要因よういん単純たんじゅんではなく様々さまざま暗黙あんもく混在こんざいしています。
 暗黙あんもく形式けいしき変換へんかんする必要ひつようはないのではないか?無理むり変換へんかんするから大事だいじ要因よういんちてしまうのではないか?そこでおもいついたのが、物語ものがたり活用かつようでした。

11.いインパクトが発現はつげんしているとおもわれるケースで、関係かんけいした人々ひとびと物語ものがたりかたってもらうことによりそのプロセスと要因よういんつたえることができるのではないか?暗黙あんもく無理むり形式けいしき変換へんかんせず暗黙あんもく暗黙あんもくのままでつたえるほうがい。そのためのうつわ物語ものがたりです。いインパクトはかならずそのような物語ものがたりっているのです。形式けいしきであるレポートもあります。物語ものがたりとレポートがいちくみになってインパクト発現はつげん要因よういんあきらかにする。暗黙あんもく形式けいしき両方りょうほう重要じゅうようであるとうナレッジ・マネジメントの根本こんぽんきています。
 SbKMはインパクトを物語ものがたりつうじてつたえるだけではありません。ウォルフェンソンだい10代世界銀行せかいぎんこう総裁そうさい片腕かたうでとしてナレッジ・マネジメントを推進すいしんしたデニングによれば「物語ものがたりには個人こじんしん点火てんかするちからがある」。あたまではなくしんとどくような物語ものがたりによって、論理ろんりてき説得せっとくではなく感動かんどう共感きょうかんによって、行動こうどううながす。
 SbKMでは多様たよう暗黙あんもく物語ものがたりといううつわれて暗黙あんもくのままつたえるため、おな物語ものがたりいた10にんが10とおりの印象いんしょういだきます。ひとつの物語ものがたり複数ふくすう感動かんどう共感きょうかんび、あらたな行動こうどううながし、それがあらたな物語ものがたりむ。
 ナレッジ・マネジメントでは継続けいぞくてき知識ちしき創造そうぞう知識ちしき創造そうぞうのスパイラルをこしますが、SbKMでは「物語ものがたり行動こうどうのリレー」が「物語ものがたり行動こうどうのスパイラル」をこします。物語ものがたりあらたなインパクトをもたらすのです。
 以上いじょうがSbKM誕生たんじょう物語ものがたりです。
 
12.では、ナレッジ・マネジメントの経験けいけんほとんどなかったAPCDプロジェクトがSbKMを自分じぶんたちのものにしていった経緯けいいをプロジェクトへの派遣はけん沿って説明せつめいします。
 2008ねん1がつ28にち〜2がつ15にちはじめてプロジェクトを訪問ほうもんしました。ナレッジ・マネジメントの基本きほんとSbKMのアイデアを紹介しょうかいし、体験たいけんすることが理解りかい近道ちかみちであるとかんがえ「ストーリー・フェスティバル」を企画きかくしました。タイがわのプロジェクトメンバーが、あたえられたトピックにかん日本人にっぽんじん専門せんもんにインタビューし、その内容ないようをストーリーとしてまとめ、発表はっぴょうしました。プロジェクトが今後こんごみずか障害しょうがい分野ぶんやてきしたかたちでSbKMを実践じっせんできるように、案内あんないやポスターの作成さくせい掲示けいじなどをタイがわのSbKMの担当たんとう部署ぶしょとなるIS、Information Support セクションにまかせました。
 インタビューの内容ないようをストーリーにまとめるという活動かつどう知識ちしき創造そうぞうであり、発表はっぴょうするストーリー・フェスティバルという舞台ぶたいは「」です。のスタッフのあらたないちめんることができたとかたるスタッフもおり、ストーリー・フェスティバルをつうじて知識ちしき創造そうぞう体験たいけんすることができたとおもいます。
 2かい派遣はけんは2008ねんがつ26にち〜6がつ13にちでした。ナレッジ・マネジメントの長期ちょうき専門せんもん着任ちゃくにんしており、協力きょうりょくしてSbKMの導入どうにゅうおこなうことが可能かのうになりました。報告ほうこくしゃがSbKMの理論りろんてき展開てんかい長期ちょうき専門せんもんはプロジェクトにおけるSbKMの実践じっせん定着ていちゃくという分担ぶんたんです。 
 プロジェクトでは障害しょうがい当事とうじしゃみずからビデオ撮影さつえいおこなってもらうという、障害しょうがい分野ぶんや実績じっせきげてきたプロジェクトならではのユニークなアイデアがまれていました。 
 ナレッジ・マネジメントの視点してんからると、企画きかく立案りつあん、コンセプトづくり、実際じっさい撮影さつえい編集へんしゅう評価ひょうか活用かつよう、というビデオ作成さくせい活動かつどうながれが、知識ちしき創造そうぞうのプロセスに沿っており、これもまた知識ちしき創造そうぞうにほかなりません。
 IS主催しゅさい成果せいか発表はっぴょうかいでは、APCDの所長しょちょうからSbKMをAPCDプロジェクト・フェーズ2の重要じゅうよう活動かつどうとしてメンバー全員ぜんいん協力きょうりょくもとめる発言はつげんがあり、定着ていちゃくきざしをかんじました。

