小寺こでら信良のぶよし週刊しゅうかん Electric Zooma!

だい1047かい

Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語

センサー&ディスプレイ大型おおがた。シングルレンズモードがすごい、Insta360 X3

2.9インチディスプレイを搭載とうさいしたInsta360 X3

もうディスプレイ標準時ひょうじゅんじだいへ?

先週せんしゅうは360カメラのリコー「THRETA X」をげたところだが、今回こんかいおなじく360カメラでげ、アクションカメラやジンバルカメラなど多方面たほうめん製品せいひん展開てんかいするInsta360のしん製品せいひんげる。

「Insta360 X3」は9月8にち発表はっぴょうされたばかりで、形状けいじょう名称めいしょうから2020ねん発売はつばいされた「Insta360 ONE X2」の後継こうけいモデルとかんがえてさそうだ。同日どうじつ発売はつばいで、価格かかくは68,000えん。「ONE」の名称めいしょう合体がったい分離ぶんりできるアクションカムシリーズへゆずり、一体いったいがた360カメラはXシリーズという整理せいりだろう。

ONE XおよびX2には円形えんけい小型こがたディスプレイがいていたが、今回こんかいのX3にはさらに大型おおがたしたディスプレイをそなえている。Insta360 ONE Xは2018ねん発売はつばいで、シリーズとしてはあしかけ4ねんということになるが、方向ほうこうせいとしてはしくもリコー「THRETA X」とたようなところにたどりいたことになる。

もちろんそれだけでなく、センサーも改良かいりょうされ、しんモードも搭載とうさいと、りだくさんの内容ないようとなっている。早速さっそくテストしてみよう。

なお撮影さつえいにはまだファームウェアが最終さいしゅうではなく、画質がしつ操作性そうさせいわるめん製品せいひんばんとは若干じゃっかんちがいがあるかもしれないてんをおことわりしておく。

ボディサイズそのままにだい画面がめん

Insta360 Xシリーズのポイントは、360カメラとして前後ぜんご2つのカメラを搭載とうさいしながら、アクションカメラてき構造こうぞうつところである。レンズがっているので、レンズ保護ほごフィルターは別売べつばいされているが、本体ほんたいのみで水深すいしん10mまでの防水ぼうすい機能きのうそなえている。

X3になってディスプレイが大型おおがたしても、ボディサイズは以前いぜんとそれほどわっていない。リコーTHETA Xと比較ひかくしても、たような構造こうぞうながら小型こがた維持いじできている。

リコーTHETA X(みぎ)と比較ひかく

センサーサイズは、これまで先行せんこう機種きしゅでは非公開ひこうかいだったが、今回こんかいは1/2インチセンサーに大型おおがたしたという。ぜんモデルはそれ以下いかだったということだろう。撮影さつえい解像度かいぞうどは、静止せいしで7,200まん画素がそ動画どうがで5.7Kだが、360全体ぜんたいでこの画素がそすうなので、実際じっさいにはその一部いちぶをトリミングしてすことになる。

センサーサイズは1/2インチに

注目ちゅうもくのディスプレイは2.29インチのタッチしきで、強化きょうかガラスでカバーされている。画面がめん両端りょうたんがゆるくカーブしているが、これはカバーガラスがカーブしているだけで、ディスプレイ自体じたいがカーブしているわけではない。

ディスプレイは強化きょうかガラスでカバーされている

元々もともと小型こがたながら設定せっていようディスプレイはあったシリーズなので、スマートフォンと連携れんけいできない場合ばあいでもモードや設定せってい変更へんこうはできた。今回こんかいさらにプレビューもおおきな画面がめんられるようになり、撮影さつえい撮影さつえい確認かくにんもやりやすくなった。

X3では、レンズの片側かたがわだけ使用しようする「シングルレンズ」モードが強化きょうかされたことで、本体ほんたいボタンも変更へんこうされている。以前いぜん録画ろくがボタンが中央ちゅうおうに1つだけおおきくけられていたが、今回こんかい画面がめん左側ひだりがわちいさく配置はいちされた。右側みぎがわはカメラモード変更へんこうボタンで、360、シングルがいカメラ、シングルないカメラにえできる。

本体ほんたい左側ひだりがわにはUSB-C端子たんし、バッテリー挿入そうにゅうこうがある。記録きろくメディアはmicroSDカードで、バッテリーをはずした内部ないぶにスロットがある。内蔵ないぞうメモリーは搭載とうさいしない。

