第だい4回かい　Active Directoryをインストールする：仮想かそうPCで学まなぶ「体当たいあたり」Windowsシステム管理かんり（1/3 ページ）

連載れんさい目次もくじ

　前回ぜんかいは、Virtual PC 2007やVirtual Server 2005、Hyper-V仮想かそう環境かんきょうなどにおける仮想かそうネットワークの種類しゅるいについて解説かいせつした。今回こんかいは、仮想かそう環境かんきょう上じょうにActive Directoryドメインを構築こうちくする方法ほうほうを解説かいせつする。

テスト用ようActive Directoryドメインを仮想かそう環境かんきょう上じょうに構築こうちくする

　Windows 2000で初はじめてActive Directoryディレクトリ・サービスが導入どうにゅうされてから、今年ことしで10年ねんになる。ユーザーやグループ・アカウントなどを階層かいそう化かして管理かんりしたり、クライアントを集中しゅうちゅう管理かんりしたりできるActive Directoryは、特とくに企業きぎょう向むけWindowsネットワークには必須ひっすの機能きのうである。Exchange ServerやSharePoint Server、グループ・ポリシー機能きのうなど、Active Directoryが必須ひっすの製品せいひんやサービスなども少すくなくないので、Windowsシステム管理かんりのためにはActive Directoryに対たいする理解りかいが欠かかせない。

• 連載れんさい「改訂かいてい 管理かんり者しゃのためのActive Directory入門にゅうもん（Windows Server 2003対応たいおう改訂かいてい版ばん）」
• 連載れんさい「Active Directory管理かんり者しゃのためのDNS入門にゅうもん」
• Active Directory (AD) TechCenter（マイクロソフトTechNetサイト）

　サーバ・ソフトウェアやクライアント管理かんりのテストなどのために、Active Directory環境かんきょうを利用りようして評価ひょうかや実験じっけんなどを行おこないたいことがある。だが現在げんざい運用うんよう中ちゅうのActive Directoryドメイン環境かんきょうを利用りようするわけにはいかないだろう。実じつ環境かんきょうのActive Directoryを使つかってクライアントやサービスなどをテストすると、Active DirectoryのデータベースやDNSなどに変更へんこうが加くわえられ、テスト用ようのエントリが登録とうろくされたり、データベースのスキーマが拡張かくちょうされたりするほか、既存きそんのサービスが利用りようできなくなってテスト用ようサーバに振ふり向むけられたりするなど、さまざまな影響えいきょうが発生はっせいする可能かのう性せいがあるからだ。

　このような場合ばあいは、仮想かそうマシン上じょうに独立どくりつしたネットワークを用意よういして、その上うえでActive Directoryドメインを導入どうにゅうして実験じっけんすればよい。これならば既存きそんのActive Directory環境かんきょうに影響えいきょうを与あたえず、また（管理かんり者しゃによる）制約せいやくなども受うけずに、Active Directoryドメインを利用りようできる。また仮想かそう環境かんきょうならば、自由じゆうに多数たすうのクライアントを追加ついかできるので、さまざまな実験じっけんが可能かのうになる。今回こんかいは、最もっとも基本きほん的てきな構成こうせいのActive Directoryドメインを構築こうちくしてみる。

構築こうちくするActive Directory環境かんきょう

　Active Directoryドメインを構築こうちくする場合ばあい、作成さくせいするドメインやネットワークの構成こうせいなどをあらかじめ慎重しんちょうに立案りつあんしておく必要ひつようがある。特とくに階層かいそう構造こうぞうのドメインを構築こうちくする場合ばあいは、そのインストール順序じゅんじょやDNSドメイン階層かいそうなどをきちんと設計せっけいしておかないと、後あとで追加ついかや変更へんこうなどができなくなるからだ。具体ぐたい的てきな注意ちゅうい点てんや設計せっけいガイドについては以下いかの記事きじを参照さんしょうしていただきたい。

• 第だい5回かい「Active Directoryの導入どうにゅう準備じゅんび」（連載れんさい「管理かんり者しゃのためのActive Directory入門にゅうもん）

　とはいえ、実験じっけん用ようとして仮想かそう環境かんきょう上じょうにActive Directoryドメインを構築こうちくするなら、あまり難むずかしく考かんがえる必要ひつようはない。まずはドメイン・コントローラ（DC）が1台だいしかない、シングル・フォレスト／シングル・ドメインのActive Directory環境かんきょうを構築こうちくしてみよう。これならば仮想かそうマシンが1台だいだけで済すむので、インストールも簡単かんたんだし、環境かんきょうの保存ほぞんや復旧ふっきゅうなどもすぐ行おこなえる。Active Directoryを利用りようするアプリケーションをテストする場合ばあいは、このドメイン・コントローラ上じょうにそのまま直接ちょくせつインストールして利用りようすればよい。復元ふくげんディスク（Virtual PC／Virtual Server）やスナップショット（Hyper-V）の機能きのうを利用りようすれば、1つのインストール・イメージをベースにして、さまざまなActive Directoryサービスのテストができるはずだ。

