(Translated by https://www.hiragana.jp/)
立岩真也「接続の技法――介助する人をどこに置くか」
HOME >

接続せつぞく技法ぎほう

介助かいじょするひとをどこにくか―

立岩たていわ しん

所収しょしゅう:『なま技法ぎほう ―いえ施設しせつらす障害しょうがいしゃ社会しゃかいがく― 』
安積あさか純子じゅんこ尾中おちゅうぶん哉・岡原おかはら正幸まさゆき立岩たていわしん也,藤原ふじわら書店しょてん,1990ねん10がつ,320p.,2500えん


 ※この文章ぶんしょう増補ぞうほ改訂かいていばんだいはん)』(1995ねんがつ)にはおさめられていません。
 わりに「わたしめ,社会しゃかいささえる,のを当事とうじしゃささえる――介助かいじょシステムろん
 安積あさかなま技法ぎほう 増補ぞうほ改訂かいていばんだいしょう,pp.227-265(19950515)80まい
 がおさめられています。

[p227]だいしょう 接続せつぞく技法ぎほう――介助かいじょするひとをどこにくか

 [p228]日常にちじょう生活せいかつ介助かいじょ必要ひつようひとが、家庭かていそして施設しせつでの介助かいじょたよらずらそうとすれば、どのようにそれをるかかんがえなくてはならない。このしょうでは、どのような介助かいじょのかたちがとられているのか、それらがなぜえらばれ、またどのような問題もんだいをかかえているのかを検討けんとうすることにする。
 かれらは、だいいち生活せいかつ自律じりつせい獲得かくとくしようとする。とともに、社会しゃかいなかでのみずからの位置いちえること、あるいはみずからの位置いちわるために社会しゃかい編成へんせいわることを目指めざす。従来じゅうらい介助かいじょ問題もんだい必要ひつよう必要ひつようりょうという観点かんてんからおもろんじられてきた。もちろんおもうように生活せいかつおくるためにはまずりょう確保かくほされねばならない。けれども、それだけではない。でなければかれらはこのような生活せいかつはじめなかった。またいままでの場所ばしょてなお、かれらが問題もんだいとしたものがるわけでないこともこれまで確認かくにんしたとおりだ。以下いかでは、基本きほんてきかれらのいるこの地点ちてんから考察こうさつしよう。
 それをだいいちかんがえなければ、結局けっきょくすことを目指めざしたその場所ばしょとさしてわらないところにいてしまいかねない。そしてなにより、かれ自身じしんが、かれた状況じょうきょうなかで、問題もんだいとその方向ほうこう確認かくにんしつつ、この自立じりつ生活せいかつこころみ、介助かいじょのかたちの模索もさくおこなってきたのだから、わたしたちは、その試行しこうそくしながら、検討けんとうすすめるべきである。

1 この社会しゃかい編成へんせい

 人々ひとびと他者たしゃたいする行為こういおこなう、同時どうじ他者たしゃ行為こういあるいはその結果けっかとして産出さんしゅつされたものをる。また、みずからのための行為こういみずかおこなう。両者りょうしゃ境界きょうかいはそもそもさだまったものではなく選択せんたく可能かのう場合ばあいがあるが(外食がいしょくにするか自炊じすいにするか、自分じぶん洗濯せんたくするかクリーニングにすか、等々とうとう)、障害しょうがいがあるとみずからのためにみずかおこなえる行為こうい領域りょういきせばまるのはたしかだ。それが介助かいじょという他者たしゃ行為こういとしてなされる。
 みずかおこなうことと他者たしゃおこなうことの境界きょうかいはこの場合ばあいあきらかなようにもおもえるが、じつはそうでもない。たとえば脳性のうせいマ[p229]ヒしゃ場合ばあいすうばいすうじゅうばい時間じかんをかけるなら、ある程度ていどのことが自力じりきでできることもある。けれども、それでいちにちわってしまうことにもなる。当人とうにんがそこに価値かちいだすのならそれでよいとしても、にしたいことがあるなら、ある部分ぶぶん他者たしゃ代行だいこうすることになろう。また最低限さいていげんきていくのに必要ひつよう介助かいじょりょうはさほどおおくないかもしれない。けれどもそれだけなら施設しせつでも保障ほしょうされていた。だが、それ以上いじょう時間じかんがある。外出がいしゅつ代筆だいひつ様々さまざま集団しゅうだんなかでの活動かつどう、そしてみずからの介助かいじょしゃるための活動かつどうおおくはさしあたりきていくための活動かつどうなのだが、そこで他者たしゃとの関係かんけいつくられる。他方たほうで、たとえば買物かいもの他者たしゃすべてまかせてしまえば、その時間じかんはぶくことはできる。けれども、そうしてすべてをはぶいていったらなにもすることがなくなってしまうかもしれない。みずからのことをする。それもまたかれらのせい内実ないじつである。「省力しょうりょく」がはかられようとするとき一方いっぽうでは自分じぶんおこなうことが、一方いっぽうではすべてを他人たにんにまかせることが、要求ようきゅうされる。だがそのいずれの場合ばあいも、かれらは自分じぶん時間じかんうしなってしまう。とく言語げんご障害しょうがいがある場合ばあい意思いし疎通そつうのためだけでも、ひどく時間じかんのかかることを介助かいじょおこなひとる。それをはぶいてしまわないのだとしたら、介助かいじょは、日常にちじょう生活せいかつのリストをみておもうだけよりは随分ずいぶん時間じかんのかかるものであることはたしかだ。
 これから実際じっさい介助かいじょしょ形態けいたいをみていくが、そのまえに、この社会しゃかい成立なりた具合ぐあいについていくつか確認かくにんしよう。ろんくすにはかみすうりず中途半端ちゅうとはんぱなものだが、3での議論ぎろん、そしてどういう仕組しくみを構想こうそうできるかというところにつながり、筆者ひっしゃとしては必要ひつようだとかんがえている。それでもすこながくなるし、ったはなしになる。介助かいじょ現実げんじつをまずりたいというのであれば、ばして2にすすんでいただいてもよい。
 近代きんだい社会しゃかいでは、相手あいてとの関係かんけいおこなわれる行為こういは、市場いちば経済けいざい領域りょういき政治せいじ領域りょういき家族かぞく領域りょういきおよびこれらに吸収きゅうしゅうされない自発じはつせい領域りょういきのいずれかに配分はいぶんされるとかんがえられる(たとえば暴力ぼうりょくによる強制きょうせいがあるとしても、それをかんがえにれる必要ひつようはないだろう)。ここで注意ちゅういしておきたいのは、行為こうい内容ないようによってそれがぞくする領域りょういきあらかじまっているのではなく、領域りょういき規定きてい、ある行為こういをある領域りょういきぞくする行為こういとする規定きてい最初さいしょにあるということである。[p230]たとえば介助かいじょというおな行為こういもあらかじめどの領域りょういきぞくしているとまってはいない。
 このしょ領域りょういき規定きていかならずしも一義的いちぎてきではなく、広狭こうきょう様々さまざまになされている。ここでは厳密げんみつ定義ていぎはとりあえず必要ひつようない。経済けいざい領域りょういきにある行為こういとは貨幣かへい媒介ばいかいとする行為こういであり、政治せいじ領域りょういきにある行為こういとは国家こっか自治体じちたいでの決定けってい、その実行じっこう過程かていないぞくしている行為こういであり、家族かぞくとはひとまず法的ほうてき規定きていされる家族かぞくである、とだけっておく。
 以上いじょうかく領域りょういきでの行為こうい主体しゅたいはどのような存在そんざいとされるか。市場いちばでは、貨幣かへい支払しはらがわがわ両方りょうほう経済けいざい行為こうい主体しゅたいとされる。政治せいじ領域りょういきではまず有権者ゆうけんしゃ政治せいじてき決定けっていかかわるものである。個々ここ意志いし集計しゅうけいされ、政治せいじてき決定けっていがなされそれが個々人ここじん行為こうい制約せいやくする。制約せいやくされるがわ政治せいじ主体しゅたいばれることはあまりないが、定義ていぎによってはこれをふくめることもできよう。家族かぞくでは家族かぞく成員せいいん対象たいしょうとした行為こういおこな家族かぞく成員せいいんである。だいよん領域りょういきでは、以上いじょう以外いがいの、他者たしゃ対象たいしょうとする(もろちん見方みかたによってはすべての行為こうい他者たしゃ関係かんけいするのだが)行為こうい主体しゅたいである。
 ここで行為こうい動機どうきがどういう意味いみっているのかをみよう。それはある行為こういがどの領域りょういきにあるかを判断はんだんする基準きじゅんとはならない。たとえば政治せいじてき行為こういがありうるにはまず、政治せいじ領域りょういき成立せいりつしていることが必要ひつようだ。しかし、それは動機どうき重要じゅうよう意味いみをもたされていないということではない。だいいち個々ここ意志いし以上いじょうしょ領域りょういき成立せいりつさせ維持いじする基盤きばんであるとみなされており、必要ひつよう条件じょうけんであるとみなされている。だが、実際じっさいおおくの行為こういはその意思いし有無うむをいちいちわれたりしない。それがわれるのは、問題もんだいしょうじたときしょうじそうになったときである。たとえば、投票とうひょう婚姻こんいん有効ゆうこうである条件じょうけんとして、他者たしゃ強制きょうせいによらないことがあげられ、このことが確認かくにんされたりする場合ばあいである。
 つぎに、ある行為こういをしようとする意志いしという以上いじょう内容ないようをもった意志いし内的ないてき状態じょうたい措定そていされることがある。交換こうかんする、結婚けっこんするという以上いじょう意志いしたとえば利潤りじゅん動機どうきであり、愛情あいじょうである。それはどの水準すいじゅんまれているのか。利潤りじゅん動機どうき現在げんざい経済けいざいてき事象じしょう説明せつめいするのに有効ゆうこうかもしれないし、実際じっさいおおくの経済けいざいてき行為こういはそうした動機どうきでなされているだろう。それがわれば現在げんざい市場いちば変化へんかする。けれども利潤りじゅん動機どうきがそこにないからといって(その行為こうい[p231]は経済けいざい行為こういでないと定義ていぎされることはあるかもしれないが)、契約けいやくことわられたり、ばっせられたりはしない。また愛情あいじょうけた家族かぞくはいくらでも存在そんざいするだろう。けれども、近代きんだい家族かぞくというものが愛情あいじょうによって成立せいりつするものだとみなされているということはえる。そしてそれは正当せいとう理由りゆうとしてされたり、非難ひなん根拠こんきょとしてもちいられたりする。また、政治せいじ領域りょういきにおいては、その決定けってい結果けっかろうとする動機どうきということになろう。これは内容ないようてきあらかじさだまっていない。自発じはつせい領域りょういきんだではどうか。実際じっさいには行為こうい様々さまざま動機どうきによるだろう。そしてそのある部分ぶぶんはある規範きはん制約せいやくされた行為こういであって自発じはつてきとはえないものとえるかもしれない。だが、近代きんだい社会しゃかいにおいては、その理由りゆうがどうあれ、行為こういをするかかは最終さいしゅうてきには主体しゅたい決定けっていぞくするとされている。以上いじょうえるのは、個々ここ行為こうい具体ぐたいてき動機どうきなにかということとある行為こういがある領域りょういきぞく行為こういなされることとはべつのことであり、けてかんがえるべきだということである。ある行為こうい複数ふくすう動機どうきからんでいることもある。だが、ある行為こういにある動機どうきがあるはずだ、あるべきだとみなされるということの重要じゅうようせい見落みおとすべきではない。ここまで介助かいじょという行為こうい直接ちょくせつ関係かんけいのないようにおもわれることをべたのは、近代きんだい社会しゃかいあたえたしょ領域りょういき分割ぶんかつまえずにかんがえること、行為こうい動機どうきというものを素朴そぼくすことには問題もんだいがあるだろうとおもうからだ。
 わたしたちはある行為こういがどれかひとつだけの領域りょういきにあるかのようにべてきた。たしかにある単位たんいをとればそうえるが、ある行為こういおこなうという決定けってい(という行為こうい)から実行じっこうというながれをかんがえれば、おおくの場合ばあい、それは複数ふくすうひと複数ふくすう領域りょういきにまたがるものとなる。したがって、つぎに、以上いじょうしょ領域りょういきわせを検討けんとうする必要ひつようがある。可能かのうせいとしては無限むげん連鎖れんさがありうるから、その組合くみあわせも無限むげん想定そうていできるが、そのなか現実げんじつにあるいくつかをかんがえればよい。
 決定けっていとはまず行為こうい内容ないよう規定きていだが、それだけでは行為こうい連鎖れんさはじまらない。行為こうい理由りゆうとされるものがどこかからあたえられ、それによって行為こういがなされ、また行為こうい内容ないよう制御せいぎょされる。それが複数ふくすうでありうることはさきべた。また、決定けっていという行為こうい動機どうきづけるひと決定けっていしゃであるということもあるから、決定けっていとは相対そうたいてきなものだともえる。
 [p232]さらにここで注意ちゅういすべきは、当然とうぜんのことながら決定けっていおこなわれる領域りょういき供給きょうきゅうされるものとは対応たいおうするとはかぎらないということである。決定けってい実行じっこうべつ領域りょういきでなされる場合ばあい供給きょうきゅうされるざいつぎ段階だんかい領域りょういきのものでなくてはならない(たとえば家族かぞくないでの決定けってい政治せいじてき決定けっていによる雇用こよう)。その場合ばあいには当然とうぜんある変換へんかん――たとえば愛情あいじょうから貨幣かへいへといった――がおこなわれている。これはかんがえてみると不思議ふしぎだし興味深きょうみぶかいことだが、その検討けんとうはここではく。
 さき区分くぶん対応たいおうして、行為こういしゃ動機どうきとの相関そうかん想定そうていされて、行為こうい発動はつどうさせるものとして行為こういしゃあたえられるものが、政治せいじてき決定けってい愛情あいじょう(にかかわる規範きはん)、といった具合ぐあいにあるとかんがえられる。このなか貨幣かへい重要じゅうよう位置いちめる。ある行為こうい手段しゅだんとして流通りゅうつうせいたかく、つぎからつぎへとわたっていくことができるからである。政治せいじ領域りょういきにおいては租税そぜい徴収ちょうしゅうによってられた貨幣かへい家族かぞくにおいては成員せいいんだれかの収入しゅうにゅう資産しさん自発じはつてき領域りょういきにおいては自己じこ貨幣かへいふたた市場いちばまわすことになる。
 ボランティアによる介助かいじょ家族かぞくによる介助かいじょ有償ゆうしょう介助かいじょ公的こうてき介助かいじょ保障ほしょうという分類ぶんるいよっつの領域りょういき分割ぶんかついちてき対応たいおうしているが、かく領域りょういき重層じゅうそうせい捨象しゃしょうしている。もちろんこの分類ぶんるい現実げんじつにあてはめるとき具体ぐたいてき問題もんだいにつきあたるからそのままではいかなくなり、さい分類ぶんるいこころみられるのだが、最初さいしょ以上いじょう確認かくにんしておけば、現在げんざい可能かのう範囲はんい各々おのおの位置いちづけがあきらかになり、またそのうえなにかんがえうるのかがみちびかれる。とはいえ、いくつか条件じょうけんをおいてもかんがえられる可能かのうせいすべてあげていくと非常ひじょうかずになるから、ここでは以上いじょうまえたうえ現実げんじつおこなわれている、あるいはおこなわれうるしょ形態けいたい現実げんじつになされている分類ぶんるいをみてみよう。各々おのおの領域りょういき関係かんけいふくめた考察こうさつはVでおこなう。
 まず市場いちば介助かいじょという行為こうい貨幣かへいあたえられることを媒介ばいかいにしてなされる。介助かいじょける当人とうにん資産しさん収入しゅうにゅうによってそれが供給きょうきゅうされるのでなければ、のこみっつの領域りょういきから供給きょうきゅうされる。
 介助かいじょ公的こうてき保障ほしょうばれるものは、政治せいじてき決定けっていによる租税そぜいとう財源ざいげんとする労働ろうどう購入こうにゅうとしてなされる。ここで民間みんかん委託いたくとは、政治せいじてき決定けっていによる市場いちばない機関きかんへのざい供給きょうきゅう、そこでの労働ろうどう購入こうにゅうということである。また、政治せいじてき[p233]決定けっていによるざい分配ぶんぱい対象たいしょうしゃ直接ちょくせつおこない、それによってその対象たいしょうしゃ労働ろうどう購入こうにゅうするといった場合ばあいがありうる。ほうによる強制きょうせいといった、政治せいじてき決定けっていによる行為こうい直接的ちょくせつてき供給きょうきゅうは、可能かのうせいとしてありうるが、現実げんじつにはおこなわれない。政治せいじ領域りょういきでなされる直接的ちょくせつてき行為こうい制約せいやくは、労働ろうどう購入こうにゅう前提ぜんていしたうえでの行為こうい内容ないよう監督かんとく制御せいぎょとしてあらわれる。
 家族かぞく領域りょういき出発しゅっぱつてんとすると、家族かぞく成員せいいん直接ちょくせつ介助かいじょにな場合ばあいと、家族かぞく成員せいいん他者たしゃ介助かいじょるための資源しげん提供ていきょうする場合ばあいかんがえられる。ここでもその貨幣かへいがいったん当人とうにんわた場合ばあいとそうでない場合ばあい区別くべつできよう。
 自発じはつてき行為こうい領域りょういきについてもみぎ同様どうようのことがえる。ボランティア活動かつどうばれるものは直接ちょくせつ行為こういおこなうこと、寄付きふばれるものは直接ちょくせつ行為こういではなく資源しげん提供ていきょうす。ただし現状げんじょうでは後者こうしゃ形態けいたいはほとんどない。
 さてここに介助かいじょける当人とうにんはどうはいってくるか。以上いじょうでは直接ちょくせつ貨幣かへい供給きょうきゅうする場合ばあいだけがあがっている。さき決定けっていしゃとは相対そうたいてきなものであるとべた。他者たしゃたいして行為こういおこな場合ばあい、その動機どうきとしてほかに、いわゆる道徳どうとく規範きはん原因げんいんもとめられるか、あるいは個々人ここじんあいだ感情かんじょうされるかである。前者ぜんしゃ個人こじん帰属きぞくするものではないが、個人こじんがそれにうったえることはできる。また後者こうしゃについては相手あいてである介助かいじょけるひとがその感情かんじょうあたえると表現ひょうげんすることはできる。以上いじょうのような意味いみ介助かいじょけるひと政治せいじ家庭かてい自発じはつてき領域りょういきにおける決定けっていまえ段階だんかい決定けっていにあずかるともいえる。このことと、具体ぐたいてき行為こうい内容ないよう決定けっていけんとう利用りようしゃたないということは、さきにもべたように行為こうい制御せいぎょする源泉げんせん動機どうき規範きはん複数ふくすうありうるし、また決定けっていけん委託いたくすることも出来できるから、現実げんじつにはおおいに関係かんけいがあるとしても、一応いちおうべつのことである。このあたりのことは、だいしょうでもべられた。
 以上いじょうなかからこのしょうかんがえないかたちをのぞこう。まず介助かいじょけるひと自己じこ資産しさん収入しゅうにゅうによって介助かいじょしゃ雇用こようする場合ばあい。これは現実げんじつにはほとんど不可能ふかのうである。だいに、家族かぞくによる介助かいじょ介助かいじょかんする資源しげん提供ていきょう。このくにでは以前いぜんからそしていまでも、介助かいじょ家庭かていでなされてきた。このことを否定ひていした場合ばあいに、介助かいじょということがあらためて問題もんだいになるのである。では施設しせつはどのようにかんがえられるのか。公営こうえい民営みんえい措置そち支給しきゅう家族かぞくによる支出ししゅつなどすべみぎ[p234]のどこか、あるいはその組合くみあわせのなか位置いちづく。この形態けいたいのぞくのは、だいしょうべたように、ここで生活せいかつ自律じりつせい社会しゃかいせい確保かくほされないからである。むろん、その各々おのおのについては、これからそれが検討けんとうされる。
 以上いじょう事態じたい単純たんじゅんしている。決定けっていといってもすべてがいち箇所かしょでなされるわけではない。決定けってい内容ないようとしてもまずだれ行為こういしゃとするかという決定けってい行為こうい内容ないよう決定けっていけることができる。またその各々おのおのつねいち箇所かしょでなされるわけでもない。決定けってい委託いたくということもある。また同一どういつひと機関きかんが、利用りようしゃからの負担ふたん政治せいじ領域りょういきからの援助えんじょ無償むしょう労働ろうどうといった複数ふくすう領域りょういきから資源しげんるといった場合ばあいがある。とくにここでの主題しゅだいにとっては、介助かいじょしゃ介助かいじょようするひととを媒介ばいかいする機関きかん存在そんざいするのかしないのか、その機関きかん自体じたいがどういう性格せいかくをもつのか。そしてこれらの各々おのおのにおいて、わたしたち観点かんてんからは、当事とうじしゃ意向いこうがどの程度ていどれられるのかが重要じゅうようだ。ここには、制度せいどてき規定きてい市場いちばにおける需給じゅきゅう関係かんけい、それ以外いがい様々さまざま要因よういんはいむ。以上いじょう必要ひつよう場面ばめんではかんがえる必要ひつようがある。★01

