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堀田義太郎・安藤道人・川口有美子「ALS患者のQOL評価に関する文献調査に基づく研究」
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ALS患者かんじゃのQOL評価ひょうかに関かんする文献ぶんけん調査ちょうさに基もとづく研究けんきゅう

厚生こうせい労働ろうどう科学かがく研究けんきゅう費ひ補助ほじょ金きん（難治なんじ性せい疾患しっかん克服こくふく研究けんきゅう事業じぎょう）
総合そうごう研究けんきゅう報告ほうこく書しょ
Word版ばん〔DOC〕
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last update: 20160218


ALS患者かんじゃのQOL評価ひょうかに関かんする文献ぶんけん調査ちょうさに基もとづく研究けんきゅう

堀田ほった義太郎よしたろう　立命館大学りつめいかんだいがく衣笠きぬがさ総合そうごう研究けんきゅう機構きこう　ポストドクトラルフェロー
安藤あんどう道人みちひと　株式会社かぶしきがいしゃ三菱みつびし総合そうごう研究所けんきゅうじょ　地域ちいき経営けいえい研究けんきゅう本部ほんぶ 研究けんきゅう員いん
分担ぶんたん研究けんきゅう者しゃ　川口かわぐち有美子ゆみこ　NPO法人ほうじんALS/MNDサポートセンターさくら会かい理事りじ

研究けんきゅう要旨ようし
目的もくてき：QOL評価ひょうか、とくに適切てきせつな測定そくてい評価ひょうか法ほうに関かんする文献ぶんけんをレビューし、その意義いぎと課題かだいを明あきらかにする。方法ほうほう：文献ぶんけん研究けんきゅう。結果けっか： PUBMEDにより[ALS QOL]で検索けんさくした結果けっかを中心ちゅうしんにして、目的もくてきに基もとづき19件けんの論文ろんぶんを選別せんべつした。傾向けいこうは非ひ身体しんたい的てきQOL構成こうせい要素ようそに着目ちゃくもくする研究けんきゅうが10件けん、患者かんじゃとケア提供ていきょう者しゃの双方そうほうのQOLに着眼ちゃくがんした研究けんきゅうが6件けんであった。これらのレビューを通とおして、この二ふたつの傾向けいこうの意義いぎを確認かくにんし、さらにその課題かだいを提示ていじした。


Ａ．研究けんきゅう目的もくてき

本ほん研究けんきゅうの目的もくてきは、ALS患者かんじゃを対象たいしょうとしたQOL評価ひょうかの先行せんこう研究けんきゅうをレビューし、その意義いぎと課題かだいについて考察こうさつすることである。
臨床りんしょう医学いがくや医療いりょう経済けいざい学がくにおいては、患者かんじゃの健康けんこう状態じょうたいを評価ひょうかし、医療いりょうの効果こうかあるいは費用ひよう対たい効果こうかを計はかることは最さい重要じゅうよう課題かだいの一ひとつである。また、ALSのように重度じゅうどの身体しんたい障害しょうがいを伴ともなう難病なんびょう患者かんじゃの生活せいかつの質しつ（QOL）の評価ひょうかは、医学いがく的てきな関心かんしんを超こえて、難病なんびょう患者かんじゃや障害しょうがい者しゃの社会しゃかい的てき生活せいかつの実態じったい把握はあくや効果こうか的てきな社会しゃかい的てき支援しえんのあり方かたにも関かかわる問題もんだいである。

Ｂ．研究けんきゅう方法ほうほう

文献ぶんけん調査ちょうさに基もとづく。
なお、本ほん研究けんきゅうは文献ぶんけん研究けんきゅうであるため倫理りんり面めんに配慮はいりょする必要ひつようはなかった。

Ｃ．研究けんきゅう結果けっか
C－1.　QOL評価ひょうかの概要がいよう
C－1－1.　QOLの定義ていぎ

まず、あらためてQuality of Life(QOL:生活せいかつの質しつあるいは生命せいめいの質しつ)の意味いみと、これまでの研究けんきゅうで用もちいられてきたQOLの主要しゅような尺度しゃくどについて概説がいせつしておきたい。QOLが多義たぎ的てきであり、容易よういに定義付ていぎづけられないことは多おおくのQOLの教科書きょうかしょや論文ろんぶんの冒頭ぼうとうに書かかれている 。たとえばWHOは以下いかのようにQOLを解説かいせつしている。

文化ぶんかや価値かち観かんにより規定きていされ、その個人こじんの目標もくひょう、期待きたい、基準きじゅんおよび心配しんぱい事ごとに関連付かんれんづけられた、生活せいかつ状じょう況きょうに関かんする個人こじん個人こじんの知覚ちかく（perception）である。QOLはその人ひとの身体しんたい的てき健康けんこう、心理しんり状態じょうたい、依存いぞん性せいレベル、社会しゃかい関係かんけい、個人こじん的てき信条しんじょうおよびその人ひとの周まわりの環境かんきょうの特徴とくちょうとそれらとの関係かんけい性せいを複雑ふくざつに含ふくんだ広ひろい範囲はんいの概念がいねんである。この定義ていぎはQOLが文化ぶんか的てき、社会しゃかい的てき、環境かんきょう的てきな文脈ぶんみゃくに組くみ込こまれた個人こじんの主観しゅかん的てきな評価ひょうかとして参照さんしょうされるものであるという観点かんてんを反映はんえいしている。QOLは単たんに"健康けんこう状態じょうたい"、"生活せいかつ様式ようしき"、"生活せいかつの満足まんぞく"、"精神せいしん状態じょうたい"、"幸福こうふく状態じょうたい"と等価とうかではなくより正確せいかくに言いえば、QOLはそれら以外いがいの生活せいかつ側面そくめんをも含ふくむ多次元たじげん的てき概念がいねんである

　この解説かいせつから明あきらかなように、QOLをより厳密げんみつに定式ていしき化かしようとすると、その多元たげん性せいが失うしなわれてしまい、人々ひとびとの生活せいかつ全般ぜんぱんの質しつを表あらわすことは困難こんなんとなってしまう。
しかし、多おおくの臨床りんしょう医学いがくや医療いりょう経済けいざい学がくで用もちいられるQOL指標しひょうは、分析ぶんせき上じょう・操作そうさ上じょうの必要ひつよう性せいから、上述じょうじゅつした広範こうはんな概念がいねんよりも限定げんてい的てきな尺度しゃくどとなることが一般いっぱん的てきである。例たとえば、臨床りんしょう医学いがくや医療いりょう経済けいざい学がくで頻繁ひんぱんに用もちいられるSIP、SIF-36やEuroQoLといった包括ほうかつ的てき尺度しゃくど は、健康けんこう関連かんれんQOL（以下いかHRQL）と呼よばれ、健康けんこう状態じょうたいに直接ちょくせつ起因きいんするものではないQOLは測定そくていの対象たいしょう外がいとされている 。

C－1－2.　包括ほうかつ的てき尺度しゃくど

以下いかではFayers et al[2000]などに基もとづいて、SIP、SIF-36、EuroQoLの３みっつのHRQLの包括ほうかつ的てき尺度しゃくどについて、その概要がいようを再さい確認かくにんしておこう。
SIPはBergner et al(1981)などによって開発かいはつされ、患者かんじゃが知覚ちかくする健康けんこう状態じょうたいを行動こうどうへの影響えいきょうによって測定そくていしようとするものである。
SIPは136項目こうもくからなり、各かく項目こうもくには日常にちじょう活動かつどうがあげられ、12の主要しゅような機能きのう不全ふぜんの領域りょういきが網羅もうらされている。回答かいとう者しゃは自分じぶんができる活動かつどうと自分じぶんが該当がいとうする記述きじゅつにマークをつける。感情かんじょうや認知にんちよりも社会しゃかい生活せいかつ面めんでの活動かつどうや行動こうどうに対たいする健康けんこうの影響えいきょうに主眼しゅがんがおかれているが、情緒じょうちょ的てきなウェルビーイングに関かかわる項目こうもくもいくつか含ふくまれる。これらの項目こうもくによって12の各かく機能きのう不全ふぜん尺度しゃくどが算出さんしゅつされ、標準ひょうじゅんスコア算出さんしゅつ法ほう によってスコア化かされる。
　SIF-36はWare et al[1993]などによって開発かいはつされたものであり、身体しんたい面めん、社会しゃかい生活せいかつ面めん、情緒じょうちょ面めんの機能きのう状態じょうたいが重視じゅうしされている。８やっつの健康けんこうの概念がいねんを表あらわす36の項目こうもくがあり、身体しんたい的てき健康けんこうと精神せいしん的てき健康けんこうを測定そくていする。身体しんたい的てき健康けんこうの尺度しゃくどは身体しんたい機能きのう（10項目こうもく）、日常にちじょう役割やくわり機能きのう‐身体しんたい（４項目こうもく）、身体しんたいの痛いたみ（2項目こうもく）、全体ぜんたい的てき健康けんこう感かん（5項目こうもく）であり、精神せいしん的てき健康けんこうの尺度しゃくどは活力かつりょく（4項目こうもく）、社会しゃかい生活せいかつ機能きのう（2項目こうもく）、日常にちじょう役割やくわり機能きのう‐情緒じょうちょ（3項目こうもく）、心しんの健康けんこう（5項目こうもく）である。加くわえて一般いっぱん的てきな健康けんこうの変化へんかを尋たずねる質問しつもんが１項目こうもくあり、回答かいとう者しゃが自分じぶんの健康けんこうをどう受うけ止とめているかについての包括ほうかつ的てき質問しつもんがある。これらの項目こうもくは標準ひょうじゅんスコア算出さんしゅつ法ほうを用もちいてスコア化かされる。
　EuroQol(EQ-5D)はBrooks et al[1996]などによって開発かいはつされ、簡明かんめいさと多国たこく間あいだ比較ひかく可能かのう性せいに重点じゅうてんがおかれている。EuroQolでは移動いどう、セルフケア、日常にちじょう生活せいかつ活動かつどう、痛いたみ/不快ふかい感かん、不安ふあん/抑そもそもうつの５いつつの次元じげんが定さだめられ、それぞれ簡単かんたんな３種類しゅるいの回答かいとうの選択肢せんたくしが与あたえられている。加くわえて回答かいとう者しゃは「今日きょうの自分じぶんの健康けんこう状態じょうたい」を垂直すいちょくVASによって0～100の間あいだで示しめすことを求もとめられる。EuroQolは臨床りんしょう試験しけんの成果せいか指標しひょうとしてはあまり使つかわれてこなかったが、費用ひよう対たい効果こうか分析ぶんせきを含ふくむ一般いっぱん的てきな健康けんこう評価ひょうかでは広ひろく使つかわれている。
Fayers et al[2000]はHRQLについて一般いっぱん的てきに合意ごういが得えられていることとして「全般ぜんぱん的てき健康けんこう、身体しんたい機能きのう、身体しんたい症状しょうじょうや薬物やくぶつ毒性どくせいによる症状しょうじょう、情緒じょうちょ機能きのう、認知にんち機能きのう、役割やくわり機能きのう、社会しゃかい的てき機能きのう、性せい機能きのう、および実存じつぞん的てき問題もんだいを含ふくめてよいということである」と指摘してきしている。しかし、何なにが健康けんこう状態じょうたいに起因きいんするQOLであるか、を定義ていぎあるいは判別はんべつするのは容易よういではない。例たとえば、SIP、SIF-36、EuroQoLではいずれも身体しんたい機能きのうがQOLの評価ひょうか尺度しゃくどとして用もちいられているが、身体しんたい機能きのうをそのままQOL評価ひょうかに含ふくめるとすると、「QOLの高たかい重度じゅうどのALS患者かんじゃ」や「QOLの高たかい重度じゅうどの身体しんたい障害しょうがい者しゃ」は存在そんざいし得えないことになってしまう。
また、そもそも「医療いりょうによるHRQLの向上こうじょうの評価ひょうか」は資源しげん配分はいぶんによる人間にんげんのQOLの向上こうじょうの一いち側面そくめんにしか過すぎない。例たとえば看護かんごや介護かいごは、必かならずしもALS患者かんじゃの医学いがく的てきな健康けんこう状態じょうたいを改善かいぜんさせないが、それにかかわらず彼かれ・彼女かのじょらのQOL向上こうじょうに大おおきく貢献こうけんする場合ばあいがある。しかしこれらはHRQLでは適切てきせつに評価ひょうかされない可能かのう性せいがある。
このような問題もんだいを克服こくふくしてより包括ほうかつ的てきなQOLの測定そくていを意図いとしたQOL尺度しゃくども存在そんざいする。例たとえばSEIQoLは、患者かんじゃ自身じしんが自分じぶんにとって最もっとも重要じゅうようと考かんがえる項目こうもくを選択せんたくし、それぞれの項目こうもくの重おもみ付づけも患者かんじゃ自身じしんが行おこなうという、より主観しゅかん的てきな側面そくめんが重視じゅうしされたQOL尺度しゃくどである。
他たに、ALS患者かんじゃのQOL評価ひょうかとしてよく用もちいられる包括ほうかつ的てき尺度しゃくどとしてはMcGill QOL(MQOL)がある。MQOLは、1995年ねんにMcGill大学だいがくのRobin Cohenらによって、HRQLでは評価ひょうかが困難こんなんな、life-threatening illnessおよびterminally illの患者かんじゃのQOLを評価ひょうかするために開発かいはつされた 。96年ねんに発表はっぴょうされた版はんでは、質問しつもん項目こうもくは16個こで、それぞれに、身体しんたい的てき項目こうもく（1～4）、心理しんり学がく的てき項目こうもく（5～8）、実存じつぞん的てき側面そくめんに関かかわる項目こうもく（9～14）、サポート領域りょういきに関かんする項目こうもく（15および16）の質問しつもんが割わり振ふられている。それぞれの質問しつもん項目こうもくについての知覚ちかくは0～10点てんで評価ひょうかされる。
しかし、このMQOLについても、身体しんたい機能きのう領域りょういきを超こえた質問しつもんを含ふくんでいるがオープンクエスチョンは依然いぜんとして医学いがく的てき症状しょうじょうに焦点しょうてん化かされている、という指摘してきはある 。