バッテリー着脱ちゃくだつ口内こうないにSDカードスロットがある
USB-C端子たんしはバッテリー上部じょうぶ

本体ほんたい右側みぎがわには電源でんげんボタンとクイックメニューボタンがある。クイックメニューは、おりの撮影さつえいモードを登録とうろくしておき、一発いっぱつせる機能きのうだ。電源でんげんボタンのうえにあるのは、内蔵ないぞうスピーカーだ。

登録とうろくした撮影さつえいモードを登録とうろくできるクリックメニューボタンを装備そうび

マイクは左右さゆうに1たいあるのにくわえ、正面しょうめんにはレンズ背面はいめんにはボタンのあいだと、合計ごうけい4つそなえている。これらのマイクを使つかってしゅうおん特性とくせいえられる。音声おんせい収録しゅうろくモードには、「方向ほうこうせい強調きょうちょう」、「風切かざきおん低減ていげん」、「ステレオ」の3モードがある。これはあとでテストしてみよう。

製品せいひんには本体ほんたいカバーもどうこりされている。レンズがしているので、充電じゅうでんにはカバーをしておきたいところだが、上手うま具合ぐあいにカバーにあなけられており、ここから充電じゅうでんケーブルをむことができる。こうしたこまかい配所はいしょはかつて日本にっぽん企業きぎょうのお家芸いえげいであったが、中国ちゅうごくメーカーもどんどん気配きくばりがいついてているのをかんじる。

カバーあなから充電じゅうでん可能かのう

完成かんせいされた撮影さつえいモード

ではさっそく撮影さつえいしてみよう。前段ぜんだんでもすこれたところだが、ほんはレンズ片側かたがわだけを使つかう「シングルレンズ」モードをおおきくフィーチャーしたのがポイントである。ただ撮影さつえいモードとしては、360とシングルレンズではできることがちがっている。ここで一覧いちらんでまとめてみた。

360シングルレンズ
写真しゃしん
HDR写真しゃしん×
動画どうが
アクティブHDR(動画どうが)×
タイムラプス×
タイムシフト×
バレットタイム×
ループ録画ろくが
スターラプス×
バースト×
インターバル×
ミーモード×

こうしてみると、HDRが使つかえるのは360のみ、また時間じかん圧縮あっしゅくけい使つかえるのも360のみ、ということになる。ぎゃくにシングルレンズのみしかできないモードは、「ミーモード」のみとなる。

モードえは画面がめんよこスワイプでおこなうが、えに若干じゃっかん時間じかんがかかる。ほとんどは1びょう程度ていどだが、タイムラプスから写真しゃしんといった特定とくていわせでは2~3びょうかかる。また動画どうが録画ろくが開始かいしは、録画ろくがボタンをして実際じっさい撮影さつえい開始かいしされるまで2~3びょうたされる。Vlogてきなレポート撮影さつえいなどでは、録画ろくが開始かいし確認かくにんしないと、しゃべりしのあたまれてないといったことがこるだろう。こうしたレスポンスという意味いみでは、先週せんしゅうのリコーTHETA Xに軍配ぐんばいがる。

まず360撮影さつえいでの標準ひょうじゅん(SDR)とHDRのちがいから確認かくにんしてみる。ほんのHDRは、10bit HDRのほうではなく、写真しゃしんおこなわれているような多重たじゅう露出ろしゅつ画像がぞう合成ごうせいしてられるほうのHDRである。

2つのモードを比較ひかくしてみると、SDRはこうコントラストではあるものの、逆光ぎゃっこう樹木じゅもくはかなりくらく、太陽たいよう付近ふきんしろつぶれの面積めんせきおおきい。一方いっぽうHDRは全体ぜんたいてき発色はっしょくがよく、逆光ぎゃっこう樹木じゅもくもディテールがよくえる。また太陽たいようしろ部分ぶぶんすくなく、くものディテールもよく表現ひょうげんできている。できれば常時じょうじHDRで撮影さつえいしたいところだ。

SDRとHDRのモード比較ひかく

ブレ補正ほせいでは、自転車じてんしゃのハンドルに固定こていしてみた。実際じっさいにはショックアブソーバーもなにもないのでカメラはかなり振動しんどうしているが、補正ほせいにはまったく問題もんだいなく、綺麗きれいにブレをおさえている。一方いっぽう歩行ほこうでの撮影さつえいは、まだ若干じゃっかん歩行ほこうかんのこすものの、カメラの水平すいへい維持いじ機能きのう能力のうりょくたかく、面白おもしろ映像えいぞう撮影さつえいできる。