2 自発じはつてき行為こうい

 とにかくまわりにいるひと介助かいじょたのむ。それは、施設しせつ家族かぞくからはなれた障害しょうがいしゃたちによって、だいいちには、にないやむを手段しゅだんとしてとられ、まず、かれらの支援しえんたったそうによってになわれた。いまもボランティアに生活せいかつおおくをたよるという状況じょうきょうわっておらず、それをまった利用りようしていないひと一人ひとりもいないといってよい。★02
かれらのおおくはいちにんからさんにんほどのボランティアの介助かいじょている。一人ひとり介助かいじょおこな頻度ひんどは、つきいちかい程度ていどからしゅうすうかいまで、一回いっかいあたりの時間じかんいちあいだからはちいちあいだ程度ていどにちちゅう夜間やかん)まで様々さまざまである。ただし、わたしたち直接ちょくせつかぎりでは、かれらの介助かいじょだけで生活せいかつしているひとおおくなく、ほとんどのひとが、どの程度ていどにか、公的こうてき制度せいど有料ゆうりょう介助かいじょわせて生活せいかつりたせている。介助かいじょする内容ないようは、生活せいかつかかわるすべて。いままでこのるい経験けいけんをしたことのない人達ひとたちが、当人とうにんおしえてもらいながらおこなう。それでなに不都合ふつごうがあるということはまずない。
地域ちいき個人こじんおおきいが、かれらのかなりの部分ぶぶん学生がくせいとく大学生だいがくせいによってめられている。だから、大学生だいがくせいちかくにんでいる、あるいはすくなくともかれらに接近せっきんする機会きかいおおいことはしばしば重要じゅうよう条件じょうけんとなる。★03
 [p236]またとく女性じょせい場合ばあいには、かなりの割合わりあい主婦しゅふそういれいる。ただ、のちにみる高齢こうれいしゃしゅたる対象たいしょうとする機関きかんでのように子育こそだてがわった〇〜ろくだい主婦しゅふ主体しゅたいということはないようだ。このことには、介助かいじょけるひと年齢ねんれいかかわっているだろう。また、おおくの場合ばあい障害しょうがいしゃがわからのはたらきかけがあり、それにこたえて介助かいじょおこなわれるということにもよるだろう。高齢こうれいしゃ場合ばあい同様どうよう機関きかんかいする場合ばあいには、やはり中高なかだか年齢ねんれい主婦しゅふ割合わりあいたかくなる。
 そして、おおくはないが「社会しゃかいじん」、労働ろうどうしゃがやってくる場合ばあいがある。とくに、大学だいがくちかくにない地域ちいきひと場合ばあいには、かれらの支援しえんだい部分ぶぶんめることになる★04。福祉ふくし関係かんけいする職業しょくぎょういているひとおおいが、その職種しょくしゅ多様たようである。ただし、当然とうぜんのことながら、時間じかんてき可能かのうそうかぎられる。あとは休日きゅうじつにということになる。
 かれらは、具体ぐたいてきにどういう経路けいろ介助かいじょしゃているのか。
街頭がいとうでのけ、ビラまきとう活動かつどうおこなわれることがある。あるいは、公民館こうみんかんなど公共こうきょう機関きかんにビラをく★05。学年がくねんはじめなど、ちかくの大学だいがく車椅子くるまいす出向でむいて構内こうない介助かいじょしゃるための活動かつどうをしているひともいる。しかし、それでられるひとすくない。そういった直接的ちょくせつてきはたらきかけよりも、むしろ障害しょうがいしゃ介助かいじょしゃ双方そうほうの――おおくの場合ばあい個人こじんてきな――人間にんげん関係かんけい利用りようされることがおおい★06。また、様々さまざま運動うんどうかかわっているひと場合ばあい、その協力きょうりょくしゃがそのまま介助かいじょしゃとなる場合ばあいおおい。ただし、その割合わりあい次第しだいってきている。どうしてはじめたかとかれて、明確めいかくこたえるひとすくない。なんとなく、とか、ついつい――はじめて、けられなくなった――とか、たいていのひとこたえる。
このようなかたちで介助かいじょ場合ばあい問題もんだいてんなにか。それは、ボランティアであること、すなわち、個々人ここじん自発じはつせいうことによってもたらされる。
 まず、必要ひつよう時間じかんめることのむずかしさである。おおくのひと慢性まんせいてきひと不足ふそく、その安定あんていせいのないことになやんでいる。かれらはそのつきつぎつき日程にっていひょうを、ノートにつくる、あるいはかべっている。それと同時どうじに、介助かいじょしゃ名簿めいぼ電話でんわ番号ばんごう簿っている。いち長期間ちょうきかん予定よていてられれば、次々つぎつぎ予定よていまっていけばよいが、おおくの場合ばあい[p237]そうはいかない。介助かいじょするほうか、介助かいじょようするほうか、どちらかの予定よていわることもある。数日すうじつさき、あるいは明日あした介助かいじょしゃもとめて、毎日まいにち電話でんわをかけるひとおおい。
 あるひとは、、あるいはあたまにつけた棒状ぼうじょうのものでおとのキーをし、一定いっていながさをまとめて音声おんせい変換へんかんする機器ききもちいて会話かいわし、電話でんわ介助かいじょ予定よていてている。会話かいわ当然とうぜん普通ふつうよりは時間じかんがかかるから、いち通話つうわについていちふんほど必要ひつようである。このようにしていちにちほんほど電話でんわをかける。★07また、使つかえないから呼気こきホン(電話でんわ番号ばんごう〇〜きゅうじゅんにランプがつき、それがある番号ばんごうにきたときにストローにいきれるとその番号ばんごう指定していされる、それをかえす)で電話でんわするひともいる。その方法ほうほうで、おおときには夕食ゆうしょくわってからいちころまでさんけん電話でんわをかける。あるいは、自分じぶんでかけることもあるが、言語げんご障害しょうがいのため取次とりつぎ必要ひつようのある電話でんわはかけられず――いたずら電話でんわ間違まちがえられる、とういでもらえない――介助かいじょしゃたのんでかけるひともいる。
 さらに苦労くろうして人達ひとたち定着ていちゃくしない。例外れいがいてきにはじゅうすうねんわたってつづけているひともいるが、とく学生がくせいであれば、就職しゅうしょくつづける少数しょうすうひとべつとして、卒業そつぎょうしてしまうとそれきりになる、あるいはならざるをえない。
これに介助かいじょするひとそうかかわる問題もんだいくわわる。主婦しゅふ学生がくせい労働ろうどうしゃ、それぞれにけるのがむずかしい時間じかんたい期間きかん[p238]がある。主婦しゅふ場合ばあい家事かじのために必要ひつよう時間じかんそして夜間やかんにやってくることはほとんどできない。労働ろうどうしゃ労働ろうどう時間じかんにはれない。学生がくせいは、授業じゅぎょう、アルバイトの時間じかん制約せいやくされるほか試験しけん期間きかんちゅう長期ちょうき休暇きゅうかちゅう確保かくほむずかしくなる。とく学生がくせい卒業そつぎょうして就職しゅうしょくしてしまう時期じききびしい。
排泄はいせつ入浴にゅうよくひとし同性どうせいひと必要ひつよう場合ばあい問題もんだいはさらにおおきくなる。異性いせいによる入浴にゅうよく介助かいじょとうへの批判ひはんは、施設しせつたいする批判ひはんひとつの論点ろんてんでもあった★08。介助かいじょしゃ総数そうすうとして男女だんじょ割合わりあいはそれほどおおきくない。女性じょせいだけによってめられているといってよいヘルパー、そして女性じょせい割合わりあいたかいいわゆる有償ゆうしょうボランティアのそう比較ひかくすれば男性だんせい比率ひりつはずっとたかい。女性じょせいたいしては女性じょせい比率ひりつたかいが、男性だんせいかんしては個人こじんがあるものの男性だんせいおおい。だが、すくなくともあるときあいだたいにはどちらか一方いっぽう必要ひつようだとすれば、当然とうぜん、それだけ確保かくほむずかしくなることになる。
また、その地域ちいき介助かいじょおこなえる人達ひとたちがどれだけいるかという地域ちいき問題もんだいがある。自立じりつ生活せいかつ運動うんどうは、すくなくともいまのところ、主要しゅようには都市とし運動うんどうであり、そのひとつの要因よういんが、学生がくせいとう介助かいじょできるそうかずなのである。★09
以上いじょうは、とにかくかずりないということだ。つぎに、この行為こうい自発じはつせい依拠いきょすることに直接ちょくせつ関係かんけいすることがある。まず責任せきにん問題もんだいである。約束やくそく時間じかんわすれる、用事ようじがあってない、連絡れんらくもない、といったことがときしょうじる。そして関係かんけい感情かんじょう水準すいじゅんにあるならばそれに起因きいんする問題もんだいがある。介助かいじょされるがわに、ひときつけられるものが必要ひつようだということ、ひとあつめられる障害しょうがいしゃでないとやっていけないということ、をつかわなくてはならないことにつかれてしまうということがかたられる。また、個々ここ関係かんけいではなく、あるしゅ理念りねん道徳どうとくみちびかれているのなら、そういう問題もんだい回避かいひされることもあろう。けれども、それはしばしば保護ほご保護ほごという関係かんけいうたがわないものだったりもする。とすると、これはなにもこうした介助かいじょ関係かんけいにおいてだけとはかぎらないが、そうした認識にんしきから逸脱いつだつする行為こうい許容きょようされないということになってしまう★10。以上いじょうのことがだいしょうでよりくわしくべられた。

[p239]3 有償ゆうしょうということ

 公的こうてき介助かいじょ保障ほしょう有償ゆうしょう介助かいじょは、こうした供給きょうきゅう不安定ふあんていせい解消かいしょうし、対価たいか見合みあっただけの責任せきにんある仕事しごとおこなわせ、感情かんじょうてき水準すいじゅんでの問題もんだい人間にんげん関係かんけい問題もんだい解決かいけつするものとされる★11。
だが他方たほうで、無償むしょう介助かいじょ積極せっきょくてき支持しじするかんがかたがある。この行為こうい金銭きんせん媒介ばいかいにした交換こうかんとしてなされるべきものではなく、個々ここ人間にんげん関係かんけいなかで、あるいは地域ちいきでの関係かんけいなか介助かいじょしゃ調達ちょうたつされるべきだというのである。むろんこのことが主張しゅちょうされる場合ばあいでも、現実げんじつあらわれる問題もんだいてん自覚じかくされている。そのじょうでもこのことはわれる。
 すこ基本きほんてきなところからかんがえてみよう。現実げんじつから出発しゅっぱつする論議ろんぎからみれば、現実離げんじつばなれしているとおもわれるかもしれないが、すくなくともその現実げんじつなかにいる当事とうじしゃかんがえているのだ。わたしたちかんがえてみよう。その結果けっか総意そういられるというものではないかもしれないが、思考しこう道筋みちすじはできるだけしめそう。そうすれば批判ひはん可能かのうになるだろう。
 ひと他者たしゃ様々さまざまもの行為こういって生活せいかつすること、それをつくあたえるひとがいること、このことをまずみとめよ[p240]う。問題もんだい両者りょうしゃ関係かんけいである。はたらきにたいして見返みかえりの給付きゅうふがあるという交換こうかん形態けいたいみとめるかどうか。行為こういなんらかの動機どうきともなっているとすれば、すべての行為こういがここにはいる。ここでは、他者たしゃたいする行為こういおこなうこと自体じたいにともなう充足じゅうそくではなく、それ以外いがい目的もくてき使つかえるものの給付きゅうふ、この社会しゃかいでは貨幣かへい媒介ばいかいとされる交換こうかん形態けいたいかんがえよう。
 かれらはかならずしも肯定こうていてきではない。なぜなら、ここではたらき、能力のうりょくばれるものが配分はいぶん決定けっていするかぎり、かれらのすくなくともある部分ぶぶん劣位れついかれることになるからである。
 これは、近頃ちかごろあまり正面しょうめんきってろんじられることがなくなった、流行りゅうこうらなくなった主題しゅだいだが、やはりこの社会しゃかいにとって基本きほんてきなことである。出発しゅっぱつてんとしてわれていることはたしかな事実じじつであり、当然とうぜん主張しゅちょうである。配分はいぶんにおいて劣位れついかれ、ひととしての評価ひょうかじょうでも劣位れついにおかれる。そしてかんがえてみれば、現在げんざい支配しはいてき配分はいぶん原理げんり規範きはん正当せいとうする根拠こんきょはどこにもないではないか。だがそれでも、かんがえつめていけばこれは簡単かんたん問題もんだいではない。能力のうりょく主義しゅぎ問題もんだいというとき、それは配分はいぶん問題もんだいなのか、あるいは価値かち意識いしきかかわる問題もんだいとしてとらえられるのか。おそらく両方りょうほうだろう。各々おのおのについて、そして両者りょうしゃ関係かんけいについていろいろとかんがえねばならないことがるのである。配分はいぶんにおいては、たとえば市場いちばという場所ばしょをどうかんがえるかということであり、また個々人ここじん意志いし制限せいげんする制度せいどをどのようにかんがえるかという(しかも、前者ぜんしゃ能力のうりょく主義しゅぎてき配分はいぶんをもたらし後者こうしゃがそうでないということではもちろんない)、「体制たいせい」の問題もんだいはいってくる。(もちろん「資本しほんせい」についても。ただ、この場合ばあいには「資本しほん」をかんがえるまえに「市場いちば」をかんがえておく必要ひつようがある。)そしてたとえば配分はいぶん平等びょうどう要求ようきゅうと、ある価値かちしばられることからの解放かいほうとは、ある場合ばあいには矛盾むじゅんするようにもおもわれるが、どこでどのような関係かんけいになっているのか、もとめるべき方向ほうこうとしていったいどのあたりのせんねらうのか。さらに、教育きょういく労働ろうどうなどへの参加さんかのことをどうかんがえるべきか。いろいろなことをいちかんがえてみる必要ひつようがある。かんがえてみないと、たとえば「能力のうりょく主義しゅぎ」という言葉ことばが、実体じったいのよくわからない、得体えたいれぬ怪物かいぶつのようなものとしてあらわれてしまい、そのちつくしてしまうことになってしまい、ぶつぶつとしょう[p241]げんうだけでわってしまうかもしれない。たとえば「〇〇は体制たいせい延命えんめいくみするだけだ」といった、それほどかれなくなったがその発想はっそうせたわけではない言葉ことば、そうした言葉ことばつねあやまっているというのではないが、その「体制たいせい」があきらかにならないまま安易あんいもちいられるとき怠惰たいだ言葉ことばになってしまうことがあるのではないかということである。こうしてべたことを詳細しょうさいにし、議論ぎろんめるには、おおくのことをかんがえ、おおくの言葉ことばついやさねばならないのだが、ここでそれをたすことはできない。その作業さぎょうべつ機会きかいゆずらねばならない。
 さて、以上いじょうのようなてんもさることながら、むしろここで問題もんだいになっているのは、介助かいじょという特定とくてい行為こうい交換こうかんというかたちでみとめるかかということである。あるいは以上いじょうべたことの延長えんちょうじょうえば、現在げんざい行為こういざい配分はいぶん形式けいしき部分ぶぶんてきにせよ肯定こうていする、仕方しかたのないこととみとめるとして、その場合ばあいに、ある行為こうい、ここでは介助かいじょという行為こういをどういう形式けいしきみとめるのか、そのことがどういう意味いみつかというということでもある。
 1にべたようにこの社会しゃかいでは他者たしゃ行為こういはいくつかの領域りょういきから調達ちょうたつされ、家族かぞく自発じはつせい領域りょういきんだもののなかでは貨幣かへい媒介ばいかいとしない行為こういおこなわれうる。そして、家族かぞくによる行為こういをここで否定ひていし、行為こうい強制きょうせい否定ひていすれば、自発じはつせい領域りょういきのこる。なぜあるひとはこれを主張しゅちょうするか。まずふたつのてんがあるとおもう。
 だいいちに、代償だいしょうがあるかぎり、行為こういしゃ行為こうい行為こうい対象たいしょうしゃたいして代償だいしょうるための手段しゅだんという以外いがい意味いみ付与ふよしないという可能かのうせいがある。あくまで直接的ちょくせつてき援助えんじょとして介助かいじょという行為こういがあるべきだというのである。そういう行為こうい現実げんじつにある、たとえば家族かぞく無償むしょう行為こういける、あるいは友人ゆうじんであればやはり行為こうい代償だいしょうもとめたりはしないだろうというのである。
 だい関係かんけいあるいは負担ふたん限定げんていである。とく重度じゅうど障害しょうがいしゃ生活せいかつ介助かいじょけて成立せいりつする場所ばしょにあり、とき外出がいしゅつしたり催物もよおしもの参加さんかしたりするところにはない。その生活せいかつ場所ばしょで、たとえば専門せんもん職員しょくいんによる介助かいじょがなされるなら、結局けっきょくのところ施設しせつなかでの関係かんけい個々ここうつすことにしかならないのではないか、そのあいだ、そのそと社会しゃかいは、[p242]やはり施設しせつがあったときおなじようにあるのではないか。能力のうりょく主義しゅぎてき編成へんせいされる社会しゃかいにあって、そこからいったん排除はいじょされ、そこでさい分配ぶんぱいとしての福祉ふくしけつつ、その存在そんざい不可視ふかしされるかぎり、結局けっきょくのところ、その社会しゃかい障害しょうがいしゃ積極せっきょくてきれる社会しゃかいではなく、また、そういった社会しゃかい形成けいせいする契機けいきうしなうのではないか。★12
 だが、むずかしさはまずつぎのような事情じじょうにある。家族かぞく面倒めんどうをみるべきだというのとおなじほど強力きょうりょく規範きはん存在そんざいせず、それを作為さくいによって簡単かんたんつくりあげることはできない。宗教しゅうきょうてきな、あるいは宗教しゅうきょうてき起源きげんをもつ他者たしゃへの援助えんじょ思想しそう地域ちいきてきしゅうじゅうなかでの援助えんじょ観念かんねんなどがあげられるかもしれなが、それはいまどれほどあるのか。また、その内容ないようはどういったものか。恩恵おんけいとして、慈善じぜんとしてとらえられているなら、それはかれらにとってれられるものとならない。しかしこのようなむずかしさはだれもが認識にんしきしておりそのうえ議論ぎろんおこなわれているのだから、このことを指摘してきして論議ろんぎわらせるのはいまはおこう。
 むしろわたしたち指摘してきしたいのはつぎのことである。いま、この社会しゃかい存在そんざいする無償むしょう行為こうい有償ゆうしょう行為こういおおきな分割ぶんかつ家族かぞく成員せいいんあいだでの分業ぶんぎょうせい分業ぶんぎょうとしてある。すくなくともえることは、労働ろうどう分業ぶんぎょう編成へんせいえないで介助かいじょ無償むしょう部分ぶぶんゆだねることは、現実げんじつにはこの分業ぶんぎょうさい生産せいさん結果けっかするだろうということである。これは結局けっきょくのところ、家族かぞくという領域りょういきないおこなわれていたことをほぼおな成員せいいんによる地域ちいきでの扶助ふじょという形態けいたい移行いこうさせることを意味いみする。
 だがこれは現実げんじつ存在そんざいするひとつのかたちぎない。せい分業ぶんぎょうふくめたひとひとあいだ分業ぶんぎょうと、同一どういつひとうちにおける生活せいかつ時間じかん分割ぶんかつ様々さまざまかたちかんがえることが出来できる。前者ぜんしゃについてかんがえてみよう。有償ゆうしょう無償むしょう分割ぶんかつせい分業ぶんぎょうとしてなぜ成立せいりつするかといえば家族かぞくない貨幣かへいさい分配ぶんぱいされるからである。学生がくせいという存在そんざい無償むしょう介助かいじょしゃでありうるのも大抵たいていはこういうことだ。このような無償むしょう有償ゆうしょう分業ぶんぎょう家庭かていがい拡大かくだいすることは不可能ふかのうではない。だが、それは結局けっきょく介助かいじょおこなひと貨幣かへい分配ぶんぱいすることになり、有償ゆうしょう形態けいたい統一とういつするのと結果けっかてきわらない。そして、そのほう容易よういだから、これはこの行為こうい無償むしょう行為こういとしてみとめるべきだという主張しゅちょうよわめる方向ほうこうはたらく。だとすれば、後者こうしゃ、[p243]同一どういつひとのうちにおける分割ぶんかつ保障ほしょうかんがえる。たとえば労働ろうどう時間じかん短縮たんしゅくである。これが実現じつげんされたからといって、それが介助かいじょという行為こういむすびつき、介助かいじょける人々ひとびと生活せいかつつという保障ほしょうはない。けれどもたしかに可能かのうせいとしてはありうる。
 けれどもこのようにかんがえをすすめていくまえに、もどってかんがえてみよう。生活せいかつ行為こういとそうでない行為こうい分割ぶんかつなかでどちらをとる、というふうにかんがえる必要ひつようがあるか。前章ぜんしょうでもべたように、かれらの主張しゅちょう主眼しゅがんてんはこの社会しゃかいにある分割ぶんかつ自明じめいのものとしないということだった。そして、生活せいかつるということはたしかに必要ひつようだ。と同時どうじ行為こうい自体じたいたいする意味いみ付与ふよということももとめられるだろう。ある行為こういにある動機どうき存在そんざいすることは動機どうき同時どうじ存在そんざいすることを排除はいじょするものではない。とすれば、両者りょうしゃ同時どうじもとめていくという方向ほうこうはいされるべき理由りゆうはない。したがって、だいいちてんについては、有償ゆうしょう行為こういという方向ほうこうわたしたちみとめてよいとかんがえる。
 だいてんについて。まずここで有償ゆうしょうという場合ばあい基本きほんてき租税そぜいとうさい分配ぶんぱいとしてその資源しげん提供ていきょうされるということをここでは想定そうていしている。つまり、政治せいじでの集合しゅうごうてき意志いしとして、それをすべきことを決定けっていしたということであり、負担ふたん成員せいいん各々おのおの義務ぎむ責務せきむとしてみとめられたということである。したがってこのこと自体じたいには負担ふたん一方いっぽうてきけはない。けれども、個々ここ具体ぐたいてき行為こうい場面ばめんにおいてそれが分業ぶんぎょうとしてあらわれる、その意味いみくだり[p244]ためにな限定げんていされる可能かのうせいのこる。かれらはこのことを指摘してきしたのだった。
 しかし、これはべつかたちをとってもかなら可能かのうせいとしてはのこることであり、それをおさえる決定的けっていてき手段しゅだんはなく、かり強制きょうせいによって可能かのうだとしても、それはかれらののぞむところではない。そしてだいいちてんについてのわたしたち見解けんかいみとめられたとしよう。そして分業ぶんぎょう編成へんせいについてのさき検討けんとうと、可能かのうせいとして多数たすう多様たようそうがここにくわわることがのぞましいという観点かんてん維持いじするなら、もとめるべき方向ほうこうとしてひとつあるのは、有償ゆうしょうというかたちみとめながら、その行為こうい可能かのうせいとしておおくのひとひらかれていることである。そしてひと生活せいかつ時間じかん様々さまざま活動かつどうすることの出来でき形態けいたい模索もさくすることではないか。具体ぐたいてきには、ひとせいながれのなかで、あるいはおないちにち時間じかんなかで、いわゆる「労働ろうどう」として、複数ふくすうのことができるような方向ほうこうである。これはこの社会しゃかい現実げんじつとはかけはなれている。けれども、かれらの主張しゅちょうわたしたちなりにかんがえた結論けつろんはこれである。そして、すくなくともこの方向ほうこう抑止よくしするかしないかという選択せんたくはいくつかの場面ばめん可能かのうであるはずだ。以下いかではこのこともかんがえにれて検討けんとうしていこう。
 なおこれは無償むしょうせい否定ひていするものではない。様々さまざま場面ばめん無償むしょう援助えんじょ積極せっきょくてきおこなわれるべきだということをまった否定ひていしない。そもそも否定ひていすることなど不可能ふかのうだ。では現実げんじつてき競合きょうごうかんがえられるか。可能かのうせいとしてはありうる。無償むしょうあるいは無償むしょうちか行為こういはいりこむことによって市場いちば需要じゅよう価格かかく)がわってくるということである。しかし、この理由りゆうによってそれを排除はいじょすることは出来できないだろう。
 以上いじょうのようにえるはずだとわたしたちかんがえる。不十分ふじゅうぶんなものではあるが、当事とうじしゃあいだ問題もんだいになっているとおもわれるところをわたしたちとして整理せいりし、かんがえていくためのひとつの端緒たんしょしめすことをこころみてみた。ただすでことわったとおり、以上いじょう議論ぎろんは、有償ゆうしょうという場合ばあい政治せいじ領域りょういきから支出ししゅつがなされていることを前提ぜんていとしており、無償むしょうという場合ばあい、いわゆるボランティアを念頭ねんとうにおいている。家族かぞくによる費用ひよう支出ししゅつ家族かぞくによる無償むしょう介助かいじょ想定そうていしていない。それを当然とうぜんかんがえるところからこの主題しゅだい議論ぎろんはじまっているのであり、わたしたちもそれをみとめるからである。このことが子供こども[p245]の養育よういくとう行為こういにもそのままてはまるとかんがえているわけではない。こうした行為こうい対象たいしょうとし、行為こうい社会しゃかいのどの領域りょういき配分はいぶんするのかという問題もんだいかんして一般いっぱんてき検討けんとうする場合ばあいには、さきだいいちてんについてもだいてんについても、またてんについても、さらにかんがえるべきことが多々たたあるし、そこからここでの主題しゅだいについても再度さいど検討けんとうすべきことがようが、ここでそれをおこなうには準備じゅんびりない。★13
 さてこのうえで、さきされた有償ゆうしょう介助かいじょ支持しじする理由りゆうについてもう一度いちどかんがえてみよう。
 日常にちじょうてき動作どうさかんする介助かいじょとう生活せいかつ最低限さいていげんは、個々人ここじん感情かんじょうとは独立どくりつした関係かんけいなか確保かくほしたいとするかんがえが当然とうぜんありうる。機器ききとう使用しようによって、できるかぎ生活せいかつおくるというのもそれとおな方向ほうこうにある。だが、他者たしゃ援助えんじょ必要ひつようのこり、それが他者たしゃである以上いじょう、どのような場合ばあいでも個々ここ関係かんけい規定きていされる部分ぶぶんのこる。たとえば雇用こよう関係かんけい場合ばあい解雇かいこという選択肢せんたくしはありうるが、それは個々ここ場合ばあいかぎられた、排除はいじょという解決かいけつであるにとどまる。また、とく重度じゅうどしゃ場合ばあい介助かいじょけている時間じかん生活せいかつだい部分ぶぶんめ、その時間じかんだけを意味いみ付与ふよされない時間じかんとしてるというわけにはいかない。そもそもかれらの運動うんどう人々ひとびととの関係かんけいつくっていこうとするものとしてあった。[p246]それをしてしまおうとする必要ひつようはないし、また無償むしょうであれ有償ゆうしょうであれこの問題もんだいえることがないのである。
 介助かいじょという関係かんけいなかでは、おおくのちがい、問題もんだいしょうじる。そのなか離脱りだつしていくひとおおい。けれども、そういった過程かてい介助かいじょするがわにある積極せっきょくてき作用さようおよぼすこともまたたしかだとおもう。だいしょうでもべられたように衝突しょうとつ解消かいしょうしようとするのではなく――そもそもそれは、解消かいしょうされない――それをむしろ顕在けんざいさせそのうえ解決かいけつさぐっていく以外いがいにない。そしてそれが可能かのうであるような基盤きばんつくっていくこと、ある介助かいじょしゃ離脱りだつによってその生活せいかつ自体じたいりたなくなってしまうような状況じょうきょうえていくことである。
 こん現在げんざい問題もんだいとしては、生活せいかつ確保かくほすること、関係かんけい形成けいせいしていくことの両方りょうほうとき両立りょうりつしない。けれどもかれらが両者りょうしゃ同時どうじ成立せいりつさせる戦略せんりゃく模索もさくしようとしていること、双方そうほうきょくあいだで、具体ぐたいてき方向ほうこう差異さいはあるが、その場合ばあいでも、当事とうじしゃたちはあらわれうる問題もんだい認識にんしきしているのだということを確認かくにんして検討けんとうつづけることにしよう。

