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選別主義・普遍主義
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選別せんべつ主義しゅぎ普遍ふへん主義しゅぎ


last update: 20140623

◆Titmuss, Richard Morris 1968 Commitment to Welfare, George Allen & Unwin=1971 三浦みうら 文夫ふみお 監訳かんやく,『社会しゃかい福祉ふくし社会しゃかい保障ほしょう――あたらしい福祉ふくしをめざして』,東京とうきょう大学だいがく出版しゅっぱんかい,346p. 1600

 「われわれが直面ちょくめんしている課題かだいは、普遍ふへん主義しゅぎてきサービスと選別せんべつてきサービスの選択せんたく問題もんだいではない。しん課題かだいつぎ問題もんだいのなかに存在そんざいする。すなわち、個人こじんてきミーンズ・テストによることなく、特定とくていのカテゴリーや集団しゅうだん地理ちりてきはんいきニード基準きじゅんのうえにって、社会しゃかいけんとしてあたえられる選別せんべつてきサービスが、その内部ないぶに、またその周辺しゅうへん発展はってんされ、れられるような価値かちおよび機会きかい基礎きそてき枠組わくぐみを提供ていきょうするためには、一体いったい、どんな特定とくてい下部かぶ構造こうぞうをもつ普遍ふへん主義しゅぎてきなサービスが必要ひつようであるかという問題もんだいである。」(Titmuss[1968=1971:150-151]、里見さとみ[2002:81]に引用いんよう
 「イギリスにおいては、貧困ひんこん問題もんだい民族みんぞくてき統合とうごう問題もんだい、さらに社会しゃかいてきなびに教育きょういくてき不平等ふびょうどう問題もんだいにたいするこたえは、普遍ふへん主義しゅぎてきサービスの下部かぶ構造こうぞうをおいてには存在そんざいないのである。これが不可欠ふかけつ土台どだいである。その土台どだいのうえに、また、その周辺しゅうへんに、われわれの理論りろんをうちたてなければならない」(Titmuss[1968=1971:151]、里見さとみ[2002:81]に引用いんよう
 普遍ふへん主義しゅぎ原則げんそくについて「この原則げんそく採用さいようされるにいたったひとつの基本きほんてき歴史れきしてき理由りゆうは、サービスをその利用りようしゃ地位ちい尊厳そんげん自尊心じそんしん屈辱くつじょくてきうしなわせることがないようなやりかたで、ぜん国民こくみん利用りようできるしかもちかづきやすいものにしようとすることにあった」(Titmuss[1968=1971:159]、里見さとみ[2002:78]に引用いんよう
 「公的こうてき提供ていきょうされるサービスの利用りようには、劣等れっとうかんとか、救恤きゅうじゅつせいとか、恥辱ちじょくとか烙印らくいんなどはあってはならないものである。どんなひとでも「公衆こうしゅう負担ふたん」であったとか「公衆こうしゅう負担ふたん」になったとかされることがあってはならていのである」(Titmuss[1968=1971:159]、里見さとみ[2002:78]に引用いんよう
 「恥辱ちじょく烙印らくいん回避かいひということのみが、社会しゃかいけん普遍ふへん主義しゅぎというたい概念がいねん発展はってんさせた唯一ゆいいつ理由りゆうなのではなかった。そのに、いち世紀せいき以上いじょうのあいだ騒動そうどう戦争せんそう変動へんどうつうじて、おおくの社会しゃかいてき政治せいじてき心理しんりてきしょちからがこうした概念がいねん明確めいかくし、それを人々ひとびとれさせる理由りゆうひとつになっていたのである。たとえば、予防よぼうというあたらしい観念かんねん――すくなくともいちきゅう世紀せいきには、おおくのものにとってあたらしいめんらいであった――が、もうひとつの強力きょうりょく原動力げんどうりょくであった。」(Titmuss[1968=1971:159-160]、里見さとみ[2002:80-81]に引用いんよう
 「おかねがあるとか、ないといったことが個人こじんとその家族かぞく自尊心じそんしんむすびついているとうことはなげかわしいことではあるが、人間にんげんてき事実じじつである。これが「ミーンズ・テストの烙印らくいん」とばれてきたもののひとつの要素ようそである」(Titmuss[1968=1971:167]、里見さとみ[2002:98]に引用いんよう
 「過去かこにおける貧困ひんこんしゃにたいするしつわる選別せんべつてきしょサービスは、社会しゃかいが「福祉ふくし」を残余ざんよ(residual)として、つまり、公共こうきょうのお荷物にもつとしてみたことの結果けっかであったのである。したがって、選別せんべつ精度せいど方法ほうほうのそもそもの目的もくてきは、おもいとどまらせることであった(それはまた、効果こうかてき配分はいぶん方法ほうほうでもあった)。そして、この目的もくてきにかなうもっとも効果こうかてきなやりかたは、たとえ、給付きゅうふ社会しゃかいによってもたらされたマイナスのサービスにたいする全面ぜんめんてき補償ほしょうであろうと、あるいは部分ぶぶんてき補償ほしょうであろうと、保護ほごしゃ成人せいじんどももふくむ)のうちに、個人こじんてき過失かしつかん個人こじんてき挫折ざせつかん醸成じょうせいすることであったのである。」(Titmuss[1968=1971:167-168]、里見さとみ[2002:79]に引用いんよう
 「直接的ちょくせつてき普遍ふへん主義しゅぎてき現物げんぶつ社会しゃかいサービスの創設そうせつ結果けっかもたらされた主要しゅよう積極せっきょくてき成果せいかは、公的こうてき差別さべつてき障害しょうがいのぞいたということであった。所得しょとく階層かいそう人種じんしゅのいかんにかかわりなく公的こうてきみとめられたひとつのサービスの基準きじゅんが、二流にりゅう市民しみんのための二流にりゅうのサービスを意味いみするじゅう基準きじゅんにとってわったのである。」(Titmuss[1968=1971:244]、里見さとみ[2002:79]に引用いんよう