C－1－3.　疾患しっかん特異とくい的てき尺度しゃくど

ALS患者かんじゃに特とく化かした疾患しっかん特異とくい的てき尺度しゃくどとしては、健康けんこう関連かんれんQOLとしてSIP/ALS-19（Sickness Impact Profile ALS-19）とALSAQ-40（ALS-specific QOL）があり、MQOLに基もとづいて非ひ身体しんたい的てき（nonphysical）な側面そくめんを含ふくめた包括ほうかつ的てきQOLを評価ひょうかする目的もくてきで開発かいはつされた指標しひょうとして、ALSSQOLがある。開発かいはつ時期じきは、SIP/ALS-19が1997年ねんであり、ALSAQ-40が1999年ねん、最もっとも新あたらしいALSSQOLが2006年ねんである。
SIP/ALS-19は、とくにALS患者かんじゃに対たいする臨床りんしょう試験しけんにおける有用ゆうよう性せいを目的もくてきにして指標しひょう数すうを限定げんていしたSIPである。開発かいはつ理由りゆうは、136項目こうもくの通常つうじょうのSIPでは、ALS患者かんじゃのQOLを測定そくてい・評価ひょうかし、臨床りんしょう試験しけんにおいて用もちいるには制御せいぎょが困難こんなんだから、ということである。ALSという疾患しっかんにとくに関連かんれんする19項目こうもくは、ALS患者かんじゃの身体しんたい機能きのうの評価ひょうか指標しひょうとされるTufts Quantitative Neuromuscular Exam（TQNE）との相関そうかん性せいに基もとづいて導出みちびきだされている。SIPのサブスケールとTQNE CMとの関係かんけいの検証けんしょうによって33項目こうもくと19項目こうもくに測定そくてい項目こうもくを絞しぼり、この二ふたつのMini-SIP指標しひょうによる測定そくてい結果けっかを、筋力きんりょくの弱化じゃっかとALS患者かんじゃのQOLとの影響えいきょうに関かんするSIP全体ぜんたいによる結果けっかと比較ひかくして、最終さいしゅう的てきに19項目こうもくの指標しひょうが採用さいようされている 。
ALSAQ-40は、「ALS患者かんじゃあるいは他たの運動うんどう神経しんけい疾患しっかん患者かんじゃの研究けんきゅうに用もちいるための疾患しっかん特異とくい的てきな健康けんこう関連かんれんQOL instrument」である 。開発かいはつ者しゃであるJenkinson et al.によれば、質問しつもん項目こうもくは「ALS患者かんじゃへの精密せいみつなインタビューに基もとづいてデザイン」されている。インタビューを通とおして挙あげられた多おおくの質問しつもん項目こうもくの候補こうほから、当初とうしょは78個この質問しつもん項目こうもくへ、最終さいしゅう的てきには「患者かんじゃの最もっとも顕著けんちょかつ中心ちゅうしん的てきな関心事かんしんじ」を表現ひょうげんしているとされる40項目こうもくへと絞しぼられている 。
40項目こうもくは、健康けんこう状態じょうたいに関かんする５いつつの領域りょういき（areas）ないし次元じげん（dimensions）に配分はいぶんされている。健康けんこう状態じょうたいに関かんする5領域りょういきとは、身体しんたい的てきな可動かどう性せい（Physical Mobility）、ADLと自立じりつ性せい（ADL/Independence）、食たべて飲のむこと（Eating and Drinking）、コミュニケーション（Communication）、感情かんじょう作用さよう（Emotional Functioning）であり、質問しつもんは、「食たべて飲のむこと」について3項目こうもく、「コミュニケーション」に7項目こうもく、他たの三みっつの領域りょういきにそれぞれ10項目こうもくずつ配分はいぶんされている 。
項目こうもく内容ないようは、1項目こうもくを除のぞいて全すべての項目こうもくに「私わたしは……なってきた（I have）」という表現ひょうげんが用もちいられており、40項目こうもくのうちの17項目こうもくには「……が困難こんなんになってきた」といった表現ひょうげんが用もちいられている 。それぞれの項目こうもくに対たいして、「全まったく違ちがう（Never）」、「稀まれに（Rarely）」、「ときどき（Sometimes）」、「しばしば（Often）」、「つねにあるいはまったく避さけられない（Always or cannot walk at all）」という5つの評価ひょうか軸じくが用意よういされている。
ALSSQOLは、身体しんたい的てき機能きのうに特とく化かした上記じょうき二ふたつのALS疾患しっかん特異とくい的てきQOL指標しひょうに対たいして、非ひ身体しんたい的てきな側面そくめんを含ふくめてALS患者かんじゃのQOL総体そうたいを測定そくていしうる指標しひょうとして開発かいはつされている。開発かいはつ者しゃのSimmons et al.によれば、従来じゅうらいの身体しんたい的てき機能きのうに特とく化かしたSIP/ALS-19でもALSAQ-40でもALS患者かんじゃのQOL全体ぜんたいを評価ひょうかすることはできない。他方たほうで、非ひ身体しんたい的てき因子いんしに配慮はいりょしたSEIQOLでは、多数たすうの対象たいしょう者しゃへの調査ちょうさの有用ゆうよう性せいに問題もんだいがある。ALSSQOLは、これらの問題もんだい点てんを踏ふまえて、ALS患者かんじゃの生活せいかつ全体ぜんたいのQOLの評価ひょうかにとって重要じゅうような非ひ身体しんたい的てきな因子いんしに配慮はいりょしつつ、大量たいりょうの対象たいしょう者しゃ間あいだでの比較ひかく可能かのう性せいを備そなえたQOL指標しひょうとして提示ていじされている。
ALSSQOLのベースはMQOLであり、ALS患者かんじゃへのインタビューに基もとづいてとくにスピリチュアルな側面そくめんと宗教しゅうきょうに関かかわる項目こうもくが加くわえられている。項目こうもく数すうは、完全かんぜん版ばんでは59個こで、それぞれについて0～10のスコアがある（合計ごうけい0点てん～590点てん）。59項目こうもくのなかの46項目こうもくは、6つの因子いんし（factors）に配分はいぶんされる。6つの因子いんしとその該当がいとう項目こうもく数すうはそれぞれ、「否定ひてい的てき感情かんじょう（Negative emotion）」（13項目こうもく）、「人々ひとびとおよび社会しゃかいとの相互そうご作用さよう（Interaction with people and the environment）」（11項目こうもく）、「親密しんみつ性せい（Intimacy）」（7項目こうもく）、「宗教しゅうきょう性せい（Religiosity）」（4項目こうもく）、「身体しんたい的てき症候しょうこう（Physical symptoms）」（6項目こうもく）、「球たま機能きのう（Bulbar function）」（5項目こうもく）である（Simmons et al. 2006: 1660）。これら46項目こうもくのバージョンを簡易かんい版ばんとして用もちいることも可能かのうだとされている。

※　表ひょう１には、代表だいひょう的てきなHRQLであるSF-36、EuroQoL、MQOL、そして健康けんこう状態じょうたいを超こえた生活せいかつの質しつ全般ぜんぱんを評価ひょうかしようとする試こころみであるSEIQoL、さらにALSに対たいする疾患しっかん特異とくい的てき測定そくてい尺度しゃくどであるALSSQOLとALSAQ-40について整理せいりしている。

C－2.　ALS患者かんじゃのQOL評価ひょうかの先行せんこう研究けんきゅう

PUBMED上じょうで「ALS QOL」で検索けんさくして得えられた文献ぶんけん（38本ほん）を主おもな対象たいしょうとして、ALS患者かんじゃのQOL評価ひょうか方法ほうほうにとくに焦点しょうてん化かした論文ろんぶんを選別せんべつした結果けっか、以下いかの19件けんが得えられた（発行はっこう年ねん順じゅん）。