4 国家こっか自治体じちたいによる保障ほしょう

 無償むしょう援助えんじょ全面ぜんめんてきによることはしないというときられるのは、介助かいじょようする資源しげん政治せいじてきざいさい分配ぶんぱいなか供給きょうきゅうすることだということ、このことはもうべた。この選択肢せんたくしるとして、その制度せいどのありかたひとつではない。1でもれたが、その費用ひようくに自治体じちたいからまずだれ支給しきゅうされるのか(公務員こうむいん、それ以外いがい介助かいじょしゃ本人ほんにん)、[p247]さいにあるいは最終さいしゅうてき責任せきにん主体しゅたいとしてだれ介助かいじょするひと用意よういするのか、行為こういしゃ行為こうい内容ないよう決定けっていがどこでなされるのかといった具合ぐあいに、いくつかの局面きょくめんにいくつかのかたちがある。それらをわせ、論理ろんりてき不可能ふかのうなものをのぞいたかずだけ可能かのうせいがあるということになるが、決定けっていけん所在しょざいといういちてんにしても、同時どうじ複数ふくすう主体しゅたい決定けっていかかわるということもあるわけだから、それらをくわえていけばかずはさらにえる。それを網羅もうらすることはここではせず、実際じっさいおこなわれているものだけをていこう。いずれの場合ばあいもその援助えんじょはひどく不足ふそくしている。だから、その拡大かくだい目指めざ運動うんどう当然とうぜんつづけられている。だがそれだけでなく、複数ふくすう形態けいたいなかのいくつかが併用へいようさているとともに、どのようなかたちがのぞましいのか、かれ自身じしん模索もさくしているさなかにある。ここでは@こく自治体じちたいが、公務員こうむいん雇用こようによって、介助かいじょという行為こうい直接的ちょくせつてき供給きょうきゅうするかたち、Aこく自治体じちたい責任せきにんにおいて供給きょうきゅう機関きかん委託いたくするというかたち、B介助かいじょようする費用ひよう本人ほんにん直接ちょくせつ給付きゅうふするというかたち、C本人ほんにんえらんだひとたいして費用ひよう給付きゅうふするというかたち、――以上いじょう現実げんじつおこなわれているすべてだとおもう――を、ふたつずつまとめて紹介しょうかいし、なに問題もんだいになっているのかをみていく。
 ことわりをべておこう。以下いかすう関係かんけいじょう調しらべがついたぶんについても、種々しゅじゅ制度せいど推移すいい現状げんじょう支給しきゅうがく詳細しょうさいや、様々さまざま機関きかん活動かつどうとうについて具体ぐたいてき紹介しょうかいすることができない。また継続けいぞくてき調査ちょうさできなかったためもあり、最新さいしんのデータを提供ていきょうできなかった部分ぶぶん多々たたある。また以下いか伝聞でんぶんもとづいている部分ぶぶんがかなりおおい。あやまりがあれば指摘してきしていただきたい。行政ぎょうせい機関きかん発行はっこうする報告ほうこくは、それだけをてもその実状じつじょうることはまず不可能ふかのうで、そのうえ法律ほうりつよりも政令せいれい通達つうたつがものをいうこの世界せかいに、事情じじょうどおりでないわたしたち容易ようい接近せっきんできない。関係かんけい雑誌ざっし機関きかん掲載けいさいされる紹介しょうかいにはイメージをあたえてくれる良質りょうしつなものもおおく、わたしたちもそれを利用りようしたが、情報じょうほうりょうということになると十分じゅうぶんとはいえない。本来ほんらいそれをおぎなうべきものなのかもしれぬ、研究けんきゅうしゃによる文章ぶんしょうをみてもその不満ふまん解消かいしょうされない。そのだい多数たすうめる、なかくらいの範囲はんいあつかなかくらいに抽象ちゅうしょうてきなかくらいに具体ぐたいてきである論文ろんぶん意義いぎ否定ひていしないが、同時どうじもとめられているのは、たんなる、しかし徹底的てっていてき制度せいど活動かつどう事実じじつ推移すいい報告ほうこくであり、それが時間じかんながれのなか連続れんぞくせいをもってなされること、そうしたものとして必要ひつようひと提供ていきょうされることではないだろうか。これからあつかしょ制度せいどしょ活動かつどうひとひとつに、本来ほんらいならこのしょう分量ぶんりょう以上いじょう紹介しょうかい検討けんとうがなされるべきなのであり、以下いか紹介しょうかい検討けんとう必要ひつようひとにとって必要ひつようりょうたっしていない。今後こんご機会きかいあたえられれば、不足ふそくおぎないながら、次々つぎつぎ更新こうしんされていく現実げんじつについて報告ほうこくしたい。

[p248]4−1 介助かいじょ供給きょうきゅうする

 国家こっか自治体じちたい介助かいじょしゃ派遣はけんする制度せいど――むしろ実態じったいはここからはなれつつありせいぜいが派遣はけん責任せきにん制度せいどといったものだが――としては、「身体しんたい障害しょうがいしゃ家庭かてい奉仕ほうしいん派遣はけん事業じぎょう」がある。
 この制度せいどろくなな年度ねんどの「身体しんたい障害しょうがいしゃ家庭かてい奉仕ほうしいん派遣はけん事業じぎょう」の創設そうせつ★14、ななさん年度ねんどの「身体しんたい障害しょうがいしゃ介護かいごじん派遣はけん事業じぎょう」★15の創設そうせつはじまるが、そのはちねんじゅうがつ介護かいごじん派遣はけん事業じぎょう家庭かてい奉仕ほうしいん派遣はけん事業じぎょう統合とうごうされた。同時どうじに、てい所得しょとく世帯せたい対象たいしょうだったものをぜん世帯せたい対象たいしょうにするとともに、世帯せたい生計せいけい中心ちゅうしんしゃ所得しょとくおうじた費用ひよう負担ふたん制度せいど導入どうにゅうされた。だがこれは、東京とうきょうなど、すでに所得しょとく多少たしょうかかわらずヘルパーを派遣はけんしてきた自治体じちたいでは、有料ゆうりょうだけをもたらし、また、家族かぞくとともに、しかも家族かぞくからの援助えんじょにできるかぎたよらず生活せいかつしようとするものにとっては、それを困難こんなんにするものだった。本人ほんにんでなく世帯せたいぬし収入しゅうにゅうおうじた費用ひよう負担ふたん最大さいだい問題もんだいだが、それだけでなく、申請しんせいけんについてそれまでとくさだめがなく、実質じっしつてき本人ほんにんもう権利けんりあたえられていたのが、この改変かいへんにともない、世帯せたい生計せいけい中心ちゅうしんしゃ申請しんせいけんがあると規定きていされてしまったのである。抗議こうぎ行動こうどうおこなわれたが、結局けっきょくこの変更へんこう実現じつげんする。こののちはちきゅうねんはちがつさんいちにちづけ都道府県とどうふけん知事ちじあて通達つうたつ改訂かいていおこなわれた。これについてはそれがどのように実現じつげんされていくかまだ見極みきわめにくいところもあって、本格ほんかくてき検討けんとうできないが、このとき変更へんこうてんふくめ、現状げんじょう概観がいかんしよう。
はちきゅう年度ねんど算段さんだんかいで、家庭かてい奉仕ほうしいんかず全国ぜんこくさんまんいちよんにん常勤じょうきん換算かんさん老人ろうじん家庭かてい奉仕ほうしいんふくむ★16)となっている。これは前年度ぜんねんどくらやくよんよん〇〇にんぞうということになる。そのほとんどすべてが女性じょせいである。実施じっし主体しゅたい市町村しちょうそん一部いちぶ当該とうがい市町村しちょうそん社会しゃかい福祉ふくし協議きょうぎかい施設しせつ民間みんかん事業じぎょうたいはちきゅうねん改訂かいてい以前いぜん社会しゃかい福祉ふくし協議きょうぎかいとうとう依託いたくできる。ほとんどの市町村しちょうそん実施じっしされている(やく半分はんぶん委託いたく)が、その実施じっし内容ないようについては、自治体じちたいによっていちじるしい格差かくさが[p249]ある。負担ふたんくにぶんいち都道府県とどうふけん市町村しちょうそんかくよんぶんいちどう改訂かいてい以前いぜんさんしゃかくさんぶんいち)。はちねん変更へんこうしゅうろくにちけいいちはちあいだ上限じょうげんとされているが、実際じっさいにははちねん制度せいど改訂かいてい以前いぜんしゅうかい一回いっかいあいだのままというところがおおい。やはりはちきゅう年度ねんど改訂かいていで、身体しんたい介護かいご場合ばあいには手当てあて家事かじ援助えんじょいちばい年間ねんかんやくよんまんえん常勤じょうきん換算かんさん)つくことになった(利用りようしゃ負担ふたんき)。はちきゅうねん改訂かいていは、とく高齢こうれいしゃ介助かいじょ問題もんだい重視じゅうしせざるをえなくなったことを背景はいけいとし、自治体じちたいがわ負担ふたんめんで、予算よさん人員じんいんより実際じっさい配置はいち人員じんいん毎年まいとしすくなくなってしまっていた(やくせんにん)ことを解消かいしょうし、委託いたくさきやし、手当てあて増額ぞうがくして、身体しんたい介助かいじょにあたる人員じんいん確保かくほしようとするものだといえよう。★17
 地域ちいき生活せいかつする人々ひとびと利用りよう現状げんじょうはどうか。わたしたちるのははちななはちはちねん実態じったいだが、現在げんざいでもそうはわって[p250]いないはずである。かれらのおおくは、この制度せいどを、その制限せいげんおうじて、すなわちしゅうよんあいだからいちはちあいだまで、利用りようしているのだが、量的りょうてき問題もんだいがまず指摘してきされる。上限じょうげんまで派遣はけんがなされているところでも、それだけで生活せいかつはできない。また日曜にちようおよ祝祭日しゅくさいじつ時間じかんがい派遣はけん原則げんそくとしてみとめられていない。時間じかん内容ないようとうについて、利用りようしゃ要求ようきゅうかならずしも反映はんえいされない。どれほど当事とうじしゃ状況じょうきょう理解りかいられるか。これは個々ここのヘルパーの資質ししつというよりは、制度せいどてき問題もんだいでもある。自治体じちたい実施じっし要綱ようこうしるされていない業務ぎょうむにはたずさわらない、というよりたずさわれないとして、介助かいじょ内容ないようは、ほとんどの場合ばあい食事しょくじ支度したく洗濯せんたくなど家事かじ援助えんじょかぎられ、入浴にゅうよく身辺しんぺん介助かいじょおおくの場合ばあい敬遠けいえんされる。個々ここのヘルパーが自主じしゅてき利用りようしゃ要求ようきゅうをかなえようとしても、ヘルパーによって業務ぎょうむ内容ないようがあってはいけないという理由りゆうで、さえられる。
 これには、奉仕ほうしいん自治体じちたい正規せいき職員しょくいんめる割合わりあい年々ねんねんってきており、家政かせい協会きょうかいとう登録とうろくしているひとおお採用さいようされていることも関係かんけいしている。自治体じちたい正規せいき職員しょくいん臨時りんじ職員しょくいん自治体じちたい職員しょくいん資格しかくたないもの、その相互そうご身分みぶん報酬ほうしゅう格差かくさ問題もんだいべつとしても、民間みんかん委託いたく場合ばあい、ヘルパーのおおくは比較的ひかくてき高齢こうれい女性じょせいであり、障害しょうがいしゃ担当たんとうした経験けいけんすくないことがおおいため、また体力たいりょくてきにも、障害しょうがいしゃ介助かいじょとく身辺しんぺん介助かいじょ消極しょうきょくてきなこと、あるいはしようとしても出来できないということがおおい。新規しんき採用さいようすくない自治体じちたい職員しょくいんについても高齢こうれい問題もんだい同様どうようである。ともかくヘルパーのそうかたよっていることの問題もんだいおおきい。女性じょせいしかいないというのはそのさいたるものだ。
 また、生活せいかつ自律じりつせい、プライバシーがまもられないということもよく指摘してきされる。生活せいかつ指導しどうしょうして、生活せいかつ様式ようしき介入かいにゅうしてくることがある。はな必要ひつようもないしはなされるべきでもない生活せいかつ内容ないようがヘルパーのあいだなどではなされる。反面はんめん利用りようしゃとヘルパーのあいだ意思いし疎通そつう十分じゅうぶんになされていない。関係かんけい個人こじんたい個人こじんになったとき、それゆえの問題もんだいしょうじうる。利用りようしゃとヘルパーとのあいだがどのような関係かんけいであるべきなのか、たしかにこれはむずかしい問題もんだいではある。それにしても、公平こうへいたもつため、個々ここ関係かんけいしょうじさせないため、頻繁ひんぱんにヘルパーを交代こうたいさせることの問題もんだいおおきい。
 [p251]行政ぎょうせい当局とうきょくとの直接ちょくせつ交渉こうしょうおこない、業務ぎょうむ内容ないよう変更へんこう撤回てっかいさせたれいはある。だが、制度せいどてき保障ほしょうされた交渉こうしょう協議きょうぎはなく、ヘルパーの選択せんたくけんはもちろん、利用りようしゃ評価ひょうか反映はんえいさせるみち制度せいどてき保障ほしょうされていない。★18
 このような問題もんだいをいくらかでも解消かいしょうし、利用りようしゃ利用りようしやすいものとするため、一部いちぶでは、それまでボランティアとして介助かいじょをしてきたひとをヘルパーとして登録とうろくし、がそのひと賃金ちんぎんはらうという形態けいたいられている。たとえばあるひとはこうしてしゅうよんかい一回いっかいさん時間じかんにちちゅう)の介助かいじょている。その介助かいじょしゃたいしてつきよんなな〇〇〇えんはらわれている。このような場合ばあいには、この制度せいどつぎ検討けんとうする介助かいじょりょう支給しきゅうするという制度せいどちかづくことになる。
 こうしてみたとき奉仕ほうしいん臨時りんじ職員しょくいんつぎ事業じぎょう委託いたく、そしてはちきゅうねん改訂かいていによる委託いたくさき拡大かくだいなに意味いみするのだろうか。この方向ほうこう政策せいさくてきられるようになったのが主要しゅようには財政ざいせいじょう理由りゆうからであること、これはまったあきらかである。そう費用ひよう一定いっていとすれば、派遣はけんそう時間じかんすうえる。勤務きんむ時間じかんとう制約せいやくゆるくなることによって、利用りようしやすくなるという可能かのうせいしょうずる。人員じんいん配置はいち柔軟じゅうなんせいまれる。いずれも現在げんざいくに自治体じちたいのありさま所与しょよとおいた場合ばあいである。所与しょよとしない場合ばあい現状げんじょうのどちらかをることをせまるというのでない多様たよう検討けんとう課題かだいるわけだが、それはここではこう。現実げんじつになそう起因きいんする問題もんだいについては一部いちぶべた。介助かいじょという行為こういかかわる決定けってい問題もんだいだけをみよう。行政ぎょうせい機関きかん権限けんげん縮小しゅくしょうするという方向ほうこうにおいて、このうごきとかれ当事とうじしゃ志向しこうとは共通きょうつうしているかにえる。けれどもそれは、一方いっぽう当事とうじしゃ発言はつげんけん決定けっていけん確保かくほしようとしてのことなのにたいし、他方たほうのはぎゃくに、行政ぎょうせいとおして不満ふまん要求ようきゅうってさき曖昧あいまいになり、ってきようがなくなる危険きけんせいがある。現状げんじょうは、サービスのしつによってほう選択せんたくできるというような状態じょうたいではまったくない。また行政府ぎょうせいふ監督かんとく一般いっぱんてきうだけでもまない。これまでのしょうでも再三さいさんべてきたように、施設しせつ設置せっち基準きじゅんがどうとかいう[p252]のとは水準すいじゅんことにする、関係かんけい微妙びみょうなところが問題もんだい核心かくしんになるからだ。社会しゃかい福祉ふくし協議きょうぎかいといった営利えいり目的もくてきとするのではない機関きかんたいしても、かれらは全幅ぜんぷく信頼しんらいせてはいない。5に紹介しょうかいする当事とうじしゃみずからが媒介ばいかい機関きかんつくりあげようというこころみは、じつは、それを見越みこして、先回さきまわりしようという意図いと危機ききかんからもているのである。