　シングル・ドメインのActive Directory環境かんきょうを構築こうちくする場合ばあいに決きめなければいけない項目こうもくとしては以下いかのようなものがある。

　以下いか、いくつか重要じゅうような項目こうもくについて補足ほそくしておく。

■閉とじたネットワークか開ひらかれたネットワークか
　テスト用ようActive Directoryドメインを、完全かんぜんに閉とじたネットワーク内ないに構築こうちくするか、それとも外部がいぶ（インターネットなど）へアクセス可能かのうなネットワーク上じょうに構築こうちくするのかは、後々あとあとの運用うんようにもかかわってくる重要じゅうような選択肢せんたくしである。Active DirectoryはDNSと密接みっせつに結むすび付ついているため、間違まちがって現在げんざい運用うんよう中ちゅうのDNSサーバ（例れい：社内しゃないDNSサーバやプロバイダのDNSサーバ）などに接続せつぞくしたりすると、テスト用ようActive DirectoryドメインのためのDNSエントリがそのDNSサーバ上じょうに作成さくせいされる可能かのう性せいがある。実際じっさいにはDNSエントリの作成さくせいの権限けんげんがないためにエラーになるだろうが、Active Directoryの導入どうにゅうが失敗しっぱいするだけでなく、既存きそんのDNSサーバに対たいする不正ふせいなアクセスになってしまう可能かのう性せいもある。

　このような間違まちがいを犯おかさないためには、外部がいぶと完全かんぜんに閉とじたネットワークの上うえに（仮想かそうマシン作成さくせい時じに「内部ないぶネットワーク」を選えらぶ）、Active Directoryドメインを構築こうちくするのがよい。だがこれでは、例たとえばマイクロソフトのサイトで配布はいふされている最新さいしんのセキュリティ・パッチなどを適用てきようすることもできないし、インターネットをアクセスするようなテストも不可能ふかのうである。

　そのため可能かのうならば、インターネット・アクセスが可能かのうなネットワーク上じょうにActive Directoryを構築こうちくするのがよいだろう。ただし間あいだ違ちがって既存きそんのDNSサーバにアクセスしないように、慎重しんちょうに作業さぎょうを行おこなおう（後述こうじゅつの「■DNSサーバは自己じこ参照さんしょうするように設定せっていする」参照さんしょう）。

■ドメイン名めいについて
　Active Directoryのドメイン名めいはDNSのドメイン名めいと同おなじなので、分わかりやすいものを付つければよいのだが、一般いっぱん的てきには例示れいじ用ようの「example.com」や「example.co.jp」、「example.jp」「example.local」などでよいだろう。自分じぶんの会社かいしゃ名めいと同おなじものなど（例たとえば「mycompany.co.jp」）、現実げんじつの社内しゃないDNSドメインと同おなじものは利用りようしない方ほうがよい。DNSによる名前なまえ解決かいけつで面倒めんどうなことになる可能かのう性せいがあるからだ（実験じっけん環境かんきょうと実じつ環境かんきょうのどちらのDNSドメインを利用りようするかで衝突しょうとつや混乱こんらんが生しょうじる可能かのう性せいがある）。

■IPアドレスは固定こていかDHCPによる動的どうてきアドレスか
　仮想かそうコンピュータにIPアドレスを割わり当あてる場合ばあい、一般いっぱん的てきにはDHCPによる自動じどう割わり当あてを利用りようすることが多おおいだろう。インストール直後ちょくごのWindows OSは、デフォルトではDHCPによる自動じどう割わり当あてを利用りようするようになっているので、仮想かそう環境かんきょうでそのまま起動きどうするなら、DHCPを利用りようするのが一いち番手ばんて間あいだがかからないからだ。

　だがActive Directoryサービスを利用りようする場合ばあいは固定こていIPアドレスを利用りようしている方ほうが望のぞましい。Active Directoryドメインにクライアントを追加ついかする場合ばあいにDHCPによる動的どうてきIPアドレスが利用りようされていると、ドメイン・コントローラを指定していするのが難むずかしくなるからだ。正確せいかくに言いうと、クライアントPCのTCP/IPのプロパティにおいて、DNSサーバを指定していする必要ひつようがあるのだが、そのDNSサーバのIPアドレスが動的どうてきに変化へんかすると、まずドメイン・コントローラのIPアドレスを手動しゅどうで調査ちょうさしてから、その値ねをクライアントに設定せっていするという二に度ど手間てまが必要ひつようになる。

　これを避さけるためには、Active Directoryのドメイン・コントローラには固定こていIPアドレスを与あたえておくとよい。DNSの設定せっていを間違まちがえて、Active Directoryへアクセスできなくなるといったトラブルを避さけることができる。

　なお、Active Directoryのドメイン・コントローラ自体じたいは動的どうてきIPアドレスであっても問題もんだいなく動作どうさする。そのため、Active Directoryを導入どうにゅうするけれども、たった1台だいだけで利用りようするなら（クライアントを参加さんかさせるつもりがなければ）、DHCPによる動的どうてきIPアドレスを利用りようしてもよいだろう（DHCPならばほかの仮想かそう環境かんきょうへ移動いどうさせてもそのまま利用りようできる）。

