形成けいせい中ちゅうの惑星わくせいを取とり巻まく円盤えんばんからガスを初はつ検出けんしゅつ

【2022年ねん8月がつ15日にち アメリカ天文てんもん学会がっかい／アメリカ国立こくりつ電波でんぱ天文台てんもんだい】

恒星こうせいが誕生たんじょうする際さいには塵ちりやガスが円盤えんばん状じょうに集あつまって、恒星こうせいの周囲しゅういを取とり囲かこむ原始げんし惑星わくせい系けい円盤えんばんが形成けいせいされる。この円盤えんばん内ないでは惑星わくせいが誕生たんじょうするが、その惑星わくせいの周まわりにも円盤えんばん、すなわち周しゅう惑星わくせい円盤えんばんがあると考かんがえられる。周しゅう惑星わくせい円盤えんばんは衛星えいせいの元もととなるだけでなく、中心ちゅうしんの惑星わくせいの成長せいちょうをも左右さゆうする存在そんざいだ。だが原始げんし惑星わくせい系けい円盤えんばんに比くらべて小ちいさな周しゅう惑星わくせい円盤えんばんを観測かんそくするのは難むずかしく、確認かくにんできたものはまだ2例れいしかない。どちらもアルマ望遠鏡ぼうえんきょうによる観測かんそくだ。

高たかい分解能ぶんかいのうを誇ほこるアルマ望遠鏡ぼうえんきょうは、原始げんし惑星わくせい系けい円盤えんばんの構造こうぞうをとらえることも得意とくいとしていて、5つの原始げんし惑星わくせい系けい円盤えんばんを詳くわしく調しらべる観測かんそくプロジェクト「アルマ望遠鏡ぼうえんきょうによる惑星わくせい形成けいせいスケールでの分子ぶんし研究けんきゅう（Molecules with ALMA at Planet-forming Scales：MAPS）」が実施じっしされている（参照さんしょう：「アルマ望遠鏡ぼうえんきょうが探さぐる、惑星わくせいの誕生たんじょう現場げんばにおける分子ぶんしの分布ぶんぷ」）。そのターゲットの一ひとつ、へびつかい座ざの方向ほうこう約やく395光年こうねんの距離きょりにある若わかい恒星こうせいAS 209の原始げんし惑星わくせい系けい円盤えんばんに、周しゅう惑星わくせい円盤えんばんが含ふくまれている証拠しょうこが見みつかった。

AS 209を取とり巻まく原始げんし惑星わくせい系けい円盤えんばんの塵ちりが発はっする電波でんぱ（波長はちょう1.25mm）。右みぎ下かの白しろいバーは10天文てんもん単位たんい（約やく15億おくkm、およそ太陽たいよう～土星どせいの距離きょり）を示しめす。周しゅう惑星わくせい円盤えんばんはこの画像がぞうの外側そとがわ、中心ちゅうしんから約やく200天文てんもん単位たんいの位置いちで検出けんしゅつされた（出典しゅってん：Andrews et al. 2018）

研究けんきゅうを行おこなった米べい・フロリダ大学だいがくのJaehan Baeさんたちの研究けんきゅうチームは一酸化いっさんか炭素たんそ（CO）の同位どうい体たい分子ぶんし3種しゅが発はっする電波でんぱをアルマ望遠鏡ぼうえんきょうで調しらべ、塵ちりの放射ほうしゃをとらえた既存きそんの観測かんそくデータとあわせて分析ぶんせきした。

¹²COの観測かんそく結果けっかによれば、AS 209から200天文てんもん単位たんい（約やく300億おくkm）のあたりに幅はば78天文てんもん単位たんい（約やく117億おくkm）の隙間すきまが存在そんざいする。塵ちりの観測かんそくデータからも、同おなじ領域りょういきに隙間すきまがあることがわかっていた。こうした隙間すきまは、円盤えんばんの中なかで形成けいせいされた惑星わくせいが周まわりの物質ぶっしつを取とり込こんだり弾はじき飛とばしたりすることで形成けいせいされると考かんがえられる。隙間すきま付近ふきんではガスの速度そくども局所きょくしょ的てきに変化へんかしていることが発見はっけんされており、惑星わくせいによってガスがかき乱みだされたのだと解釈かいしゃくできる。

（左ひだり）¹²COの放射ほうしゃをとらえた画像がぞうに7重じゅう構造こうぞうの円盤えんばんの隙間すきまを灰色はいいろの破線はせんで示しめしたもの。（右みぎ）左ひだりの画像がぞうの四角よつかど内ないの拡大かくだい図ず。周しゅう惑星わくせい円盤えんばん候補こうほとみられるガス塊かたまりからの放射ほうしゃが破線はせんで示しめされた原始げんし惑星わくせい系けい円盤えんばん内ないの隙間すきまに位置いちしていることがわかる。等高線とうこうせんは¹³COの放射ほうしゃの強つよさを示しめす（提供ていきょう：ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), J. Bae (U. Florida)、以下いか同どう）

また、¹³COの観測かんそくデータでは、中心ちゅうしんから206天文てんもん単位たんい（約やく309億おくkm）の距離きょりに点てん源げんがある。これはまさに¹²COで見みつかった隙間すきまの真まっただ中なかだ。この点てん源げんはガスを含ふくむ周しゅう惑星わくせい円盤えんばんだと考かんがえられる。アルマ望遠鏡ぼうえんきょうの解像度かいぞうどを考慮こうりょすると、直径ちょっけいは21億おくkm（14天文てんもん単位たんい）以下いかとみられる。

¹³COの観測かんそく画像がぞうに見みられる周しゅう惑星わくせい円盤えんばん（CPD）候補こうほの位置いち（赤あかい矢印やじるし）。破線はせんは原始げんし惑星わくせい系けい円盤えんばん内ないの隙間すきまを示しめす

Baeさんたちは観測かんそく結果けっかをもとに、周しゅう惑星わくせい円盤えんばんには地球ちきゅう約やく30個こ分ぶんのガスと月つき約やく2.2個こ分ぶんの塵ちりが含ふくまれていると推定すいていしている。ガスの温度おんどは35K（-238℃）と冷つめたいが、それでも中心ちゅうしん星ぼしからの距離きょりを考慮こうりょした場合ばあいより13度ども暖あたたかい。これは惑星わくせいに降着こうちゃくする物質ぶっしつや円盤えんばん内ないの乱らん流りゅうなどが熱源ねつげんとなっていることを示唆しさする。

AS 209は推定すいてい年齢ねんれいわずか160万まん歳さいであり、今回こんかい見みつかった構造こうぞうの中心ちゅうしんに惑星わくせいが存在そんざいすることが確認かくにんできれば、これまで発見はっけんされた中なかでは最もっとも若わかい系けい外がい惑星わくせいの一ひとつとなるかもしれない。「惑星わくせい形成けいせいを研究けんきゅうする最良さいりょうの方法ほうほうは、惑星わくせいがまさに形成けいせいされている最中さいちゅうに観測かんそくすることです。アルマ望遠鏡ぼうえんきょうやジェームズ・ウェッブ宇宙うちゅう望遠鏡ぼうえんきょうのような強力きょうりょくな望遠鏡ぼうえんきょうのおかげでそれが実現じつげんするという意味いみで、私わたしたちは非常ひじょうにエキサイティングな時代じだいに生いきています」（Baeさん）。