①　Gelinas DF, O'Connor P, Miller RG. [1998] "Quality of life for ventilator-dependent ALS patients and their caregivers." J Neurol Sci (suppl. 1):S134-S136.
②　Jenkinson C, Levvy G, Fitzpatrick R, Garratt A (2000):The amyotrophic lateral sclerosis assessment questionnaire (ALSAQ-40): tests of data quality, score reliability and response rate in a survey of patients. J. Neurol. Sci.180:94-100
③　Simmons Z, Bremer BA, Robbins RA, Walsh SM, Fischer S (2000):Quality of life in ALS depends on factors other than strength and physical function. Neurology.55:388-392
④　Robbins RA, Simmons Z, Bremer BA, Walsh SM, Fischer S (2001):Quality of life in ALS is maintained as physical function declines. Neurology.56:442-444
⑤　Clarke S, Hickey A, O'Boyle C, Hardiman O (2001):Assessing individual quality of life in amyotrophic lateral sclerosis. Qual. Life. Res.10:149-158
⑥　Neudert C, Wasner M, Borasio GD (2001):Patients' assessment of quality of life instruments: a randomised study of SIP, SF-36 and SEIQoL-DW in patients with amyotrophic lateral sclerosis. J. Neurol. Sci.191:103-109
⑦　Kiebert GM, Green C, Murphy C, Mitchell JD, O'Brien M, Burrell A, Leigh PN (2001):Patients' health-related quality of life and utilities associated with different stages of amyotrophic lateral sclerosis. J. Neurol. Sci.191:87-93
⑧　Goldstein LH, Atkins L, Leigh PN (2002):Correlates of Quality of Life in people with motor neuron disease (MND). Amyotroph. Lateral. Scler. Other. Motor. Neuron. Disord. 3:123-129.
⑨　Bromberg MB, Forshew DA (2002):Comparison of instruments addressing quality of life in patients with ALS and their caregivers. Neurology.58:320-322
⑩　Green C, Kiebert G, Murphy C, Mitchell JD, O'Brien M, Burrell A, Leigh PN (2003):Patients' health-related quality-of-life and health state values for motor neurone disease/amyotrophic lateral sclerosis. Qual. Life. Res.12:565-574
⑪　Trail M, Nelson ND, Van JN, Appel SH, Lai EC (2003):A study comparing patients with amyotrophic lateral sclerosis and their caregivers on measures of quality of life, depression, and their attitudes toward treatment options. J. Neurol. Sci.209:79-85
⑫　Kaub-Wittemer D, Steinbuchel N, Wasner M, Laier-Groeneveld G, Borasio GD (2003):Quality of life and psychosocial issues in ventilated patients with amyotrophic lateral sclerosis and their caregivers. J. Pain. Symptom. Manage.26:890-896
⑬　Chi? A, Gauthier A, Montuschi A, Calvo A, Di Vito N, Ghiglione P, Mutani R (2004):A cross sectional study on determinants of quality of life in ALS. J. Neurol. Neurosurg. Psychiatry.75:1597-1601
⑭　Van den Berg JP, Kalmijn S, Lindeman E, Veldink JH, de Visser M, Van der Graaff MM, Wokke JH, Van den Berg LH (2005):Multidisciplinary ALS care improves quality of life in patients with ALS. Neurology.65:1264-1267
⑮　Lo Coco G, Lo Coco D, Cicero V, Oliveri A, Lo Verso G, Piccoli F, La Bella V (2005):Individual and health-related quality of life assessment in amyotrophic lateral sclerosis patients and their caregivers. J. Neurol. Sci.238:11-17
⑯　Simmons Z, Felgoise SH, Bremer BA, Walsh SM, Hufford DJ, Bromberg MB, David W, Forshew DA, Heiman-Patterson TD, Lai EC, McCluskey L　2006):The ALSSQOL: balancing physical and nonphysical factors in assessing quality of life in ALS. Neurology.67:1659-1664
⑰　Gauthier A, Vignola A, Calvo A, Cavallo E, Moglia C, Sellitti L, Mutani R, Chio A (2007):A longitudinal study on quality of life and depression in ALS patient-caregiver couples. Neurology.68:923-926
⑱　De Groot IJ, Post MW, van Heuveln T, Van den Berg LH, Lindeman E (2007):Cross-sectional and longitudinal correlations between disease progression and different health-related quality of life domains in persons with amyotrophic lateral sclerosis. Amyotroph. Lateral. Scler.8:356-361
⑲　Foley G, O'Mahony P, Hardiman O (2007):Perceptions of quality of life in people with ALS: effects of coping and health care. Amyotroph. Lateral. Scler.8:164-169

※　今回こんかいとくにレビュー対象たいしょうとした文献ぶんけんの概要がいようは、表ひょう2に示しめした。

これらを地域ちいき別べつで分類ぶんるいすると（研究けんきゅう対象たいしょうが重かさなる文献ぶんけんもあるので文献ぶんけん数すう全体ぜんたいの地域ちいき比率ひりつ）、アメリカ合州国がっしゅうこくが6件けん、イギリスが4件けん、アイルランドとドイツが2件けんずつ、オランダが2件けん、イタリアが3件けんである。
以下いかに、QOLの非ひ身体しんたい的てき要素ようそへの着目ちゃくもくと家族かぞくケア提供ていきょう者しゃ（Family caregivers）のQOLへの着目ちゃくもくという二ふたつの観点かんてんから、その内容ないようを簡単かんたんにまとめる。

C－2－1.　非ひ身体しんたい的てき要素ようそへの着目ちゃくもく――主観しゅかん的てきQOLと疾患しっかんの重おも篤あつ度たびとの関係かんけい性せい

QOL評価ひょうか方法ほうほうに焦点しょうてん化かした論文ろんぶんに限定げんていしたことの帰結きけつでもあるが、非ひ身体しんたい的てきな側面そくめんに焦点しょうてん化かして患者かんじゃのQOLを評価ひょうかしようとする文献ぶんけんが、独自どくじのQOL指標しひょうの開発かいはつを目指めざした議論ぎろんも含ふくめると10件けんである（③④⑤⑥⑧⑬⑮⑯⑱⑲　なお⑮は次項じこうの分類ぶんるいにも該当がいとうする）。
⑱（De Groot et al.）を除のぞく9件けんが、身体しんたい機能きのう中心ちゅうしんの健康けんこう関連かんれんQOL指標しひょうとは別べつに、MQOLやSEIQOLなどの非ひ身体しんたい的てきな個人こじん的てきQOL指標しひょうを用もちいてQOL評価ひょうかを試こころみている。
これらの研究けんきゅうのすべてが、患者かんじゃの主観しゅかん的てきQOLスコア（De GrootらにおいてはSF-12の「メンタルヘルス」に関かんする項目こうもく）は身体しんたい機能きのうの障害しょうがいの進行しんこうとともに必かならずしも低下ていかしない、と指摘してきしている。
患者かんじゃの非ひ身体しんたい的てきQOLに関心かんしんをもつ理由りゆうとして最もっともよく言及げんきゅうされるのは、実際じっさいにALS患者かんじゃの主観しゅかん的てきなQOLは身体しんたい機能きのう中心ちゅうしんのQOL指標しひょうで出だされる評価ひょうかとは異ことなる、という点てんである。また、ALSという疾患しっかんに対たいする医療いりょう的てき介入かいにゅうおよびケアの質しつの評価ひょうかにとって非ひ身体しんたい的てきな観点かんてんからのQOL評価ひょうかが不可避ふかひ的てきだという点てんにも言及げんきゅうされている 。
非ひ身体しんたい的てき要素ようそを重視じゅうしする研究けんきゅうの多おおくが、評価ひょうか対象たいしょうになる要素ようその中心ちゅうしんに宗教しゅうきょう性せい（Religiosity）とスピリチュアリティを位置いちづけていた。とくに、ALSSQOL開発かいはつグループのメンバーによる調査ちょうさ（③④⑯）では、一貫いっかんして宗教しゅうきょう性せいとスピリチュアリティの要素ようそが強調きょうちょうされている。
また、社会しゃかい的てきサポートを評価ひょうかするための独立どくりつの尺度しゃくどを用もちいてその重要じゅうよう性せいを明示めいじしているのは⑬（Chi? et al.）のみだったが、社会しゃかい的てきサポートがALS患者かんじゃのQOL向上こうじょうの条件じょうけんの一ひとつであるという点てんは複数ふくすうの研究けんきゅうで示唆しさされている 。

C－2－2. 患者かんじゃとケア提供ていきょう者しゃのQOLの比較ひかく研究けんきゅう

今回こんかいの文献ぶんけんのなかで非ひ身体しんたい的てきな要素ようそに着目ちゃくもくした研究けんきゅうと並ならんで多おおかったのは、患者かんじゃとケア提供ていきょう者しゃのQOLを比較ひかく検討けんとうした研究けんきゅうである。これに該当がいとうするのは、①⑨⑪⑫⑭⑮⑰の7件けんである。そのなかで、⑰（Van den Berg et al.）は多た領域りょういき専門せんもん職しょくケア提供ていきょう者しゃと患者かんじゃを対象たいしょうとしていたが、他たの6件けんは家族かぞくケア提供ていきょう者しゃ（family caregivers）を対象たいしょうとしていた。
ただ、ケア提供ていきょう者しゃを対象たいしょうにした研究けんきゅうが多おおかったという今回こんかいの結果けっかは、必かならずしも、ALSのQOL評価ひょうか方法ほうほうをめぐる研究けんきゅうの全体ぜんたい的てきな傾向けいこうを反映はんえいしているわけではない。ケア提供ていきょう者しゃ（とりわけ家族かぞくケア提供ていきょう者しゃ）のQOLに留意りゅういした研究けんきゅうは、たしかに近年きんねん増ふえつつあるが、⑮（Lo Coco et al.）や⑪（Trail et al.）が先行せんこう研究けんきゅうとして参照さんしょうする文献ぶんけんの多おおくが重複じゅうふくしているように、いまだに多おおくはない。この点てんに関かんして、Lo Coco et al. は次つぎのように述のべている。

過去かこ数すう年間ねんかんに、ケア提供ていきょうの経験けいけんの探求たんきゅうへの関心かんしんは高たかまってきており、WHOは家族かぞくと家族かぞくケア提供ていきょう者しゃ（family caregivers）のニーズに対処たいしょすることを、緩和かんわケアの主要しゅよう対象たいしょうのひとつとして定義ていぎしている。とりわけ、ALSケアにおいて、家族かぞくケア提供ていきょう者しゃは患者かんじゃに対たいするサポートの大だい部分ぶぶんを提供ていきょうし、また医学いがく的てきな意思いし決定けっていにおいても中心ちゅうしん的てきな役割やくわりを果はたすため、家族かぞくケア提供ていきょう者しゃはALSケアにおける主要しゅよう人物じんぶつである。にもかかわらず、ALSにおけるケア提供ていきょうの経験けいけんに関係かんけいするQOLの諸しょ問題もんだいを扱あつかった研究けんきゅうは、数かぞえるほどしか存在そんざいしない。

