『フーコーの権力けんりょく論ろんと自由じゆう論ろん――その政治せいじ哲学てつがく的てき構成こうせい』

フーコーはどのように法ほうや権利けんりを語かたったのか。
秩序ちつじょの固定こてい化かをふせぎ多様たような生せいの共存きょうぞんを可能かのうにする制度せいどの構想こうそう?「自由じゆう論ろん」の視角しかくから「権力けんりょく論ろん」を解釈かいしゃくする。
ミシェル・フーコーは、「自由じゆうで平等びょうどうな個人こじん」をつくりだす近代きんだい社会しゃかいの権力けんりょくメカニズムを問題もんだい化かした。周知しゅうちのとおり彼かれの権力けんりょく論ろんは、現代げんだい思想しそうに大おおきな影響えいきょうを与あたえた。それは他方たほうで、すべてを権力けんりょくに還元かんげんし自由じゆうを否定ひていするものだ、という批判ひはんにもさらされてきた。そうした批判ひはんも踏ふまえながら、フーコーの権力けんりょく論ろんを逆ぎゃくに「自由じゆう論ろん」の角度かくどから再さい構成こうせいしたのが本書ほんしょである。その上うえで、権力けんりょくと規範きはんの関係かんけい、民主みんしゅ主義しゅぎの問題もんだい、権利けんり論ろんなどを原理げんり的てきに問とい直なおすことが目指めざされている。従来じゅうらい検討けんとうされることの少すくなかった「フーコーと法ほう」に関かんする初はつの本格ほんかく的てき研究けんきゅうである。

I ミシェル・フーコーの権力けんりょく論ろん
第だい1章しょう 法的ほうてき権力けんりょくモデルへの問題もんだい提起ていき
1 「法的ほうてき権力けんりょくモデル」とは何なにか
2 なぜ「法的ほうてき権力けんりょくモデル」は存続そんぞくしたのか
3 「法的ほうてき権力けんりょくモデル」の対たいする問題もんだい提起ていき
4 権力けんりょくも出でるの転換てんかん?契約けいやくから戦争せんそうへ
第だい2章しょう フーコーの権力けんりょく概念がいねん
1 権力けんりょくについての新あたらしい概念がいねん
2 権力けんりょく・支配しはい・自由じゆう
3 権力けんりょくと真理しんりの関係かんけいについて
4 権力けんりょくの概念がいねんについての簡単かんたんな総括そうかつ
第だい3章しょう フーコーの権力けんりょく分析ぶんせき
1 規律きりつ権力けんりょくについて
2 生せいの政治せいじについて
II 権力けんりょく論ろんの法ほう哲学てつがく・政治せいじ哲学てつがく的てき構成こうせい
第だい4章しょう 「フーコーと法ほう哲学てつがく及および政治せいじ哲学てつがく」への序説じょせつ
1 フランスの反はんニーチェ主義しゅぎによるフーコー批判ひはん
2 主体しゅたいの再さい構成こうせい
3 フーコーとハーバーマス
4 アメリカのフーコー――法ほうと政治せいじについての論争ろんそう
第だい5章しょう 権力けんりょく論ろんと規範きはんの問題もんだい
1 権力けんりょく論ろんと規範きはんの不在ふざい
2 「規範きはん」の概念がいねんをめぐって
3 「隠かくれ規範きはん主義しゅぎ」の倫理りんり学がく
4 規範きはんと批判ひはん
5 「批判ひはんとしての」政治せいじ哲学てつがく
第だい6章しょう 民主みんしゅ主義しゅぎと権力けんりょく関係かんけい――自由じゆうの相互そうご依存いぞん性せいと対立たいりつのエートス
1 権力けんりょく関係かんけいと自由じゆう
2 民主みんしゅ主義しゅぎにおける「合意ごうい」と「対立たいりつ」
3 民主みんしゅ主義しゅぎと他者たしゃ性せい
4 闘技とうぎ的てき民主みんしゅ主義しゅぎの可能かのう性せい
III 権力けんりょく論ろんから法ほうと権利けんりの問題もんだいへ
第だい7章しょう フーコーと法ほう
1 フーコーと「法ほうの排除はいじょ」
2 規律きりつ権力けんりょくと法ほう
3 法学ほうがく研究けんきゅうにおける「権力けんりょく論ろんの」位置付いちづけ
4 法的ほうてき思考しこうと自由じゆうの実践じっせん?法ほう・規律きりつ権力けんりょく・抵抗ていこう
第だい8章しょう 権利けんりの新あたらしい形態けいたいについて
1 法的ほうてき権利けんりと「新あたらしい権利けんり」
2 権利けんりへの言及げんきゅうに対たいする批判ひはん
3 フーコーにおける「権利けんり」と自由じゆう
4 「個別こべつ的てきな真理しんり」を語かたり続つづける権利けんり
第だい9章しょう 「個別こべつ的てきな真理しんり」を語かたり、伝つたえるために
1 フーコーと監獄かんごく情報じょうほうグループ
2 監獄かんごく改革かいかくと法廷ほうていの変容へんよう?制度せいど改革かいかく訴訟そしょうを中心ちゅうしんに
3 監獄かんごく改革かいかくと法律ほうりつ家かの倫理りんり的てき態度たいど
4 「個別こべつ的てきな真理しんり」を語かたり、伝つたえるために
むすびにかえて――自由じゆうの条件じょうけん
注ちゅう
あとがき
参考さんこう文献ぶんけん
人名じんめい索引さくいん・事項じこう索引さくいん

関せき良徳よしとく（せき・よしのり）

1971年ねん群馬ぐんま県けんに生うまれる。1999年ねん一橋大学大学院法学研究科博士課程修了。一橋大学ひとつばしだいがく大学院だいがくいん法学ほうがく研究けんきゅう科か助手じょしゅを経へて、現在げんざい日本にっぽん学術がくじゅつ振興しんこう会かい特別とくべつ研究けんきゅう員いん、博士はかせ（法学ほうがく）。訳書やくしょにR.E. バーネット『自由じゆうの構造こうぞう』（共とも訳やく、木鐸ぼくたく社しゃ、2000年ねん）