実験じっけん室しつでミニチュア太陽たいようフレアを生成せいせい

【2022年ねん11月22日にち 九州大学きゅうしゅうだいがく】

太陽たいよう表面ひょうめんでの爆発ばくはつ現象げんしょうであるフレアは、プラズマの中なかで起おこる「磁気じきリコネクション」が原因げんいんと考かんがえられている。平行へいこうだが逆ぎゃく方向ほうこうを向むいている2本ほんの磁力じりょく線せんが近ちかづいたときに、2つのループを描えがくように磁力じりょく線せんがつなぎ替かわる現象げんしょうが磁気じきリコネクションだ。このとき磁力じりょく線せんにゴムひものようにかかっていた張力ちょうりょくが解放かいほうされることでプラズマにエネルギーが解放かいほうされ、爆発ばくはつを引ひき起おこす。

太陽たいようにおける磁気じきリコネクションとプラズマ放出ほうしゅつ（太陽たいようフレア）のイラスト（提供ていきょう：NASA’s Conceptual Image Laboratory）

磁気じきリコネクションは地球ちきゅう磁気圏じきけんや地上ちじょうでの核かく融合ゆうごう実験じっけんなど、様々さまざまなプラズマの中なかで普遍ふへん的てきに観測かんそくされる現象げんしょうだが、理論りろん的てきには未み解明かいめいな点てんが多おおい。とくに磁力じりょく線せんがつなぎ替かわる速はやさは定量ていりょう的てきに説明せつめいできておらず、磁場じばからプラズマへどのようにエネルギーが変換へんかん・分配ぶんぱいされるのかはわかっていない。

これまで、太陽たいようフレアの磁気じきリコネクションは主おもに人工じんこう衛星えいせいによる観測かんそくで研究けんきゅうされてきたが、プラズマの大局たいきょく的てきな構造こうぞうをとらえると同時どうじに磁力じりょく線せんがつなぎ替かわるスポットのプラズマを計測けいそくするのは難むずかしく、現象げんしょうの全容ぜんよう解明かいめいには至いたっていない。そこで期待きたいされるのが、実験じっけん室しつで磁気じきリコネクションを再現さいげんし、それを計測けいそくする手法しゅほうだ。

九州大学きゅうしゅうだいがくの森田もりた太ふとし智さとしさんたちの研究けんきゅうチームは、大阪大学おおさかだいがくレーザー科学かがく研究所けんきゅうじょの大型おおがたレーザー実験じっけん装置そうち「激げき光こうXII号ごう」を用もちいてプラズマ中ちゅうでの磁気じきリコネクションを再現さいげんし、それに伴ともなうプラズマのふるまいを計測けいそくすることに成功せいこうした。

激げき光こうXII号ごうレーザーシステム（提供ていきょう：九州大学きゅうしゅうだいがくリリース、以下いか同どう）

実験じっけんでは2本ほんの高こう出力しゅつりょくレーザーを2mm間隔かんかくで平行へいこうに照射しょうしゃし、それぞれを炭素たんそ薄膜うすまくに当あてた。こうすることで高こうエネルギープラズマが発生はっせいするとともに、レーザーの周まわりを回転かいてんするように磁場じばが形成けいせいされる。2つのプラズマの間あいだに注目ちゅうもくすると、互たがいに逆ぎゃく向むきの2つの磁場じばが向むかい合あっている。そのため磁力じりょく線せんがつなぎ替かわる磁気じきリコネクションが起おこり、ミニチュアの太陽たいようフレアのように、プラズマにエネルギーが加くわわる現象げんしょうが再現さいげんされた。

研究けんきゅうチームはさらに、磁気じきリコネクションが起おこっている領域りょういきに低てい出力しゅつりょくのレーザーを照射しょうしゃし、散乱さんらんされた光ひかりを分光ぶんこう計測けいそくすることでプラズマの温度おんど・速度そくど・局所きょくしょ的てきな電流でんりゅうなどを求もとめることにも成功せいこうした。

レーザー照射しょうしゃのイメージイラスト。高こうエネルギープラズマが発生はっせいし、2つのプラズマ間あいだに逆ぎゃく向むき磁場じばが自発じはつ的てきに形成けいせいされる

計測けいそくの結果けっか、2つの磁場じばに挟はさまれた面めんでは、磁場じばと垂直すいちょくな方向ほうこうに電流でんりゅうが流ながれていた。電流でんりゅうは時間じかんとともに減少げんしょうし、磁場じばがつなぎ替かわると同時どうじに消失しょうしつした。このとき、磁場じばに平行へいこうな方向ほうこうで測定そくていされたプラズマ粒子りゅうしの速度そくど分布ぶんぷからは、プラズマが加速かそく・加熱かねつされていることが示唆しさされた。レーザー宇宙うちゅう物理ぶつり実験じっけんにおいてこのような電流でんりゅうのふるまいとプラズマ粒子りゅうしの速度そくど分布ぶんぷが計測けいそくできたのは初はじめてのことだ。

今回こんかいは磁場じばの方向ほうこうに対たいして平行へいこう・垂直すいちょくな2方向ほうこうのプラズマ粒子りゅうしの速度そくど分布ぶんぷが計測けいそくされたが、多方向たほうこうでの計測けいそくが可能かのうなシステムであれば、磁力じりょく線せんを貫つらぬく任意にんいの方向ほうこうのプラズマ計測けいそくが可能かのうになる。研究けんきゅうチームでは今後こんごそのようなシステムを開発かいはつし、磁力じりょく線せんがつなぎ替かわる微小びしょう領域りょういきにおける粒子りゅうし運動うんどうや、プラズマを構成こうせいする電子でんし・イオンにどのようにエネルギーが分配ぶんぱいされるかを詳細しょうさいに調しらべて、磁気じきリコネクションの全容ぜんよう解明かいめいにつなげたいとしている。