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障害者欠格条項をなくす会『欠格条項にレッドカードを!――障害者欠格条項の見直しに関する提言』
『欠格条項にレッドカードを!――障害者欠格条項の見直しに関する提言』
障害者欠格条項をなくす会 20000325 175p
■障害者欠格条項をなくす会 20000325 『欠格条項にレッドカードを!――障害者欠格条項の見直しに関する提言』,障害者欠格条項をなくす会,175p. 1500+〒
※以下は内容紹介・もくじ・序文です。ニュースレターからの転記です。
本の内容 …三つの章に分かれています。
一章「障害者欠格条項の見直しに関する提言」。九つの提案です。
1 欠格条項制度の思想的背景を明確にすることが必要です
2 「できないからダメ」から「どうすればできるか」への考え方の転換が
必要です
3 新しい障害概念の検討の中で欠格条項を見直すことが必要です
4 包括的な見直しに向けて省庁の枠をこえる指針の策定が必要です
5 当事者が能力を発揮できるようにサポートする原則と方法を確立するこ
とが、急務です
6 補助的な手段の導入、とりわけ支援者の適切なサポートの視点と意義を国
際的な人権基準から確定していくことが必要です
7 異議申し立ての手続き規定を簡略にすることが必要です
8 自治体における欠格条項の実態とその背景を指摘し、撤廃に向けての課
題は何かを明らかにすることが必要です
9 成年後見制度の改正に伴う欠格条項の見直しは不十分です
二章「ヒアリング報告」。ヒアリングについては「もくじ」に一覧があります。
昨年11回開催したヒアリングの詳しい記録です。このほかにも障害者自身に語っ
ていただきました。
三章「当事者からのインタビュー他」です。
資料は、総理府の見直し検討に関する資料と、参考資料を多く載せています。昨
年から、一部の欠格条項見直しや廃止、民法改定などの動きがありました。障害
者にかかわる欠格条項をもつ法令と、最近になって削除・廃止されたもの等につ
いて、最新資料をまとめました。自治体の条例にも、障害者欠格規定がまだ多く
あり(プールや図書館などの施設利用、議会や委員会傍聴の制限)、学生が中心
になって現状を調査してきました。その一覧表も収録しています。
本のもくじ(行末の数字は頁)
発刊にあたって 障害者運動が法律を変える絶好のチャンス 牧口一二 1
提言骨子 4
第1章 障害者欠格条項の見直しに関する提言 7
Part1 障害者の社会参加と機会均等化に必要な前提を確定する必要があります
8
Part2 欠格条項を撤廃するための道筋が明らかにされなければなりません 15
Part3 「欠格」の判定に対する救済システムを効果的に機能させる条件整備が
必要です 29
Part4 政府の「対処方針」を検証し、欠格条項問題をより広く、具体的に認識
する視点をもつことが必要です 32
総理府「見直し」に関する関連資料 37
欠格条項見直しに係る検討方針の視点に関する報告書(98年12月) 38
総理府の対処方針(99年8月) 44
第2章 ヒアリング報告 55
第1回 「障害者の人権と社会参加からみた「欠格条項」問題に対する視点」
56
田中邦夫(国立国会図書館調査立法考査局)
第2回 「欠格条項の見直しに向けた「対処方針」の評価と今後の取り組み」
64
荒井元傳(全国精神障害者家族会連合会専務理事)
第3回 「欠格条項の見直しに向けた「対処方針」の評価と今後の取り組み」
71
岩崎晋也(日本障害者協議会政策委員会、法政大学助教授)
第4回 「欠格条項の見直しに向けた「対処方針」の評価と今後の取り組み」
76
松友 了(全日本手をつなぐ育成会常務理事)
第5回 「「障害者の機会均等化に関する基準規則」と国際人権規約(社会権
規約)からみた欠格条項問題」 81
長瀬 修(障害・コミュニケーション研究所)
第6回 「国際障害分類における障害の定義に関する検討からみた欠格条項問
題」86
佐藤久夫(日本社会事業大学教授)
第7回 「欠格条項の見直しに向けた「対処方針」の評価と今後の取り組み」
101
福島 智(全国盲ろう者協会理事、金沢大学助教授)
第8回 「障害者の援助つき雇用制度と欠格条項問題」 106
小川 浩(社会福祉法人やまびこの里・援護就労プロジェクトリーダー)
第9回 「医療職の欠格条項と聴覚障害者」 117
藤田 保(精神科医・中途失聴者)