4−2 介助かいじょしゃたい介助かいじょりょう支払しはらわれる

つぎに、行政ぎょうせい機関きかん介助かいじょ費用ひよう利用りようしゃ支給しきゅうしそれを利用りようしゃ介助かいじょしゃ支払しはらう、あるいは利用りようしゃえらんだ介助かいじょしゃ介助かいじょりょう支給しきゅうすることによって介助かいじょ確保かくほするという方法ほうほうがある。
現在げんざいくに制度せいどとして直接ちょくせつ利用りようしゃ支払しはらわれる介助かいじょりょうという性格せいかくをもつのは、生活せいかつ保護ほごの「他人たにん介護かいご加算かさん」だけである。障害しょうがい基礎きそ年金ねんきん制度せいど導入どうにゅう同時どうじ設定せっていされた「特別とくべつ障害しょうがいしゃ手当てあて」は、さきべたようにその性格せいかくがあいまいで、介護かいごりょう解釈かいしゃくすべきだとのせつもある★19が、すくなくとも現実げんじつにはその機能きのうたしてない。他人たにん介護かいご加算かさん福祉ふくし事務所じむしょ資格しかくみとめた場合ばあいとれる。つぎべる特別とくべつ基準きじゅんとの対比たいひで「一般いっぱん基準きじゅん」ともこの制度せいど利用りようする人達ひとたちあいだばれる。支給しきゅうがく上限じょうげんつきさんまんきゅうよん〇〇えんはちきゅう年度ねんど)。しゅうにちいちにちよんあいだとして算定さんていされたがくだという。はちろく年度ねんど受給じゅきゅうしゃすうろくろくいちにん★20。申請しんせいにあたっては介助かいじょ必要ひつようせいみとめられなくてはならないが、とく申請しんせいしゃがわ有償ゆうしょう介助かいじょ関係かんけい証明しょうめいする必要ひつようはない。だがその使途しとかんしては監督かんとくけることになる。
なな年度ねんどから「他人たにん介護かいご加算かさん特別とくべつ基準きじゅん」が支給しきゅうされるようになった経緯けいいについては前章ぜんしょう(↓ちゅう44)でべた。施設しせつ生活せいかつはじめ、公的こうてき介助かいじょ保障ほしょう要求ようきゅうした人達ひとたちが、つぎ紹介しょうかいする東京とうきょう制度せいどとともに、獲得かくとくした、行政ぎょうせいがわかられば例外れいがいてき措置そちということになる。この基準きじゅんによる支給しきゅうは、全国ぜんこくさんにんほどにしかなされていない。介護かいご契約けいやくしょとう書類しょるい厚生省こうせいしょう提出ていしゅつして申請しんせいし、審査しんさける。はちきゅう年度ねんど最高さいこうがつじゅうまんよん〇〇えん支給しきゅうされている★21。
 [p253]生活せいかつ保護ほごわくない制度せいどは、当然とうぜんその受給じゅきゅうしゃかぎられるという限界げんかいがあり、また受給じゅきゅう資格しかく要件ようけんきびしく手続てつづきもむずかしい。実際じっさい利用りようしているひとはきわめてわずかのひとかぎられる。そしてやはりおおくの場合ばあい生活せいかつをそれでりたせていくには十分じゅうぶんでない。しかし全国ぜんこくてき制度せいどとしてあるのはともかくこれだけである。そして年金ねんきん生活せいかつするにりず生活せいかつ保護ほごけるだい多数たすう人々ひとびとにとって、これがまずもっと現実げんじつてきだてとしてある。将来しょうらいてきにどういう制度せいどがあるべきかということはまたべつ課題かだいとして、あるいはそこにつなげるためも、この制度せいど支給しきゅうしゃわく拡大かくだい充実じゅうじつが、ふるひとではもうじゅうねん、この運動うんどうたずさわってきたひとたちによってつづけられている。
 つぎ自治体じちたい制度せいどがある。地域ちいきあいだ格差かくさおおきく、たとえば東京とうきょうでは、当事とうじしゃによる継続けいぞくてき運動うんどう結果けっか、ようやくいくつかの制度せいど獲得かくとくされたが、なにもないところもおおい。東京とうきょう制度せいど概要がいようしるそう。これらは基本きほんてき行政ぎょうせい窓口まどぐちから介助かいじょしゃほう手当てあて支払しはらわれることになっているが、介助かいじょしゃ選定せんていけん利用りようしゃにあり、また介助かいじょ内容ないようについても、利用りようしゃ介助かいじょしゃあいだめられるから、みぎにあげた形態けいたい実質じっしつてきにはあまりわらない。
重度じゅうど脳性のうせい麻痺まひしゃとう介護かいごじん派遣はけん事業じぎょう」はななよん年度ねんどから実施じっしされている。東京とうきょう運営うんえい要綱ようこうもとづいておこなわれるが、[p254]実施じっし主体しゅたい市町村しちょうそん派遣はけん対象たいしょうさい以上いじょう一級いっきゅう脳性のうせいマヒしゃ独立どくりつして屋外おくがい活動かつどうをすることが困難こんなんものとされていたが、障害しょうがいしゃがわ要求ようきゅうによって次第しだい脳性のうせいマヒ以外いがい障害しょうがいしゃにも支給しきゅうされるようになり、はちなな年度ねんどから、対象たいしょう全身ぜんしんせい障害しょうがいしゃ全体ぜんたい拡大かくだいし、@特別とくべつ障害しょうがいしゃ手当てあて受給じゅきゅう資格しかくつ「しん他人たにん介護かいご必要ひつようとするもの」、およびA資格しかくたない一級いっきゅう脳性のうせいマヒしゃ(かつ@Aとも独立どくりつして屋外おくがい活動かつどうをすることが困難こんなんもの)を対象たいしょうとする制度せいどとなった。利用りようしゃ推薦すいせんによって介助かいじょしゃ複数ふくすうでもよい)が登録とうろくされる。他人たにん介護かいご必要ひつようとするとは、ともらす家族かぞくがいないか、高齢こうれい就労しゅうろう就学しゅうがく出産しゅっさんひとしにより介助かいじょ困難こんなん場合ばあい従来じゅうらい制度せいどぐAについては、家族かぞく登録とうろくすることもでき、介護かいごじん推薦すいせんすることができず、「しんにやむえないとみとめられるとき」は配偶はいぐうしゃ登録とうろくできるという例外れいがい規定きていもうけられており、事実じじつ登録とうろくされているれいがある。この@とAの分離ぶんりによって、両者りょうしゃ格差かくさもうけ、Aの回数かいすうかれることになった。これは、家族かぞく登録とうろく可能かのうとした制度せいどをこれ以上いじょう拡大かくだいできないという政治せいじ状況じょうきょうで、要求ようきゅうするかれ自身じしんなかでも、家族かぞく介助かいじょしゃ同等どうとうあつかうべきだという意見いけん――これはかれらの立場たちばから自然しぜん帰結きけつする主張しゅちょうである――と、家族かぞくはなれてらしている人達ひとたち実態じったいらして家族かぞくがい介助かいじょしゃについての制度せいど拡充かくじゅうをしていくほかないという判断はんだんとがたたかわされたすえ結局けっきょくれることになったかたちである。
 この制度せいど利用りようしようとする障害しょうがいしゃは、介護かいごじん派遣はけん資格しかく認定にんてい登録とうろく申請しんせいしょ介護かいごじん推薦すいせんしょ介護かいごじん介護かいご同意どういしょ市町村しちょうそん提出ていしゅつし、資格しかく審査しんさける。以上いじょう毎年まいとし必要ひつようである。市町村しちょうそんちょういちケ月かげつぶん介護かいごけん毎月まいつき発行はっこうし、利用りようしゃ交付こうふする。利用りようしゃ介助かいじょしゃ介助かいじょ都度つど介護かいごけんはんけんにサインしてわたす。介助かいじょしゃはそれをつき単位たんいにまとめ、市町村しちょうそんちょう提出ていしゅつし、そのつきぶん手当てあて振替ふりかえ口座こうざからる。当初とうしょつきさんかいいちかい半日はんにちよんあいだ)だったが、すこしずつ拡大かくだいされ、はちきゅう年度ねんどはAの場合ばあいがついちかい、@の場合ばあいがついちななかい、いずれもいちかいあたりの支給しきゅうがくよんせんさんひゃくえんとなっている。単価たんかについては臨時りんじアルバイトのがく基準きじゅんとし、いちにちはちあいだ労働ろうどうとしての計算けいさんだという。以上いじょう基準きじゅんまで全額ぜんがく負担ふたんする。年間ねんかん予算よさんおくせんまんえんはちはち年度ねんど) 、この年度ねんど場合ばあい年間ねんかんのべじゅうさんまんかいほ[p255]どで、ぜん利用りようしゃ制限せいげんいっぱいまで使つかうとしてやくはちひゃくめい対象たいしょうとする制度せいどということになる。★22
つぎに「心身しんしん障害しょうがいしゃ緊急きんきゅう保護ほご事業じぎょう」がある。くに法律ほうりつがい制度せいどとしての「在宅ざいたく重度じゅうど身体しんたい障害しょうがいしゃ短期たんき保護ほご事業じぎょう」は、「重度じゅうど身体しんたい障害しょうがいしゃ介護かいごしている保護ほごしゃ疾病しっぺいとうによって家庭かていにおける介護かいご困難こんなん場合ばあい施設しせつ一時いちじ保護ほごする」★23というものだが、東京とうきょう場合ばあいは、「保護ほごしゃまた家族かぞく疾病しっぺいとうにより、緊急きんきゅう保護ほご必要ひつようとする在宅ざいたく障害しょうがいしゃ一時いちじてき保護ほごする」となっていて、病院びょういん保護ほご施設しせつ保護ほごについてはくに政令せいれいをその根拠こんきょ法令ほうれいとしているが、在宅ざいたく保護ほごについては独自どくじ制度せいどとなっている。これは、介助かいじょ必要ひつようとする一人暮ひとりぐらしの障害しょうがいしゃたいしても、その家庭かていでの生活せいかつ援助えんじょする介助かいじょしゃたいする現金げんきん支給しきゅうのかたちで保護ほごみとめるように要求ようきゅうされ、ななろくねんじゅうがつから実施じっしされたものである。つきにち以内いない一回いっかいよんきゅうろくえん (はちはち年度ねんど) ★24が支払しはらわれる(ぶんいち負担ふたん)が、これも市区しく町村ちょうそん実施じっし運営うんえいがまかされているため、地域ちいきによってかなり差異さいがある。
実施じっし市区しく町村ちょうそんによっておおきながあることをべたが、練馬ねりまきた立川たつかわなど継続けいぞくてき運動うんどうがなされてきたいくつかの自治体じちたいでは基準きじゅんへの上乗うわのせ、あるいは独自どくじ制度せいどがある。たとえば練馬ねりまでは、介護かいごじん派遣はけん事業じぎょうにつ[p256]いて設定せっていした単価たんかせんえんほどを上乗うわのせしたうえ回数かいすうぞうがはかられてきたが、はちなな年度ねんどからぶんわせてつき日数にっすうぶん支給しきゅうされるようになり、また独自どくじになされていた夜間やかんぶんについての支給しきゅうはちきゅう年度ねんどから日数にっすうぶんなされるようになった。また立川たつかわでは独自どくじしゅうななあいだぶんはちきゅう年度ねんど)、家庭かてい奉仕ほうしいん支給しきゅうされるときあいだあたりのがくをかけたがくることができるようになった(その一部いちぶ現金げんきん支給しきゅうではなく家庭かてい奉仕ほうしいん派遣はけんとすることもできる)。こうした一部いちぶ自治体じちたいでもっともおお支給しきゅうされた場合ばあいくに市区しくからの支給しきゅうをあわせ介助かいじょかんする費用ひよういち人月にんげつさんまんえんあまりになる★25。だが、これだけをているのは都内とないすうにんにすぎない★26。
これらの制度せいどのもと、かれらはどのように介助かいじょているのか。最大限さいだいげんよんあいだ保障ほしょう必要ひつようであるとしながらも、支給しきゅうがくはその時間じかんめるにはりず、したがって、ボランティアと併用へいようして有料ゆうりょう介助かいじょ利用りようすることになる。初期しょきからこの制度せいど設立せつりつ拡大かくだい運動うんどうおこなってきた人々ひとびとあいだで、重要じゅうよう役割やくわりめるのが、「専従せんじゅう」「専従せんじゅう介助かいじょしゃ」とばれる人達ひとたちである。かれらはおも安定あんていてき確保かくほむずかしいちゅう時間じかん担当たんとうする。これは、学生がくせい主婦しゅふらの介助かいじょしゃにくい時間じかんがあり、それをめるためには、仕事しごとをしながらというのではないひと必要ひつようだというところからまれた。とすれば、そのひと生活せいかつ介助かいじょたいしてはらわれるものによってりたせなくてはならないことになる。介助かいじょしゃ具体ぐたいてき併用へいよう仕方しかた支給しきゅうされたものの配分はいぶんについては、有給ゆうきゅうおよ無給むきゅう介助かいじょしゃたちふくめた話合はなしあいのなか承認しょうにんがえられる。また問題もんだいてんもそのなかはなわれる★27。
 たとえば、あるひとは、しゅうにちけいいちろくあいだ介助かいじょて、つきろくまんえんはらっている。それ以外いがいひとには交通こうつうなど、かかった経費けいひ支払しはらわれる。専従せんじゅうしゃには男性だんせいおおいが女性じょせいもいる。年齢ねんれい〇〜さんだいである。大学だいがく卒業そつぎょう専従せんじゅう介助かいじょしゃになったひと失業しつぎょうしてきうけたひととう、ほとんどがそれ以前いぜんにボランティアとして介助かいじょおこなっていた人達ひとたちである。当然とうぜん現在げんざいほか定職ていしょくはない。たとえばある男性だんせいは、さんにんにんたいしてしゅういちにち一人ひとりにち)の介助かいじょおこない、しゅうろくあいだつきいちさんまんえん一時いちじあいだあたりやくひゃくえん)をている(はちななねん)。収入しゅうにゅうはなく、また怪我けが病気びょうきとき[p257]さわがあるわけでもない。当然とうぜん職業しょくぎょうとしてわりのあう仕事しごとではない。あえてそれをけようとしてこの仕事しごとおこなっているのだが、むろんその収入しゅうにゅう満足まんぞくしているわけではなく、事故じこ病気びょうきとき保障ほしょうふくめて、安定あんていした生活せいかついとなむだけのものをたいという希望きぼうっている。★28
 このような介助かいじょ保障ほしょう形態けいたい長所ちょうしょは、選択せんたくけん利用りようしゃ帰属きぞくするため、自律じりつせい確保かくほしやすいことである。そして、利用りようしゃ自身じしん他者たしゃとの関係かんけいつくり、その関係かんけい変容へんようもとめる、その可能かのうせいがある。
反面はんめん介助かいじょしゃぜん過程かていもっぱ個人こじんゆだねられる場合ばあい問題もんだいてんとしては(ボランティアを場合ばあいでもおなじだが)、だれもがみずかいちにんちから介助かいじょしゃ調達ちょうたつできるとはかぎらないことがあげられる。重度じゅうどでコミュニケーションが困難こんなんであるといった場合ばあいとくにその問題もんだいおおきい。また介助かいじょするがわにとっても、生活せいかつ不安定ふあんていさの問題もんだいがあることはみぎになげられたとおりである。
 [p258]そして、このかたちをとる場合ばあい――この場合ばあいかぎられないし、またかならずそうなるのでもないが――、比較的ひかくてき長時間ちょうじかんまた長期間ちょうきかんおなじんくことがある。この場合ばあい数時間すうじかんずつめまぐるしくいれかわる体制たいせいをコントロールするわずらわしさからはのがれられる。だが、一人ひとりたいして一人ひとり、あるいはそれにちか体制たいせいがとられることになったときには、肉親にくしんとの関係かんけいにもすこた、一人ひとりたいいちにん問題もんだいしょうじることになりはしないか。ここでおこなわれている介助かいじょ有償ゆうしょうではあるが、それによってだけこの関係かんけいつくげられているわけではない。それは関係かんけい形成けいせい問題もんだい発生はっせいとどちらにもかいうる。また、介助かいじょするがわからこれをれば、主導しゅどうせい利用りようしゃにあることは、仕事しごと内容ないようとく時間じかんたいかんしてとき無理むりがかかることになる可能かのうせいがある。おおくの場合ばあい労働ろうどう条件じょうけん」がこまかくめられているわけではない。うまくいっているあいだはよいが、うまくいく関係かんけいならよいが――もうじゅうねん以上いじょうにもなるわせが実際じっさいにある――、いつもそうはいかないとすれば、かい関係かんけいなかされる問題もんだい解決かいけつはなかなかむずかしいところをふくんでいる。集団しゅうだんなか関係かんけいかんがえいく、機関きかんかいするといった次節じせつにみるこころみ、あるいはそれにたいする期待きたいは、このようなところからもているようだ。
 つぎ具体ぐたいてきにどのような制度せいどとして保障ほしょう実現じつげんしていくのか。自治体じちたい制度せいど場合ばあいべたように自治体じちたいあいだ格差かくさ非常ひじょうおおきい。はちななねん東京とうきょうは、「つきさんいちにち介護かいご保障ほしょうについて、その実現じつげんけて努力どりょくする」という文書ぶんしょでの確認かくにんおこなった★29。これが実施じっしされるなら、時間じかんあたりの単価たんか問題もんだいのこるものの、一定いってい保障ほしょうけられることになる。だが、おおくの自治体じちたいにはこのような制度せいどはない。このことは当事とうじしゃたちにももちろん自覚じかくされており、かく自治体じちたい要求ようきゅう運動うんどうがなされるとともに、全国ぜんこくてき制度せいどとして生活せいかつ保護ほご他人たにん介護かいごりょう拡大かくだい目指めざされている。けれども、あくまでこれが生活せいかつ保護ほごという制度せいどなかのものであること、とく特別とくべつ基準きじゅんについては厚生省こうせいしょうがその拡大かくだいまった積極せっきょくてきでないことが、それを困難こんなんなものにしている。現在げんざい自治体じちたいあいだ格差かくさをどう調整ちょうせいして、全国ぜんこくてき制度せいどつくげていくのかという、現実げんじつ運動うんどうすすめていく場合ばあいにどうしてもしょうじてくる問題もんだいのこされている。
 [p259]だが事態じたい進展しんてんがないわけではない。だいしょう最後さいごべたように、年金ねんきんによる所得しょとく保障ほしょう運動うんどうが、ともかく実現じつげんはしたものの年金ねんきん制度せいどおおきな枠組わくぐみのなかつぎいち容易よういしえない状況じょうきょうにある一方いっぽうで、このうごきにはむしろ消極しょうきょくてき介助かいじょ保障ほしょう一貫いっかんして要求ようきゅうし、ここまでべてきた制度せいど獲得かくとく運動うんどう中心ちゅうしんにいた人達ひとたちは、つぎ介助かいじょ保障ほしょうだ、という認識にんしきのもと、年来ねんらいその構想こうそうがあった全国ぜんこくてき組織そしき、「全国ぜんこく公的こうてき介護かいご保障ほしょう要求ようきゅうしゃ組合くみあい」をはちはちねんきゅうがつにともかくも旗揚はたあげし、活動かつどうはじめた。もとめるひとすべてが地域ちいきめることを基本きほんに、家庭かてい奉仕ほうしいんしゅうじゅうはちあいだ制限せいげんいっぱいまでの派遣はけん他人たにん介護かいご加算かさん増額ぞうがくわく拡大かくだいひとし当然とうぜんぎるくらい当然とうぜんなところ、ともかく可能かのうなところから要求ようきゅうするとともに、将来しょうらいてきにはあたらしい全国ぜんこくてき介助かいじょ制度せいど確立かくりつ目標もくひょうとして、厚生省こうせいしょうとの交渉こうしょうとう開始かいしし、継続けいぞくしている。厚生省こうせいしょうにしても、施設しせつ一辺倒いっぺんとう政策せいさくからの転換てんかんはかり、介助かいじょ問題もんだいたいする対応たいおうせまられているから、双方そうほう総合そうごうてき具体ぐたいてきあんいまのところっているのではないが、交渉こうしょうはともかく成立せいりつしている。「組合くみあい」の現在げんざい構成こうせいいんとしてはやはり東京とうきょう人達ひとたちおおいのだが、地域ちいきあいだ格差かくさをみながらの運動うんどうはじまってはいるのである。★30

[p260]5 媒介ばいかい機関きかん

 集団しゅうだんてきに、あるいは機関きかんかいして介助かいじょしゃようというこころみがいくつかなされている。これは、一人ひとりいちにん介助かいじょしゃさが場合ばあい調達ちょうたつむずかしさを軽減けいげんしようとする。と同時どうじに、その機関きかんたいして十分じゅうぶん障害しょうがいしゃ自身じしん参加さんか保障ほしょうされるなら、生活せいかつ自律じりつせい確保かくほできる。この方法ほうほう接続せつぞくされるのは2と4−2である(ただ、支給しきゅうされる介助かいじょりょうだけを使つかうのでなければこれにかぎらない9。4−2の場合ばあい媒介ばいかい業務ぎょうむ行政ぎょうせいみずかおこなえば4−1にちかいものになる。
 なな年代ねんだいはじまった先駆せんくてきこころみとして、地域ちいき障害しょうがいしゃ集団しゅうだんなかで、いくにんぶん介助かいじょりょうによって生活せいかつする介助かいじょしゃめ、利用りようしゃ介助かいじょしゃふく討議とうぎなかでその方向ほうこう討議とうぎしつつ、介助かいじょ具体ぐたいてき調整ちょうせいおこなうというかたちがある。このような方法ほうほう介助かいじょ供給きょうきゅうおこない、それを発展はってんさせようとしてきたのが、練馬ねりまおよきた在宅ざいたく障害しょうがいしゃ保障ほしょうかんがえるかいさん多摩たま自立じりつ生活せいかつセンター、ひとしである★31。かれらは、介助かいじょりょう行政ぎょうせいたいして一貫いっかんして要求ようきゅうし、実現じつげんさせてきたのだが、それを利用りようして、すうにん障害しょうがいしゃたいしてすうにん専従せんじゅう介助かいじょしゃ決定けっていし、かれらにたいして介助かいじょりょうはらっている。
 そしてそれを発展はってんさせ介護かいごじん派遣はけんセンターを設立せつりつすることが――運動うんどうはやくからはじまったところでは、ほぼここじゅう年来ねんらいの――目標もくひょうとなっている★32。だがそこへの移行いこうかならずしも順調じゅんちょうにいっていない。それはまず、かれらの運動うんどう中心ちゅうしんが、行政ぎょうせいたいする介助かいじょりょう要求ようきゅう運動うんどうとしてあった、あらざるをえなかったぶん組織そしきおくれたことによる。そして、W−2にしるしたような問題もんだいふくむ、個々人ここじんたいする介助かいじょ体制たいせいとしてはじまった形態けいたい集団しゅうだんてきなものに移行いこうさせるさいしょうじるむずかしさによる。また、前章ぜんしょうでもたように、このような運動うんどうとともにある関係かんけいにおいては、運営うんえい理念りねん不一致ふいっちは、それがちいさなものであっても、おおきな影響えいきょうおよぼすことにもなる。だがよりおおきな要因よういんは、かれらの一致いっちてんにおいて、つぎにみるような「安上やすあがり」な介助かいじょ労働ろうどう調達ちょうたつ容易よういくみすることができないということにある。[p261]ボランティアによる介助かいじょけながら、それでは不十分ふじゅうぶんだというところからはじまったのだから、有料ゆうりょうとはいってもそれとほぼおなそうによる介助かいじょ体制たいせいではりない。また地域ちいき福祉ふくしというのもと、その地域ちいきひと実質じっしつてき労働ろうどう保障ほしょうしないありかた批判ひはんてきだからでもある。こうした認識にんしきから介助かいじょ機関きかんげていくことのむずかしさがある。ゆえにここへのこだわりがない、あるいはそれをいったん棚上たなあげした機関きかんほう現実げんじつにはいちまえすすむ――といっても介助かいじょそう時間じかんすうについてはいまでも専従せんじゅうしゃ共有きょうゆうするひとつのあつまりのほうつぎにみるひとつの機関きかん提供ていきょうするときあいだすうよりおおいはずだ――という事態じたいしょうじている。そうしたなかで、広範こうはんひと利用りようできる制度せいどとするために、つぎにみるような媒介ばいかい機関きかんをまずつくげてしまうことも、戦略せんりゃくてき必要ひつようではないかというかんがえもてきつつあるようだ。
 その、発想はっそうとしてはこれらののち、これらと別個べっこあらわれてきただいかた機関きかんは、さらに独立どくりつした第三者だいさんしゃてき性格せいかくつ。これらは一般いっぱんに、利用りようしゃ介助かいじょしゃ登録とうろくし、時間じかんあたりの報酬ほうしゅう設定せっていし、この機関きかん媒介ばいかいして、利用りようしゃから利用りようりょう徴収ちょうしゅうし、介助かいじょしゃわたすというかたちをとっている。
 日本にっぽんいまあるもののおおくは高齢こうれいしゃ中心ちゅうしんてき対象たいしょうとしている。その先駆さきがけとなったのは、東京とうきょう武蔵野むさしの主導しゅどうしてはちねん設立せつりつされた「武蔵野むさしの福祉ふくし公社こうしゃ」である。利用りようしゃつきいちまんえん基本きほんサービスりょうで、ソーシャルワーカーによるつきいちかい以上いじょう訪問ほうもん看護かんごによるつきいちかい以上いじょう訪問ほうもん緊急きんきゅう対応たいおうといったサービスをける。それにくわわる個別こべつサービスとして、家事かじ援助えんじょ介護かいごサービス(一時いちじあいだななひゃくえん以上いじょう内容ないようおうじて加算かさん) 、食事しょくじサービス(調理ちょうりしたものを自宅じたくはいしょく昼食ちゅうしょく夕食ゆうしょくいちしょくあたりきゅうよんえん) 、がある。支払しはらいは現金げんきんあるいは不動産ふどうさん担保たんぽによる。[p262]後者こうしゃ注目ちゅうもくされたが、実際じっさいにははちわりかた現金げんきんによる支払しはらいである。これは公社こうしゃつうじて協力きょうりょくいんわたされる★33。
 また、行政ぎょうせい主導しゅどうでないかたちではじめられた先駆せんくてき組織そしきとしてははちさんねんさんがつ設立せつりつされた「神戸こうべライフ・ケアー協会きょうかい」がある。依頼いらいしゃ時間じかんろくひゃくえん交通こうつうはらう。いちえん事務じむいちえん事務所じむしょあずかりの貯金ちょきん時間じかん貯蓄ちょちく)として将来しょうらい自分じぶん依頼いらいしゃとなったときに支出ししゅつされる。のこさんろくえん介助かいじょしゃ支払しはらわれる★34。
 障害しょうがいしゃのためのこういった機関きかんとしてられるのは、合衆国がっしゅうこく自立じりつ生活せいかつセンター(CIL)である(↓だいしょう)。合衆国がっしゅうこくでの障害しょうがいしゃ介助かいじょおおきな部分ぶぶん雇用こよう関係かんけいとしてあり、利用りようしゃ個人こじんによる直接的ちょくせつてき雇用こようもある★35が、一般いっぱんてきにとりうる方法ほうほうではない。障害しょうがいしゃ自立じりつ促進そくしんするために各地かくち設立せつりつされ、公的こうてき援助えんじょけつつ、障害しょうがいしゃ自身じしんによって運営うんえいされているCILがおこなっている主要しゅよう活動かつどうひとつに障害しょうがいしゃ介助かいじょしゃ媒介ばいかいがある。賃金ちんぎんとしては、ほぼ最低さいてい賃金ちんぎんじゅんずるがく利用りようしゃ支払しはらい、センターは介助かいじょしゃ利用りようしゃ登録とうろくし、両者りょうしゃ媒介ばいかいする。介助かいじょ費用ひよう利用りようしゃ自身じしん収入しゅうにゅうあるいは自治体じちたい国家こっかから支給しきゅうされる。また、ボストンCILでは、センターが必要ひつよう時間じかん算定さんていし、時間じかんひょうり、行政ぎょうせい窓口まどぐち提出ていしゅつし、医療いりょう扶助ふじょ代行だいこうしてり、利用りようしゃ支給しきゅうするという活動かつどうおこなっている。
 このような合衆国がっしゅうこく日本にっぽんとく神戸こうべでのこころみを参考さんこうにしながら、障害しょうがいしゃによって創設そうせつされ、運営うんえいされる、障害しょうがいしゃ介助かいじょ供給きょうきゅうおも目的もくてきひとつとする団体だんたいとして、はちろくねん発足ほっそくし、同年どうねんきゅうがつから介助かいじょサービスをはじめた東京とうきょう八王子はちおうじ八王子はちおうじヒューマンケア協会きょうかいがある。★36
 はちはち年度ねんどわりに、正会員せいかいいんめい(うち利用りようしゃきゅうめい・ケアスタッフはちろくめい)、賛助さんじょ会員かいいん資金しきんめんでの協力きょうりょくいちさんきゅうめいはちはち年度ねんど活動かつどうをみると、そう活動かつどう時間じかんはちいちよんあいだ依頼いらい回数かいすうはちいちいちかい依頼人いらいにんすうつき平均へいきんさんよんにんほど、ケアスタッフで実際じっさい活動かつどうしているのがつき平均へいきんさんめいほどである。利用りようしゃによって支払しはらわれるのは一時いちじあいだあたりろくひゃくえん交通こうつうで、そのうちひゃくえん事務じむになり、またとく必要ひつようでないひとについてはひゃくえん介護かいご預託よたく (それを自分じぶん介助かいじょ利用りようできる) にまわしてもらいこの場合ばあいよんひゃくえんがケアスタッフにわたる。会員かいいん正会員せいかいいん入会にゅうかい[p263]かねせんえん年会ねんかいさんせんえん賛助さんじょ会員かいいん一口ひとくちせんえんはちはち年度ねんどは、東京とうきょうはじめた東京とうきょう地域ちいき福祉ふくし振興しんこう基金ききんからの助成じょせいろくまんえんあまり、助成じょせいきんふくめると助成じょせいきんいちななまんえんほどの収入しゅうにゅう全体ぜんたい半分はんぶん以上いじょうめる。介助かいじょりょうから支払しはらわれる事務じむはちまんえんほど、入会にゅうかい賛助さんじょ会費かいひふくめた会費かいひななよんまんえんほどである。スタッフとしては常勤じょうきんしゅうよんにち以上いじょう職員しょくいんよんめいと、非常勤ひじょうきん職員しょくいんめいいるが、常勤じょうきん職員しょくいんのうちさんにん給与きゅうよおおひとつき手取てどやくきゅうまんえん)がはらわれているほかは、交通こうつうはらわれているだけである。全員ぜんいんみずか障害しょうがいしゃである。また規約きやくじょう運営うんえい委員いいん過半かはん障害しょうがいしゃであることとなっている(はちきゅうねんはちめいのうちろくめい)。ケアスタッフの%は主婦しゅふ学生がくせい無職むしょくひととう、この仕事しごとだけで生活せいかつしているひとはいない。対象たいしょう障害しょうがいしゃ高齢こうれいしゃ長期ちょうき療養りょうようちゅうひと、などだが、全身ぜんしんせい障害しょうがいしゃ場合ばあい、ここの利用りようによって介助かいじょ必要ひつようりょうすべてまかなっているというひとおおくない。ろくさい以上いじょう高齢こうれいしゃ利用りよう[p263]の割合わりあいはちなな年度ねんど〇%前後ぜんこうから、はちはち年度ねんどさんさん%にえている。
 武蔵野むさしの神戸こうべこころ以降いこう設立せつりつされた機関きかんは、民間みんかん設立せつりつ運営うんえいによるもの、そのなかでも自治体じちたいからの援助えんじょけているもの、いないもの、社会しゃかい福祉ふくし協議きょうぎかいによって設立せつりつ運営うんえいされているもの、自治体じちたいによって設立せつりつ運営うんえいされているもの、形態けいたい様々さまざまだが、近年きんねんそのかず急激きゅうげき増加ぞうかしつつあり、はちななねんろくがつ時点じてんでもいち以上いじょうかぞえるという★37。そのおおくがもっぱ高齢こうれいしゃ対象たいしょうとするものである。★38
 こうした機関きかん共通きょうつうする特徴とくちょうなにだろうか。たとえば、ヒューマンケア協会きょうかいは、合衆国がっしゅうこくのCILの活動かつどう影響えいきょうけている。だが、そこには重要じゅうよう差異さいがある。合衆国がっしゅうこく場合ばあい介助かいじょ基本きほんてきちん労働ろうどうとらえられている。そして、その賃金ちんぎんひくく――とはいえ、生活せいかつ日本にっぽんくらやすいから生活せいかつしていけないほどではない――雇用こよう安定あんていしていないにもかかわらず、介助かいじょ供給きょうきゅう可能かのうなのは、かなりの程度ていど失業しつぎょうりつたかさ、人種じんしゅ問題もんだい背景はいけいとしている。このことによって、その介助かいじょしゃそうは、性別せいべつわないし、またその賃金ちんぎんによっては希望きぼう人種じんしゅ経歴けいれき介助かいじょしゃやとうことができる。同時どうじに、このような事情じじょうによって、介助かいじょしゃしつ問題もんだい (盗難とうなんひとし) がときしょうじることにもなる。
 他方たほう日本にっぽん場合ばあい実質じっしつてきにそれをになうのは、子育こそだてのわった専業せんぎょう主婦しゅふそうかぎられる。つき時間じかんすう時間じかんあたりの報酬ほうしゅうによって、そうでしかありえないのである。また、おおくの介助かいじょしゃ報酬ほうしゅうだけをあてにして介助かいじょおこなっているわけではなく、この活動かつどういれいる動機どうきはボランティアの場合ばあいとそうわらない。報酬ほうしゅうもとめてやってくるひともいるが大抵たいていそうながくはつづかないという。その報酬ほうしゅうはいわゆるパート労働ろうどうられる程度ていどおおくはそれ以下いかであり、しかも仕事しごとときにはかなりきついものになる。ここで有償ゆうしょうであることはどういう意味いみつのか。まず、利用りようしゃがわにおいてやってもらっているというがなくなること、それなりの責任せきにんわすことができることである。しかし報酬ほうしゅう実際じっさいには十分じゅうぶん報酬ほうしゅうとして機能きのうしないのなら、これもかなり微妙びみょうなところだ。はらわれる報酬ほうしゅうはとにかくはらっているからという多分たぶん象徴しょうちょうてき意味合いみあいをびる。こうしたありかたときに「有償ゆうしょうボランティア」といったげん[p265]表現ひょうげんされる。これにたいする批判ひはんひとつは、あくまでボランティアは無償むしょうであるべきだということである。けれども、これまでべたきたように、ある活動かつどう有償ゆうしょうであることと、ある活動かつどう対価たいかるための手段しゅだんというのとべつ意味いみもとめることとはけっして背反はいはんしない。むしろ、有償ゆうしょうであるか無償むしょうであるかということがこの社会しゃかいなかでどのような効果こうかしょうじさせるのかというてん重要じゅうようなのであり、またどのように有償ゆうしょうであるのかが問題もんだいなのである。
 再度さいど確認かくにんすれば、ここであげたふたつのかたちあいだ重要じゅうよう差異さいひとつは――実際じっさいには支払しはらわれるときあいだあたりのがくはそうわらないのだが、その目指めざ方向ほうこうちがいとして――介助かいじょによって生活せいかつできるひとをおくのか、生活せいかつなかいた時間じかん介助かいじょてるもの主要しゅよう供給きょうきゅうげんとするのかということである。前者ぜんしゃは、くに自治体じちたいによる介助かいじょ費用ひよう支給しきゅうを[p266]もとめる要求ようきゅう運動うんどう一体いったいとなってすすんできた。むしろ、それにいままでの活動かつどう大半たいはんついやされた、そのぶん実際じっさい組織そしきおくれがちだった。後者こうしゃは、その供給きょうきゅうについては組織そしきとしてとく運動うんどうおこなっているわけではなく、ともかく、じんがいないという状況じょうきょう――ある場合ばあいにはかねはあるがひとはいないという状況じょうきょう――を打開だかいするためにはじめられた。このことをどうかんがえるか。これについてはこのしょう最後さいご検討けんとうしよう。