私わたしたちのこれまでのレビューから見みても、ケア提供ていきょう者しゃのQOLに留意りゅういした研究けんきゅうは、その必要ひつよう性せいの高たかさを鑑かんがみると決けっして多おおくはないと言いえるだろう 。
家族かぞくケア提供ていきょう者しゃのQOLと患者かんじゃのQOLとの相関そうかん関係かんけいに関かんしては、人工じんこう呼吸こきゅう器き装着そうちゃくの有無うむにかかわらず、⑮（Lo Coco et al.）を除のぞく5つの研究けんきゅうで、両者りょうしゃにはズレが存在そんざいすることが指摘してきされていた。そのズレとは、患者かんじゃとケア提供ていきょう者しゃのQOLのスコアが、身体しんたい的てき可動かどう性せいに関かかわるQOLと主観しゅかん的てきなQOLで逆ぎゃくになる場合ばあいがある、ということである。
侵おかせ襲かさね性せいであるか否ひかにかかわらず、人工じんこう呼吸こきゅう器き装着そうちゃく患者かんじゃに特とく化かした研究けんきゅうは、①（Gelinas et al.）および⑫（Kaub-Wittemer et al.）の2件けんだけだった。人工じんこう呼吸こきゅう治療ちりょうに対たいする満足まんぞく度どに関かんして、いずれの研究けんきゅうでも、ともに患者かんじゃのほうがケア提供ていきょう者しゃよりも満足まんぞく度どが高たかい、と報告ほうこくされている。
また、ALSの進行しんこうが個人こじん的てきQOLに与あたえるマイナス影響えいきょうについて、⑨（Bromberg et al.）および⑰（Gauthier et al.）は、患者かんじゃよりもケア提供ていきょう者しゃの方ほうが顕著けんちょに大おおきい、と報告ほうこくしている。
⑪（Trail et al.）は、患者かんじゃがケア提供ていきょう者しゃのQOLを実際じっさいよりも高たかく評価ひょうかしているのに対たいして、ケア提供ていきょう者しゃは患者かんじゃのQOLを実際じっさいよりも低ひくく評価ひょうかする傾向けいこうが見みられると報告ほうこくし、さらに治療ちりょう方針ほうしんに対たいする両者りょうしゃの見解けんかいの相違そういも明あきらかにしている。とくに、NIV導入どうにゅうに関かんしては、患者かんじゃよりもケア提供ていきょう者しゃの方ほうが否定ひてい的てきなスタンスをとる割合わりあいが圧倒的あっとうてきに高たかいことを報告ほうこくしている（BIPAPに否定ひてい的てきな患者かんじゃは3％に過すぎなかったのに対たいして、32％のケア提供ていきょう者しゃが否定ひてい的てきだった）。
患者かんじゃとケア提供ていきょう者しゃの主観しゅかん的てき/非ひ身体しんたい的てきQOL構成こうせい要素ようそに関かんして、⑮（Lo Coco et al.）はこれら5本ほんとは異ことなる結果けっかを報告ほうこくしている。それによれば、ALSの進行しんこう度どに比例ひれいして、患者かんじゃとケア提供ていきょう者しゃ双方そうほうのSEIQOLスコアは低下ていかし、両者りょうしゃのあいだには顕著けんちょな差異さいは見みられない。この結果けっかの相違そういについて、Lo Coco et al.は、「研究けんきゅう対象たいしょう者しゃ間あいだでの障害しょうがいの程度ていど、社会しゃかい的てきおよび文化ぶんか的てき環境かんきょうにおける違ちがいと、医学いがく的てきサポートの活用かつよう可能かのう性せいにおける違ちがい」といった変数へんすうの影響えいきょうの可能かのう性せいを指摘してきしている。
⑰（Van den Berg et al.）は、家族かぞくケア提供ていきょう者しゃ以外いがいのケア提供ていきょう者しゃを対象たいしょうとして、多た領域りょういきケア専門せんもん職しょくチームがケアを行おこなったほうが患者かんじゃとケア提供ていきょう者しゃ双方そうほうにとってより望のぞましいQOLが得えられる、という結果けっかを報告ほうこくしている。

C - 2 - 3.　その他た
　
上記じょうきの二ふたつの傾向けいこうに含ふくまれない研究けんきゅうとしては、期待きたい効用こうよう理論りろんに基もとづくSG尺度しゃくどを用もちいてQOLとの相関そうかん関係かんけいを調査ちょうさした⑦および⑩（これらの被験者ひけんしゃは同一どういつ）、ALSAQ-40の開発かいはつ者しゃグループによる、ALSAQ-40の統計とうけい学がく的てき妥当だとう性せいを提示ていじした③がある。

※　QOL指標しひょうとともに用もちいられていたQOL関連かんれん因子いんしの個別こべつ的てき指標しひょうの概要がいようは以下いかである。

身体しんたい機能きのう関連かんれん指標しひょう
The ALS Functional Rating Scale（ALSFRS）
10項目こうもくで40点てんの尺度しゃくどで球たま機能きのう、上肢じょうしおよび下肢かし末まつ端はし機能きのう、呼吸こきゅう機能きのうを評価ひょうか。0（深刻しんこくに障害しょうがいされている）～40（正常せいじょうに機能きのう）でスコア。
The Appel ALS Rating Scale（AALS）
　ALSの機能きのう的てき障害しょうがいと疾患しっかんの進行しんこうを量的りょうてきに測定そくていする指標しひょう。球たま麻痺まひ（会話かいわと嚥下えんか）、呼吸こきゅう器官きかん、筋力きんりょく、上肢じょうしおよび下肢かし末まつ端はしの筋肉きんにく機能きのうを含ふくめた主観しゅかん的てき／客観きゃっかん的てきに量りょう化かされた疾患しっかん重おも篤あつ度たびの評価ひょうか。

心理しんり的てき精神せいしん的てき側面そくめん関連かんれん
Idler Index of Religiosity（IIR）
宗教しゅうきょう性せいに関かんする組織そしき的てき／公的こうてきな次元じげん（IIR-Pu）と主観しゅかん的てき／プライベートな次元じげん（IIR-Pr）を評価ひょうか。IIR-Puは2～10、IIR-Prは2～7でスコア、トータル4（ほとんど宗教しゅうきょう性せいがない）～17（最もっとも宗教しゅうきょう性せいが高たかい）で評価ひょうか。
Hospital Anxiety and Depression Scale（HADS）
14項目こうもくの別々べつべつのスコアで不安ふあん（anxiety）と抑そもそも鬱うつ（depression）を評価ひょうか。トータルは0～21点てん。高こう得点とくてんの方ほうが心理しんり学がく的てきdistressが高たかい。7点てん以下いかは問題もんだいなし、8～10点てんは臨床りんしょう的てきにdistressの可能かのう性せいあり、11点てん以上いじょうは臨床りんしょう的てきに明確めいかくなdistressを示しめす。
Short Inventory of Minor Lapses（SIML）
　15項目こうもくで、注意ちゅうい力りょくと集中しゅうちゅう力りょくに関かんする日常にちじょう的てき困難こんなんさを自己じこ評価ひょうか。
Beck Depression Inventory-Ⅱ（BDI-Ⅱ）
　21項目こうもくの自己じこ報告ほうこくスケールで抑そもそも鬱うつの深刻しんこく度どを評価ひょうかする。
Beck Hopelessness Scale（BHS）
　8～13は緩ゆるやかな絶望ぜつぼう。14以上いじょうは深刻しんこくな絶望ぜつぼう。
Mini-Mental Status Examination（MMSE）
　メンタルな状態じょうたいを評価ひょうかする指標しひょう。
Pathological Laughing and Crying Scale（PLACS）
　メンタルな状態じょうたいを評価ひょうかする指標しひょう（とくにALSにおける前頭まえがしら側がわ頭あたま点てん（frontotemporale）関連かんれん症候しょうこうである感情かんじょう失禁しっきんを評価ひょうかする指標しひょう）
Zung Depression Scalede （ZDS）
　1～4点てんにランクされた20項目こうもくの自己じこ管理かんりスケールで抑そもそも鬱うつを評価ひょうか。トータルは20点てん～80点てん。50以上いじょうのスコアが抑そもそも鬱うつの存在そんざいを示しめす。50～59点てんは最小限さいしょうげんから弱よわい抑そもそも鬱うつ。60～69点てんは緩ゆるやかな抑そもそも鬱うつ、70点てん以上いじょうは深刻しんこくな抑そもそも鬱うつ。

社会しゃかい生活せいかつ・社会しゃかい参加さんかに関かんする指標しひょう
Social Withdrawal Scale（SWS）
　4つの「引びきこもり（withdrawal）」領域りょういき（共同きょうどう体たいおよびより広ひろい世界せかいから、家族かぞくおよび親密しんみつな友人ゆうじんから、感情かんじょう的てき、物理ぶつり的てき）に即そくして、6項目こうもくずつの合計ごうけい24項目こうもくについて、1（全然ぜんぜんそんなことはないnone at all）～6（全まったくその通とおりcompletely agree）で評価ひょうか。
Psychological Questionnaire（PSQ）
社会しゃかい的てき地位ちいを示しめす4項目こうもくの指標しひょう。

ケア提供ていきょう者しゃ／サポート体制たいせいに関かんする指標しひょう
Close Persons Questionnaire（CPQ）
　回答かいとう者しゃと親密しんみつな人間にんげん4名めいまでにつき、サポートの諸しょ側面そくめんに関かんする項目こうもくで評価ひょうか。サポートの種類しゅるいに応おうじて、高こうスコアが高こうレベルのサポートを示しめす。個人こじん的てき関係かんけい性せいについての全体ぜんたい的てき満足まんぞく感かんおよび家族かぞく構成こうせいを含ふくむ日常にちじょう的てき社会しゃかい的てきネットワークの程度ていどを示しめす。
Social Support Questionnaire（SSQ）
　患者かんじゃが（a）手助てだすけを得えることができる人数にんずう、（b）リストされた人ひとによって受うけるケアの満足まんぞく度どを、1（非常ひじょうに満足まんぞく）～6（全まったく不ふ満足まんぞく）で測定そくていすることを可能かのうにする指標しひょう。
Self-Perceived Burden Scale（SPBS）
　25～125のレンジで、自みずからがケア提供ていきょう者しゃの負担ふたんになっている程度ていどについての患者かんじゃ自身じしんの認識にんしき／知覚ちかくを評価ひょうか。スコアは「負担ふたんをかけている感かん」の高たかさを示しめす。

ケア提供ていきょう者しゃの負担ふたん
The ALS Patient Caregiver Form（ALSPCF）
　Caregiver Burden Scaleの一部いちぶからの20個この質問しつもん。ケア提供ていきょう者しゃの健康けんこう、雇用こよう状じょう況きょう、家族かぞくへの責任せきにん、社会しゃかい的てき活動かつどうに対たいする、ケア提供ていきょう活動かつどうの影響えいきょうを評価ひょうか。また、この影響えいきょうに対たいするケア提供ていきょう者しゃの態度たいどを調査ちょうさ。
Caregiver Burden Inbentory（CBI）
　5つのサブスケール（それぞれに0～20点てん）の合計ごうけい0～100点てんにより負担ふたんを評価ひょうか。スコアの高たかさ負担ふたんの高たかさを示しめす