平岡ひらおか 公一こういち 19890125 「普遍ふへん主義しゅぎ選別せんべつ主義しゅぎろん展開てんかい検討けんとう課題かだい」,社会しゃかい保障ほしょう研究所けんきゅうじょへん[19890125:085-107]*
社会しゃかい保障ほしょう研究所けんきゅうじょ へん 1989 『社会しゃかい政策せいさく社会しゃかいがく』,東京とうきょう大学だいがく出版しゅっぱんかい

◆Esping-Andersen, Gosta 1990 The There Worlds of Welfare Capitalism, Cambridge: Polity Press=2001 岡沢おかざわ けん芙・宮本みやもと 太郎たろう 監訳かんやく福祉ふくし資本しほん主義しゅぎみっつの世界せかい――比較ひかく福祉ふくし国家こっか理論りろん動態どうたいミネルみねるァ書房ぁしょぼう
 http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsce/db1990/9000eg.htm

 「・エスピン−アンデルセンは、「普遍ふへん主義しゅぎ」について、それが市民しみん地位ちい平等びょうどうをおしすすめ、階級かいきゅうえた連帯れんたいもしくは「国民こくみん全体ぜんたい連帯れんたい」をつくる指導原理しどうげんり(「民衆みんしゅうてき普遍ふへん主義しゅぎ」)になるとろんじている。つまり、普遍ふへん主義しゅぎ原理げんりは、民主みんしゅてき権利けんり拡張かくちょう歩調ほちょうをあわせて形成けいせいされるものであり、「市民しみん地位ちい便益べんえきおよび責任せきにん平等びょうどうし、かつ政治せいじてき連合れんごう構築こうちく促進そくしんする」。そして、支配しはいてき社会しゃかい構造こうぞう影響えいきょうおよぼし、連帯れんたい戦略せんりゃくてきにつくりだすことに貢献こうけんするとかんがえられている(Esping-Andersen ,1990=2001,p.27;pp.75-6)。」(金子かねこ堅田かただ平野ひらの[2009])

立岩たていわ しん也 1990 「」

 「社会しゃかい福祉ふくしとそうでないものの境界きょうかいときにはっきりしないものにおもわれるのは、行為こうい内容ないようについて社会しゃかい福祉ふくし規定きていされるのか、行為こういあるいはそれにようするざい供給きょうきゅうげんから規定きていされるのかが曖昧あいまいにされることがあるからである。
 かつて政治せいじ領域りょういきにおいてなされる社会しゃかい福祉ふくしばれるものは、経済けいざいてき困窮こんきゅうしゃ主要しゅよう対象たいしょうとし(選別せんべつ主義しゅぎ)、ここには援助えんじょする主体しゅたいがないという現実げんじつ生存せいぞんけんといった基本きほんてき人権じんけんらしての要求ようきゅう所得しょとくさい分配ぶんぱいといった要因よういんがあった。それが今日きょう対象たいしょう経済けいざいてき状態じょうたいわないものとされるべきものとなってきた(普遍ふへん主義しゅぎ)ともわれる。しばしばこの移行いこうろんじられるさいに、「貨幣かへいてきニーズ」から「貨幣かへいてきニーズ」への移行いこうという言葉ことばもちいられる(三浦みうら[1985]、ひとし参照さんしょう)が、もちろんそれを字義じぎどおりにとって誤解ごかいすべきではない。必要ひつようざい・サービス自体じたいはいずれの場合ばあい商品しょうひんとして購入こうにゅうすることが可能かのうだからである。…」(立岩たていわ[1990])