HDRで撮影さつえいしたサンプル

ひさしぶりにバレットモードもためしてみた。このモードはInsta360のお家芸いえげいのような機能きのうで、かなり初期しょきころからサポートしているが、ひさしぶりにやってみるとやはり面白おもしろい。センサーがこう解像度かいぞうどになったことで、画像がぞうのディテールもがり、よりダイナミックな映像えいぞうられるようになっている。

相変あいかわらずバレットモードはたのしい

音声おんせい収録しゅうろくかんしては、前出ぜんしゅつのようにほんには4方向ほうこうにマイクがあり、あつまりおんモードも3つある。それぞれのちがいをテストしてみた。

マイクの3モードをテスト

今回こんかいはあまりふうがなかったので、風切かざき低減ていげん威力いりょくがあまりかんじられなかったが、かなりこういき特性とくせいちるため、しゃべりの収録しゅうろくにはあまりかないとおもわれる。指向しこうせいまえうしろも関係かんけいないようで、ちがいはわからなかった。

「ステレオ」は文字通もじどお左右さゆうのマイクをかしたしゅうおん可能かのうだ。音声おんせい明瞭めいりょうかんはかなりがることから、通常つうじょうはこのモードで撮影さつえいすればいいのではないだろうか。

方向ほうこうせい強調きょうちょうモードは、カメラの前後ぜんご指向しこうせいたせることで、しゃべりの収録しゅうろく使つかいやすくしたモードである。前後ぜんごのマイクをテストしているが、いたかぎりではまえうしろもおなじようにこえるはずである。ただレベルメーターをかぎりでは、若干じゃっかんうしがわ(ディスプレイがあるがわ)のほうが指向しこうせいたかいようにもおもえる。

いわゆるアクションカメラとわれる文脈ぶんみゃくのカメラは、音声おんせい収録しゅうろくにあまりりょくれてこなかったところがあるが、2ねんぐらいまえからVlogけとして、しゃべりの収録しゅうろく対応たいおうできるよう機能きのう強化きょうかされてきている。ほんもその傾向けいこうにあるということだろう。

機能きのう強化きょうかされたシングルレンズモード

X3では、シングルレンズと背面はいめんディスプレイを使つかって、アクションカメラてき撮影さつえいもできることを訴求そきゅうしている。動画どうが撮影さつえいではHDRが使つかえないのは残念ざんねんだが、そのかわりブレ補正ほせいモードが2種類しゅるい利用りようできる。

デフォルトFOVは、カメラないしゅブレ補正ほせい利用りようする通常つうじょうモードで、最大さいだい4Kでの撮影さつえい可能かのう一方いっぽうFOV Plusは2.7Kにはなるものの、170ひろかく撮影さつえい可能かのうで、ブレ補正ほせい水平すいへい維持いじはスマホアプリもしくはPCようInstta360 Studioでおこなう。ブレおよび水平すいへい情報じょうほうはメタデータとしてろくっておき、あとからソフトウェアで演算えんざんさせるという方法ほうほうろんである。

自転車じてんしゃへのハンドルマウントでテストしてみたところ、デフォルトFOVではブレ補正ほせいはそこそこ効果こうかがあるものの、水平すいへい維持いじはほぼ機能きのうしていないようで、カーブのバンクの様子ようすがよくわかる映像えいぞうになっている。

一方いっぽうFOV Plusでは、後処理あとしょりなに補正ほせいするかが選択せんたくできる。補正ほせいなし、ブレ補正ほせいのみ、ブレ補正ほせい水平すいへい維持いじの3タイプでしてみた。かくひろれるわりには補正ほせい効果こうかたかく、かなり有用ゆうようであることがわかった。

FOV Plusではどのような補正ほせいをするかをあとから選択せんたくできる
シングルレンズモードをテスト

映像えいぞう自体じたいもデフォルトFOVより発色はっしょくくなり、若干じゃっかんHDRっぽいトーンになっている。しも最高さいこう2,720×1,530でせるので、HD解像度かいぞうどとす場合ばあいはトリミングも可能かのうだ。これまでどうせ前面ぜんめんしか使つか予定よていがなくても、しかたなく自分じぶんかおうつんでいたわけだが、シングルレンズモードはそのてんでも心理しんりてき負担ふたんがない。

もう1つ、シングルレンズモードでしか使つかえない、「ミーモード」をテストしてみよう。これはスマホなどでよくあるぼうてき撮影さつえいができるモードだ。普通ふつうりするときに、カメラを自分じぶんほうくよう角度かくどける必要ひつようがあるが、このモードの場合ばあいぼうたいしてまっすぐにほんけるだけで、自動的じどうてきりモードっぽくなる。すなわち、カメラのなな方向ほうこう中心ちゅうしんになるよう、方向ほうこうがセットされるわけだ。