D．考察こうさつ　　ALSにおけるQOL研究けんきゅうの意義いぎと課題かだい

意義いぎ
ALSにおけるQOL研究けんきゅうの意義いぎは、ALS療養りょうよう者しゃのQOL向上こうじょうにとって重要じゅうような要素ようそが、身体しんたい機能きのうの改善かいぜんとは別べつの水準すいじゅんに存在そんざいすることを明確めいかく化かした点てんにある。HRQLによって測定そくていされる諸しょ要素ようそは、たしかに一般いっぱん的てきにはQOLの重要じゅうような側面そくめんであると言いえる。
だがHRQLで評価ひょうか測定そくていできるALS患者かんじゃのQOLは、きわめて限かぎられる。そうした人々ひとびとのQOL向上こうじょうにとっては、医学いがく的てきに客観きゃっかん的てきに特定とくていできる身体しんたい機能きのうの改善かいぜんを目標もくひょうにした医療いりょう的てき介入かいにゅうよりも、身体しんたい感覚かんかくの安楽あんらくと残存ざんそん機能きのうを保全ほぜんし、失うしなわれた身体しんたい機能きのうを補完ほかんする（看護かんごや介護かいごを含ふくむ）ケアの方ほうが大おおきな役割やくわりを果はたす。
近年きんねんのALSのQOL研究けんきゅうでは、当人とうにんの感受かんじゅするQOLは、HRQL指標しひょうで評価ひょうかされるほど低ひくくはならない、ということは共通きょうつう了解りょうかいになりつつある。評価ひょうか項目こうもく自体じたいを患者かんじゃ自身じしんが（調査ちょうさ者しゃとのやり取とりのなかで）構成こうせいしていくSEIQolや、非ひ身体しんたい的てき要素ようそを重視じゅうししたMQOLにより、ALS患者かんじゃのQOLを保持ほじないし向上こうじょうさせる要素ようそが明あきらかにされてきている。
今回こんかいレビューした文献ぶんけんでは、QOLを保持ほじする因子いんしとして重視じゅうしされていたのは患者かんじゃ個人こじんの「宗教しゅうきょう心しん」等とうだが、布教ふきょうは医療いりょうやケアの役割やくわりではないため、QOL研究けんきゅうの成果せいかから導みちびかれる行動こうどう指針ししんがあるとすれば、それは第一義だいいちぎ的てきには、疾患しっかんの進行しんこうとともに低下ていかする運動うんどう能力のうりょくや身体しんたい活動かつどう能力のうりょくを補おぎなうような適切てきせつなケアとサポートの提供ていきょうになるだろう。
また、家族かぞくケア提供ていきょう者しゃの負担ふたんに焦点しょうてんを当あてた研究けんきゅうも徐々じょじょに行おこなわれつつある。これらの研究けんきゅうが、ALS患者かんじゃに対たいする家族かぞくケア提供ていきょう者しゃの負担ふたんを軽減けいげんするための社会しゃかい的てきサポートの必要ひつよう性せいが示唆しさしている点てんは、大おおきく評価ひょうかできる。こうした研究けんきゅう動向どうこうは、十分じゅうぶんなケアとサポートの提供ていきょうが患者かんじゃのQOL保持ほじと向上こうじょうの必要ひつよう条件じょうけんであるという点てんと、ALS患者かんじゃに対たいする日常にちじょう的てきケア提供ていきょうが主おもに家族かぞくによって負担ふたんされているという現状げんじょうの直接的ちょくせつてきかつ当然とうぜんの帰結きけつであり、今後こんご、この領域りょういきでの研究けんきゅうのさらなる展開てんかいが期待きたいされる。

課題かだい・問題もんだい点てん

これらの研究けんきゅうの問題もんだい点てんと課題かだいは以下いかである。
・ 難病なんびょう患者かんじゃやケア提供ていきょう者しゃの社会しゃかい的てき生活せいかつの具体ぐたい的てき分析ぶんせきに対たいする適応てきおう可能かのう性せいを評価ひょうかできない。今回こんかいレビューした研究けんきゅうは、生活せいかつのあり方かたを詳くわしく分析ぶんせき・評価ひょうかするようなスキームを持もたず、あくまで医学いがく的てき・臨床りんしょう的てき見地けんちからの分析ぶんせきであるため、ALS患者かんじゃのQOLにとって重要じゅうような看護かんごや介護かいごサポートの状況じょうきょうを適切てきせつに評価ひょうかするまでには至いたっていない。
・ 諸しょ生活せいかつ機能きのうの実現じつげん度どやそのための効果こうか的てき・効率こうりつ的てきな社会しゃかい的てきケアのあり方かたを分析ぶんせき的てきに評価ひょうかできる分析ぶんせき枠組わくぐみを構築こうちくする必要ひつようがある。
・ 個人こじんの主観しゅかん的てきな選択せんたくと重おもみ付づけによるQOL評価ひょうかだけに基もとづいてケアの方針ほうしんを決定けっていすることには限界げんかいがある。制約せいやくされた状況じょうきょうに適応てきおうした選好せんこうに基もとづく選択せんたくを、主観しゅかん的てき選択せんたくとして字義じぎ通どおりに認みとめることができない場合ばあいもありうる、という点てんに留意りゅういする必要ひつようがある。
・ ALS患者かんじゃが在宅ざいたくで療養りょうようする際さいには、家族かぞくが主要しゅようなケア提供ていきょうを負担ふたんするということが自明じめい視しされている。

E 結論けつろん

QOLを向上こうじょうさせる支援しえんを行おこなうためにはQOLの構成こうせい要素ようそを正確せいかくに把握はあくする必要ひつようがある。また、QOLの構成こうせい要素ようそとその重要じゅうよう度どの組くみ合あわせは、諸しょ個人こじんに応おうじて異ことなる。そうした個別こべつ性せいに留意りゅういしつつ、介入かいにゅう方針ほうしんを特定とくていするための基礎きそとして活用かつようできるような一般いっぱん性せいをもつQOL評価ひょうか法ほうの確立かくりつが課題かだいになっている。
だが同時どうじに、とくに治療ちりょうの内容ないようと効果こうかによっては、単たんに諸しょ個人こじんの主観しゅかん的てき選好せんこうや個別こべつ性せいを尊重そんちょうするだけでは不十分ふじゅうぶんな場面ばめんが存在そんざいすることを同時どうじに銘記めいきしておくべきである。
諸しょ個人こじんの選好せんこうや選択せんたくは、諸しょ個人こじんが置おかれた生活せいかつ環境かんきょうと、それに基もとづいて形成けいせいされる予期よきに大おおきく左右さゆうされるため、選択せんたく内容ないように留意りゅういせずに単たんに《当人とうにんの選択せんたくを尊重そんちょうすればよい》ということは安易あんいである。
この点てん、具体ぐたい的てきには、たとえばSPBS、CPQ、SSQ評価ひょうかと、侵おかせ襲かさね性せい人工じんこう呼吸こきゅう治療ちりょうを含ふくむ治療ちりょう選択せんたく傾向けいこうとの相関そうかん関係かんけいの問題もんだいとして立たてることもできるが、問題もんだいはより深刻しんこくである。ここで問題もんだいにしているのは、SPBS等々とうとうに対たいする当人とうにんの主観しゅかん的てき回答かいとうを鵜呑うのみにできない可能かのう性せいがある、ということでもあるからだ。
必要ひつようなことは、こうした調査ちょうさそのものの限界げんかいを踏ふまえつつ、主観しゅかん的てきな選好せんこうや意向いこうを尊重そんちょうすることの重要じゅうよう性せいとその限界げんかいの双方そうほうを適切てきせつに認識にんしきするための理論りろん的てき枠組わくぐみを構築こうちくすることである。

Ｆ．健康けんこう危険きけん情報じょうほう　

特とくになし

Ｇ．研究けんきゅう発表はっぴょう
１．論文ろんぶん発表はっぴょう

２．学会がっかい発表はっぴょう

Ｈ．知的ちてき財産ざいさん権けんの出願しゅつがん・登録とうろく状じょう況きょう　

該当がいとう項目こうもくはなし。

文献ぶんけん

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表ひょう１　主要しゅようなQOL尺度しゃくど
指標しひょう名めい 指標しひょうの性質せいしつ・目的もくてき 評価ひょうか項目こうもく
SIP ・包括ほうかつ的てき尺度しゃくど・HRQL 136項目こうもくからなり、各かく項目こうもくには日常にちじょう活動かつどうがあげられ、１２の主要しゅような機能きのう不全ふぜんの領域りょういきが網羅もうらされている
SF-36 ・包括ほうかつ的てき尺度しゃくど・HRQL ８やっつの健康けんこうの概念がいねんを表あらわす36の項目こうもくがあり、身体しんたい的てき健康けんこうと精神せいしん的てき健康けんこうを測定そくていする。
EuroQoL(EU-5D) ・包括ほうかつ的てき尺度しゃくど・HRQL 移動いどう、セルフケア、日常にちじょう生活せいかつ活動かつどう、痛いたみ/不快ふかい感かん、不安ふあん/抑そもそもうつの５いつつの次元じげんが定さだめられ、それぞれ簡単かんたんな３種類しゅるいの回答かいとうの選択せんたく師しが与あたえられている。それに加くわえて回答かいとう者しゃは「今日きょうの自分じぶんの健康けんこう状態じょうたい」を垂直すいちょくVASによって0~100の間あいだで示しめすことを求もとめられる。
SEIQoL ・包括ほうかつ的てき尺度しゃくど （1）回答かいとう者しゃが自みずからのQOLにとって重用じゅうようだと思おもう生活せいかつの領域りょういきを指名しめいする。（2）それらの重要じゅうような領域りょういきのそれぞれにおいて現在げんざいの機能きのうレベルを評価ひょうかする。（3）選択せんたくしたキューのそれぞれの相対そうたい的てき重要じゅうよう性せいをランクづける。
MQOL ・終末しゅうまつ期き疾患しっかん患者かんじゃに特とく化かした包括ほうかつ的てき尺度しゃくど 質問しつもん項目こうもくは16個ことされ、身体しんたい的てき項目こうもくに1～4、心理しんり学がく的てき項目こうもくに5～8、実存じつぞん的てき側面そくめんに関かかわる項目こうもくに9～14、サポート領域りょういきに関かんする項目こうもくとして15および16と配分はいぶん。それぞれの質問しつもん項目こうもくを0～10の目盛めもりで評価ひょうか。
SIP/ALS-19 ・疾病しっぺい特異とくい的てき尺度しゃくど・SIPの ALS版ばん ALSにとくに関連かんれんする19項目こうもくは、ALS患者かんじゃの身体しんたい機能きのうの医学いがく的てき指標しひょうTufts Quantitative Neuromuscular Examとの相関そうかん性せいに基もとづいて導出どうしゅつ。SIPのサブスケールとTQNE CMとの関係かんけいの検証けんしょうから19項目こうもくを特定とくてい。
ALSAQ-40 疾病しっぺい特異とくい的てき尺度しゃくど 40項目こうもくは、健康けんこう状態じょうたいに関かんする五いつつの領域りょういきないし次元じげんに配分はいぶんされる。五いつつの次元じげんは、フィジカルな可動かどう性せい（Physical Mobility）、ADLと自立じりつ性せい（ADL/Independence）、食たべて飲のむこと（Eating and Drinking）、コミュニケーション（Communication）、感情かんじょう作用さよう（Emotional Functioning）であり、質問しつもんは、「食たべて飲のむこと」について3つ、「コミュニケーション」に7つ、他たの三さん領域りょういきに10項目こうもくずつ。
ALSSQOL 疾病しっぺい特異とくい的てき尺度しゃくど 完全かんぜん版ばんは項目こうもく数すう59個こで、0～10にスコア化か（合計ごうけい0～590点てん）。59項目こうもくのうち46項目こうもくは6因子いんし（factors）に配分はいぶんされる。6因子いんしとその該当がいとう項目こうもく数すうは、「否定ひてい的てき感情かんじょう（Negative emotion）」（13個こ）、「人々ひとびとおよび社会しゃかいとのインタラクション（Interaction with people and the environment）」（11個いっこ）、「親密しんみつ性せい（Intimacy）」（7個こ）、「宗教しゅうきょう性せい（Religiosity）」（4個こ）、「身体しんたい的てき症候しょうこう（Physical symptoms）」（6個こ）、「球たま機能きのう（Bulbar function）」（5個こ）。