6 ケアづけ住宅じゅうたく

 直接ちょくせつには介助かいじょ形態けいたいひとつとべないが、それとかかわるものとしていわゆるケアづけ住宅じゅうたくがある。典型てんけいてきには、比較的ひかくてき小規模しょうきぼ障害しょうがいしゃ集合しゅうごう住宅じゅうたくつくり、そこに介助かいじょしゃ常駐じょうちゅうして介助かいじょにあたる。
 日本にっぽんでケアづけ住宅じゅうたく建設けんせつ運動うんどう先駆さきがけとなったのは、前章ぜんしょうにみたように、東京とうきょうあおしばかいだった。そしてそのさい参考さんこうにされたのが、スウェーデンでろく年代ねんだい以降いこう建設けんせつすすめられたフォーカス住宅じゅうたくばれる居住きょじゅう形態けいたいであり、くに小規模しょうきぼ施設しせつである。フォーカス住宅じゅうたくは、ろくさんねん設立せつりつされたフォーカス協会きょうかいによって実験じっけんてき建設けんせつさされた改造かいぞうされた集合しゅうごう住宅じゅうたくで、常駐じょうちゅう職員しょくいんがおかれるともに、ヘルパーがおとずれ、重度じゅうど障害しょうがいしゃ生活せいかつとなる。このこころみは成功せいこうし、ななねんには運営うんえい地方自治体ちほうじちたい移管いかんされた。★39
 ただ、いま日本にっぽんにあるいくつかのケアづけ住宅じゅうたくでの介助かいじょ体制たいせい様々さまざまである。そもそも、介助かいじょ供給きょうきゅう形態けいたいは、ケアづけ住宅じゅうたくかぎりでは限定げんていされず、したがって、様々さまざま形態けいたいのどれをもあてはめることができる。まず、いくつかのケアづけ住宅じゅうたくについてその建設けんせつ経緯けいい介助かいじょ体制たいせいについて概要がいようしるすことにしよう。★40
 ななさんねんにこの住宅じゅうたく東京とうきょう要求ようきゅうした東京とうきょうあおしばかいでは、ななねん会員かいいん秋山あきやまがイギリスを中心ちゅうしんとしてヨーロッパを旅行りょこうし★41、ここでられたものも参考さんこうにして、構想こうそう具体ぐたいする。ななろくねん調査ちょうさ計上けいじょうされ、以後いごじゅうはちかいに[p267]わた検討けんとうて、ななはちねんさんがつに「ケア住宅じゅうたく設置せっち構想こうそうについて」という報告ほうこくされる。これをけて東京とうきょう建設けんせつ運営うんえい委員いいんかい設置せっちされ、はちいちねんなながつに「八王子はちおうじ自立じりつホーム」が開所かいしょする★42。かれらは、当初とうしょ、この居住きょじゅう空間くうかん都営とえい住宅じゅうたくなか建設けんせつすることを要望ようぼうしたが、それは結局けっきょくたされず、独立どくりつ建物たてものとして運営うんえい開始かいしした。ここでは職員しょくいんいちめいいちにちやくいちあいだあいだ介助かいじょおこなう。必要ひつよう介助かいじょ入居にゅうきょしゃによって多様たようである。
 これにも刺激しげきされてつぎにケアづけ住宅じゅうたく建設けんせつ運動うんどうはじめたのは「札幌さっぽろいちごかい」である★43。このかい活動かつどうは、脳性のうせいマヒしゃ巨大きょだいコロニー「北海道ほっかいどう福祉ふくしむら建設けんせつ計画けいかくみずからの主張しゅちょう反映はんえいさせることを目指めざしてななななねんはじまった。かれらは福祉ふくしむらなか個室こしつつくることを要求ようきゅうするとともに、ななはちねんにそれが可能かのうなことをいちげつ合宿がっしゅくによる実験じっけんあきらかにするこころみをおこなう。また、ななきゅうねんにはメンバーの小山内おさないがスウェーデンでのケアづけ住宅じゅうたく状況じょうきょうなどを実際じっさいかくか[p268]め、帰国きこく一般いっぱん住宅じゅうたくみ、ケアづけ住宅じゅうたく現実げんじつてき可能かのうせいについて実験じっけんつづけていくとともに、その建設けんせつ北海道ほっかいどう要求ようきゅうする運動うんどうおこなった。★44行政ぎょうせい対応たいおう当初とうしょ積極せっきょくてきではなかったが、継続けいぞくてきはたらきかけの結果けっかはちねん北海道ほっかいどうは「障害しょうがいしゃ生活せいかつ自立じりつ促進そくしんについて」という報告ほうこくしょし、それをうけてはちろくねんみち営の重度じゅうど身体しんたい障害しょうがいしゃケアづけ住宅じゅうたく開設かいせつされた★45。いちめい入居にゅうきょし、そのうち身辺しんぺん介助かいじょ必要ひつようものよんめい調理ちょうり買物かいもの介助かいじょ必要ひつようものかくめいいる。北海道ほっかいどうからわせてとしいちはち〇〇まんえん補助ほじょけ、時間じかんあたりななえん介助かいじょしゃ支払しはらわれている。(はちはちねん
 このほかにいくつかの自治体じちたい検討けんとうされているが、障害しょうがいしゃがわから積極せっきょくてき運動うんどうがなされ実現じつげんしたものとしては、横浜よこはまおよ神奈川かながわけんのものがあり、その運動うんどうはじまりについては一部いちぶ前章ぜんしょうべた。
 横浜よこはまでは、「ふれあい生活せいかついえ」の建設けんせつ運動うんどう独自どくじすすめられはちよんねん開所かいしょしていたが、がわでははちさんねんきゅうがつ横浜よこはま在宅ざいたく障害しょうがいしゃ援護えんご協会きょうかいが「グループホーム研究けんきゅう委員いいんかい」を設置せっちし、はちよんねんいちいちがつ報告ほうこくしょ提出ていしゅつはちねんはちがつに「横浜よこはま障害しょうがいしゃグループホーム試行しこう事業じぎょう補助ほじょ要項ようこう」がされ、「ふれあい生活せいかついえ」が試行しこう事業じぎょうとして制度せいどされた。脳性のうせいマヒしゃろくにん男性だんせいめい女性じょせいよんめい)が、一人ひとりいちにん必要ひつようおうじて改造かいぞうされた個室こしつ入居にゅうきょしている。食堂しょくどう共用きょうようかい職員しょくいんにん家族かぞくみ、介助かいじょ運営うんえい協力きょうりょくにあたるほか職員しょくいんさんめいのうちいちにん交替こうたいまる。入浴にゅうよく通勤つうきんする職員しょくいんのいない土曜どようよるから日曜日にちようびにはボランティアがはいる。登録とうろくしゃろくめい交通こうつういちにちあたりせんえん支給しきゅうされる。学生がくせい労働ろうどうしゃ、かなりとおくからひともいる。(はちななはちはちねん)★46
 神奈川かながわけんでは、はちよんねんなながつに「ケアづけ住宅じゅうたく基本きほん問題もんだい検討けんとう委員いいんかい」が発足ほっそくし、その中間ちゅうかん報告ほうこくけて、はちねんじゅうがつにはけんのケア住宅じゅうたく試行しこう事業じぎょう開始かいしされ、はちろくねん平塚ひらつか藤沢ふじさわ相模原さがみはら神奈川かながわけん試行しこう事業じぎょうとしての「ケア住宅じゅうたく」が開設かいせつされる。そのひと相模原さがみはらの「シャローム」★47は、民間みんかんアパートのいちかいよんしつ障害しょうがいしゃ便利べんりなようにつくられている。よんにん脳性のうせいマヒしゃ入居にゅうきょ。ダイニング・キッチン、トイレ、風呂ふろ共用きょうよう介助かいじょじんグルー[p269]プ「グループ・シャローム」がある。現在げんざい登録とうろくしゃやくひゃくめい時給じきゅうろくひゃくえん支払しはらわれる。近所きんじょ大学生だいがくせい主婦しゅふだい部分ぶぶんめる。だが、主婦しゅふそうについて、にみられるように、子育こそだてのわった年齢ねんれいそう中心ちゅうしんということはないようだ。入居にゅうきょしゃいちにんあたりの介助かいじょ時間じかんいちにちあいだ程度ていどである。コーディネイターとばれるひとかいんで、から一定いってい報酬ほうしゅうされているが、実際じっさい介助かいじょにあたるわけではない。(はちはちねん
 このような方向ほうこうは、審議しんぎかいでもげられ★48、くにのレベルでのれも徐々じょじょになされつつある。改正かいせいされた身体しんたい障害しょうがいしゃ福祉ふくしほう規定きていされた、「福祉ふくしホーム」がケアづけ住宅じゅうたくとされる★49。この制度せいど適用てきようけて建設けんせつされた住宅じゅうたくは[p270]はちはちねん現在げんざい全国ぜんこくみっつ、定員ていいんろくめいである★50。
 だがこの制度せいどでは運営うんえいないし、入居にゅうきょしゃは「常時じょうじ介助かいじょ医療いりょう必要ひつようとする状態じょうたいにあるもののぞく」とされる。入居にゅうきょしゃ選考せんこう運営うんえい主体しゅたいにまかされるからこの規定きてい実際じっさい適用てきようされるとはかぎられないが、すくなくともこの制度せいど自体じたいには介助かいじょ保障ほしょうはない。基本きほんてき個々人ここじん支給しきゅうされるものを使用しようして、あるいはかれら、かれらの集団しゅうだん自力じりきで、どこからか介助かいじょしゃをみつけてこなければならない。この制度せいど利用りようしてはちななねんよんがつ開設かいせつされた仙台せんだいの「ありのまましゃ」★51の場合ばあい職員しょくいん一人ひとり自分じぶん自身じしんでボランティアを確保かくほできる重度じゅうど障害しょうがいしゃかぎって入居にゅうきょ許可きょかしている。入居にゅうきょしゃ一切いっさい介助かいじょ必要ひつようとしないひとから一部いちぶ介助かいじょ必要ひつようとするひと、すべてに介助かいじょ必要ひつようとするひと多様たようである。
 このようなこころみにたいする評価ひょうか様々さまざまだが、あくまで一般いっぱん社会しゃかいでの生活せいかつを、というがわとらかた懐疑かいぎてき、あるいは否定ひていてきである。だが、そのさい、いくつかのこころみをかならずしも一括いっかつしてろんじることができない。というのも、介助かいじょ形態けいたいだけでなく、その目標もくひょう、それにおうじたその形態けいたい多様たようだからである。まずそれをあきらかにしていく必要ひつようがある。
 この形態けいたいは、かれらが批判ひはん対象たいしょうにしてきた収容しゅうよう施設しせつくらべ、個室こしつ生活せいかつでき、生活せいかつ形態けいたい拘束こうそくゆるいというてんたしかに前進ぜんしんとらえられる。けれどもそれは、一般いっぱん住居じゅうきょでは普通ふつうみとめられることである。何故なぜケアづけ住宅じゅうたくなのか。
 だいいちに、居住きょじゅう空間くうかん改造かいぞう機器きき導入どうにゅうなどによる自分じぶんでなしうる行為こうい範囲はんい拡大かくだいである。とすれば、介助かいじょにあたるひととの関係かんけい問題もんだい極小きょくしょうされる。
 だいは、介助かいじょ関係かんけいする。ここで介助かいじょおこなひとは、職員しょくいん、ボランティア、ある程度ていど報酬ほうしゅうるいわゆる有償ゆうしょうボランティア、家庭かてい奉仕ほうしいん多様たようであり、またその財源ざいげんとしても、自治体じちたいからの援助えんじょほかに、年金ねんきん特別とくべつ障害しょうがいしゃ手当てあて生活せいかつ保護ほご他人たにん介護かいごりょうわたしたちいままでみてきた、あらゆる形態けいたいがここにみられる。それにしゅうじゅうという形態けいたいくわわるのは、常時じょうじそばにひとがいるのではなく、定時ていじに、あるいは緊急きんきゅうときに、介助かいじょしゃおとずれる、そのさいに、利用りようしゃあつまってんでいること、介助かいじょしゃちかくに――おおくの場合ばあいおな建物たてものに――むのは好都合こうつごうだというてんにおいてである。[p270]つぎに、いくにんかがあつまってんでいるため、介助かいじょしゃるための活動かつどう集団しゅうだんてきおこなうことができる。そしておな理由りゆうで、いち必要ひつよう介助かいじょしゃをある程度ていどらすことが可能かのうだ。このことは、とく夜間やかんなど待機たいき体制たいせいをとる場合ばあいにいえる。
 そしてだいさんに、ケアづけ住宅じゅうたくは、生活せいかつをともにしながら、ある目的もくてき共有きょうゆうする集団しゅうだんとして、集合しゅうごうてきちから獲得かくとくしようとするこころみでもあった。一人ひとりいちにん生活せいかつするかぎりでは社会しゃかいてきちからにならないのではないか。すくなくとも、ケアづけ住宅じゅうたくおおくのひとれるわけではない以上いじょう入居にゅうきょ出来でき人達ひとたちは、それに自足じそくすべきではなく、その運営うんえい積極せっきょくてきにない、また、それにとどまらずおおくの障害しょうがいしゃ生活せいかつ改善かいぜんかう活動かつどうおこなうことがのぞまれたのである。
 以上いじょうが、東京とうきょうあおしばかい主張しゅちょうとして、ケアづけ住宅じゅうたくむすびつけられた。できるかぎ他者たしゃ介助かいじょらすことにより自律じりつせい確保かくほする。他者たしゃつねみずからの生活せいかつ関与かんよすることはわずらわしく、必要ひつようときるというかたちほうがよりこのましい。というだけでなく、かれらの主張しゅちょうには、そもそもできるかぎみずからのちからによって生活せいかつすることこそが自立じりつ生活せいかつであるというかんがかたふくまれている。これがだいいちだいてんむすびつく。そして改革かいかくへの志向しこうだいさんてんむすばれる。
 八王子はちおうじでのこころみを参考さんこうにしながら、その出来できたケアづけ住宅じゅうたくは、以上いじょうとはすこことなった性格せいかくっている。横浜よこはまでのこころみは、ひとつにはともかく、場所ばしょがないひと生活せいかつ確保かくほするためのものだったが、また、かれらの運動うんどうによって、ようやくすこしずつあらわれてきた一人ひとり生活せいかつする人達ひとたちが、その生活せいかつ十分じゅうぶん統御とうぎょできないという問題もんだいにもうながされたものだった。以前いぜんなら、様々さまざまみちとおって、なにとか生活せいかつじゅつ獲得かくとくし、介助かいじょしゃ操縦そうじゅうするすべを習得しゅうとくしてきたのだが、それをすべてのひとに、とくに養護ようご学校がっこうなか社会しゃかいとの接触せっしょくをあまり経験けいけんせずにごしてきた人達ひとたち[p272]に要求ようきゅうすることはできず、事実じじつ生活せいかつ時間じかんしょく問題もんだいなどで、健康けんこうがいするひとてくる。横浜よこはまのケアづけ住宅じゅうたくは、そういった人達ひとたち生活せいかつじゅつ習得しゅうとくする場所ばしょとしての意味いみつ。相模原さがみはらでのこころみもこういう側面そくめんをもっている。このような目的もくてきをもつ場所ばしょは、一人ひとりいちにんみずからの場所ばしょみずからの維持いじしていく生活せいかつ場所ばしょとは、性格せいかくすこちがう。
 以上いじょう確認かくにんしたうえで、ケアづけ住宅じゅうたくはどのように評価ひょうかされるのか。
 だいいちに、設備せつび充実じゅうじつ。たしかに民間みんかん借家しゃくや、アパートではむずかしい。だが、それは原理げんりてき問題もんだいではない。公営こうえい住宅じゅうたく改造かいぞう可能かのうなようにつくることはできる。そして、その経費けいひは、ケアづけ住宅じゅうたく建設けんせつするよりも余計よけいにかかるということはない。そして、とく重度じゅうどしゃ場合ばあい他者たしゃ介助かいじょ直接ちょくせつ他者たしゃはたにいる時間じかんすくなくすることには限度げんどがある。とすればやはり、そこでの問題もんだいえるわけではない。
 だいに、あつまってむということ。なぜ、形態けいたいであれあつまりじゅうという形態けいたいがとられるのか。それは結局けっきょくのところ、介助かいじょ問題もんだい帰着きちゃくする。だが、常時じょうじ利用りようしゃのそばにつくのでなく緊急きんきゅうにだけ対応たいおうすることも個々ここ場所ばしょなかでできなくはないし、実際じっさいおこなわれている★52。このしゅうじゅう形態けいたいが、コストの論理ろんりによって肯定こうていされるとすればそれは、結局けっきょくのところ、だい規模きぼ施設しせつ――のちにはかえってそのほうがコストがかかることが認識にんしきされるのだが――の建設けんせつ肯定こうていする論理ろんりおなじということにならないのか。またあつまってまなくとも、集団しゅうだんてき組織そしきてき介助かいじょしゃ調達ちょうたつしていくこともできる。それはいままでとおりだ。
 だいさんに、意識いしき、あるいは生活せいかつ仕方しかたかかわる場面ばめん。まず、集団しゅうだんせい獲得かくとくという志向しこう。だが、この運動うんどう障害しょうがいしゃ一般いっぱん居住きょじゅう条件じょうけん改善かいぜん目指めざし、それが公的こうてき政策せいさくとしてなされるのなら、最初さいしょからそして長期ちょうきてきに、目的もくてき志向しこうてき集団しゅうだん形成けいせい維持いじすることはむずかしい。個々ここ生活せいかつなか自足じそくしてしまうことを、こういった形態けいたいしゅうじゅうによっておさえることはできないし、またそもそもおさえるべきかどうかも問題もんだいである。そして、公的こうてき政策せいさくとしてなされる場合ばあい、あるいは資金しきん提供ていきょうされる場合ばあい入居にゅうきょしゃ選考せんこう基準きじゅん個々人ここじん信条しんじょう志向しこうもとめることには無理むりがある。そしてま[p273]たこのときみずからの独立どくりつした空間くうかん要求ようきゅうとこれとは、矛盾むじゅんしないまでもかならずしも整合せいごうしない可能かのうせいてくる。★53つまり、様々さまざま交流こうりゅう情報じょうほう交換こうかんする場所ばしょ必要ひつようであるとして、そしてそれが現在げんざいあまりにすくない現状げんじょうをみればあらたにつくることにも意義いぎがあるとしても、それを生活せいかつとすべき理由りゆうはみあたらないのである。
 つぎに、より限定げんていされた生活せいかつ技術ぎじゅつ習得しゅうとくとして。この場合ばあい基本きほんてきに、ここでの居住きょじゅう自分じぶん自身じしんむためのぜん段階だんかいつぎへの移行いこう過程かていなかとらえられる。実際じっさいにはつぎ場所ばしょへの移行いこうがなかなかむずかしいから長期ちょうきてき居住きょじゅうになることがおおいとしても、それは本来ほんらい居住きょじゅう空間くうかんとはべつのものである。このような場所ばしょ障害しょうがいしゃ居住きょじゅう空間くうかんすべてをめることはそもそもありえない。また、このような習得しゅうとく訓練くんれん機会きかい場所ばしょ居住きょじゅう場所ばしょとしてあたえられる必要ひつようつねにあるのかどうか。事実じじつそうしたこころみは居住きょじゅうとはことなる様々さまざま場所ばしょでいまなされつつある★54。
 こうしてこの居住きょじゅう形態けいたいは、訓練くんれんてき意味いみあいでとらえる場合ばあいにはその機能きのう限定げんていされ、居住きょじゅう空間くうかんとしての意味いみ[p274]はうすれることになる。また志向しこう共有きょうゆうする共同きょうどうせいとしてとらえる場合ばあいにもまた、それが居住きょじゅう空間くうかんとしてあるべきかというてんひとし問題もんだいになる。また独立どくりつせい重視じゅうしする場合ばあいには、あつまりじゅうという形態けいたいすくなくとも積極せっきょくてきには支持しじされがたい。そしてなにより、すうじゅうまんにんひと介助かいじょようするとすれば、だいいち要請ようせいされるのは、いま場所ばしょ、そして独立どくりつして一般いっぱん居住きょじゅう空間くうかんたいする援助えんじょであり、――障害しょうがいしゃかぎられないが――居住きょじゅう空間くうかん一般いっぱんてき保障ほしょうではないか。たとえば障害しょうがいならびに国籍こくせきとう属性ぞくせい)を理由りゆうとする差別さべつである入居にゅうきょ拒否きょひ禁止きんしする立法りっぽう措置そちであり、また不条理ふじょうりというない公営こうえい住宅じゅうたくへの入居にゅうきょ制限せいげん(↓だいしょうちゅう8)の撤廃てっぱいと、障害しょうがいしゃ利用りよう可能かのう公営こうえい住宅じゅうたく増設ぞうせつ等々とうとうである。
 事実じじつ、こうしたなかで、ケアづけ住宅じゅうたく建設けんせつ運動うんどうかかわってきた人々ひとびとあいだにもその意義いぎ限定げんていてきとらえる方向ほうこうてきている。4・5にみたこころみのあらたな事例じれいとしても、また4・5・6にみた論点ろんてん交錯こうさくについて再度さいどかんがえるためにも、札幌さっぽろいちごかい活動かつどうをみよう。いちごかいちゅう53にべたような事情じじょう、ケアづけ住宅じゅうたくでのケアがかならずしも満足まんぞくのいくものでなかったこと、なによりいくらケアづけ住宅じゅうたく設置せっちしていっても到底とうてい介助かいじょ必要ひつようとする障害しょうがいしゃ全体ぜんたいのものにならないという認識にんしきから、ケアづけ住宅じゅうたく開設かいせつのち、@はちろくねんまつ、ケア・サービス、住宅じゅうたく紹介しょうかい、カウンセリング、移送いそうサービスをおこな合衆国がっしゅうこくのCILに比較的ひかくてきちか機関きかん設立せつりつのための自立じりつ生活せいかつ基金ききん募金ぼきん活動かつどうはじめるとともに、Aまずいくにん障害しょうがいしゃ集団しゅうだん民間みんかんアパートに何人なんにんかがあつまるというかたち想定そうてい)にたいして介助かいじょ保障ほしょうおこなうという「グループ・ケア」制度せいど構想こうそうし、はちななねん以降いこう札幌さっぽろはたらきかける。だが、特定とくてい団体だんたい助成じょせい出来できないとされ結局けっきょくたされず、また、このかたちにしても障害しょうがいしゃ全体ぜんたいのごく一部いちぶのものにしかならないという判断はんだんからこれをげ、Bはちきゅうねんよんがつから、かい専従せんじゅう職員しょくいんさんにん給与きゅうよがつじゅうまんえん)を中心ちゅうしんとした(主婦しゅふ無職むしょく学生がくせいかくいちめい介助かいじょしゃによる介助かいじょサービス(一時いちじあいだよんひゃくえん交通こうつうひゃくえん宿泊しゅくはくいちはくせんえん)、およ移送いそうサービス(一時いちじあいだよんひゃくえん実費じっぴ)をはじめる(開始かいしななにちで、じゅうろくにん利用りようしゃたい介助かいじょななろくあいだ宿泊しゅくはくななにち移送いそうきゅうななかいせんキロあまり)とともに、同年どうねん、C東京とうきょう介護かいごじん派遣はけん事業じぎょう参考さんこうにした「全身ぜんしんせい障害しょうがいしゃ介助かいじょじん派遣はけん事業じぎょう」の設置せっち札幌さっぽろたいして要求ようきゅうする。[p275]東京とうきょう制度せいどことなっているのは時給じきゅうせいにするとしていることで、市長しちょうての要望ようぼうしょではパートタイマーの主婦しゅふ雇用こよう対策たいさくになることも指摘してきしている。時給じきゅうせい介助かいじょ必要ひつよう最低限さいていげんのものにしようとする意図いとからもている。会員かいいん小山内おさないはできるだけむだなケアをなくすため、曖昧あいまいなボランティアや専従せんじゅう職員しょくいんをやめ、生活せいかつ保護ほご他人たにん介護かいご制度せいど特別とくべつ基準きじゅんもケア制度せいどとして曖昧あいまいであるがゆえすべてなくし――実際じっさいにはこれらすべてを活用かつようせざるをないでいるのだが――、必要ひつようなケア時間じかんによって介助かいじょりょう設定せっていするきめこまかな制度せいどにしていくべきことをべている★55。以上いじょうにはだいいちに、ケアづけ住宅じゅうたく限界げんかいかんする基本きほんてき論点ろんてんひとつがている。だいに、4・5にみたあらかたの要素ようそまれている。だいさんに、介助かいじょ極小きょくしょうという志向しこうがある。これは、前章ぜんしょうにもみた、介助かいじょ保障ほしょう要求ようきゅう過剰かじょう現実げんじつてき批判ひはんした東京とうきょうあおしばかい主張しゅちょうであり、このかいがケアづけ住宅じゅうたく建設けんせつ運動うんどうにおいてもとった発想はっそうであり、またここと人的じんてきにも交流こうりゅうのあったいちごかいが、みずからのケアづけ住宅じゅうたく建設けんせつにおいてもその基幹きかんえた発想はっそうであって、公的こうてき介助かいじょ保障ほしょう要求ようきゅうする運動うんどうとかつて年金ねんきん改革かいかくちから集中しゅうちゅうした運動うんどうとの「対立たいりつ」あるいは後者こうしゃ前者ぜんしゃたいする「不信ふしん」――とおもえるのだが――の構図こうずいでいる。またこれに関連かんれんするものでもあるが、だいよんに、時給じきゅうせい主婦しゅふのパートタイム労働ろうどうとしての介助かいじょというせん明確めいかくしている。だいさんだいよんてんについて、わたしたちはまだみずからの見解けんかいを――だいさんてんかんして他者たしゃ介助かいじょはなくならないというたりまえのこと以外いがい――べていない。これは最後さいごふしのこそう。
 [p276]ケアづけ住宅じゅうたくもどろう。ケアづけ住宅じゅうたくへの志向しこうは、状況じょうきょううながされ、今後こんごもなくなりはしないだろう。また、いまべてきたいくつかの機能きのうたされるべきだとすれば、その場所ばしょ必要ひつようだろう。だが、そのさいには、機能きのう形態けいたいとを明確めいかくにしたうえでなければならない。でなければ、従来じゅうらい施設しせつより施設しせつができるだけだという可能かのうせいがある。それは必要ひつようなことだとしても、改善かいぜんつぎいちうながすものでなければならない。障害しょうがいしゃだけがあつまってひとつの場所ばしょみ、それだけで特別とくべつのところになってしまうならば、それは結局けっきょく施設しせつとさしてわらないということにならないのか。まず普通ふつう場所ばしょむことを優先ゆうせんさせるべきではないか。それを前提ぜんていしたうえで、どのように生活せいかつてていくか、かんがえるべきではないか。こうして、施設しせつではない一般いっぱん社会しゃかいないでの生活せいかつをできるかぎもとめていくなら、この形態けいたいはその固有こゆう色彩しきさいうすめていくことにならざるをえない★56。そして、他者たしゃ介助かいじょ問題もんだいのこる。自立じりつ生活せいかつ運動うんどう視点してんからはこのようにえるはずだ。そして現実げんじつ大筋おおすじはそのようにすすんでいるとわたしたちにはおもえる★57。