平岡ひらおか 公一こういち 1991 「普遍ふへん主義しゅぎ選別せんべつ主義しゅぎ」,大山おおやまひろし武川たけかわ正吾しょうごへん社会しゃかい政策せいさく社会しゃかい行政ぎょうせい』,法律文化社ほうりつぶんかしゃ ISBN-10: 4589015730 ISBN-13: 978-4589015730 [amazon][kinokuniya]

 平岡ひらおかがあげるだいさん定義ていぎ給付きゅうふ・サービスの受給じゅきゅうさいして個別こべつてき資力しりょく調査ちょうさおこなわなければならない場合ばあいのみを「個別こべつ主義しゅぎ」、その必要ひつようがない場合ばあいを「普遍ふへん主義しゅぎ」とする定義ていぎ」(平岡ひらおか[1991:69]、里見さとみ[2002:75]で引用いんよう

古川ふるかわ たかしじゅんていふじ たけひろし庄司しょうじ 洋子ようこ へん 19930330 社会しゃかい福祉ふくしろん有斐閣ゆうひかくSシリーズ 51),有斐閣ゆうひかく,477p. ISBN-10: 4641059497 ISBN-13: 978-4641059498 2520 [amazon][kinokuniya] ※

社会しゃかい福祉ふくし供給きょうきゅう体制たいせい (1) ――供給きょうきゅう主体しゅたい配分はいぶん原理げんり供給きょうきゅう形態けいたい  (1) 選別せんべつ主義しゅぎ――普遍ふへん主義しゅぎ論争ろんそう
選別せんべつ主義しゅぎ伝統でんとう
普遍ふへん主義しゅぎ倫理りんり隘路あいろ

古川ふるかわ たかしじゅん 1994 『社会しゃかい福祉ふくしがく序説じょせつ』,有斐閣ゆうひかく

立岩たていわ しん也 1998 分配ぶんぱいする最小さいしょう国家こっか可能かのうせいについて」*,『社会しゃかいがく評論ひょうろん』49-3(195):426-445(特集とくしゅう福祉ふくし国家こっか福祉ふくし社会しゃかい
「☆20 「選別せんべつ主義しゅぎ」から「普遍ふへん主義しゅぎ」へという指摘してきがよくなされる。かつての特定とくていの(まずしい)にんたちにたいしてだけ給付きゅうふする選別せんべつ主義しゅぎ(ゆえにスティグマがともないがちだった)から、だれにでも給付きゅうふされるようになる体制たいせいうつったのだとう。そして、それにともなってスティグマが付与ふよされることがなくなるのだとう。しかし、サービスのおおくは一律いちりつあたえられるものでありえない。普遍ふへん主義しゅぎだけが解決かいけつほうだとしたらスティグマはずっとついてまわることになる。基本きほんてき問題もんだいはスティグマが付与ふよされること自体じたいにある。」

せいむら こうひろし 20000315 福祉ふくし国家こっかから福祉ふくし社会しゃかいへ――福祉ふくし思想しそう保障ほしょう原理げんり筑摩書房ちくましょぼう,247p. ISBN-10: 4480863265 ISBN-13: 978-4480863263 2730 [amazon][kinokuniya]

だい2しょう 社会しゃかい保障ほしょう制度せいど
1 社会しゃかい保障ほしょう原理げんり
所得しょとく保障ほしょう費用ひよう保障ほしょう
選別せんべつ主義しゅぎ普遍ふへん主義しゅぎ
3 福祉ふくし国家こっか
福祉ふくし国家こっか」と「普遍ふへん主義しゅぎ