表ひょう２：ALS患者かんじゃのQOL評価ひょうかの先行せんこう研究けんきゅう（発行はっこう年ねん順じゅん）
著者ちょしゃ（発行はっこう年ねん） 目的もくてき 調査ちょうさ対象たいしょう者しゃ（人数にんずう、性別せいべつ比率ひりつ、平均へいきん年齢ねんれい、病歴びょうれき、状態じょうたい、地域ちいき等とう） QOL指標しひょう その他たの指標しひょう（身体しんたい症状しょうじょう／運動うんどう・身体しんたい機能きのう／心理しんり学がく的てき苦悩くのう等とう）　※ 結論けつろん
Gelinas et al. （1998） 人工じんこう呼吸こきゅう器き使用しようALS患者かんじゃのQOLとそのケア提供ていきょう者しゃの負担ふたんの相関そうかん性せいを含ふくめた評価ひょうか 患者かんじゃ7名めい（人工じんこう呼吸こきゅう器き使用しよう）とケア提供ていきょう者しゃ15名めい（配偶はいぐう者しゃ）アメリカ（カリフォルニア・大西洋たいせいよう医療いりょうセンター） SF-12　ALS Quality-of-Life Index（ALSQLI） The ALS Patient Caregiver Form（ALSPCF） ・人工じんこう呼吸こきゅう器きを装着そうちゃくする決定けっていを後悔こうかいしている患者かんじゃは一人ひとりもおらず、ほとんどの患者かんじゃは大だい部分ぶぶんの時間じかんを快適かいてきで満足まんぞくに感かんじていた。・患者かんじゃは家いえに帰かえることができ、社会しゃかい活動かつどうに参加さんかできているときに最もっとも大おおきな幸福こうふく感かんを感かんじていた。・ケア提供ていきょう者しゃは人工じんこう呼吸こきゅう器き装着そうちゃくの決定けっていについて不満足ふまんぞくになる傾向けいこうがあり、多大ただいな欲求よっきゅう不満ふまんとルサンチマン、不幸ふこう感かんをあらわしていた。・ケア提供ていきょう者しゃの適応てきおうは数すう年ねん後ごになってやっと生しょうずるが、まったく適応てきおうできないケア提供ていきょう者しゃも存在そんざいした。・患者かんじゃとケア提供ていきょう者しゃが人工じんこう呼吸こきゅう器きを用もちいた療養りょうよう生活せいかつにうまく適応てきおうする能力のうりょくは、決定けっていの事前じぜんに準備じゅんびがあったか否ひかではなく、患者かんじゃとケア提供ていきょう者しゃのfriendshipの強つよさと、よい支援しえんシステムを活用かつよう可能かのうかどうかに依存いぞんする。
Jenkinson et al. （2000） ALS疾患しっかん特異とくい的てきな健康けんこう関連かんれんQOL指標しひょうALSAQ-40の回答かいとう率りつ、データの質しつ、スコアの信頼しんらい性せいの評価ひょうか。 500名めいからランダム抽出ちゅうしゅつされた250名めい。イギリス（MND協会きょうかい） ALSAQ-40 ・回答かいとう率りつに悪影響あくえいきょうはなかった。・ALSAQ-40の内的ないてき整合せいごう性せいにもとづく信頼しんらい性せいは極きわめて高たかい。・ALSAQ-40は、きわめて望のぞましいサイコメトリックな性質せいしつを示しめした。
Simmons　et al. (2000) ・QOL尺度しゃくどの評価ひょうか 96名めい男性だんせい52名めい／女性じょせい44名めい平均へいきん年齢ねんれい57.8歳さい。全員ぜんいんが呼吸こきゅう器き未み装着そうちゃく者しゃ。平均へいきん病歴びょうれきは31.8ヶ月かげつ。アメリカ（ペンシルバニア州しゅう、ハーシー医療いりょうセンター） MQOL　SIP/ALS-19 Tufts Neuromuscular Quantitative Exam　Idler Index of Religiosity（IIR） ・対象たいしょう者しゃのQOLは、体力たいりょくや身体しんたい機能きのう尺度しゃくどとは相関そうかんしておらず、心理しんり学がく的てき・実存じつぞん的てき・サポート要因よういんの方ほうがQOLを規定きていするのに重要じゅうような役割やくわりを果はたしていた。・SIP/ALS-19は身体しんたい機能きのうを評価ひょうかするにはよいが、QOL全体ぜんたいのよい尺度しゃくどとはいえない。MQOLはQOL全体ぜんたいの評価ひょうかにとって有用ゆうようである。
Robbins et al. (2001) ・身体しんたい機能きのうに特とく化かしたSIP/ALS-19の批判ひはん的てき検討けんとう。・SIP/ALS-19による評価ひょうかを、MQOL、宗教しゅうきょう性せいに関かんする指標しひょう、ALSFRSのそれぞれの評価ひょうかと比較ひかく検討けんとう。 60名めい男性だんせい32名めい／女性じょせい28名めい、平均へいきん年齢ねんれい58.5歳さい、ALSFRSスコア平均へいきん28.1。アメリカ（ペンシルバニア州しゅう、ハーシー医療いりょうセンター） MQOL　SIP/ALS-19 ALSFRS　IIR ・ALSFRSで測定そくていされた身体しんたい機能きのうが悪化あっかしたが、MQOLで測定そくていされるQOLは維持いじされた。・これらの患者かんじゃのQOLは、ALSによる容赦ようしゃなき身体しんたい的てき衰弱すいじゃくによって規定きていされない。・研究けんきゅう対象たいしょうになった患者かんじゃは気管きかん切開せっかいも呼吸こきゅう器きも使つかっていなかったため、気管きかん切開せっかい・呼吸こきゅう器き使用しよう患者かんじゃのQOLが維持いじされるかどうかについてはコメントできない。・研究けんきゅう期間きかん中ちゅうにBiPAPが必要ひつようになった患者かんじゃが4名めい。だが身体しんたい状態じょうたいの変化へんかにもかかわらずQOLは変化へんかしなかった。
Clarke et al. (2001) （1）SEIQOLの内的ないてき整合せいごう性せいによる信頼しんらい性せいと妥当だとう性せいの評価ひょうか。（2）ALSのQOLに関かんする簡潔かんけつな記述きじゅつを提示ていじすることと、QOL・疾患しっかんの重おも篤あつ度たび・心理しんり学がく的てき苦悩くのうの相関そうかん性せいの検証けんしょう。 アイルランドALS／MND患者かんじゃ名簿めいぼ[1]から募集ぼしゅう。参加さんかに同意どういした68名めいの患者かんじゃの中なかから26名めい。（69.2％が男性だんせい、平均へいきん年齢ねんれい63歳さい、平均へいきん病歴びょうれき31.5ヶ月かげつ）。人工じんこう呼吸こきゅう器き使用しよう率りつ等とうは不明ふめい。　アイルランド SEIQOL ALSFRS　Hospital Anxiety and Depression Scale（HADS） ・ALSFRSの疾患しっかん重おも篤あつ度たびと抑そもそも鬱うつレベルの間あいだには相関そうかん性せいは見みられなかった。抑そもそも鬱うつレベルは低ひくかった（だが、研究けんきゅう参加さんかに同意どういした患者かんじゃはそもそも抑そもそも鬱うつレベルが低ひくいという可能かのう性せいもあり、この結果けっかがALS患者かんじゃ全体ぜんたいを代表だいひょうしているとは言いえない（157））。・SEIQOLを完成かんせいさせた21名めいの患者かんじゃにとって、QOLと疾患しっかん重おも篤あつ度たび、QOLと抑そもそも鬱うつないし不安ふあんの間あいだに相関そうかん性せいは見みられなかった。またSEIQOLと病歴びょうれきの間あいだにも相関そうかん性せいは見みられなかった。・SEIQOLはALSの人ひとのQOL評価ひょうかの有用ゆうようなツールたりうるが、重度じゅうどのALS患者かんじゃには、SEIQOLを完成かんせいさせることはできないかもしれない。
Neudert et al. (2001) 健康けんこう関連かんれんQOL指標しひょうとSEIQOLというQOL測定そくていに対たいする異ことなるアプローチについての患者かんじゃの選好せんこうの同定どうてい。どのQOL指標しひょうを患者かんじゃは主観しゅかん的てきに妥当だとうだと感かんじるか。 1998年ねん4月がつ～1999年ねん5月がつにミュンヘンのルードヴィッヒ・マクシミラン大学だいがく神経しんけい内科ないか神経しんけい疾患しっかん外来がいらいに訪おとずれた42名めいの患者かんじゃ（性別せいべつ、年齢ねんれい、病歴びょうれき情報じょうほうはなし）。ドイツ SIP　SF-36　SEIQOL ・患者かんじゃはSEIQOLを、SIPおよびSF-36よりも妥当だとうな指標しひょうだと感かんじていた。・「健康けんこう関連かんれんQOL」という語かたりは、健康けんこうは重じゅう篤あつしな疾患しっかんをもつ患者かんじゃの個人こじん的てきなQOLに関連かんれんしていない以上いじょう、適切てきせつではない。SF-36およびSIPに関かんしては、「包括ほうかつ的てき健康けんこう状態じょうたい」という表現ひょうげんが適切てきせつである。・とくにSIPは、SEIQOLおよびSF-36に比くらべて、患者かんじゃに対たいして非常ひじょうに大おおきな感情かんじょう的てき苦痛くつうを与あたえていた。・SIPおよびSF-36のALSの健康けんこう関連かんれんQOLは、疾患しっかんの進行しんこうに伴ともなってほぼ直線ちょくせん的てきに下降かこう傾向けいこうを示しめすが、臨床りんしょう的てき経験けいけんおよび論文ろんぶんデータは患者かんじゃのQOLは必かならずしも直線ちょくせん的てきコースを辿たどらない、ということを示しめしている。・SEIQOL-DWはポジティブな介入かいにゅうという面めんをも持もちうる。
Kiebert et al. (2001) 健康けんこう状態じょうたいに関かんする患者かんじゃの報告ほうこくと健康けんこう関連かんれんQOL（HRQL）の評価ひょうか。様々さまざまな段階だんかいのALS患者かんじゃの健康けんこう状態じょうたいの自己じこ評価ひょうかの検証けんしょう。 77名めい（男性だんせい49名めい、助成じょせい28名めい、平均へいきん年齢ねんれい58.1歳さい、診断しんだんからの平均へいきん期間きかん25.3ヶ月かげつ、平均へいきん病歴びょうれき43.6ヶ月かげつ）イギリス（王立おうりつMNDケア＆研究けんきゅうセンター、王立おうりつ大学だいがく病院びょういん、ロイヤルプレストン病院びょういん） ALSAQ-40EUROQOL EQ-5D Standard gamble（SG）――期待きたい効用こうよう理論りろんに基もとづき健康けんこう状態じょうたい効用こうようを算出さんしゅつする方法ほうほう。 ・SGには「すぐに死しぬ」といった選択肢せんたくしも含ふくまれるため、患者かんじゃに脅威きょういを与あたえうるが、対面たいめん的てきインタビューにより高たかい回答かいとう率りつが得えられた。・ALSAQ-40の活用かつようを支持しじする経験けいけん的てきエビデンスが得えられた。・患者かんじゃのHRQLは疾患しっかんの重おも篤あつ度たびが増ますとともに低下ていかするが、患者かんじゃが自みずからの健康けんこう状態じょうたいに与あたえている価値かちは健康けんこう状態じょうたいが深刻しんこくに障害しょうがいされても比較的ひかくてき高たかいレベルのままだった。