13.訪問ほうもんは2009ねん1がつ25にち〜2がつ5にちでした。プロジェクトでは活動かつどう成果せいかとして期待きたいされている30のグッド・プラクティスを、SbKMを活用かつようしたビデオ・ストーリーで実現じつげんしていく活動かつどう着々ちゃくちゃく実践じっせんしつつありました。
 そのような実績じっせきまえ、SbKMのマニュアル作成さくせいという課題かだいみました
 マニュアル作成さくせいは、知識ちしき創造そうぞう視点してんかられば、ビデオ・ストーリー作成さくせいという知識ちしき創造そうぞうプロセスを形式けいしきする作業さぎょうです。ビデオ・ストーリーという具体ぐたいてき成果せいかぶつ重要じゅうようですが、それをつくげていくプロセスも重要じゅうようであり、これを形式けいしきすることで、APCDプロジェクトの貴重きちょう知識ちしき資産しさんまれます。
 成果せいか発表はっぴょうかいおこなわれたISセクションのスタッフによるマニュアル作成さくせいのプレゼンテーションは自信じしんにあふれており、プロジェクトがSbKMに熱意ねついつよさをかんじました。
かい派遣はけんは2009ねん6がつ24にち〜7がつ3にちで、パキスタンのイスラマバードでおこなわれたビデオ・ストーリーの撮影さつえい同行どうこうしました。
 撮影さつえい現場げんば体験たいけんは、ビデオ・ストーリー作成さくせいかかわるプロジェクトの、黒子くろことしてのおおきな貢献こうけんとビデオ・ストーリー作成さくせいプロセスへの参加さんかつうじた障害しょうがいしゃのエンパワーメントの発現はつげんなどをたりにしておおきなまなびの機会きかいとなりました。同時どうじに、前回ぜんかい作成さくせいしたマニュアルの詳細しょうさいばん作成さくせい支援しえんし、出張しゅっちょう同行どうこうしたISメンバーがバンコクでの成果せいか発表はっぴょうかいおこなった発表はっぴょうは、予想よそうえた、自信じしんちた素晴すばらしいプレゼンテーションで、SbKMがプロジェクトの努力どりょくによって着実ちゃくじつ定着ていちゃくしつつあることを実感じっかんしました。
 
14.2008ねん1がつにAPCDプロジェクトを訪問ほうもんしてから1ねんあまりのあいだに、SbKMを十分じゅうぶん咀嚼そしゃくし、プロジェクト目標もくひょうである障害しょうがいしゃのエンパワーメントとバリアフリー社会しゃかい促進そくしんけて役立やくだてていけるまでになったことは、障害しょうがい分野ぶんや経験けいけん実績じっせきんできたプロジェクトならではのたか能力のうりょくなりせるぎょうであり、タイがわスタッフと日本人にっぽんじん専門せんもん一致いっち協力きょうりょくして達成たっせいした成果せいかであるとたか評価ひょうかできます。
プロジェクトの努力どりょくによるSbKMにかかわる具体ぐたいてき成果せいかとして、以下いかれいげておきます。
 ラオスのビエンチャン障害しょうがいしゃ協会きょうかいが、ゼロから障害しょうがいしゃ自助じじょグループをげた熱意ねつい動機どうき、APCDとの連携れんけい障害しょうがいしゃ自助じじょ団体だんたい連携れんけいしてネットワーク団体だんたいげてった経緯けいいをまとめたストーリーは、はじめての障害しょうがいしゃかかわるビデオとして国営こくえい放送ほうそう放映ほうえいされました。
 フィリピンでは商業しょうぎょう施設しせつシューマートが、過去かこ失敗しっぱい教訓きょうくん障害しょうがいしゃ啓発けいはつ教育きょういく従業じゅうぎょういん実施じっしし、かくモールのバリアフリー計画けいかくすすめてきた経緯けいいを、APCDと協力きょうりょくして作成さくせいしたビデオ・ストーリーは、バリアフリー環境かんきょう啓発けいはつビデオとしてシューマートない映画えいがかんでの上映じょうえい見込みこまれ、年間ねんかんやく700まんにんると想定そうていされており、おおきなインパクトとなると期待きたいされています。