星野ほしの 信也しんや 2000 『「選別せんべつてき普遍ふへん主義しゅぎ」の可能かのうせい』,うみごえしゃ

里見さとみ 賢治けんじ 2002 「社会しゃかい福祉ふくし再編さいへんにおける社会しゃかい福祉ふくしパラダイム――普遍ふへん主義しゅぎ選別せんべつ主義しゅぎ概念がいねん中心ちゅうしんとして」,阿部あべ志郎しろう右田みぎたきの久恵ひさえ宮田みやた和明かずあき松井まつい二郎じろうへん講座こうざ戦後せんご社会しゃかい福祉ふくし総括そうかつじゅういち世紀せいきへの展望てんぼうU:思想しそう理論りろん』,ドメス出版しゅっぱん,276p. ISBN-10: 4810705684 ISBN-13: 978-4810705683 [amazon][kinokuniya] ※

 平岡ひらおかがあげるだいさん定義ていぎ給付きゅうふ・サービスの受給じゅきゅうさいして個別こべつてき資力しりょく調査ちょうさおこなわなければならない場合ばあいのみを「個別こべつ主義しゅぎ」、その必要ひつようがない場合ばあいを「普遍ふへん主義しゅぎ」とする定義ていぎ」(平岡ひらおか[1991:69]、里見さとみ[2002:75]で引用いんよう

 「普遍ふへん主義しゅぎ選別せんべつ主義しゅぎ区別くべつ基準きじゅんは、とくにサービスとう現物げんぶつ給付きゅうふ場合ばあい、ニードのみを要件ようけんとして給付きゅうふするのか、それともニード以外いがい要件ようけんをも条件じょうけんとして給付きゅうふするのか、というてんにあるといっても過言かごんではないとわたしかんがえている。こうした意味いみでは、ニード・テストをもって一般いっぱんてき選別せんべつ主義しゅぎとするのは妥当だとうではないとおもわれる。」(里見さとみ[2002:77])

小沢おざわ 修司しゅうじ 20021030 福祉ふくし社会しゃかい社会しゃかい保障ほしょう改革かいかく――ベーシック・インカム構想こうそうしん地平ちへい』,こうすが出版しゅっぱん,195p. 2200 [amazon][kinokuniya] 
 http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsce/db2000/0210os.htm

 「かねてより、「福祉ふくし国家こっかしたでの選別せんべつ主義しゅぎてき福祉ふくし施策しさくによる福祉ふくし受給じゅきゅうしゃ自尊心じそんしん損傷そんしょうが、いわゆる「スティグマ」問題もんだいとしてつねおおきな関心かんしんせられてきたことは周知しゅうちのことである。すなわち、福祉ふくし施策しさく貧困ひんこんてい所得しょとくしゃ限定げんていされる場合ばあい福祉ふくし施策しさく利用りようさいしてのミーンズテスト(資力しりょく調査ちょうさ)が、「公衆こうしゅうのお世話せわ」になるという「世間せけんからはなされた存在そんざい」であり「社会しゃかい落伍らくごしゃ」であることを福祉ふくし受給じゅきゅうしゃつよ意識いしきさせたり、申請しんせいをためらわせたりする傾向けいこうがあること、あるいは、福祉ふくしサービス自身じしんしつおとった(=「劣等れっとう処遇しょぐう」)ものになるということが問題もんだいにされたのであって、このような選別せんべつ主義しゅぎだっする普遍ふへん主義しゅぎてき福祉ふくし施策しさく(サービス)の展開てんかい模索もさくされてきたのであった」(小沢おざわ[2002:113])

◆20030915 『イギリスの社会しゃかい福祉ふくし政策せいさく研究けんきゅう――イギリスモデルの持続じぞく変化へんかミネルみねるァ書房ぁしょぼう,358p. ISBN-10: 4623036928 ISBN-13: 978-4623036929 3600+ [amazon][kinokuniya] ※ su.

 「普遍ふへん主義しゅぎ選別せんべつ主義しゅぎろんさい検討けんとう

杉野すぎの 昭博あきひろ 2004 「福祉ふくし政策せいさくろん日本にっぽんてき展開てんかい ――「普遍ふへん主義しゅぎ」のにちえい比較ひかくがかりに」,『福祉ふくし社会しゃかいがく研究けんきゅう』1

星野ほしの 信也しんや 2004 「社会しゃかいてき公正こうせいけた選別せんべつてき普遍ふへん主義しゅぎ――見失みうしなわれた社会しゃかい保障ほしょう理念りねんさい構築こうちく」,『福祉ふくし社会しゃかいがく研究けんきゅう』1
 http://www008.upp.so-net.ne.jp/shshinya/Shakaitekikousei20031.pdf