Goldstein et al. （2002） self-generated QOLの評価ひょうかと、身体しんたい的てき損傷そんしょう・機能きのう的てき状態じょうたいについての当人とうにんの報告ほうこく・心理しんり学がく的てき福利ふくり・認知にんち的てき機能きのうについての当人とうにんの報告ほうこくとの相関そうかん性せいおよび社会しゃかい的てき支援しえんとの相関そうかん性せいの検証けんしょう。 31名めい（男性だんせい19名めい、助成じょせい12名めい、22名めいが結婚けっこんしパートナーと同居どうきょ、4名めいはシングル、2名めいは離婚りこん、3名めいがパートナーと死別しべつ）イギリス（王立おうりつMNDケア＆研究けんきゅうセンター） SEIQOL　SIP ALSSS　HAD　Close Persons　Questionnaire （CPQ）　Short Inventory of Minor Lapses （SIML） ・SEIQOL上じょうでのQOL全体ぜんたいの評価ひょうかは、ALSSSないしSIPのサブスケールスコアのどれとも相関そうかんしていなかった（被ひ調査ちょうさ者しゃの64.5％が「健康けんこう」を、重要じゅうようなQOL相関そうかんカテゴリーとして指定していしていたにも拘かかわらず）。　・QOLスコアは信頼しんらいできる感情かんじょう的てき支援しえんの存在そんざいと、プラス方向ほうこう（正ただし）での相関そうかんがあった。QOLスコアはまた、感情かんじょう的てき状態じょうたいとではなく、日常にちじょう的てきな認識にんしきの障害しょうがいに関かんする当人とうにんの評価ひょうかと、反対はんたい方向ほうこう（負まけ）の相関そうかんがあった。　・個人こじんの自みずからのQOL評価ひょうかは、その身体しんたい的てき損傷そんしょうや機能きのう的てき制約せいやくと単純たんじゅんに等ひとしいということはありえず、支援しえんシステムが重要じゅうようであるだろう、という近年きんねんの認識にんしきを支持しじする結果けっかだと言いえる。
Bromberg et al. (2002) 患者かんじゃおよびケア提供ていきょう者しゃのQOL評価ひょうか――身体しんたい機能きのう中心ちゅうしんのQOL指標しひょうとの比較ひかくを通とおして、SEIQOLの有効ゆうこう性せいを評価ひょうかする。 患者かんじゃ25名めいとその配偶はいぐう者しゃである13名めいのケア提供ていきょう者しゃ。患者かんじゃ平均へいきん年齢ねんれい56歳さい。平均へいきん病歴びょうれきは27.6ヶ月かげつ（最長さいちょう102ヶ月かげつ）。ケア提供ていきょう者しゃは平均へいきん58歳さい。対照たいしょう群ぐんとして五ご組くみの健康けんこうなカップル。呼吸こきゅう器き・PEGの使用しよう率りつ等とうは不明ふめい。　アメリカ（ユタ大学だいがく） SEIQOL-DW　SIP/ALS-19 ALSFRS ・ALS患者かんじゃにとって重要じゅうようなQOL領域りょういきは、身体しんたい的てき機能きのうとは結むすびついていない。逆ぎゃくに、ALS患者かんじゃの機能きのうレベルはケア提供ていきょう者しゃにネガティブなインパクトを与あたえる。　・ALS患者かんじゃの高たかいスコアは、患者かんじゃがQOLの判断はんだん基準きじゅんを変化へんかさせているというレスポンスシフトを示しめしている。それは進行しんこう性せい疾患しっかんと付つき合あうポジティブな過程かていと見みなしうる。　・ケア提供ていきょう者しゃの低ひくいスコアは、ケア提供ていきょう者しゃが期待きたいを変かえることを強しいられるという逆ぎゃくのレスポンスシフトを反映はんえいしていると思おもわれる。　・SEIQOLのようなオープンQOLスケールは、患者かんじゃとケア提供ていきょう者しゃのレスポンスシフトをより理解りかいするために有用ゆうようである。
Green et al. （2003） 健康けんこう関連かんれんQOL（HRQL）の評価ひょうか。 77名めい（Kiebert et al. (2001)と同おなじ） ALSAQ-40　EUROQOL EQ-5D SG ・MND患者かんじゃから健康けんこう状態じょうたいについての評価ひょうかを得えることは有用ゆうようかつ実践じっせん的てきである。　・健康けんこう状態じょうたいがきわめて悪わるい場合ばあいでさえ、患者かんじゃは自みずからのHRQLに高たかい価値かちを与あたえているというエビデンスが得えられた。
Trail et al. （2003） QOL評価ひょうか、抑そもそも鬱うつの程度ていど、治療ちりょう選択肢せんたくしへの態度たいどに関かんする患者かんじゃおよびケア提供ていきょう者しゃの比較ひかく。　治療ちりょう選択肢せんたくしはPEG、BIPAP、侵おかせ襲かさね性せい人工じんこう呼吸こきゅう器き。 27名めいの患者かんじゃと19名めいのケア提供ていきょう者しゃ。患者かんじゃは男性だんせい18名めい、女性じょせい9名めい。ケア提供ていきょう者しゃは女性じょせい10名めい、男性だんせい9名めい。患者かんじゃの平均へいきん年齢ねんれい57.2歳さい、ケア提供ていきょう者しゃは56.9歳さい。平均へいきん病歴びょうれきは2.7年ねん。　2名めいがPEG使用しよう、4名めいがBIPAPを使用しよう。侵おかせ襲かさね性せい呼吸こきゅう器き使用しよう者しゃはなし。　アメリカ（テキサス、ベイラー医科いか大学だいがく） MQOL-SIS Appel ALS Rating Scale（AALS）　ALSFRS　Beck Depression Inventory-Ⅱ（BDI-Ⅱ） ・MQOL-SISによる測定そくていでは患者かんじゃとケア提供ていきょう者しゃのQOLレベルは顕著けんちょな違ちがいは見みられず、適度てきどの高たかさを保持ほじしていた。　・ケア提供ていきょう者しゃのQOLに対たいする患者かんじゃの認識にんしきの方ほうが、患者かんじゃのQOLに対たいするケア提供ていきょう者しゃの認識にんしきよりも7ポイント高たかかった（患者かんじゃはケア提供ていきょう者しゃのQOLを過大かだい評価ひょうかし、ケア提供ていきょう者しゃは患者かんじゃのQOLを過少かしょう評価ひょうかする傾向けいこうが見みられる）。　・抑そもそも鬱うつに関かんしては特筆とくひつすべき結果けっかではないが、僅わずかにケア提供ていきょう者しゃのほうがより抑そもそも鬱うつ度どが高たかかった（Rabkin et al 2000とは逆ぎゃく）。抑そもそも鬱うつは身体しんたい障害しょうがいに必かならずしも関係かんけいしていなかった。　・治療ちりょう方針ほうしんについての認識にんしき（患者かんじゃ／ケア提供ていきょう者しゃ）：　PEGは肯定こうていが52％／58％、BIPAPは肯定こうていが56％／63％（否定ひていは3％／32％）、侵おかせ襲かさね性せいの人工じんこう呼吸こきゅう器きは肯定こうてい15％／5％（侵おかせ襲かさね性せい人工じんこう呼吸こきゅう器きに関かんしてRabkin et al.2000と整合せいごう）。　・QOL、抑そもそも鬱うつ、治療ちりょう選択せんたくへの態度たいどを決きめる要因よういんは、ALSの進行しんこうを通とおして患者かんじゃとケア提供ていきょう者しゃにその都度つど、検討けんとうされる必要ひつようがある。保健ほけん医療いりょう専門せんもん職しょくは、患者かんじゃとケア提供ていきょう者しゃとではその必要ひつようと目的もくてきが異ことなることを認識にんしきすべき。両者りょうしゃに対たいして、専門せんもん職しょくは、状況じょうきょうに適てきした参照さんしょうと介入かいにゅうによってフォローされる問題もんだいに焦点しょうてん化かした議論ぎろんのための、教育きょういくと機会きかいを提供ていきょうすべきである。
Kaub-Wittemer et al. （2003） NIV使用しよう患者かんじゃと侵おかせ襲かさね性せい人工じんこう呼吸こきゅう器き装着そうちゃく患者かんじゃのQOLの比較ひかく。　および両者りょうしゃのケア提供ていきょう者しゃのQOLの比較ひかく。 NIV使用しよう患者かんじゃ32名めい、侵おかせ襲かさね性せい呼吸こきゅう器き使用しよう者しゃ21名めい。NIV患者かんじゃのケア提供ていきょう者しゃは31名めいが配偶はいぐう者しゃで1名めいは娘むすめ（女性じょせいの比率ひりつは75％）。侵おかせ襲かさね性せい呼吸こきゅう器き使用しよう患者かんじゃのケア提供ていきょう者しゃは20名めいすべて配偶はいぐう者しゃ（女性じょせいの比率ひりつは90％）　ドイツ Profile of Mood States（POMS）　Munich Quality of Life Dimensions List（MLDL） ・ケアを得えている患者かんじゃがポジティブに評価ひょうかしている一方いっぽうで、集中しゅうちゅう的てきかつ持続じぞく的てきなケア提供ていきょうを強しいられる家族かぞくケア提供ていきょう者しゃの評価ひょうかは相対そうたい的てきにネガティブである。　・NIV装着そうちゃく患者かんじゃとLTMV-TPPV装着そうちゃく患者かんじゃのケア提供ていきょう者しゃの意識いしきの比較ひかくでは、前者ぜんしゃの97パーセントが「再ふたたび装着そうちゃくする」と答こたえているのに対たいして、LTMV患者かんじゃのケア提供ていきょう者しゃで再度さいど装着そうちゃくを選択せんたくすると答こたえたのは50パーセント。　・NIV使用しようのALS患者かんじゃのほとんどは、気管きかん切開せっかいを拒否きょひしたが、TV装着そうちゃく患者かんじゃの81パーセントが再ふたたび呼吸こきゅう器きを選択せんたくすると答こたえ、80パーセント以上いじょうが他たの患者かんじゃにも同おなじように勧すすめると答こたえた。　・LTMV装着そうちゃく患者かんじゃのケア提供ていきょう者しゃの30パーセントは、患者かんじゃよりも自分じぶんのQOLの方ほうが「低ひくい」と感かんじていた
Chio et al. （2004） ALSにおけるQOLの規定きてい因いんをSEIQOLとMQOLの二ふたつのスケールを用もちいて評価ひょうか。 80名めい　イタリア（トリノ大学だいがく） MQOL　SEIQOL-DW ALSFRS　Mini-Mental Status Examination（MMSE）　Pathological Laughing and Crying Scale（PLACS）　Zung Depression Scale （ZDS）　BHS　Social Support Questionnaire（SSQ）　Social Withdrawal Scale（SWS）　IIR　Psychological Questionnaire（PSQ） ・SEIQOLおよびMQOLいずれのスケールについても、QOLの最もっとも重要じゅうような説明せつめい変数へんすうは、社会しゃかい的てき支援しえんの質しつについての患者かんじゃの認識にんしきだった。　・ALS患者かんじゃのQOLは主おもに、心理しんり学がく的てき要因よういん・支援しえんに関かんする要因よういん・スピリチュアルな要因よういんによっているため、健康けんこう関連かんれんQOLはALS患者かんじゃのQOLを評価ひょうかするにはふさわしくない。　・患者かんじゃのQOLの向上こうじょうにとって最もっとも重要じゅうような課題かだいは、過重かじゅうな負担ふたんを負おっているケア提供ていきょう者しゃ家族かぞくに対たいする社会しゃかい的てきサポートである　