■DNSサーバは自己じこ参照さんしょうするように設定せっていする
　Active Directoryを利用りようする場合ばあい、必かならずDNSサーバも必要ひつようになる。Active Directory用ようの特別とくべつなレコードの登録とうろくやセキュリティ設定せっていが行おこなわれるので、通常つうじょうはWindows Serverに付属ふぞくのDNSサーバを利用りようすればよい。DNSサーバには複数ふくすうのゾーン（DNSのドメイン）が登録とうろくできるので、マルチドメインであっても、DNSサーバはどこかに1台だいだけあればよい。今回こんかいはActive Directoryサービスと同時どうじにインストールされるDNSサーバをそのまま利用りようする。

　そして、このDNSサーバが必かならず利用りようされるように、TCP/IPのプロパティでDNSサーバが自分じぶん自身じしんを指さすように設定せっていしておく。「127.0.0.1」というローカル・ループバック・アドレスでもよいし、割わり当あてられているIPアドレスを調しらべて手動しゅどうで設定せっていしてもよい。なお、このDNSサーバはデフォルトではいわゆる「フルサービス・リゾルバ」になっているので（Master of IP Network「ネームサーバの3つの働はたらきとは」参照さんしょう）、インターネットへのアクセスが許可きょかされていれば、自分じぶん自身じしんでインターネットに対たいする名前なまえ解決かいけつをすべて行おこなうことが可能かのうである。また社内しゃないネットワークなどのDNSと連携れんけいさせたければ（社内しゃないのDNSドメイン名めいの名前なまえ解決かいけつを行おこないたければ）、TIPS「DNSサーバでゾーンごとに異ことなるフォワーダを使つかう」のようにして、フォワーダを設定せっていすればよい。

　以上いじょうのような点てんを考慮こうりょし、今回こんかいは次つぎのようなテスト用ようActive Directoryドメインを構築こうちくすることにする。1台だいの仮想かそうマシンを利用りようし、その上うえにActive DirectoryサービスとDNSサービスの両方りょうほうをインストールして、単独たんどくでActive Directoryドメインのテストができる環境かんきょうとする。これだけでActive Directoryの実験じっけんもできるし、例たとえばExchange Serverのテストがしたければ、この仮想かそうマシン上じょうにそのままインストールするなどすればよいだろう。

構築こうちくするActive Directory環境かんきょう
仮想かそうマシン上じょうにWindows Server 2008をインストールし、Active DirectoryサービスとDNSサービス役割やくわりを追加ついかする。仮想かそうマシンのネットワークは外部がいぶネットワークもしくはNATネットワークなどを利用りようして、外部がいぶ（インターネット）へアクセスできるようにしておく。TCP/IPのDNSサーバのプロパティでは、自分じぶん自身じしんを指さすように設定せっていしておく。

利用りようするWindows OSの選択せんたく

　今回こんかいは、Windows Server 2008 Enterprise Edition x86のSP2が適用てきようされた仮想かそうマシンを用意よういし、その上うえにActive Directoryドメインを構築こうちくしてみる。Windows Server 2008 R2でもよいのだが、これはx64版はんしかないため、Virtual PC 2007 SP1やVirtual Server 2005 R2 SP1、Windows Virtual PC（Windows 7向むけの仮想かそう実行じっこう環境かんきょう）では利用りようできない。そのため、x86版はんが利用りようできる最新さいしんのServer OSとして、Windows Server 2008を利用りようする。このOSにはStandardとEnterpriseの2つのエディションがあるが、機能きのう制限せいげんのあるStandardエディションを利用りようする積極せっきょく的てきな理由りゆうも特とくにないので、（今後こんごの利用りようなども考かんがえて）Enterpriseエディションを利用りようする。Windows Server 2008 R2の場合ばあいでも違ちがいはないので、x64のゲストOSをサポートしているHyper-Vなどのユーザーなら、Windows Server 2008 R2 Enterprise Edition x64を利用りようするとよいだろう。Server OSのバージョンごとにActive Directoryの機能きのうや「機能きのうレベル」などが異ことなるが（TIPS「Active Directoryドメイン／フォレストの機能きのうレベルとは？」、マイクロソフト「Active Directory (AD) TechCenter」などを参照さんしょう）、インストール方法ほうほうはほぼ同おなじである。

　（評価ひょうか版ばんの）OSの入手にゅうしゅやゲストOSのインストール方法ほうほうなどについては、連載れんさい 第だい1回かいの「2．ゲストOSのインストール」を参照さんしょうしていただきたい。なお、低速ていそくなコンピュータやハードウェア仮想かそう支援しえん機能きのうのないCPUを利用りようしている場合ばあいは、Windows Server 2003の方ほうが軽かるくて快適かいてきにインストール／利用りようできるので、（手許てもとにある場合ばあいは）Windows Server 2003を利用りようしてもよいだろう。Windows Server 2003における構築こうちく方法ほうほうについては、TIPS「Active Directoryドメインを構築こうちくする（基本きほん編へん）」も参照さんしょうしていただきたい。