 「かつて社会しゃかい福祉ふくしサービスは選別せんべつてきであるという批判ひはんがわがくにでは一世いっせい風靡ふうびしたが、そのアンチテーゼであった介護かいご保険ほけんが、社会しゃかい資源しげん有限ゆうげんせい前提ぜんていするかぎり、結局けっきょく選別せんべつ主義しゅぎ脱却だっきゃくできないことはあきらかであり、選別せんべつ主義しゅぎのマネジメントと裁量さいりょう賢明けんめい運用うんようすることこそがもとめられている。」(星野ほしの[2004])

野崎のさき 泰伸やすのぶ 200706 生活せいかつ保護ほごとベーシック・インカム」『フリーターズフリー』vol.01、282-292、人文書院じんぶんしょいん) cf.ベーシック・インカム

新党しんとう日本にっぽん 2009 「日本にっぽんあらためこく宣言せんげん」 →財源ざいげん財政ざいせい
 http://www.love-nippon.com/PDF/mani3.pdf

 「ベーシック・インカムというかんがかた
 社会しゃかい保障ほしょう制度せいど前提ぜんていとしていた「労働ろうどう」と「家族かぞく」の形態けいたいは、変容へんようしています。雇用こよう不安定ふあんてい正規せいき進行しんこうすると同時どうじに、「男性だんせいかせしゅモデル」の専業せんぎょう主婦しゅふがた家族かぞくが「標準ひょうじゅん家族かぞく」とは最早もはや規定きていない社会しゃかい状況じょうきょう到来とうらいしているのです。
 ベーシック・インカム構想こうそうとはじつは、おおきな政府せいふろんとは対極たいきょく位置いちします。個人こじん所得しょとく税制ぜいせいける所得しょとく控除こうじょ不要ふようとなり、税制ぜいせい社会しゃかい保障ほしょう制度せいど統合とうごう実現じつげんし、社会しゃかい保険ほけんりょう徴収ちょうしゅう記録きろくかかわっていた役所やくしょ経費けいひ福祉ふくし給付きゅうふ不可欠ふかけつだった選別せんべつ主義しゅぎてき資力しりょく調査ちょうさとうじる経費けいひ不要ふようとなります。」

金子かねこ たかし堅田かただ 香緒里かおり平野ひらの ひろしわたる 20091011 「社会しゃかい政策せいさくにおける「普遍ふへん主義しゅぎ」のさい検討けんとう――シティズンシップろん視角しかくから」、日本にっぽん社会しゃかい福祉ふくし学会がっかい だい57かい全国ぜんこく大会たいかい 理論りろんだい分科ぶんかかい 報告ほうこく
 http://homepage3.nifty.com/kanekoju/kanekoju3.pdf

 「・たとえば、日本にっぽん議論ぎろんでは、1950年代ねんだいから70年代ねんだい初頭しょとうにかけて、生活せいかつ保護ほごほうが「福祉ふくしろくほう」へと拡大かくだいされたこと、および「国民こくみんみな保険ほけんみな年金ねんきん」が導入どうにゅうされたこととう筆頭ひっとうに、資力しりょく調査ちょうさのない福祉ふくし施策しさく拡大かくだい、および国民こくみん一般いっぱん社会しゃかい保障ほしょう対象たいしょうにしていく過程かていこそが、「普遍ふへん」の潮流ちょうりゅうであるととらえられている(杉野すぎの,2004)。
・さらに1980年代ねんだいから90年代ねんだいには、基礎きそ年金ねんきん制度せいど導入どうにゅう、あるいは社会しゃかい福祉ふくし関連かんれんはちほう改正かいせい社会しゃかい福祉ふくし基礎きそ構造こうぞう改革かいかくによる「措置そちから利用りようへ」および「扶助ふじょから保険ほけんへ」というかたちで、社会しゃかい保障ほしょうの「普遍ふへん」が推進すいしんされてきた。また介護かいご保険ほけん制度せいど支援しえん制度せいども、介護かいごサービスの「普遍ふへん」をスローガンに導入どうにゅうされた。
古川ふるかわたかしじゅんは、社会しゃかい福祉ふくしが「貧困ひんこんしゃたいする施策しさく」から「貧困ひんこんしゃのためだけでない施策しさく」へと変化へんかしたことを「普遍ふへん」とび、こうした「普遍ふへん」がいちじるしく促進そくしんされたのは1980年代ねんだいの「福祉ふくし改革かいかく」の推進すいしん過程かていであったとする。だが、1962ねん社会しゃかい保障ほしょう制度せいど審議しんぎかい勧告かんこくがこのような傾向けいこうに「先鞭せんべんをつけた」と説明せつめいしている(古川ふるかわ,1994,p.298)。
日本にっぽん社会しゃかい保障ほしょう行政ぎょうせい社会しゃかい保障ほしょう制度せいど審議しんぎかいとう議論ぎろんでは、戦後せんごから一貫いっかんして国民こくみん一般いっぱん対象たいしょうとする「普遍ふへん主義しゅぎ」が支持しじされ、資力しりょく調査ちょうさがなく国民こくみん一般いっぱん資格しかく要件ようけんにするという意味いみでの「普遍ふへん主義しゅぎてき」な社会しゃかい保障ほしょう整理せいりするための「保険ほけん」という方法ほうほうみちびかれてきた」