Van den Verg et al. （2005） ALS患者かんじゃとケア提供ていきょう者しゃのQOLに、多た領域りょういき専門せんもん職しょくALSケアの与あたえる効果こうかの検証けんしょう 208名めい（男性だんせいが61.9％、平均へいきん年齢ねんれい59,1歳さい）　オランダ（ユトレヒト大学だいがく） SF-36 ALSSS　ALSFRS ・多た領域りょういきALSケア専門せんもん職しょく ＝ リハビリ医学いがくにおけるコンサルタントによって率ひきいられたALSチーム（少すくなくとも1名めいの理学りがく療法りょうほう士しを含ふくむ）、作業さぎょう療法りょうほう士し、言語げんご療法りょうほう士し、栄養士えいようしとソーシャルワーカー。　・多た領域りょういきALSケアを受うける患者かんじゃ群ぐんは、SF-36のメンタルサマリースコアでは他たの一般いっぱん的てきケアの患者かんじゃ群ぐんよりもよいメンタル面めんでのQOLを示しめした。　・QOLの差異さいは、社会しゃかい機能きのうとメンタルヘルスの要素ようそで最もっとも著いちじるしかったが、補助ほじょ機械きかい器具きぐの存在そんざいとは独立どくりつしていた。SF-36の身体しんたいサマリースコア、VASあるいはALS患者かんじゃのケア提供ていきょう者しゃのQOLにおいて、顕著けんちょな違ちがいはみられなかった。高こうレベルのケアは、ALS患者かんじゃのメンタルなQOLを改善かいぜんする。
Lo Coco et al. （2005） 健康けんこう関連かんれんQOL（WHOQOL-BREF）と個人こじん的てきQOL（SEIQOL）により患者かんじゃと近親きんしん者しゃケア提供ていきょう者しゃのQOLを比較ひかく。 37組くみの患者かんじゃ-ケア提供ていきょう者しゃカップル（患者かんじゃは男性だんせい3.1対たい女性じょせい1、ケア提供ていきょう者しゃは1対たい3.6。平均へいきん年齢ねんれいは患者かんじゃが61.3歳さい、ケア提供ていきょう者しゃ54.7歳さい。病歴びょうれき平均へいきん16ヶ月かげつ。全員ぜんいんがPEGも呼吸こきゅう器きも使用しようしておらず、全員ぜんいんが家族かぞくと同居どうきょ。対照たいしょう群ぐんとして7組くみの健康けんこうなカップル。　イタリア（パレルモ大学だいがく） WHOQOL-BREF[1]　SEIQOL-DW ALSFRS　 ・ケア提供ていきょう者しゃは患者かんじゃに比較ひかくして身体しんたい的てき・心理しんり学がく的てきWHOQOL領域りょういきで高たかいスコアを示しめしたが、QOL全体ぜんたいのスコアは、両者りょうしゃで顕著けんちょな差異さいはなかった。　・ALSFRSで測定そくていした身体しんたい的てき機能きのう障害しょうがいは、患者かんじゃのSEIQOL-DWスコアと緩ゆるやかに連関れんかんしていたが、ケア提供ていきょう者しゃの個人こじん的てきQOL（SEIQOL）スコアと顕著けんちょな連関れんかんはなかった。SEIQOLのキューで最もっとも頻繁ひんぱんにノミネートされたのは、患者かんじゃとケア提供ていきょう者しゃ両者りょうしゃにとっての健康けんこう（身体しんたい的てきないし心理しんり学的がくてき）や家族かぞくに関連かんれんしていた。　・スピリチュアリティを重要じゅうような要素ようそとしてあげた患者かんじゃとケア提供ていきょう者しゃのQOLは相対そうたい的てきに良よかった。　・身体しんたい的てき・心理しんり学がく的てきなWHOQOL-BREFによる評価ひょうかでは、ALSは患者かんじゃおよびケア提供ていきょう者しゃ両者りょうしゃにネガティブなインパクトを与あたえていた。しかし、低ひくいQOLを示しめしたケア提供ていきょう者しゃが、身体しんたい的てき・心理しんり学がく的てきに最もっとも障害しょうがいの重おもい患者かんじゃを世話せわしている人ひとである、というわけでは必かならずしもない。
Simmons et al. （2006） ・患者かんじゃに評価ひょうかされたQOL総体そうたいを反映はんえいするALS疾患しっかん特異とくい的てきQOL指標しひょう（ALSSQOL）の開発かいはつ 342名めい（男性だんせい226名めい、女性じょせい116名めい、27～87歳さい、病歴びょうれき60ヶ月かげつ以内いないが84％、120ヶ月かげつ以内いないが95％。最長さいちょう237ヶ月かげつ）　アメリカ（ハーシー医療いりょうセンター） ALSSQOL　MQOL　SEIQOL-DW　WHOQOL-BREF ・従来じゅうらいの身体しんたい的てき機能きのうに特とく化かしたSIP/ALS-19およびALSAQ-40ではALS患者かんじゃのQOL全体ぜんたいを評価ひょうかすることはできず、他方たほう、非ひ身体しんたい的てき因子いんしに配慮はいりょしたSEIQOLでは、対象たいしょう者しゃが大量たいりょうである場合ばあいの有用ゆうよう性せいに問題もんだいがある。　・ALSSQOLは、ALS患者かんじゃの生活せいかつ全体ぜんたいのQOLの評価ひょうかにとって重要じゅうような非ひ身体しんたい的てきな因子いんしに配慮はいりょしつつ、大量たいりょうの対象たいしょう者しゃ間あいだでの比較ひかく可能かのう性せいを備そなえたQOL指標しひょうである。
Gauthier et al. （2007） ALS患者かんじゃとケア提供ていきょう者しゃのカップルにおける9ヶ月かげつ間あいだのQOLの改善かいぜんと抑そもそも鬱うつの評価ひょうか。それらをALSFRSと比較ひかく。 31組くみのカップル（患者かんじゃの男女だんじょ比率ひりつは21名めい／10名めい、ケア提供ていきょう者しゃは9名めい／22名めい、平均へいきん年齢ねんれいは患者かんじゃ58.8歳さい、ケア提供ていきょう者しゃ54.5歳さい。関係かんけいは、配偶はいぐう者しゃが25組くみ、子こが3組くみ、親おやが1組くみ、他たの親戚しんせきないし友人ゆうじんが2組くみ）　侵おかせ襲かさね性せい人工じんこう呼吸こきゅう器き使用しよう者しゃは2名めい、PEGないしRIG使用しよう者しゃは6名めい、NIV使用しよう者しゃは8名めい。　イタリア（トリノ大学だいがく） MQOL ZDS　Caregiver Burden Inbentory（CBI）　Self-Perceived Burden Scale（SPBS） ・ALS患者かんじゃ・ケア提供ていきょう者しゃカップルに、9ヵ月かげつをおいてインタビューを実行じっこう。ALSFRSのベースラインでの中なか間あいだ値ちは28.7で、第だい二に回かい目めのインタビューでは24.1．患者かんじゃのMQOLスコアは僅わずかに上昇じょうしょう（6.8から7へ）。患者かんじゃのZDSスコアも僅わずかに上昇じょうしょう（43.8から45.7）したが、まだ抑そもそも鬱うつの範囲はんいにとどまっていた。　・ケア提供ていきょう者しゃのMQOLは低下ていかし、ZDSは上昇じょうしょう（38.9から42.2）。CBIスコアは、50.3から55.8へと上昇じょうしょう。　・患者かんじゃのQOLと抑そもそも鬱うつは固定こていしていたが、ケア提供ていきょう者しゃの負担ふたんと抑そもそも鬱うつは大おおきく上昇じょうしょうしていた。　・患者かんじゃはケア提供ていきょう者しゃが時間じかんと共ともに負担ふたんを増ましていっていることに気きづいているようだったが、明確めいかくにSPBS指標しひょうにはあらわれなかった
De Groot et al. （2007） SF-36の異ことなる要素ようそに対たいするALSの影響えいきょうに関かんする、クロスセクショナリーかつ進行しんこう期間きかんを通とおした調査ちょうさ。 74名めい（男女だんじょ比ひは47名めい／27名めい、平均へいきん年齢ねんれい59.9歳さい、診断しんだん時じの平均へいきん年齢ねんれい58.3歳さい。1名めいが調査ちょうさ中ちゅうに死亡しぼう。SF-36を完成かんせいさせた患者かんじゃは62名めい）　オランダ（北西ほくせい地域ちいき） SF-36 ALSFRS ・身体しんたい的てき健康けんこうは悪化あっかしても、メンタルヘルスは固定こていしている。　・ALSの重おも篤あつ度たびとHRQOLとの間あいだには多様たような相関そうかんがある。　・身体しんたい的てきそしてメンタルなヘルスの多様たようなパターンは、HRQOLの経験けいけんにおけるフレーム転換てんかんを示唆しさしている。
Foley et al. （2007） （1）ALS患者かんじゃの感受かんじゅするQOLの「意味いみ」に関かんする質的しつてきな探究たんきゅう。　（2）患者かんじゃのヘルスケアについての経験けいけんが個々人ここじんの主観しゅかん的てきなwell-beingにいかなる影響えいきょうを与あたえるかの探究たんきゅう 5名めい（詳細しょうさいな情報じょうほうは不明ふめい）アイルランド 現象げんしょう学がく的てき方法ほうほう（SEIQOLによる調査ちょうさで用もちいたQOLドメインに基もとづく） ALSFRS-R ・9個この主題しゅだいが抽出ちゅうしゅつされた（信念しんねんの重要じゅうよう性せい、コントロールを探究たんきゅうすること、尊厳そんげんの重要じゅうよう性せい、アイデンティティ保持ほじの希求ききゅう、家族かぞくの重要じゅうよう性せい、喪失そうしつ感かん、利他りた性せいと支援しえんの重要じゅうよう性せい、ALSとの闘たたかい、人生じんせいへの感謝かんしゃ）。　・疾患しっかんの進行しんこうにより身体しんたい能力のうりょくが喪失そうしつしていくが、QOLはALSに罹患りかんしたときから変かわっていないと対象たいしょう者しゃの多おおくが感かんじていた。　・ヘルスケアサービスと支援しえんがwell-beingに貢献こうけんしていると感かんじていた。　・今回こんかいの対象たいしょう者しゃは多た領域りょういきのヘルスケア専門せんもん職しょくの支援しえんを受うけており、また（IMNDAが仲介ちゅうかいする）ボランタリーセクターからのサービスを活用かつようできる立場たちばにあるという点てんが留意りゅういされるべきである。


UP:20100304　REV: 20160218
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