7 しょうくく

 こうして、いくつかの介助かいじょ形態けいたいこころみられている。そのなかのいくつかは実際じっさいには併用へいようされている★58。また、その各々おのおのすべてがたがいに対立たいりつするものとはいえず、ある場合ばあいには相互そうご補完ほかんてきなものでもある。だが、いままで示唆しさしたように対立たいりつ相違そういてんもある。それをもう一度いちど整理せいりし、かんがえてみよう。また、ここまでろんじてなかったてんについてもいくつかかんがえてみよう。それらは社会しゃかい福祉ふくし社会しゃかい保障ほしょう政策せいさくろんとして論議ろんぎされている諸点しょてんかさなり、本来ほんらいならそれをふまえて十分じゅうぶん論議ろんぎくす必要ひつようがあるが、ここではろんじきれない。かんがえる必要ひつようがあるとおもわれるてん列挙れっきょするにとどめる。だから以下いかには、はっきりいたいことと、ここでは結論けつろんせないこととがじっている。
 1)日常にちじょうてき生活せいかつには、極力きょくりょく他者たしゃ介在かいざいすくなくするという方向ほうこうがある。それは一定いってい現実げんじつせい無視むししえない利点りてん[p277]をつが、依然いぜんとしてどれほどかの人的じんてき介助かいじょ必要ひつようのこるのはあきらかであり、だとすればそこにしょうずる問題もんだいもまたなくなるわけではない。また、あつまりじゅうによって、直接ちょくせつ他者たしゃのいる時間じかんすくなくすることも可能かのうではあるが、できるかぎ社会しゃかいなかでの生活せいかつ目指めざすなら、あつまりじゅうという形態けいたいはその度合どあいうすめていくべきものだということになるし、また、うまくネットワークがつくられるなら、そもそもその必要ひつようはない。だから、主要しゅよう問題もんだいはやはり、みずからが選択せんたくした場所ばしょで、どのように介助かいじょるかということである。
 2)無償むしょう有償ゆうしょうか(かえせば、無償むしょう介助かいじょとは家族かぞくではなくボランティアによる介助かいじょを、有償ゆうしょう介助かいじょとはその資源しげん政治せいじ領域りょういきから供給きょうきゅうされることをここでは意味いみする)。現実げんじつてき要請ようせいとして、後者こうしゃみとめることがどうしても必要ひつようである。というだけではない。地域ちいきというものが、生産せいさんから分離ぶんりされ、それに依存いぞんするかたちで成立せいりつしていること――正確せいかくには両者りょうしゃ相互そうご依存いぞんしあっているわけだが――をかんがえていった場合ばあいに、そしてこの社会しゃかい全域ぜんいきから交換こうかんろうとかんがえないとすれば、有償ゆうしょう行為こういとしてなされることがえらばれるはずだとかんがえる。そのうえで、自律じりつてき生活せいかつをどれだけ確保かくほできるか、また、どれほど他者たしゃとの関係かんけい可能かのうせいざされないか、が課題かだいになる。
 [p278]3)以上いじょうのようにかんがえるとして、財源ざいげん負担ふたん問題もんだい制度せいどじょう位置いちづけをどうするか。ここで主題しゅだいとしている介助かいじょのような必要ひつようは、個々ここ別々べつべつひとひと状態じょうたいおうじた必要ひつようである。このことから、この必要ひつようは、それ以外いがい基本きほんてき生活せいかつじょう必要ひつようとは一応いちおうべつかんがえることができる。これに一番いちばんちかいのは医療いりょう必要ひつようだろう。医療いりょうかんする制度せいど基本きほん――それが保険ほけん制度せいどであることの評価ひょうかはおこう――が肯定こうていされるとすれば、それと同様どうよう理由りゆうで、所得しょとく保障ほしょう一般いっぱん問題もんだい、あるべき所得しょとくさい分配ぶんぱいりつ問題もんだいとはべつに、ここではまず必要ひつようおうじたさい分配ぶんぱい個々ここになされておかしくはないとかんがえる。生活せいかつ保護ほごわくないにあるといった状態じょうたい基本きほんてきにはこのましくない。
 こっ地方ちほうかというてん財源ざいげんてきにみて地方自治体ちほうじちたいだけがこれをになうのはまった現実げんじつてきである。また要求ようきゅうする当事とうじしゃちから格差かくさおおきい。地域ちいき独自どくじせい尊重そんちょううたわれ、それはそれで結構けっこうなことだが、わたしたちがみてきた現実げんじつは、極端きょくたん地域ちいきあいだ格差かくさである。現状げんじょうでこれが容易ようい解消かいしょうされるとはおもえない。全国ぜんこくてき制度せいどすくなくとも国家こっか財源ざいげんもちいた地方自治体ちほうじちたいたいする「ことができる」という規定きていではなく義務ぎむ規定きていをもった制度せいどが、介助かいじょ制度せいど中核ちゅうかくとしてまず確立かくりつされることが先決せんけつだとかんがえる。
 財源ざいげん負担ふたんめんはどうか。直接ちょくせつぜい一般いっぱん会計かいけいといった基本きほんてき所得しょとくさい分配ぶんぱい機構きこう一部いちぶとしてそれを位置いちづける方向ほうこう、あるいは保険ほけん制度せいど福祉ふくし目的もくてきぜいといったより独立どくりつせいたかいものとする方向ほうこう。もちろん税率ぜいりつとう所与しょよとおいた場合ばあい、どれを採用さいようするかに影響えいきょうされて全体ぜんたい所得しょとくさい分配ぶんぱいりつわる可能かのうせいがあるが、条件じょうけんえれば、どれを採用さいようしても全体ぜんたいとしてのさい分配ぶんぱいりつおなじにすることはできる。このさい分配ぶんぱいりつ決定けっていできれば、あとは制度せいど実効じっこうせい効率こうりつせい問題もんだいということになる。なおこのてんかんして、だれもが負担ふたんしているという意識いしき重要じゅうようだとときわれるが、たとえば支給しきゅうされた年金ねんきんから保険ほけんりょうぜい負担ふたんするということが負担ふたんしている意識いしきということになるのか。むしろはらひとはらわれるひとがいて当然とうぜん、ということの確認かくにんほう重要じゅうようだとわたしたちおもう。
 つぎ個々ここのサービスにたいするいわゆる利用りようしゃ負担ふたんをどうかんがえるか。これを肯定こうていする論点ろんてん一般いっぱんてきには以下いかのよう[p279]になろう。@てるものすべきだという発想はっそう。A利用りようするもの利用りようしないもの格差かくさ問題もんだい家族かぞく負担ふたんしている場合ばあいもあるのに、ただで公的こうてき援助えんじょけるひともいるのは不公平ふこうへいだといった見方みかたである。B過度かど利用りよう抑制よくせい。このてんにもかかわり、C負担ふたんしている意識いしき必要ひつようだという主張しゅちょう。D利用りようしゃ負担ふたんがどうこうというより、政治せいじ関与かんよ否定ひていする、あるいは最低限さいていげんおさえるべきだという発想はっそう以上いじょうすべてに一般いっぱんてきこたえられないが、Dについては、全般ぜんぱんてきろんくしてはいないけれども前章ぜんしょう本章ほんしょうでそうした見解けんかいをとらない、原則げんそくとして公的こうてき負担ふたんとしてあるべきことをべた。そのうえで、@については、基本きほんてきには一般いっぱんてきさい分配ぶんぱい政策せいさくなか解決かいけつするべきこととかんがえる。Aについては前章ぜんしょうちゅう61にもべたが、現実げんじつがどうというより、基本きほんてきにどの方針ほうしんでいくのかということがあきらかにされねばならない。そしてすくなくともここで主題しゅだいとしている人達ひとたち介助かいじょかんしては、家族かぞくによる負担ふたんはなされるべきでなく、本人ほんにん負担ふたん不可能ふかのうだし、なされるべき理由りゆうもない。可能かのうせいとしては、一般いっぱんてき所得しょとく保障ほしょうとして支給しきゅうされたなかから支出ししゅつするということになるが、1)の最後さいごべたようにこれらは本来ほんらい分離ぶんりしてかんがえるべきものだし、また2)でもべたようにCについても意味いみがあるとおもえない、すなわち自分じぶん負担ふたんしているという不要ふよう虚構きょこう維持いじする必要ひつようはないとかんがえる。また、利用りよう負担ふたんということ利用りようしゃ自己じこ決定けっていけんとはべつのことである。すなわち負担ふたんしているから決定けっていけんがある、負担ふたんしてないから決定けっていけんがないとかんがえる必要ひつようはない。そしてうまでもなく、介助かいじょしゃ相応そうおう対価たいか支払しはらうべきだということと利用りようしゃ負担ふたんということもべつのことである(↓ちゅう11)。(以上いじょうは4)のいったん給付きゅうふされた現金げんきん利用りようしゃ直接ちょくせつ介助かいじょしゃわたすという場合ばあいについても妥当だとうする。)Bについては、公的こうてき負担ふたん原則げんそくをふまえ、この問題もんだい別様べつよう解決かいけつされるべきだとかんがえる。7)でべる。
 4)国家こっか自治体じちたい直接ちょくせつ介助かいじょ供給きょうきゅうするのか、それとも現金げんきん給付きゅうふとするのか。前者ぜんしゃ場合ばあいすくなくとも現状げんじょうでは、介助かいじょ内容ないよう、さらにその決定けっていけんかんして、利用りようしゃがわ意向いこう実現じつげんされにくい。だけでなく、行政ぎょうせい機関きかん意向いこう反映はんえいし、生活せいかつ援助えんじょという以上いじょうのことがなされてしまうことにもなりかねない。後者こうしゃについては、個人こじんでは介助かいじょしゃにく[p280]い。前者ぜんしゃ場合ばあいたとえば、利用りようしゃがわ発言はつげんけん決定けっていたいする参与さんよみとめるという方向ほうこうかんがえられる。後者こうしゃ場合ばあいには、利用りようしゃ介助かいじょしゃむすぶ、利用りようしゃがわ要求ようきゅう反映はんえいされた機関きかん設置せっちすることによって解決かいけつがはかられうる。こうした場合ばあい両者りょうしゃ距離きょりは、利用りようしゃ自身じしん主導しゅどうせい確保かくほする方向ほうこうに、ちいさくなる。この介助かいじょ供給きょうきゅう媒介ばいかい機関きかん性質せいしつ問題もんだいは5)でかんがえよう。またこれは現実げんじつ問題もんだいとしては、介助かいじょしゃ位置いちづけ、具体ぐたいてきには報酬ほうしゅう問題もんだい現在げんざい前者ぜんしゃ給与きゅうよほうたかい)でもある。これについては6)でかんがえよう。ここでは、介助かいじょという行為こういが@特定とくてい行為こういであると同時どうじにA価格かかくになそのものは固定こていてきではないというてんと、B貨幣かへい本来ほんらい使用しよう自由じゆうをその特質とくしつとするてん、しかもこの場合ばあい、C給付きゅうふされたものが介助かいじょという行為こういたいして適正てきせい支出ししゅつされねばならないという規範きはん以上いじょうのかねあいをかんがえよう。BによってCにかんして不正ふせい受給じゅきゅうといった問題もんだいにもつながりうるし、@からも現金げんきん給付きゅうふである必要ひつようはないともえそうだが、AとBにかんしてるべきてんのこっている。まず想定そうていされる価格かかく実際じっさい価格かかくとの問題もんだいになる。それは不正ふせい受給じゅきゅうにもつながりうるが、実際じっさいには時間じかんあたりの単価たんかひくくして時間じかんすうおおくするというやむをえぬ手段しゅだんとしてもとられる。こうした苦肉くにくさく必要ひつようがなければ、現金げんきん給付きゅうふである必要ひつようはないともえる。しかし、たとえば、支給しきゅうされるものにみずからが上乗うわのせしてサービスのしつもとめようとするといった場合ばあい想定そうていしうるわけで、これはCの規範きはん抵触ていしょくしない。またかり価格かかくかいしてでなくとも、介助かいじょになを――現実げんじつはともかく、可能かのうせいとしては――選択せんたくできるというてんのこる。これはくに自治体じちたいによる派遣はけん場合ばあい選択せんたく可能かのうせいとの比較ひかくというところにもどることになる。このように考慮こうりょすべきてんおおく、ここではどちらをるという結論けつろんさないが、7)にみる必要ひつようりょう設定せっていがうまくいけば、現金げんきん給与きゅうよ唯一ゆいいつではないにせよ有望ゆうぼうひとつの方法ほうほうだとえよう。
 5)媒介ばいかい機関きかん性質せいしつについて。当事とうじしゃ発言はつげんつねに、実質じっしつてき確保かくほされること、それが個々ここ場面ばめん可能かのうであり、実際じっさい確保かくほされるとともに、当事とうじしゃ無視むししない第三者だいさんしゃのいる場面ばめん解決かいけつはかられることがもとめられている。家庭かてい奉仕ほうしいん制度せいどとう民間みんかん企業きぎょう業務ぎょうむ委託いたくする場合ばあいにも、これは必要ひつよう条件じょうけんひとつであり、実態じったいはそうなっていないこと[p281]も指摘してきした。こん現在げんざい状況じょうきょうでは、当事とうじしゃによる機関きかん設立せつりつ、その運営うんえいたいする公的こうてき資金しきん援助えんじょというかたちが、必要ひつよう条件じょうけんたすだろうとかんがえられる。ただ、さきにもべたように当事とうじしゃ活動かつどうあつみには地域ちいきによる格差かくさがあり、この問題もんだいかんがえる必要ひつようがある。
 6)さきのこした、どういう介助かいじょしゃ必要ひつようか、介助かいじょしゃ社会しゃかいなかでどのような位置いちめたものであるべきかというてん。まず具体ぐたいてきには、生活せいかつあいだいたときにやってくるという介助かいじょしゃ必要ひつようたされるのかということである。その場合ばあいいま状況じょうきょうで、その主体しゅたい既婚きこん職業しょくぎょうをもたない女性じょせいになるが、まず、男性だんせいによる介助かいじょ必要ひつよう場面ばめんがあり、つぎに、とく夜間やかん介助かいじょ必要ひつよう場合ばあい主婦しゅふそうがそれをになうのはむずかしい。とすれば、生活せいかつ介助かいじょによる報酬ほうしゅうによってささえる介助かいじょしゃ必要ひつようあきらかだ。なによりさきだいてんについての検討けんとうから、いわゆる専業せんぎょう主婦しゅふ生活せいかつ時間じかん一部いちぶもっぱらあてる――しかも有償ゆうしょうといういうのは多分たぶん名目めいもくてきでしかない――というかたち支持しじしがたい。では基本きほんてき後者こうしゃ統一とういつすればよいのか。だが、必要ひつようりょう・コストのめんべつかんがえても、広範こうはん参加さんかられる可能かのうせいがあるがゆえに、また、職場しょくばであれ、家庭かていであれ、ひとひとつの固定こていされることをかならずしもれる必要ひつようはないがゆえに、生活せいかつ一部いちぶ介助かいじょてるというかたちをのぞ必要ひつようはないのではないか。
 とすれば結局けっきょく併用へいようということになるのか。ここには両者りょうしゃ調整ちょうせいをどうとるか、という問題もんだいがある。だがそのまえに、併用へいようというよりは、両者りょうしゃ出来できかぎ接近せっきんさせること、連続れんぞくせいをもったものとすることをかんがえるべきではないだろうか。そうむずかしいことをっているのではない。たとえば、一定いってい時間じかんはたらいた場合ばあい生活せいかつできる水準すいじゅん支給しきゅう設定せっていするといったことである。そうしてある場合ばあいには一人ひとりはたらいてたいくつかをあつめ、あるいは家族かぞくという単位たんいない合算がっさんすることによって生活せいかつ可能かのうになるような、そういう方向ほうこうである。これは前章ぜんしょうべたように、領域りょういき境界きょうかいゆるやかにし、可能かのうせいとしてすべてのひとかかわれるような状況じょうきょう目指めざ場合ばあいに、とられる方向ほうこうである。支給しきゅうのない形態けいたい排除はいじょする必要ひつようはないが、それをはじめから計算けいさんにいれるべきではない。わたしたち社会しゃかいは、ながらく、ひとつのところに[p282]一生いっしょういないとそんをする社会しゃかいだった。しかしそれに変化へんかきざしがないわけではない。必要ひつようりょう介助かいじょ労働ろうどう調達ちょうたつ困難こんなんになってきており、そのことは厚生省こうせいしょうにとってもあきらかで、給与きゅうよげざるをなくなっている。現存げんそんする機関きかん設定せっていされている報酬ほうしゅうは、それをちん労働ろうどうとらえれば最低さいてい賃金ちんぎんほう抵触ていしょくし、アルバイト、パートタイム労働ろうどう価格かかく下回したまわっている。これは介助かいじょにまわすおかねがないなかまった仕方しかたのないことではある。しかし、産業さんぎょう社会しゃかいと「地域ちいき社会しゃかい」の保存ほぞんし、そのことによる「地域ちいき」への過剰かじょう負担ふたんと、結果けっかとしての介助かいじょしつりょう低下ていか是認ぜにんすべきではないとかんがえる。その報酬ほうしゅう市場いちば価格かかくよりひくいところに固定こていするのではなく、むしろ目標もくひょうとしては、くに自治体じちたいからの支出ししゅつ市場いちばでの非常勤ひじょうきん賃金ちんぎんよりたかいところ、常勤じょうきん労働ろうどうしゃ賃金ちんぎん相当そうとうするように設定せっていすること、いまべた意味いみでの「労働ろうどう」とすること、政治せいじ領域りょういきからの支出ししゅつかいして「地域ちいき」と地域ちいきでない労働ろうどうとの格差かくさ縮小しゅくしょうしていくことがられるべき方向ほうこうではないか。もちろん、つね現実げんじつから出発しゅっぱつせざるをないのだから、それまでっているというわけにはいかない。はじめられる地点ちてんからはじめることには意味いみがある。しかし、介助かいじょ供給きょうきゅう媒介ばいかいする団体だんたい機関きかんそのものが主体しゅたいになる必要ひつようかならずしもないにせよ、同時どうじ支給しきゅう増額ぞうがく要求ようきゅうがなされてよいとおもう。★59
 7)個々ここ障害しょうがい度合どあいによって必要ひつようりょうことなる介助かいじょ場合ばあい必要ひつようおうじてその供給きょうきゅう供給きょうきゅうようするもののりょうわってくるはずだが、それをどのように制度せいどなかにとりいれていくか、必要ひつようりょうをどう算定さんていするか。最大限さいだいげんよんあいだ介助かいじょ保障ほしょう要求ようきゅうするがわたいして、介助かいじょ極小きょくしょうしようとするかんがえ、意外いがい介助かいじょりょうすくなくてすむはずだといった個々人ここじん現実げんじつそくした感覚かんかく政策せいさくとして現実げんじつする場合ばあい戦術せんじゅつたいする判断はんだん、がからみ、当事とうじしゃからも、過度かど要求ようきゅうがなされているのではないかといった疑問ぎもんていされ、どれほどの介助かいじょというてん運動うんどう一致いっちしたものとなっていない。だが、前者ぜんしゃ主張しゅちょう基本きほんは、介助かいじょ必要ひつよう時間じかんによる地域ちいき施設しせつかの選別せんべつたいする批判ひはんであり、これにたいして異論いろんはない。問題もんだい核心かくしんは、必要ひつようなだけ介助かいじょ保障ほしょうされるべきだという理念りねん確認かくにんしたうえで、まず個々ここおうじてどれほどの介助かいじょ必要ひつようかということをどう決定けっていするかである。必要ひつよう最小限さいしょうげん強調きょうちょうするがわもこのてんかんして具体ぐたいてきあん[p283]をしめしてきたわけではない。またここには当然とうぜん行政ぎょうせいたいする不信ふしん、いわれがないとはとてもいえない不信ふしんからんでくる。支出ししゅつめようとするがわ支出ししゅつ決定けっていできるのだとすれば、それをれがたいとかんがえるのは当然とうぜんである。けれどもどうしてもこの問題もんだい解決かいけつされねばならず、討議とうぎされねばならない。たとえば、ボストンCILが、必要ひつよう時間じかん測定そくてい、それにもとづいた介助かいじょりょう支給しきゅう代行だいこうしていることはひとつの参考さんこうになるかもしれない。★60
 公的こうてき保障ほしょう一貫いっかんした制度せいどのもとで確立かくりつしつつ、それに関与かんよする集団しゅうだんみずからの形成けいせいしていく。この基本きほんてき方向ほうこうみとめられている。だがたとえば、長期ちょうきてき目標もくひょうとして介助かいじょ保障ほしょう生活せいかつ保護ほごわくちゅうにとどめることはだれみとめていないが、どういう制度せいどとしてそれを実現じつげんするのか。あらゆるてんがまだ明確めいかくになっていない。研究けんきゅうしゃにおいても議論ぎろん十分じゅうぶんめられておらず、このような事情じじょう行政ぎょうせいがわでもおなじである。これまで、運動うんどうがわはいかなる場合ばあいでも地域ちいきめることを主張しゅちょうし、そのなか最大限さいだいげんすなわちよんあいだ保障ほしょうをする用意よういがあるのかどうかをせまり、行政ぎょうせいは[p284]その場合ばあいに、施設しせつ在宅ざいたくかという選別せんべつす、そうでなければ予算よさんてき問題もんだい制度せいどとの均衡きんこうという制約せいやくから可能かのう範囲はんいしめしてきたにぎない。しかし、地域ちいきでの介助かいじょかんする政策せいさく重要じゅうようせいみとめざるをえなくなっているいま行政ぎょうせいとしても政策せいさく立案りつあん必要ひつようみとめている。
 5のわりに紹介しょうかいした「要求ようきゅうしゃ組合くみあい」は、厚生省こうせいしょう交渉こうしょうつづけている。あたらしい介助かいじょ制度せいどについては、双方そうほう必要ひつようせい確認かくにんするにとどまり、双方そうほう具体ぐたいあんがないゆえ、対立たいりつにもいたっていない段階だんかいなのではあるが。「組合くみあいがわきゅうねんちゅうあん提出ていしゅつしたいとかんがえている。そのさい運動うんどうがわにあったこれまでの確執かくしつえようとすれば、ようやくのことで獲得かくとくしてきた生活せいかつ保護ほご他人たにん介護かいご加算かさん特別とくべつ基準きじゅんを、暫定ざんていてきには維持いじしながら、それにってわるものによって将来しょうらいてきには消滅しょうめつすべきものと提案ていあんする必要ひつようがあるかもしれない。また個別こべつ必要ひつようりょうをどう算定さんていするかにたいする見解けんかい提示ていじする必要ひつようもあろう。そして、もちろんこれはひとつの集団しゅうだんひとつの提起ていきなのであって、年金ねんきん改革かいかくつぎ模索もさくしていく人々ひとびと地域ちいきでの活動かつどうもっぱ専念せんねんしてきた人達ひとたちにとっての課題かだいでもあり、提案ていあん様々さまざまになされるべきなのである★61。かぎられたでの個別こべつてき交渉こうしょうとしてあった、そうでしかありえなかった議論ぎろん議論ぎろんというところにいたっていない議論ぎろんが、制度せいど広範こうはん対象たいしょうのものとするためにも、ひろくなされるとよいとおもう。
 だから、なされるべきことはまだたくさんある。だが、原則げんそくあきらかだ。まず、いかなる障害しょうがい度合どあいでも、本人ほんにん希望きぼうする場所ばしょ生活せいかつできることである。それが可能かのうであることは実証じっしょうされている。そしてかれらが提起ていきしたものを確認かくにんしていくこと。わたしたちはここにそこからみちびされる方向ほうこうをおおまかにしめしてみた。