『ベーシックインカム――分配する最小国家の可能性』表紙  ◆立岩たていわ しん也・齊藤さいとうつぶせ 2010/04/10 『ベーシックインカム――分配ぶんぱいする最小さいしょう国家こっか可能かのうせい青土おうづちしゃ,ISBN-10: 4791765257 ISBN-13: 978-4791765256 2310 [amazon][kinokuniya] ※ bi.

 「(3)どんなひとにも一律いちりつにという「無条件むじょうけんせい」について。わたし一律いちりつ給付きゅうふ、「全員ぜんいん同額どうがくを」という仕組しくみが是非ぜひとも必要ひつようであるとはかんがえない。だれたいしても金持かねもちにたいしても一律いちりつ給付きゅうふ必須ひっすであると主張しゅちょうするのであれば、ここでかれる。BIの利点りてんとしてわれるのはスティグマの回避かいひ手続てつづきの簡素かんそさである。だが、スティグマの回避かいひ――これも日本にっぽんではいちきゅうはち年代ねんだい社会しゃかい保障ほしょう社会しゃかい福祉ふくしの「普遍ふへん主義しゅぎ」が提唱ていしょうされたときにずいぶんとわれた――を無条件むじょうけんせい正当せいとう根拠こんきょとするべきでないとかんがえる。また個別こべつには対応たいおう仕方しかたはある。手続てつづきの簡素かんそさについては、BIがくらべて格段かくだん効率こうりつてきであるとはえないとかんがえる。必要ひつよう手続てつづきはなくすことはできないしまたなくすべきでもない。そして必要ひつようせいおうじた簡素かんそなものをつくることはできる。だいしょうべる。」

だいしょう 簡素かんそそしてスティグマの回避かいひという主張しゅちょうについて

 「1 本章ほんしょう要約ようやく
 ベーシックインカム=基本きほん所得しょとく以下いかBI)は無条件むじょうけん給付きゅうふされるものであり、はたらいているかいないかをないものであるとされる。その理由りゆうとして、ひとつに、制度せいどとして簡素かんそであり、手続てつづきが簡便かんべんであり、行政ぎょうせいコストがやすくすむことが指摘してきされる。そしてスティグマの除去じょきょわれる。ただこれらはこれまでも「普遍ふへん主義しゅぎ」という言葉ことばのもとでわれてきた。まずそれをいくらか紹介しょうかいする。
 つぎ簡便かんべんであるという主張しゅちょうについて、わたすのはただ一人ひとりひとりにおながくわたせばよいのだから、たしかに簡単かんたんではある。しかしその場合ばあいふくめ、資力しりょく調査ちょうさけられないし、けるべきでない。とすると、BI採用さいよう場合ばあい簡便かんべんさをあまり主張しゅちょうできない。またべつ方法ほうほうによってもすくなくとも同等どうとう簡便かんべんさを実現じつげんできる。
 つぎに、スティグマ自体じたい不当ふとうであるとするべきである。それにたいしてげんにスティグマの付与ふよ存在そんざいするではないかという指摘してきはあるだろう。ただそれには工夫くふうだてはある。個別こべつられないようにすることは、してよいことであり、できることでもある。スティグマ回避かいひのために全員ぜんいん一律いちりつという仕組しくみが是非ぜひとも必要ひつようであるとはかんがえない。
 そしてこのあいだの「普遍ふへん主義しゅぎ」をめぐ動向どうこうについて。それは、社会しゃかい保障ほしょう社会しゃかい福祉ふくし全体ぜんたいについて分配ぶんぱい契機けいきよわめることを正当せいとうしまた実現じつげんする方向ほうこうはたらいた。そのことについて再考さいこうするべきである。」

野崎のさき 泰伸やすのぶ 20110630 せい肯定こうていする倫理りんりへ――障害しょうがいがく視点してんから』白澤しらさわしゃ,216p. ISBN-10: 4768479391 ISBN-13: 978-4768479391 \2200+ぜい [amazon][kinokuniya] ※ ds.