ぼうがカメラの真下ましたになるので、ぼう全体ぜんたいえてしまうというのが面白おもしろい。まるでドローンが併走へいそうしているかのような映像えいぞう撮影さつえいできる。

「ミーモード」で撮影さつえい

タイムラプスもこう解像度かいぞうど

コマりをおこなうタイムラプス機能きのうも、センサーの大型おおがたによりこう解像度かいぞうどしている。ほんのタイムラプスは、静止せいしれんばんではなく動画どうがファイルとしてまとめられる。ただし独自どくじ形式けいしきなので、展開てんかいするにはスマホアプリかPCようInsta360 Studioが必要ひつようとなる。また発売はつばいわせて、Adobe Premiere Proで可能かのうになるプラグインも提供ていきょうされる予定よていだ。

タイムラプスの解像度かいぞうどは、8Kと5.7Kが選択せんたくできる。しで使用しようすることをかんがえれば、8Kで撮影さつえいしておくべきだろう。そうすればかなりせまかくしても、一定いってい解像度かいぞうどられることになる。

今回こんかい夕景ゆうけい撮影さつえいしてみたが、日没にちぼつまでかなりあかるく撮影さつえいできた。最後さいごのフレームまでかなりあかるいが、実際じっさいにはもうれて手元てもともあまりえないぐらいのくらさである。

8Kタイムラプスからした動画どうが

もう1つ、スターラプスも短時間たんじかんだがテストしてみた。短時間たんじかんといっても、実際じっさいには30ふんぐらい撮影さつえいしたのだが、動画どうがにすると1びょうらずである。インターバル時間じかん手動しゅどうでは設定せっていできないようで、あかるさにおうじて露光ろこう時間じかんまり、それにおうじて撮影さつえい間隔かんかくまるようだ。撮影さつえいした現場げんばでは、およそ1ふんで1まい撮影さつえい間隔かんかくとなっている。

時間じかん午後ごご8時半じはんぐらいであたりはくらだが、長時間ちょうじかん露光ろこうのためにこうSNで昼間ひるまのように撮影さつえいできている。中央ちゅうおう太陽たいようのようにえるのは、つきだ。あいにく天候てんこうわるほしえないのが残念ざんねんだったが、やまでキャンプでもしたさいいちばん撮影さつえいすると、かなりいいれるのではないだろうか。

スターラプスで撮影さつえい

総論そうろん

今回こんかい360カメラとして、リコーTHETA XとInsta360 X3を連続れんぞく評価ひょうかしたが、それぞれにねらっているポイントがちがうとかんじた。リコーTHETA Xはモードすうなどやれることがすくないが、動作どうさにもたつきがなく、あまり機器ききやカメラにくわしくない業務ぎょうむユーザーでもまようことなく、安心あんしんして使つかえるようになっている。

一方いっぽうInsta360 X3は、モードえに多少たしょうもたつきがかんじられるものの、幅広はばひろいコンシューマユーザーがたのしめるようにおおくのモードが搭載とうさいされており、アプリがわでも多彩たさい機能きのう提供ていきょうすることで、おおきなコミュニティをつくろうとしているのがわかる。

双方そうほうとも大型おおがたディスプレイを搭載とうさいするにいたったが、やはりカメラだけで設定せっていからプレビューまで完結かんけつしたいというニーズがたかかったものとおもわれる。実際じっさいりょうカメラとも撮影さつえいまではスマホいらずとなっており、これまで撮影さつえいには両手りょうてふさがってしまっていた状況じょうきょうからすると、だいぶ手軽てがる撮影さつえいできるようになっている。

Insta360 X3は360撮影さつえいによるバレットモードや、底部ていぶ消失しょうしつてん上手うま使つかったソリューションを展開てんかいしており、またシングルレンズモードを搭載とうさいすることで、これ1だいでアクションカメラてき撮影さつえいからりまで、オールインワンでこなせるようになっている。

360カメラはVR文脈ぶんみゃくひろ認知にんちされたが、実際じっさいにカメラをひと一部いちぶ好事家こうずかかぎられていた。だがほんはオールマイティに使つかえるので、「スマホ以外いがいにもう1だいってくカメラ」というポジションに上手うますべめるのではないだろうか。

小寺こでら 信良のぶよし

テレビ番組ばんぐみ、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10すうねんのキャリアをち、「むずかしいはなし簡単かんたんに、簡単かんたんはなしむずかしく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広はばひろ執筆しっぴつおこなう。メールマガジン「小寺こでら西田にしだのマンデーランチビュッフェ」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評こうひょう配信はいしんちゅう