*01 以上いじょう検討けんとうからべうること、補足ほそくすべきことを簡単かんたんにまとめておこう。
 社会しゃかい福祉ふくしとそうでないものの境界きょうかいときにはっきりしないものにおもわれるのは、行為こうい内容ないようについて社会しゃかい福祉ふくし規定きていされるのか、行為こういあるいはそれにようするざい供給きょうきゅうげんから規定きていされるのかが曖昧あいまいにされることがあるからである。
 かつて政治せいじ領域りょういきにおいてなされる社会しゃかい福祉ふくしばれるものは、経済けいざいてき困窮こんきゅうしゃ主要しゅよう対象たいしょうとし(選別せんべつ主義しゅぎ)、ここには援助えんじょする主体しゅたいがないという現実げんじつ生存せいぞんけんといった基本きほんてき人権じんけんらしての要求ようきゅう所得しょとくさい分配ぶんぱいといった要因よういんがあった。それが今日きょう対象たいしょう経済けいざいてき状態じょうたいわないものとされるべきものとなってきた(普遍ふへん主義しゅぎ)ともわれる。しばしばこの移行いこうろんじられるさいに、「貨幣かへいてきニーズ」から「貨幣かへいてきニーズ」への移行いこうという言葉ことばもちいられる(三浦みうら[85]、ひとし参照さんしょう)が、もちろんそれを字義じぎどおりにとって誤解ごかいすべきではない。必要ひつようざい・サービス自体じたいはいずれの場合ばあい商品しょうひんとして購入こうにゅうすることが可能かのうだからである。かんがえねばならないことは、原理げんりてきにこのよっつの領域りょういきのどれからでも供給きょうきゅう可能かのうざい・サービスが、どこで供給きょうきゅうされるか、とく政治せいじ領域りょういきにおいてなされることをどうかんがえるかである。しばしばサービスの性能せいのう効率こうりつせい先駆せんくせい等々とうとう)が公私こうし分担ぶんたんについての議論ぎろんさいにもちされるが、それが行為こうい主体しゅたい行為こうい内容ないようかかわる議論ぎろんだとすれば、必要ひつようなのはそれだけでなく、最終さいしゅうてき行為こうい行為こうい供給きょうきゅう必要ひつようざいをどの領域りょういき供給きょうきゅうすべきかという問題もんだいである。なお以下いかではげられないが、『そよかぜのようにまちよう』41(90ねん)から連載れんさいの「障害しょうがいしゃ介護かいご保障ほしょうシリーズ」が重要じゅうようであることを付記ふきしておく。
 本論ほんろんでは簡単かんたん家庭かてい本人ほんにん支出ししゅつ場合ばあい除外じょがいしたが、それは、この場合ばあい後者こうしゃについては成人せいじんたいするおや扶養ふようであること、後者こうしゃについては事実じじつじょう不可能ふかのうだからである。ただ介助かいじょ一般いっぱんについても、たとえば医療いりょうかかわる制度せいど同様どうようにはかんがえられるはずである。場合ばあいにはまた別途べっと考察こうさつ必要ひつようである。だいしょうちゅう61・本章ほんしょう14ですこ関連かんれんしたことをべた。
*02 ボランティアという言葉ことばにつきまとう慈善じぜんほどこしのイメージから、介助かいじょしゃもまた介助かいじょされるがわもボランティアという言葉ことば使つかうことはすくない。なお、ボランティアについての文献ぶんけんあつめたものとして、高森たかもり小田おだ岡本おかもとへん[74] (ななさんねんまでの文献ぶんけん一部いちぶさいろく解説かいせつきのそう目録もくろく) 、小笠原おがさわら早瀬はやせへん[86] (ななよんねんからはちよんねんまで)。
*03 国立こくりつなら、ちかくの一橋大学ひとつばしだいがく東京学芸大学とうきょうがくげいだいがくなどの学生がくせいおおきな部分ぶぶんめる。このような傾向けいこう全国ぜんこくてきなようだ。ただすくないが、中学生ちゅうがくせい高校生こうこうせい介助かいじょおこなっているれいもある(小山内おさない[81A]、ひとし)。
*04 例外れいがいてきだが、介助かいじょしゃはちわりほどを労働ろうどうしゃめている場合ばあいがある(当然とうぜん平日へいじつにちちゅう介助かいじょむずかしくなり、有給ゆうきゅう介助かいじょしゃにちちゅう介助かいじょ担当たんとうしている)。場合ばあいは、労働ろうどうしゃめる割合わりあいはせいぜいいちわりである。
*05 特定とくてい多数たすう住所じゅうしょ生活せいかつかして支援しえんけることは、とく女性じょせい場合ばあいとき危険きけんで、そのため、こうした活動かつどうをやめたひともいる。
*06 学生がくせいのサークルもあるが、かずおおくないし、それにたいして利用りようしゃかならずしも肯定こうていてきというわけではない。主導しゅどうけんがしばしば介助かいじょしゃがわうつってしまう可能かのうせいがあるからである。
*07 わたしたちかぎり、この男性だんせいもっと重度じゅうど障害しょうがいちながら、一人ひとり生活せいかつしている。施設しせつでは、トイレのとき以外いがい車椅子くるまいすうごかしてもらえず、放置ほうちされ、しゃべれず、がきかないためタイプの購入こうにゅうをもとめたが、それがみとめられるまでにじゅうねん、また電動でんどう車椅子くるまいす購入こうにゅうみとめられるまでにやはりじゅうねんかかったという。
*08 くにたち・かたつむりのかい[78]。ただ現状げんじょうはやや複雑ふくざつで、高齢こうれいしゃとうかんして、せい分業ぶんぎょう反映はんえいし、男性だんせい場合ばあい、ある部分ぶぶんまでは男性だんせい介助かいじょより女性じょせい介助かいじょたいしてのほう抵抗ていこうがないということがおおく、それが女性じょせいへの極端きょくたんほうよりをおおきな問題もんだいとして顕在けんざいさせていないということのようだ(八王子はちおうじヒューマンケア協会きょうかいでのききとりによる)
*09 だいしょう都市とし集中しゅうちゅうしている要因よういんについてすこべた。そこであげただいよん条件じょうけんかんし、のち紹介しょうかいする神戸こうべライフ・ケアー協会きょうかいでは、介助かいじょしゃ意図いとしてあまりちかくにんでいるひとにしないように配慮はいりょしているという(ききとりによる)。
*10 「感謝かんしゃ気持きもちをわすれない」は、「自分じぶんでできるかぎりする」とともに、かれらがだいいちおしえられることだ。立派りっぱ障害しょうがいしゃかんする報道ほうどうは、ほとんどいつも「あかるい性格せいかく」を強調きょうちょうする。そしてなによりの問題もんだい意思いし疎通そつう困難こんなんひと場合ばあいである。
*11 無償むしょう介助かいじょされることにたいするがあげられることもある。これを有償ゆうしょう主要しゅよう要因よういんとしているのは、高齢こうれいしゃおも対象たいしょうとする神戸こうべライフ・ケアー協会きょうかい後述こうじゅつ)である。このしょげる人々ひとびと場合ばあい、そもそも社会しゃかいてき保障ほしょう自体じたいかんじていてはかれらの生活せいかつりたないが、特定とくていひと無償むしょう、あるいはすくない謝礼しゃれい介助かいじょおこなうのにかんじることはありうる。
*13 「「重度じゅうど障害しょうがいしゃよんあいだ介助かいじょを、労働ろうどうとして保障ほしょうすべきだ」という運動うんどうも、いまさかんになりつつある。それはたしかに大切たいせつなことだとおもう。…「ハンディ」は、その障害しょうがいしゃ個人こじん家族かぞくだけでおぎなうのではなく、社会しゃかいてきおぎなわれなければならないのだから。だが、わたしはあえて時期じき尚早しょうそうではないか、といいたい。障害しょうがいしゃ健全けんぜんしゃ個人こじんてきな「介助かいじょ媒介ばいかいとした生活せいかつかさなりい」を、まずあちこちでつくすべきだ。そうすることで、くるまイスをしたり、盲人もうじん案内あんないをしたり、言語げんご障害しょうがいひと言葉ことばをじっくりいたり、ということが、だれにでもできるようになるのだろう。そうなったとき社会しゃかいは、かなり障害しょうがいしゃふくんで回転かいてんしているとおもう。そうなるまえに、「介助かいじょ」を「労働ろうどう」として位置いちづけてしまうことは、「介助かいじょ」をごく一部いちぶ専門せんもん仕事しごととしてしまう。そしてだい多数たすう人々ひとびとは、相変あいかわらず「くるまイスなんてたこともない、かたなんてわからない」ということになってしまうだろう。」(つつみ[80:19])
*14 たとえば家族かぞく市場いちば関係かんけいについては、家事かじとしてなされていたことの購入こうにゅうという事象じしょう家事かじ労働ろうどう賃金ちんぎん労働ろうどうとの関係かんけいをどうかんがえるのか、といった問題もんだいとしてあらわれてくる。もちろんこうしたことにかんしては様々さまざま指摘してきがなされてきたのだが、たとえば、男性だんせいだけがもっぱ職業しょくぎょう労働ろうどうたずさわるという状態じょうたいとそうでない状態じょうたい家事かじ労働ろうどう商品しょうひんとして購入こうにゅうされる様々さまざま場合ばあい、これらが経済けいざいてき社会しゃかいてき見地けんちからどのように評価ひょうかされるのか、さらに相続そうぞくといった現象げんしょう存在そんざいしたり、家族かぞく市場いちばとはいささか奇妙きみょう関係かんけいにあるようにおもえ、それはここで問題もんだいにしているようなことの負担ふたん主体しゅたいめぐ議論ぎろんとも関係かんけいするはずだが、その関係かんけいを、現状げんじょう前提ぜんていするというのでなく、原理げんりてきなところからどうとらえるのか。なされていないはずはないのだが、こうした基本きほんてきてんについての論議ろんぎをみることができなかった。社会しゃかいしょ領域りょういきへの行為こうい配分はいぶん問題もんだい全般ぜんぱんてき検討けんとうするためには、こうしたところをはっきりさせながら検討けんとうする必要ひつようがある。だいしょうちゅう61も参照さんしょうのこと。ひとつだけ指摘してきすれば、行為こうい市場いちば場合ばあいには、その価格かかく問題もんだい、それにかかわって行為こうい購入こうにゅうするがわ行為こういにながわ各々おのおのそう、そのあいだ格差かくさ当然とうぜん問題もんだいになる。わたしたちのここでの主題しゅだい限定げんていして、不十分ふじゅうぶんではあるが、のちれる。
*14 「市町村しちょうそんは、社会しゃかい福祉ふくし法人ほうじんその団体だんたいたいして、…日常にちじょう生活せいかついとなむのにいちじるしく支障ししょうのある身体しんたい障害しょうがいしゃ家庭かていに…奉仕ほうしいん派遣はけんして日常にちじょう生活せいかつじょう世話せわおこなわせることを委託いたくすることができる」(身体しんたい障害しょうがいしゃ福祉ふくしほうだいいちじょうさん)。法律ほうりつとしてあるのはこの条文じょうぶんだけのようだ。厚生省こうせいしょうがホームヘルパー制度せいど国庫こっこ補助ほじょおこなうようになったのはろくねんからで、それまでは長野ながのけん大阪おおさか東京とうきょう名古屋なごやなどが、自治体じちたい単独たんどく事業じぎょうとして実施じっししていた。ろくさんねんには老人ろうじん福祉ふくしほう制定せいていされ、老人ろうじん家庭かてい奉仕ほうしいん事業じぎょうをはじめた。実施じっし主体しゅたい市町村しちょうそんだが、派遣はけん世帯せたい決定けってい・サービスの内容ないようについては厚生省こうせいしょう権限けんげんがあった。派遣はけん対象たいしょう心身しんしん障害しょうがいのある高齢こうれいしゃをかかえる家庭かていのうちでもてい所得しょとくそうとなっていた(ななろくねんからは一人暮ひとりぐらしで日常にちじょう生活せいかつ困難こんなん高齢こうれいしゃ対象たいしょうとなる)。
*15 病気びょうきなどで一時いちじてき介助かいじょ必要ひつようになった家庭かてい介助かいじょしゃ派遣はけんする制度せいどで、介護かいごじん選定せんていして登録とうろくしておき、障害しょうがいしゃからもうがあったとき派遣はけんするというものだった。
*16 障害しょうがいしゃたいする奉仕ほうしいん全体ぜんたいよんぶんいちといったところらしい(西田にしだ[88:287])。
*17 はちねん変更へんこう、そこにいた経緯けいいとうについての障害しょうがいしゃ運動うんどうがわ文献ぶんけんとして渡辺わたなべ鋭氣えいき[82]、鈴木すずき[82]、八柳やつやなぎ[86]、ひとしはちきゅうねん変更へんこうに、対象たいしょうとして「その家族かぞく介護かいごおこなえない状況じょうきょう」となっていたものが「本人ほんにんまたはその家族かぞく介護かいご必要ひつようとする場合ばあい」としたてんひとし東京とうきょう全区ぜんく市町村しちょうそん実施じっし)のかく自治体じちたい実施じっし内容ないようについてはかく年度ねんどの『市町村しちょうそんにおける障害しょうがいしゃ福祉ふくし施策しさく概要がいよう』(以下いか市町村しちょうそん』とりゃく参照さんしょう。だがその実態じったいはこれからは推察すいさつしがたい。この制度せいど制度せいど利用りよう実態じったいについては、新宿しんじゅく身障しんしょうあかるいまちづくりのかい[82:32-34][88:114-137]がくわしく、参考さんこうになった。
*18 いままでってきた入浴にゅうよく介助かいじょを、機械きかい風呂ふろ (風呂ふろそなえた自動車じどうしゃ介助かいじょしゃんでかく家庭かていをまわる) の導入どうにゅうともな中止ちゅうしするという通告つうこくがなされたことにたいして、担当たんとうしゃ交渉こうしょうし、撤回てっかいさせたれいがある。
*19 ほり勝洋かつひろ[84]。
*20 かく年度ねんど支給しきゅうがくについては『社会しゃかい福祉ふくし動向どうこう』。支給しきゅうしゃすうはちきゅうねんさんがつ厚生省こうせいしょう社会しゃかいきょく保護ほごわせたさい回答かいとうによる。
*21 この制度せいどが、あくまで例外れいがいてきなものとして、公的こうてき文書ぶんしょ資料しりょうまったあらわれていないことについてはさきにもべた。わせにたいしても、厚生省こうせいしょう社会しゃかいきょく保護ほごは、支給しきゅうしゃ数等すうとうこたえられないということだった。いくつかの機関きかんなどを総合そうごうして月額げつがく推移すいいをまとめると以下いかのようである。なな年度ねんどよんまんはちせんえん以後いご年間ねんかんろくせんえんずつ増額ぞうがくされ、はち年度ねんどななまんはちせんえん以後いごよん年間ねんかんよんせんえんずつの増額ぞうがくはちよん年度ねんどきゅうまんよんせんえんはちはちろくはちななはちはちねんきゅうまんななせんえんいちまんえんいちまんせんえんじゅうまんさん〇〇えん。これがはじまったとき支給しきゅうしゃにんで、以後いごわずかずつえ、はちいちねんななにんはち年代ねんだい中期ちゅうきにんだいっている。以下いか、このふし内容ないようかんして、ききとりのほか運動うんどうがわのメディアとして『ざいさわかいだより』、『つくかいニュース』、『ざいさわかい通信つうしん』、『要求ようきゅうしゃ組合くみあい通信つうしん』『CILSニュース』、『らくわがくだり』(↓本書ほんしょ末尾まつび文献ぶんけんひょう)を参照さんしょう。これらには制度せいど推移すいい現状げんじょう紹介しょうかい交渉こうしょう経過けいか支給しきゅう獲得かくとくするまでの体験たいけん介助かいじょしゃからの発言はつげんとう、が随時ずいじ掲載けいさいされている(たとえば『らくわがくだり』18ごうからの連載れんさい介護かいごりょう運動うんどう」)。に『ぜんさわれん』、『ぜんさわれん大会たいかい報告ほうこくしゅう』、新田にった[82]、[87]、ひとし
*22 はちよんはちろく年度ねんどつきいちかい×さんはちえんいちいちかい×さんはちいちえんいちかい×よんせんえんはちなな年度ねんど他人たにん介護かいごいちよんかい家族かぞく介護かいごいちかい×よんいち〇〇えんはちはち年度ねんどいちよんかいいちかい×よん〇〇えんきゅう年度ねんどかいいちかい×よんよん〇〇えん予定よてい実施じっし内容ないようが「派遣はけん事業じぎょう要綱ようこう」のほか東京とうきょうの『心身しんしん障害しょうがいしゃ福祉ふくし施策しさく概要がいよう』(以下いか概要がいよう』)『市町村しちょうそん』にごく簡単かんたん記載きさいされている。
 なお大阪おおさか一時いちじあいだせんえん対象たいしょうしゃにん年間ねんかん予算よさん〇〇まんえん程度ていどはちきゅう年度ねんど)の制度せいどがあるというが、実態じったい把握はあくしていない。またはちきゅうねんよんがつ発足ほっそく埼玉さいたまけん制度せいどつきじゅうろくかい以内いないいちかい半日はんにちよんあいだ程度ていど)、はちきゅう年度ねんどいちあいだろくななえんきゅう年度ねんどろくきゅうえん)について『要求ようきゅうしゃ組合くみあい通信つうしん』12(90ねん):2-4。札幌さっぽろについてはちゅう55。
*23 「緊急きんきゅう保護ほご事業じぎょう」から「短期たんき保護ほご事業じぎょう」に名称めいしょうわったのははちなな年度ねんど事業じぎょう内容ないようとく変化へんかはない。はちなな年度ねんど予算よさんったようにえる(『からだ不自由ふじゆうひとびとの福祉ふくし』)のは、それまで障害しょうがいふくんだ事業じぎょうだったのをべつにしたことによるものであり、はちはち年度ねんどはほぼ予算よさんばいにして拡充かくじゅうはかっているとのことである(はちきゅうねんさんがつ厚生省こうせいしょう社会しゃかいきょく更生こうせいへのわせによる)。
*24 支給しきゅうがくとうかくとしの『概要がいよう』『市町村しちょうそん』に記載きさいされている。だが制度せいどについてと同様どうよう、これだけでは実態じったいはつかめない。
*25 比較ひかくすること自体じたいにはあまり意味いみはないが、これでも療護りょうご施設しせつとうくらべれば、障害しょうがい程度ていど考慮こうりょれても、一人ひとりあたりに支給しきゅうされるがくひくい。(↓ちゅう60)。
*26 このほか東京とうきょう制度せいどには、「重度じゅうど心身しんしん障害しょうがいしゃ手当てあて」(はちはちねんじゅうがつよんまんえん)、「心身しんしん障害しょうがいしゃ福祉ふくし手当てあて」(どういちいち〇〇えん)があるが、このふたつは介助かいじょ費用ひようとして支給しきゅうされているものではないがつぎのような経緯けいいがある。重度じゅうど手当てあては、介護かいごじん派遣はけん事業じぎょう同様どうよう過程かてい実施じっしされた (ななさんねんいちまんえん、そのうちせんえん収入しゅうにゅう認定にんてい) 。ななよんねんまんえん増額ぞうがくされたさい厚生省こうせいしょういちまんせんえん収入しゅうにゅう認定にんていする(したがって生活せいかつ保護ほご受給じゅきゅうしゃには増額ぞうがく無意味むいみになる)とし、さい検討けんとう要請ようせいした結果けっか保留ほりゅうされ認定にんていがく同額どうがくせんえんさえられるが、ななろくねん保留ほりゅうされ、同年どうねんろく〇〇えんのうちいちろく〇〇えん収入しゅうにゅう認定にんていするとし、はこれにたいして本人ほんにんへの支給しきゅうから代行だいこう受領じゅりょう方式ほうしきとする。これによって厚生省こうせいしょうがわはこれを介護かいごりょうけとめることになる。は、代行だいこう受領じゅりょう方式ほうしきはあくまで形式けいしきてきなもので本人ほんにんなに使用しようしてもよく、代行だいこう受領じゅりょうによって介護かいご加算かさん悪影響あくえいきょうなどのトラブルがこった場合ばあいには責任せきにんをもって対処たいしょするむね表明ひょうめいななななねん以降いこう収入しゅうにゅう認定にんてい反対はんたい厚生省こうせいしょう交渉こうしょうつづけているが進展しんてんはなく、現在げんざい代行だいこう受領じゅりょう方式ほうしきつづけられる。
*27 勤勉きんべんなグループは定期ていきてき介護かいごしゃ会議かいぎおこない、その議事ぎじろくがきちんとのこされていたりもする。内容ないようとき深刻しんこくになり、双方そうほう疲労ひろうする。その疲労ひろうともな会議かいぎてくるそう敬遠けいえんしがちなそうかれてしまうことに主催しゅさいしゃはまたなやんだりもする。
*28 『ざいさわかいニュース』とうかれ自身じしんいた文章ぶんしょうおおっている。
*29 介護かいごじん派遣はけん事業じぎょうかんして交渉こうしょう継続けいぞくしてきたななつの団体だんたい福祉ふくしきょく障害しょうがい福祉ふくしとの交渉こうしょうなか確認かくにんされたものである。はちはちねんにはそれをケ年かねん計画けいかくとする確認かくにんしょをとりかわし、はちきゅう年度ねんどはそのいちねんとしてさんかいぞう実現じつげんされた(きゅう年度ねんど同様どうよう予定よてい)。
*30 きたさん多摩たま練馬ねりま東久留米ひがしくるめざいさわかいなどが中心ちゅうしんとなって結成けっせいされ、きゅうねんはじめに組合くみあいいんいちにんほど。機関きかんとして『要求ようきゅうしゃ組合くみあい通信つうしん』(はちきゅうねん発刊はっかん)がある。また結成けっせいいた経緯けいい活動かつどう開始かいしについて公的こうてき介護かいご保障ほしょう要求ようきゅうしゃ組合くみあい[88]。に、生活せいかつ保護ほご受給じゅきゅうしゃにも自動車じどうしゃ保有ほゆうみとめるべきだとする要求ようきゅうかかげている。もうひと重要じゅうようなのは、前章ぜんしょうちゅう43にみた通達つうたつななねんしゃさんごう撤回てっかい要求ようきゅうである。これにたいして厚生省こうせいしょうは、具体ぐたいてきれいについての通達つうたつであり、また強制きょうせい入所にゅうしょにあたる文書ぶんしょでないので撤回てっかいはしないという見解けんかい維持いじし、また要求ようきゅうのあった文書ぶんしょでの確認かくにんはしなかったものの、生活せいかつ保護ほごほうじょうあきらかなように本人ほんにんはんして施設しせつ入所にゅうしょ強制きょうせいすることはできないこと、またよんあいだ介護かいご必要ひつようであっても施設しせつ入所にゅうしょ在宅ざいたくかは本人ほんにんめることというはちいちねんしめした見解けんかい維持いじしていることは確認かくにんしている。「組合くみあいがわ生活せいかつ保護ほご支給しきゅうとう現場げんばはこの方針ほうしん日常にちじょうてき逸脱いつだつしているという状態じょうたい指摘してきし、撤回てっかい方針ほうしん文書ぶんしょでの確認かくにんもとめた交渉こうしょう現在げんざい継続けいぞくちゅうである。
*31 ちゅう21にしるした機関きかんほか、『ぜんさわれん大会たいかい報告ほうこくしゅう』『どうレポートしゅう』にその活動かつどう報告ほうこくされている。なお前章ぜんしょうにもしるしたように大阪おおさかでも集団しゅうだんてき介助かいじょ体制たいせい一部いちぶられているようだが実状じつじょうることができなかった。