立岩たていわ しん也 2012/02/01 「どれだけをについてのまとめ・2――連載れんさい 75」,『現代げんだい思想しそう』40-2(2012-2):-

 「そのまえに、追加ついかてき費用ひようあたえるということ自体じたい性格せいかく確認かくにんしておく必要ひつようがある。両者りょうしゃ内容ないようとしてなにかちがうものとかんがえる必要ひつようはない。本来ほんらいける必要ひつようのないものであること、おなじであることを確認かくにんしておいたほうがよい。理由りゆうあきらかである。おなじんらすためのものを必要ひつようとしまた実際じっさい使用しようしているということだけがこっているのであり、その意味いみではわりはないということである(立岩たていわ[2009b:101-102][2010a:103-105])。幾度いくどわれてきたように、おおむねこの多数たすうようつくられている。その場合ばあいおなじものをようとすれば追加ついかてき費用ひよう発生はっせいするのは当然とうぜんのことであって、その追加ついかぶん発生はっせいしないようにこのつくってあれば、それは(その都度つど顕在けんざいすることはない。そのことを理解りかいせず、このにおける追加ついかてき給付きゅうふをその個人こじんがいるために仕方しかたなく必要ひつようとされるものであると認識にんしきさせてしまうことになる。それはよくない。このようにおもわれるし、われる。そんなことで――それだけが理由りゆうではないが――「ユニバーサル・デザイン」といったこともわれる。最初さいしょからまんにん使つかえるようにしておけばよいというのである。その主張しゅちょうにまったく反対はんたいではない。そうしておけば、ある人々ひとびとようのことがいまなされていると特別とくべつ意識いしきされることもなくなる。そしてそれはおおくの場合ばあい個別こべつにいちいち対応たいおうするよりもかえって面倒めんどうでなく手間てまがかからないといったこともあるだろう。
 これらはよいことである。ただ、かりにしかじかの範疇はんちゅうひとたちがいなかったら、しかじかの条件じょうけんたしたその設備せつび(とそれにかかる費用ひよう)は不要ふようであるといったことはやはりこの場合ばあいにもえることはあるだろう。また個々ここ対応たいおうしたほうやすくあがることもある。より大切たいせつなことは、おな程度ていど――それを正確せいかく規定きていすることなどできないしそれはそれでかまわないことはすでべた――にらすために個々ここ差異さいたいする対応たいおうはやはり必要ひつようであるとうよりないことだ。基本きほんてきには、「スティグマ」を回避かいひするために個別こべつ差異さいされた給付きゅうふは(できるだけ)ひかえるべきたといったはなし必要ひつようはないし、るべきでないということである(立岩たていわ[2010a:109-111])☆01。たしかに実際じっさいそんなことをにするひとたち、あるいはになるとことさらにいたがるひとたちはいるし、そんなひとたちがるともおもえないから、目立めだたせることはない。そしてそれはおおむね技術ぎじゅつてき問題もんだいであり、おおくの場合ばあいそんなにむずかしいことではない。たとえば生活せいかつ保護ほごなかにも各種かくしゅ加算かさんがあり、その加算かさんふくめていっしょに当人とうにん口座こうざ送金そうきんするといったことは可能かのうである。可能かのうであることはしたほうがよい。
 そのことの確認かくにんうえで、わたしたちは――けることによって両者りょうしゃ連続れんぞくしているものであることをわすれないようにしながら――(T)(U)をけてかんがえていくことになる。たしかに差異さいはある。となれば、どれだけを供給きょうきゅうするのか。ここに「判定はんてい」「認定にんてい」の問題もんだいあらわれる。必要ひつようなものをひろってきてあつめて合算がっさんして、それにもとづいて支給しきゅうするものとされる。それをどうやってはかるか。しかし、はか必要ひつようがはたしてあるのか、どんな場面ばめんで、なぜそれが必要ひつようとされるのかをかんがえることである。そしてそのまえに、どんな差異さいがあり、それにいったい対応たいおうなるものができるのか、できないのか。」

