小寺こでら信良のぶよし週刊しゅうかん Electric Zooma!

だい1066かい

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しんMacBook Pro 16インチは、いろいろ想像そうぞうえていた

発表はっぴょうすぐに購入こうにゅうしたしんMacBook Pro 16インチスペースグレイモデル

酷評こくひょうもあるしんMacBook Pro 16インチを購入こうにゅう

現地げんち時間じかんの1がつ17にち発表はっぴょうされたApple 2023ねん最初さいしょしん製品せいひん、MacBook ProとMac Miniの一般いっぱん発売はつばいが2がつ3にちよりスタートした。Apple Storeからの出荷しゅっかは2がつ2にちで、やく注文ちゅうもんしたひとには3にちから4にちには到着とうちゃくはじめているはずだ。

かく筆者ひっしゃ日本にっぽん発表はっぴょうされた18にちに、16インチのMacBook Proを発注はっちゅうし、4にちった。M2 Pro搭載とうさいの12コアCPU/19コアGPU/16GBユニファイドメモリ/512GB SSDストレージ、いわゆる“るし”の一番いちばんやすいモデルである。

今回こんかいのMacBook Proは、ぜんモデルからデザインもディスプレイもわらず、ちがいはほぼCPUだけ、そのわりには価格かかくがアップということで、パワーアップして価格かかくがったMac Miniと比較ひかくすると、一部いちぶでは酷評こくひょうこえてくるモデルである。せっかくうならM2 Maxだろうとか、メモリー16GBではもうすくないだろうといった批判ひはんもあるだろうが、利用りよう目的もくてきからすればこれで十分じゅうぶん判断はんだんした。

今回こんかいはこのMacBook Proの使つか勝手がってを、AVてき視点してんからテストしてみたい。

M1 MacBook Airで全然ぜんぜんOKなのだが……

筆者ひっしゃは2020ねん11月に、発売はつばいされてすぐM1 MacBook Airを購入こうにゅうしている。Macは発売はつばいから時間じかんっても価格かかくがるわけではないので、うならてすぐにうことにしている。当時とうじ購入こうにゅうしたのは、8コアCPU/8コアGPU/16GBユニファイドメモリ/512GB SSDストレージだった。

これまで、このマシンをメインに執筆しっぴつや4K動画どうが編集へんしゅうおこなっているが、パワー不足ふそくかんじたことはない。くわえてストレージも十分じゅうぶん、メモリーもりなくてくるしいというかんじもないことから、コスパてきには最強さいきょう、あと2ねんぐらいはこれでけるとかんじていた。

ただ問題もんだいもあった。このコロナの影響えいきょうや、地元じもと宮崎みやざき移住いじゅうしたこともあり、2020ねん以降いこうはワーケーションてき屋外おくがい仕事しごとする機会きかいおおかった。とく宮崎みやざきは2がつ下旬げじゅんから10がつ下旬げじゅんぐらいまではそと仕事しごとできる気温きおんなのだが、いかんせんMacBook Air搭載とうさいRetinaディスプレイは輝度きどが400nitsしかない。

いちはいあかるくしても、屋外おくがいだと周囲しゅういあかるさにけて画面がめんがよくえないのである。またサイズも13インチしかないことで、普段ふだん40インチディスプレイで仕事しごとしている環境かんきょうからすると、まるで視界しかい双眼鏡そうがんきょうでものぞいてるかのようなせまさである。

よってワーケーションになると作業さぎょう効率こうりつがかなりがってしまうのが難点なんてんだった。だがMacBook Proの16インチ Liquid Retina XDRディスプレイなら、SDR輝度きどで500nits、HDR輝度きどで1,000nitsある。これなら宮崎みやざき日差ひざしのなかでもたたかえるだろうという判断はんだんである。

それなら、なぜ2021ねんにM1 Pro搭載とうさいMacBook Proをわなかったのかとわれるとかえ言葉ことばもないが、M1からM1 Proへえるより、M2世代せだいのパフォーマンスを見極みきわめたかったのである。そんなタイミングでちょうど発売はつばいされたので、購入こうにゅうした次第しだいだ。