*32 きた新田にった練馬ねりま荒木あらき東久留米ひがしくるめ村田むらた(↓だいななしょうちゅう34)らにより「介護かいごじん派遣はけんセンターをつくかい」がはちよんねん発足ほっそくししている(機関きかんとして『つくかいニュース』)。構想こうそう自体じたいはずっと以前いぜんななろくねんにはすでにあったことを前章ぜんしょう(↓ちゅう46)にしるした。
*33 当初とうしょから非常ひじょう注目ちゅうもくされ文献ぶんけんおおい。深谷ふかや[82]、山本やまもと茂夫しげお[82]、樋口ひぐち[83]、全国ぜんこく社会しゃかい福祉ふくし協議きょうぎかいへん[85]。また武蔵野むさしの福祉ふくし公社こうしゃ[86]。わたしたちはちななねんがつにききとりをおこなった。この時点じてんで、登録とうろく利用りようしゃにんいちはち世帯せたいほどでのまわりの世話せわけているひとはちにんほど。協力きょうりょくいん登録とうろくすういちななにん実際じっさい活動かつどうしているのはななめいほどで、活動かつどう時間じかんつきいちにんあたりさんろくあいだくらい。ほとんどが主婦しゅふ年齢ねんれいそうよんだい中心ちゅうしん公社こうしゃ運営うんえいは、基本きほんサービスりょう年間ねんかんやくせんまんえんからの補助ほじょきんやくせんさんひゃくまんえんによってなされている。また職員しょくいんいちめいちゅうめい市役所しやくしょ職員しょくいんである。対象たいしょうしゃ高齢こうれいしゃおもで、高齢こうれいしゃでない身体しんたい障害しょうがいしゃめい生活せいかつ保護ほご受給じゅきゅうしゃでサービスをけているひとはいない。なおはちきゅうねんよんがつ、このたね団体だんたいとしてははじめて厚生省こうせいしょうから公益こうえき法人ほうじんとして認可にんかされている(『朝日新聞あさひしんぶんはちきゅうねんよんがついちにち)。
*34 土肥どい[87A][87B]、木谷きたに[87]、神戸こうべライフ・ケアー協会きょうかい[87]。また武蔵野むさしの福祉ふくし公社こうしゃふくめて加藤かとう[86]。わたしたちはちななねんはちがつにききとりをおこなった。依頼いらいしゃはちななねんさんがつ時点じてんいちろく世帯せたいいちはちさんにん平均へいきん年齢ねんれいななななさい介助かいじょしゃ登録とうろく総数そうすうなないちめい活動かつどう参加さんかすうさんななななめいはちろくねんさんがつにはいちさんななめい (うち男性だんせいよんめい)が実際じっさい活動かつどう参加さんか平均へいきん年齢ねんれいさんさい平均へいきん活動かつどう時間じかんいち人月にんげつあいだ。スタッフの活動かつどう無償むしょう
*35 新聞しんぶんとう求人きゅうじん広告こうこくせ、面接めんせつして介助かいじょしゃめるといった方法ほうほうをとる(『リハビリテーションギャゼット』7:54-60)。
*36 発足ほっそくするまえ神戸こうべって実状じつじょう調しらべている。なお以下いかは、ききとり(はちろくねんなながつはちななねんいちいちがつはちはちねんがつ)、中西なかにし[88][89]、パンフレット、機関きかん『ヒューマンケア・ニュース』(はちはち年度ねんど報告ほうこくは11ごう)、ひとしによる。はちきゅう年度ねんど事業じぎょう報告ほうこくどう14ごう(90ねん)に掲載けいさいされている。事業じぎょう内容ないよう前年度ぜんねんどとそうわっていない。
*37 全国ぜんこく社会しゃかい福祉ふくし協議きょうぎかい[87]による。ここには多数たすう事例じれい紹介しょうかいがある(こののち社会しゃかい福祉ふくし協議きょうぎかい関係かんけいこころみについては『月刊げっかん福祉ふくし』88ねんがつごう:64-65に紹介しょうかいがある)。個別こべつこころみについて全国ぜんこく社会しゃかい福祉ふくし協議きょうぎかいへん[86]、けんあいだ[87]、、また『月刊げっかん福祉ふくしとうおおくのこころみが報告ほうこくされている。
*38 ボランティアの供給きょうきゅう媒介ばいかい機関きかん現状げんじょうについてもふれておこう。ボランティアのグループは非常ひじょう小規模しょうきぼのものから、かく社会しゃかい福祉ふくし協議きょうぎかいのもとにあるボランティア・センターとう数多かずおおいが、障害しょうがいしゃ自身じしんがその運営うんえい関与かんよすることはすくないし、また、自立じりつ生活せいかつしゃがそれを利用りようすることはおおくない。一人ひとり生活せいかつはじめてねんのあるひとは、そのあいだよんかいのボランティア・センターをつうじて介助かいじょたが、すべて外出がいしゅつ介助かいじょだった。結局けっきょくじんがいないのだという。障害しょうがいしゃがわ運営うんえい主体しゅたいとなって、ボランティアの介助かいじょしゃ媒介ばいかいする組織そしきとしては、「おおさか行動こうどうする障害しょうがいしゃ応援おうえんセンター」がある(文献ぶんけんとして牧口まきぐち[86]、機関きかん『すたこらさん』。はちななねんはちがつにききとりをおこなった)。障害しょうがいしゃななめい応援おうえんしゃさんさんめい声援せいえんしゃ (資金しきんめんでの援助えんじょ) はちめいはちななねんがつ)。おも外出がいしゅつ送迎そうげい介助かいじょつきよんろくけん生活せいかつ介助かいじょけんはちななねんろくがつ)。応援おうえんしゃは、社会しゃかいじんろくわり主婦しゅふさん〇〜よんだいおも)がさんわり学生がくせい高校生こうこうせい)がいちわりくらい。これは休日きゅうじつ外出がいしゅつ介助かいじょおおいことと関係かんけいがある。これとほぼ同様どうようのものとして、「きょうと障害しょうがいしゃ行動こうどうセンター」がある(はちななねんはちがつにききとりをおこなった)。はちねん発足ほっそく総会そうかいとうでの議決ぎけつけんをもつ正会員せいかいいんはA会員かいいん障害しょうがいしゃ)、B会員かいいん障害しょうがいしゃ)からなり (年会ねんかいせんえん登録とうろく) 、その資金しきんめん応援おうえんするじゅん会員かいいん賛助さんじょ会員かいいん) がいる。とし平均へいきんはちけん外出がいしゅつおよ日常にちじょう生活せいかつ介助かいじょおこなっている。施設しせつ入所にゅうしょしゃ介助かいじょがかなりの割合わりあいめているという。ただし、生活せいかつだい部分ぶぶん家族かぞく以外いがいもの介助かいじょによってりたせている在宅ざいたく障害しょうがいしゃ場合ばあい、こういった機関きかん利用りようすることはおおくなく、各々おのおの独自どくじ介助かいじょしゃているということである。
*39 介助かいじょおも非常勤ひじょうきんのヘルパーによる。ただその総数そうすう日本にっぽんくらべて格段かくだんおおい(高橋たかはし[81B])。運営うんえい移管いかんされた時点じてん全国ぜんこくいちよん地域ちいきはち。そのフォーカス住宅じゅうたくひとつのモデルとして、地方自治体ちほうじちたいでサービスハウスとしょうされる障害しょうがいしゃ住宅じゅうたく高齢こうれいしゃ住宅じゅうたくひとし数多かずおお建設けんせつされる。文献ぶんけんとして、高橋たかはし義平よしひら[81B]、NHK取材しゅざいはん[82:23-33]、児島こじま[84:76-84]、河野こうの[84]、
*40 以下いか、ケア住宅じゅうたくかんする文献ぶんけんとして、浅野あさの高橋たかはし貞三ていぞう広岡ひろおかつじ今岡いまおか文章ぶんしょうによる『障害しょうがいしゃ福祉ふくし』7-6(87ねんがつ):6-20 、『われら人間にんげん』43(87ねん):6-19(特集とくしゅう: 重度じゅうど障害しょうがいしゃまいと介助かいじょ)。このほかわたしたちはいくつかのききとりと、はちななねんいちいちがつ神奈川かながわ開催かいさいされた「「ケアづけ住宅じゅうたく研究けんきゅう集会しゅうかい」での討議とうぎ配布はいふされた資料しりょう翌年よくねんされた報告ほうこくしょ(「ケア住宅じゅうたく研究けんきゅう集会しゅうかい実行じっこう委員いいんかいへん[88]・・現在げんざいのところこれがもっと重要じゅうよう資料しりょうである・・)によって情報じょうほうた。なおこの報告ほうこくしょ記載きさいされているケア住宅じゅうたくいち入居にゅうきょしゃ不明ふめいよんしょについては定員ていいん)はいちろくにん程度ていどである。
*41 その記録きろくとして秋山あきやま[81]、『とうきょうあおしば』。
*42 『リハビリテーション研究けんきゅう』36 (81ねん):29-32 に検討けんとう委員いいんかい最終さいしゅう報告ほうこく一部いちぶ掲載けいさいされている。『とうきょうあおしば』のほか今岡いまおか[84][85][87]、磯部いそべ[80][82↓83][84]、寺田てらだ嘉子よしこ[84]、磯部いそべ今岡いまおか寺田てらだ[88]、ひとし。またこのこころみにふれつつ、居住きょじゅう問題もんだい全般ぜんぱんてきろんじたものとして高橋たかはし[81A][86]、ひとし
*43 このかい活動かつどうについては以下いか文献ぶんけんほか機関きかん『いちご通信つうしん』(ななななねん発刊はっかん)を参照さんしょうわたしたちはちななねんいちいちがつはちきゅうねんがつ小山内おさないさんのはなしうかがった。
*44 福祉ふくしむらについて北海道ほっかいどう社会しゃかい福祉ふくしかいへん[85]、今岡いまおか[85B ]。合宿がっしゅく実験じっけんについて、札幌さっぽろいちごかいへん[78]。スウェーデンでの体験たいけんについて小山内おさない[81C ]。
*45 これはだいしゅ公営こうえい住宅じゅうたく特定とくてい目的もくてき住宅じゅうたく)として建設けんせつされたはじめてのケア住宅じゅうたくである。文献ぶんけんとして浅野あさの[87]、鹿野かの[87]、『われら人間にんげん』43(87ねん):6-9、小山内おさない[88A][88B]。
*46 運動うんどうななきゅうねんはじまる。運営うんえいは、公費こうひ補助ほじょがくおも入居にゅうきょしゃ負担ふたんきんによる自主じしゅ財源ざいげんがほぼ同額どうがく (はちろく年度ねんど予算よさんはちきゅうまんえん)。文献ぶんけんとして、障害しょうがいしゃグループホーム試行しこう事業じぎょう委員いいんかい[86]、『われら人間にんげん』43(87ねん):6-9、『communities 』3(88ねん):1-17、室津むろつ[88]。わたしたちはちななねんがつにききとりをおこなっている。
*47 はちねんからの運動うんどうをへて、はちよんねん検討けんとう委員いいんかい発足ほっそくはちねん報告ほうこくしょ提出ていしゅつ予算よさん決定けっていはちろくねん開所かいしょ文献ぶんけんとして脳性のうせいマヒしゃ地域ちいききるかい機関きかんきる』のほかつじ[87]、『われら人間にんげん』43(87ねん):10-11、国吉くによし[88]、白石しらいし[88]。わたしたちはちろくねんはちがつはちはちねんがつにききとりをおこなった。
*48 身体しんたい障害しょうがいしゃ福祉ふくし審議しんぎかいはちねんさんがつ答申とうしんはフォーカス・アパートしょ外国がいこくこころみを列挙れっきょし、これらを参考さんこうにしながら「わがくに社会しゃかい適応てきおうした具体ぐたいてき方法ほうほう実践じっせんにつとめることが必要ひつようであろう」とし、脳性のうせいマヒしゃとう全身ぜんしんせい障害しょうがいしゃ問題もんだい研究けんきゅうかい報告ほうこくはちねんよんがつ)は長期ちょうきてき改善かいぜんすべき方向ほうこうひとつとしてケア住宅じゅうたくをあげている、ひとし
*49 身体しんたい障害しょうがいしゃ福祉ふくしほう一部いちぶ改正かいせいする法律ほうりつはちよんねん法律ほうりつだいろくさんごう) で、身体しんたい障害しょうがいしゃ自立じりつ生活せいかつ促進そくしんするため、あらたに身体しんたい障害しょうがいしゃ更生こうせい援護えんご施設しせつとして身体しんたい障害しょうがいしゃ福祉ふくしホームがくわえられる。その設置せっち運営うんえい要綱ようこうはちねんいちがつ厚生省こうせいしょう社会しゃかい局長きょくちょう通知つうちしゃさらだいごう)は、その定員ていいんめい以上いじょうとしていたが、はちはちねんいちめい以上いじょう変更へんこうされた。
*50 仙台せんだいの「ありのまましゃ」(定員ていいんめい)、愛知あいちけんの「ゆたかホーム」(めい)、熊本くまもとけんの「りんどうそう」(めい)。
*51 きんジストロフィーしょう患者かんじゃ集団しゅうだん「ありのまましゃ」は出版しゅっぱん活動かつどうなど様々さまざま活動かつどうおこなってきた。かれらが居住きょじゅう確保かくほするじょうで、この制度せいど利用りようしたのである。ただし現在げんざい入居にゅうきょしゃ脳性のうせいマヒしゃもっとおおい(ありのまましゃについて機関きかん『ありのまま』の廣岡ひろおか[87]、『われら人間にんげん』43(87ねん):12-13、山田やまだ富也とみや[87][88]、ゆたかホームについて高橋たかはし貞二ていじ[87])
*52 武蔵野むさしの福祉ふくし公社こうしゃでは緊急きんきゅう警報けいほう装置そうちのシステムを採用さいようしている。ペンダント形式けいしき装置そうちのボタンをすと電話でんわ回線かいせんにつながり、ちかくの老人ろうじんホームに受信じゅしんされ、老人ろうじんホームから担当たんとういん電話でんわき、ふん以内いないけつける。
*53 はち王子おうじ場合ばあい開始かいし当初とうしょから、この問題もんだいしょうじる。最初さいしょ入居にゅうきょしたのはこの住宅じゅうたく建設けんせつ運動うんどうすすめてきた人達ひとたちだったが、あらたに入居にゅうきょするひと選考せんこうかんして、によって建設けんせつされたという性格せいかくとのかねあいからも、行政ぎょうせい入居にゅうきょしゃあいだにそごがしょうじたのである(『とうきょうあおしば』)。また札幌さっぽろいちごかい建設けんせつすすめてきたケアづけ住宅じゅうたく入居にゅうきょできた会員かいいんいちめいだけだった。
*54 障害しょうがいしゃ障害しょうがいしゃ集団しゅうだんによってつくられた生活せいかつ体験たいけんおこなとして、木村きむら浩子ひろこの「宿やど」(現在げんざい沖縄おきなわ民宿みんしゅくのような形態けいたいをとって運営うんえいつづけている、木村きむら[83]、)、国立こくりつの「かたつむりのいえ」(↓だいしょうちゅう57)、岡山おかやまの「障害しょうがいしゃ自立じりつ生活せいかつ研修けんしゅうしょ」(藤本ふじもと[88:154-159])、ひとしがある。新宿しんじゅく身障しんしょうあかるいまちづくりのかい運営うんえいかかわる東京とうきょう新宿しんじゅく区立くりつ障害しょうがいしゃ福祉ふくしセンターの「自立じりつ生活せいかつ体験たいけんしつ」(はちねんよんがつ開設かいせつ)(小林こばやし圭子けいこ[86])。日野ひの療護りょうごえんにおいても施設しせつ一部いちぶもちいてのこころみがはじめられた。また、東京とうきょう身体しんたい障害しょうがいしゃ福祉ふくしセンターでの「自立じりつ生活せいかつプログラム」について三ツ木みつぎ赤塚あかつか[81][83]、三ツ木みつぎ[84]、真崎まさき[84]、赤塚あかつか[88]。八王子はちおうじヒューマンケア協会きょうかいでの自立じりつ生活せいかつプログラムについてはだいしょう参照さんしょう。これらの性格せいかく相互そうごにかなりことなったものである。在宅ざいたく生活せいかつ円滑えんかつにするための訓練くんれんというところをあまりていないものもあれば、プログラムというよりは自分じぶん場所ばしょをみつけるまでのなかあいだてき場所ばしょ提供ていきょうすることに目的もくてきがあるところもある。
*55 いくつか補記ほきする。ケアづけ住宅じゅうたく入居にゅうきょできなかった小山内おさないはその格差かくさを「天国てんごく地獄じごく」と表現ひょうげんし、入居にゅうきょした鹿野かのは「天国てんごくなんてない」としるした。@はちろくねん黒柳くろやなぎ徹子てつこコンサートを皮切かわきりに、はちななねんには糸井いといしげるさと作成さくせいのテレホン・カードを販売はんばいはちななねんからさん年間ねんかんそん葉書はがきさんじゅうまんまいあまりあつめる。小山内おさない[88]の印税いんぜい全額ぜんがくこれにあてる。B登録とうろくねん会費かいひせんえん保険ほけんりょうふくむ)、事務じむとしてつきせんえん基本きほん料金りょうきんつき時間じかん以上いじょう利用りよう場合ばあい時間じかんあたりえん上乗うわのせ)。以上いじょう小山内おさない[87]、『いちご通信つうしん』69−80ごう(87−89ねん)、はちきゅうねんがつ小山内おさないさんへのききとりによる。なお相模原さがみはら脳性のうせいマヒしゃ地域ちいききるかいもケア住宅じゅうたく運営うんえい併行へいこうしてケアシステムを構想こうそうちゅう。Cきゅうねんろくがつ札幌さっぽろ前記ぜんき(↓ちゅう22)自治体じちたいつづき、介護かいご手当てあて助成じょせい制度せいど開始かいし決定けってい対象たいしょうさい以上いじょういちきゅうもの介護かいごしゃさん親等しんとう以内いない親族しんぞくのぞく。一時いちじあいだななひゃくえん初年度しょねんど利用りようしゃいちにんさんななはちあいだ見込みこさんさんまんえん予算よさん計上けいじょうかいはんおうふくめ『いちご通信つうしん』84(90ねん):8-9
*56 「性格せいかくにもよるけど障害しょうがいしゃがあんまりかたまるのはよくないね。ちいさな施設しせつっていうかんじがあるから。地域ちいき点在てんざいしていたほうがいいとおもう。」高橋たかはし[81B:143 ][86:214]、野村のむら[87]も同様どうよう危険きけんせい指摘してきしている。(周辺しゅうへん住民じゅうみん参加さんかできる行事ぎょうじおこなう、施設しせつ住民じゅうみんにも利用りようしてもらうといった施設しせつの「社会しゃかい」に限界げんかいがあるはあきらかだ)。スウェーデンでも近年きんねんしゅうじゅうといった形態けいたいはとられなくなっている。
*57 精神せいしん薄弱はくじゃくしゃたいしてとくに、グループホームという形態けいたい注目ちゅうもくされているようだ(おや主体しゅたいとするかい機関きかんとうはしばしばこうしたこころみを特集とくしゅうしている)。また精神せいしん障害しょうがいしゃについてもこのようなこころみがある(池末いけまつ[86]、『うえるふぁ』各号かくごう参照さんしょう)。身体しんたい障害しょうがいだけの場合ばあいとはべつかんがえるべきてんがあろうがここでは検討けんとうすることができない。
*58 @専従せんじゅう介助かいじょしゅうはちあいだ、ホームヘルパー、一時いちじあいだひゃくえんはらっているひといちにん (ほぼよんあいだ介助かいじょ必要ひつよう)。A専従せんじゅう定期ていきてきはいるアルバイトでしゅうろくにちにちちゅうよるろくなな学生がくせいとまりは社会しゃかいじん (ほぼよんあいだ) 。Bボランティアだったひとをヘルパーとみとめさせ、しゅうよんかい一回いっかいさん時間じかんそれ以外いがい学生がくせい主体しゅたいとするさんにんほどのボランティア(ほぼよんあいだ) 。
*59 介助かいじょりょう利用りようしゃ支払しはらうシステムを採用さいようするとして、公的こうてき給付きゅうふ十分じゅうぶんでなければその媒介ばいかい機関きかんは、限定げんていされた対象たいしょうだけのものとなるし、さらに、そこに公的こうてき資金しきん投入とうにゅうされるなら、限定げんていされた対象たいしょうしゃ公的こうてきざい給付きゅうふすることになる。その意味いみで、武蔵野むさしの福祉ふくし公社こうしゃとう公的こうてき援助えんじょけている団体だんたいたいする批判ひはんは、原則げんそくてきただしい。武蔵野むさしの福祉ふくし公社こうしゃでははちろくねんじゅうがつから、生活せいかつ保護ほご基準きじゅんがくの「おおむねいちばい」までのひと給付きゅうふ事業じぎょう全額ぜんがく支給しきゅうするという、トータルケア事業じぎょうはじめた。しかし、給付きゅうふ期間きかん限度げんど原則げんそくとしてろくケ月かげつとされている。
*60 合衆国がっしゅうこくでは在宅ざいたくでの援助えんじょ費用ひようほう施設しせつ場合ばあいよりやすがるという調査ちょうさ報告ほうこくがなされ、それが自立じりつ生活せいかつ運動うんどういきおいづけたとされる(Donald[81=83])。このくにでも現状げんじょうでは、すくなくともいくつかの療護りょうご施設しせつでの一人ひとりあたりの月経げっけい――一般いっぱんてき療護りょうご施設しせつ場合ばあいこくからの支出ししゅつ事務じむ人件じんけん管理かんりさんさんはち〇〇えん事業じぎょう一般いっぱん生活せいかつよんはちななよんえん(『からだ不自由ふじゆうひとびとの福祉ふくし'88』:29))で、東京とうきょうなどの場合ばあいこのすうばいがく自治体じちたいから支出ししゅつされ合計ごうけいすればつきひゃくまんえんえる――はもっともがくおお自治体じちたいでの在宅ざいたくしゃたいする保障ほしょう限度げんどがくをはるかにえている。わたしたちはコストの論理ろんりによって在宅ざいたく施設しせつかという選択せんたくがなされるべきではないとかんがえるが、費用ひようめんでの論議ろんぎてくることは当然とうぜんだろう(わたしたちかぎりでは札幌さっぽろいちごかいがそうした志向しこう個別こべつ試算しさんおこなったことがある)。それにしてもまず介助かいじょ必要ひつよう総量そうりょうがいったいどれほどのものなのか、これについていままで試算しさんもなされたことがないはずである。
*61 国際こくさい障害しょうがいしゃねん日本にっぽん推進すいしん協議きょうぎかい長期ちょうき行動こうどう計画けいかく[81B:39]では、介護かいご費用ひよう年金ねんきん基本きほんがくぶんいち目安めやすとして (そのまえなかあいだ提言ていげん[81A:18]では「上限じょうげんとして」) 支給しきゅうし、他人たにん介護かいご家族かぞく介護かいご区別くべつ撤廃てっぱいすることを目標もくひょうとしているが、ぶんいちという根拠こんきょあきらかでない。その本格ほんかくてき論議ろんぎはなされていないようだ。また、年金ねんきん改革かいかくまえ障害しょうがいしゃ所得しょとく保障ほしょうかんする研究けんきゅうしゃ論議ろんぎとして、ここでは検討けんとう出来できなかったが、高藤たかとう[81A][81B][82]、ほり勝洋かつひろ[81][82][84]、ひとしがある。


REV: 20161031
なま技法ぎほう だいはん  ◇立岩たていわ しん  ◇病者びょうしゃ障害しょうがいしゃ運動うんどう研究けんきゅう 
TOP HOME (http://www.arsvi.com)