「☆01 選別せんべつ主義しゅぎ普遍ふへん主義しゅぎ対比たいひするながれがあり、後者こうしゃ肯定こうていされ、そのときにスティグマの問題もんだいちだされるのだが、その理路りろ検証けんしょう批判ひはんするべきだとべた。同様どうようのことは野崎のさき[2007]、野崎のさき[2011:107-113]でも主張しゅちょうされている。HPにこのことにかかわる引用いんようしゅうがある(→当方とうほうのHPないを「選別せんべつ主義しゅぎ」か「普遍ふへん主義しゅぎ」で検索けんさくhttp://www.arsvi.com/d/su.htm)。」


http://note.masm.jp/%C1%AA%CA%CC%BC%E7%B5%C1/


井手いで さかえさく 20130122 日本にっぽん財政ざいせい――転換てんかん指針ししん岩波書店いわなみしょてん,ISBN-10: 4004314038 ISBN-13: 978-4004314035 \800 [amazon][kinokuniya] 228p.


必要ひつようあくではありながらも、「ずべき暴露ばくろ」がもとめられるのは、所得しょとく審査しんさおこない、そのひと所得しょとくすくないことを証明しょうめいしなければ救済きゅうさいのしようがないからである。所得しょとくすくないひと生存せいぞん困難こんなんひとびとを発見はっけんし、そこにしぼって救済きゅうさいおこなおうとする原理げんりを、「ターゲッティズム(Targettizm)」ないし「セレクティビズム(Selectivism)」という。日本語にほんごであれば「選別せんべつ主義しゅぎ」がこれに該当がいとうする。」[井手いで2013:25]

cf.「ずべき暴露ばくろ shameful revelation」( J.ウォルフ )

一方いっぽうわたしたちは生活せいかつじょう必要ひつようたがいに充足じゅうそくしあってきてきた。だが近代きんだい社会しゃかいではそうしたひとびとの相互そうご扶助ふじょ関係かんけいよわまっていく。そこで人間にんげん共通きょうつうするニーズ――それは所得しょとく多寡たか、<0025<性別、年齢とはかかわりのない必要である――を政府が引き取って満たすようになる。ターゲッティズムの対極にあるこの原理を「ユニバーサリズム(Universalism)」、「普遍主義」という。」[井手2013:25-26]

具体ぐたいれいげてみよう。たとえば生活せいかつ保護ほごによる生存せいぞん保障ほしょうがある。これは分配ぶんぱい公平こうへい究極きゅうきょくてきなかたちであり、所得しょとくすくないことを証明しょうめいし、救済きゅうさいしゃ限定げんていすることから、ターゲッティズムの典型てんけいということになる。
 一方いっぽう初等しょとう教育きょういくは、所得しょとく多寡たか性別せいべつとは無関係むかんけいにあらゆるひとびとに無償むしょう提供ていきょうされる。これは、教育きょういくという必要ひつよう普遍ふへんてきたそうとするユニバーサリズムの原理げんりもとづいて<0026<なされるサービス給付の姿である。
 これらの原理げんり課税かぜいめんにも適用てきようすることができる。累進るいしんせいもとづいて課税かぜいおこな所得しょとくぜい場合ばあい課税かぜい最低限さいていげんたかめることでてい所得しょとくそう非課税ひかぜいにできる。これはターゲッティズムにもとづく税制ぜいせいのありかたである。他方たほう消費しょうひぜい場合ばあい所得しょとく多寡たかとは関係かんけいなく、あるざい購入こうにゅうすればだれもが納税のうぜいしゃとなる。これはユニバーサリズムの概念がいねんちか税制ぜいせいということになる。
 尊厳そんげん平等びょうどうする財政ざいせいでは、「ずべき暴露ばくろ」をともなうターゲッティズムの領域りょういきせばめ、人間にんげん必要ひつようかかわる領域りょういきをユニバーサリズムでたしてく。後者こうしゃ領域りょういきひろげれば、てい所得しょとくそう生存せいぞんたしながら、前者ぜんしゃ領域りょういき縮小しゅくしょうできる。たとえば、医療いりょう無償むしょうすれば生活せいかつ保護ほご半分はんぶんちかくは不要ふようとなる。弱者じゃくしゃへの配慮はいりょ可能かのうかぎ人間にんげん尊厳そんげん両立りょうりつさせるために、ユニバーサリズムにもとづく財政ざいせいという改革かいかく基本きほん理念りねん道筋みちすじかびがってくるのである。」[井手いで2013:26-27]

cf.
ベーシックインカム


増補ぞうほ中村なかむら 亮太りょうた
UP:20091125 REV:20091102, 1229, 20100122, 20120114, 20140623
分配ぶんぱい  ◇生活せいかつ生存せいぞん生活せいかつ保護ほご 
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