後藤久美(製薬会社勤務)
第10回 「自治体における欠格条項の実態と課題」 122
里見和夫(弁護士、大阪精神医療人権センター代表)
第11回 「成年後見制度改正に伴う関係整備法における欠格条項見直しの現状
と課題」 132
原 司(法務省民事局参事官室)
第3章 当事者からのインタビュー他 149
西前一男(聴覚障害) 150
大澤たみ(ピープルファーストはなし合おう会・知的障害) 152
山口弘美(全国精神障害者団体連合会・精神障害) 154
参考資料 157
「障害者に係る欠格条項の見直し」に関する質問状(98年12月) 158
欠格条項の現存する法令一覧 160
障害者欠格条項に関する報道一覧(1999年4月〜) 170
欠格条項が廃止された法令(五十音順) 172
さくいん(第1章・第2章) 173
編集後記 174
「欠格条項検討」プロジェクトチームの構成 175
報告書の発刊にあたり
障害者運動が法律を変える絶好のチャンス
共同代表のひとり 牧口一二
少しあわただしい取り組みではありましたが、政府が2002年に向けて(障害者
の社会進出を長年にわたって 阻んできた)「欠格条項」を見直す……というもの
ですから、それっ! とばかりに「障害者欠格条項をなくす会」を発足させたので
した。
障害者の人権を確立させるために、25年ほど前から障害者を核にした市民運動
が全国のあちこちで展開されてきました。けれども、その内容は暮らしそのもの
の問題やそれにつながる医療・交通・教育など、身近な課題に取り組んできたわ
けです。その間、とくに障害者差別や人権侵害の事件があとを絶たず、その対応
に追われる日々でもありました。そんなわけで、障害者にかかわる「欠格条項」
が差別の根源であるとの認識を抱きつつも、とても法制度に杭を打ち込むほどの
力量を持ち得なかった、というのが正直なところです。
しかし、このたび政府が欠格条項の見直しに重い腰を上げたのは、まちがいな
く長年の障害者による市民運動の成果です。全国の多くの障害者が1970年ごろか
ら、当時まったく考慮されていなかった環境のなかをどしどしと街に繰り出した
のです。そして国際障害者年やその後の「障害者の10年計画」を経て、国境を越
えたノーマライゼーションの流れをつくり出し、さまざまな制度を獲得してきま
した。その結果として、古くから手付かずだった欠格条項との間に大きな矛盾を
生み出すことになったのです。まさに障害者市民運動は社会のウミをあぶり出し
たと言えます。いま政府は、新しい他の法制度との整合性が保てなくなり、見直
しをはじめた、というわけです。
これぞ絶好のチャンスです。社会を構成する(重要な)一員としての誇りをも
つ障害者市民は、この機会に 障害者の生活感あふれる意見を政府および各省庁に
反映させようと「障害者欠格条項をなくす会」運動を展開 しはじめました。この
『報告集』は、広範な人びとに「欠格条項」のことを知っていただくために作ら
れました。きっと大きな役割を果たしてくれることでしょう。
本来、あらゆる欠格条項は必要ありません。資格や免許そして許可などは、そ
れぞれの専門分野で検討された試験によって発行されるものです(自ら適正でな
いと思う者は、その扉を叩かないでしょう)。しかし、いまや個人の能力や適正
のみで判断する時代ではありません。よきサポートがいれば不可能が可能になる
ことも急速にふえてきました。また近年、コンピューターの普及により、従来で
は考えられなかった補助具も開発され、障害者の新たな職種はひろがりつつあり
ます。
欠格条項というものは、問答無用の形で障害者を門前払いにしてきましたが、
それにとどまらず時代の変化を考慮しないで、障害者の可能性を奪うもの、障害
者の社会参加を阻むものとして機能してきました。これこそ人権侵害以外の何者
でもありません。
いま、政府は見直しに向けて、「必要性の低いものは廃止する」としています
が、併せて「真に必要と認められるもの」を検討しています。あいかわらず個人
のもつ能力のみで考えているわけです。人間は関係性の生きもので、ゆたかな人
間関係をもつ人がほんとうの自立者なのです。私たち障害者は、長年の障害者市
民運動によって自立生活運動を試行錯誤し、あらたな自立観を創出してきました。
この知恵を携えて、欠格条項をなくす運動を盛り上げていきたいと、多くの仲間
に呼びかけているところです。この報告集を読まれたあなた、ぜひ、この運動に
参加されることを熱望してやみません。