Liquid Retina XDRディスプレイのメリットはほかにもある。バックライトにMini LEDを採用さいようしているため、画面がめんない一部分いちぶぶんだけHDR表示ひょうじができる。つまりHDR動画どうが編集へんしゅうに、動画どうがのプレビュー画面がめんだけHDR表示ひょうじにして、かた確認かくにんできるのである。16インチMacBook Proでこれができることは、以前いぜんiPhone 13で「シネマティックモード」が搭載とうさいされたさいレビュー確認かくにんしている。

当時とうじはまだ対応たいおうアプリがiMovieとFinal Cut Proしかなかったが、昨年さくねん4がつにリリースされたDaVinci Resolve 18でもLiquid Retina XDRディスプレイの部分ぶぶんHDR駆動くどう対応たいおうした。これまでHDRコンテンツの制作せいさくでは、レンダリングしてはテレビにして確認かくにんするなど苦労くろうしてきたが、これでだいぶはかどりそうだ。

DaVinci Resolve 18でもAppleのHDRディスプレイに対応たいおう

意外いがいちがわない?

2021ねん発売はつばいモデルとは中身なかみしかちがわないので、っているひとにはっている情報じょうほうかもしれないが、M1 MacBook Airと比較ひかくしても、あまりちがわないてんおおい。たとえばThunderbolt 4/USB-TypeCポートは、Airは2つだったがProは3つ。IntelばんMacBook Proではポートが4つだったのに、ともおもうが、端子たんしの1つが電源でんげん専用せんようとしてMagSafe 3になったということだろう。

Thunderbolt 4/USB-TypeCポートは左側ひだりがわに2つ。そのおくがMac Safe 3

右側みぎがわにはフルサイズのHDMIとSDカードスロットもそなえる。HDMIは、外部がいぶディスプレイへ8K/60Hzへるつ、4K/240Hzへるつ出力しゅつりょく可能かのうだ。

右側みぎがわにThunderbolt 4/USB-TypeCポートは1つ。フルサイズのHDMIとSDカードスロットもある

USB-C出力しゅつりょく付属ふぞくACアダプタは140Wもあるため、かなり大型おおがただ。ただ消費しょうひ電力でんりょくとして常時じょうじ140Wをうわけではなく、急速きゅうそく充電じゅうでんのためにこうワットすうになっている。USB-C端子たんしからのPD入力にゅうりょくでも充電じゅうでんできることから、常時じょうじでっかいACアダプタをあるかないとどうにもならないということではなさそうだ。

ACアダプタはかなり大型おおがた

ベンチマークとうはすでに色々いろいろているところだが、M1 MacBook Airの内蔵ないぞうストレージと比較ひかくすると、ライトはだいぶはやくなっている。一方いっぽうでリードはそれほどわっていない。

M1 MacBook Airの内蔵ないぞうSSDスピード
M2 Pro MacBook Pro 16の内蔵ないぞうSSDスピード

一方いっぽうで、USB-C接続せつぞくそとけストレージの速度そくどおそいというてんは、すでにM1登場とうじょうからずっと指摘してきしているところだ。新型しんがたMacがおりできるタイミングでは毎回まいかいそとけドライブの速度そくど計測けいそくしているが、速度そくどてきにはあまりわっていない。今回こんかい3ポート全部ぜんぶ速度そくどはかってみたが、はなかった。テストに使用しようしたのは、USB 3.1 Gen 2 対応たいおうのSandisk「Extreme900 960GB」で、スペックシートじょうはリード・ライトどもに850MB/sである。

M1 MacBook Airに接続せつぞく
M2 Pro MacBook Pro 16 に接続せつぞく

IntelばんMacにつなげばこれの2ばいぐらいのパフォーマンスがるので、その半分はんぶんぐらいしかスピードがないというのは、いまのところMけいプロセッサの弱点じゃくてんである。ノートがたではそとけSSDを沢山たくさんぶらげなければならない仕事しごとはあまりかんがえられないが、Mac Miniなどのデスクトップがたでは致命傷ちめいしょうになり仕様しようである。

一方いっぽうプロセッサスピードはBlackMagic RAW Speed Testによれば、もとのM1にくらべればCPUで2ばい、GPUで3ばいちょう能力のうりょくがある。