15.最後さいごに、APCDプロジェクトの二ノ宮にのみやぜんチーフアドバイザー、三木みき業務ぎょうむ調整ちょうせいいん佐野さの合澤あいざわJICA専門せんもん、カニタ所長しょちょうをはじめタイがわスタッフには、貴重きちょうまなびのあたえていただき御礼おれいもうげます。SbKMという知識ちしき創造そうぞうプロセスを共有きょうゆうし、おたがいの暗黙あんもくゆたかにしたとしんじており、プロジェクトにもまなびがあったとすれば望外ぼうがいよろこびです。またSbKMが、パキスタンをはじめアジア太平洋たいへいよう地域ちいき障害しょうがいしゃ皆様みなさまおもいの実現じつげんすこしでも役立やくだつとすればこれ以上いじょうよろこびはありません。
 APCDプロジェクトには会場かいじょう皆様みなさまにも多大ただいなご支援しえん・ご協力きょうりょくをいただいているとおもいます。このりて御礼おれいもうげるとともに今後こんごのご支援しえん・ご鞭撻べんたつをよろしくおねがいたします。

 以上いじょう報告ほうこくわります。ご清聴せいちょうありがとうございました。

1 参考さんこう文献ぶんけん
2 Denning, S. 2001, “The Springboard”, Butterworth-Heinemann.
3 北陸先端科学技術大学院大学ほくりくせんたんかがくぎじゅつだいがくいんだいがく知識ちしき科学かがく研究けんきゅう梅本うめもと研究けんきゅうしつHP、2009、
http://www.jaist.ac.jp/ks/labs/umemoto/ume-lab.html
4 国際こくさい協力きょうりょく機構きこう 人間にんげん開発かいはつ、2007、『アジア太平洋たいへいよう障害しょうがいしゃセンタープロジェク 
終了しゅうりょう評価ひょうか報告ほうこくしょ』、国際こくさい協力きょうりょく機構きこう
5 国際こくさい協力きょうりょく機構きこう人間にんげん開発かいはつ、2007、『アジア太平洋たいへいよう障害しょうがいしゃセンタープロジェク 
ト(フェーズ 2)事前じぜん評価ひょうか報告ほうこくしょ』、国際こくさい協力きょうりょく機構きこう
マニラ新聞しんぶん、2009、バリアフリー・ビデオ完成かんせい SM、過去かこ失敗しっぱい教訓きょうくん
6 野中のなかいく次郎じろう竹内たけうちひろしだか、1996、『知識ちしき創造そうぞう企業きぎょう』、東洋経済新報社とうようけいざいしんぽうしゃ
7 ―――――、紺野こんの とう、1999、『知識ちしき経営けいえいのすすめ』、筑摩書房ちくましょぼう
10 ―――――、梅本うめもと勝博かつひろ、2001、「知識ちしき管理かんりから知識ちしき経営けいえいへ−ナレッジマネジメ 
ントの最新さいしん動向どうこう−」、『人工じんこう知能ちのう学会がっかい』、だい16かんだい1ごうpp.4-14.
11 ポランニー.M、高橋たかはし勇夫いさおやく、1980、『暗黙あんもく次元じげん』、紀伊国屋きのくにや書店しょてん
佐野さの竜平りゅうへい、2009、だれもが主人公しゅじんこう、ストーリーにもとづく知識ちしき創造そうぞう活動かつどう(SbKM) 
12 ―国際こくさい協力きょうりょく現場げんばにおいて、障害しょうがいしゃエンパワメントのいちに―、『ノーマライゼーション 障害しょうがいしゃ福祉ふくし』、29かん6がつごうpp.44-47.

UP:200909 REV:20090918, 0921
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