M1 MacBook Airのプロセッサスピード
M2 Pro MacBook Pro 16のプロセッサスピード

これはBlackMagic RAWでのパフォーマンスなので、ProResやH.264/265であれば、M1でも4K/60pの編集へんしゅうには支障ししょうはない。

ためしにソニー「ZV-E10」でXAVC S 4K収録しゅうろくした素材そざいを13ふんはんほどに編集へんしゅうしたコンテンツをレンダリングしてみたところ、M1 MacBook Airでは3ふん11びょうかかったが、M2 Pro MacBook Pro 16では2ふん5びょう終了しゅうりょうしている。

ストレージの速度そくど一緒いっしょなのもあり、レンダリング時間じかんだければ1.5ばい程度ていどしかちがわないが、プロセッサの負荷ふかひくいので、レンダリングちゅうにも平行へいこうしてべつ作業さぎょうできる余裕よゆうがある。

表示ひょうじまわりのパフォーマンスと、OSのこまかなちが

こうダイナミックレンジ・だかしょくいき規格きかくとしては、ITU-R BT.2100がよくられるところだが、これは映像えいぞうデータを規定きていしたものである。ただそれが表示ひょうじできるかどうかはまたべつ問題もんだいで、BT.2100にたいしてカバーりつなに%といった格好かっこうで、ディスプレイの規格きかくめられている。

ディスプレイのこういろいき規格きかくとしては、米国べいこく映画えいが制作せいさく団体だんたいであるDCIがさだめた「DCI-P3」がある。ただこれは映画えいがかんのようにくらにしてスクリーンに投影とうえいした反射はんしゃこうをモデルにしており、環境かんきょうこうがあるなかでバックライトや発光はっこうするディスプレイではまたべつ規格きかく必要ひつようになる。

これにいどんだのがAppleが提唱ていしょうするDisplay P3だ。いろいきはDCI-P3とおなじだが、ガンマをコンピュータの伝統でんとうてきである2.2となっている。ちなみにDCI-P3は2.6だ。

HDRコンテンツをフルフレームで表示ひょうじさせると、RetinaディスプレイとLiquid Retina XDRディスプレイのがはっきりわかる。M1のRetinaディスプレイはHDR表示ひょうじができないため輝度きどひくいのは当然とうぜんだが、いろいきかんしてはなるべくつよそうという方向ほうこうせいかんじられる。

ひだりがMacBook AirのRetinaディスプレイ、みぎがLiquid Retina XDRディスプレイ

OSの表示ひょうじやSDコンテンツ表示ひょうじ場合ばあいはSDR表示ひょうじになるので、このときはsRGBになるのかなとおもっていた。だが実際じっさいにはSDRでも、いろいきはどちらもDisplay P3でるようだ。OS画面がめんくらべてみると、最大さいだい輝度きどちがうものの、発色はっしょくはかなりている。

ひだりがMacBook AirのRetinaディスプレイ、みぎがLiquid Retina XDRディスプレイ

Liquid Retina XDRディスプレイ搭載とうさいのMacのグラフィックスチップは、Retinaディスプレイ搭載とうさいモデルよりもうえ性能せいのうつわけだが、その影響えいきょうはHDMI出力しゅつりょくにもる。両方りょうほうのマシンのUSB-C端子たんしにHDMI出力しゅつりょく可能かのうなUSBハブをつないでテレビ出力しゅつりょくすると、あきらかにMacBook Proのほうが色味いろみつよる。

MacBook AirのHDMI出力しゅつりょく
MacBook ProのHDMI出力しゅつりょく

いろいきはどちらもsRGBだが、たんに「個性こせい」ではれない影響えいきょうがある。写真しゃしんいろ校正こうせいやカラーグレーディングを外部がいぶモニターを使つかっておこなうには、マシンごとに自分じぶん納得なっとく出来できるキャリブレーションをおこなう必要ひつようがありそうだ。

HDRコンテンツの編集へんしゅう作業さぎょうについては、Liquid Retina XDRディスプレイじょうでDaVinci Resolve 18でもプレビュー画面がめんのHDR表示ひょうじができるのを確認かくにんした。「環境かんきょう設定せってい」の「一般いっぱん」にあるチェックボックス、「可能かのう場合ばあいはビューアに10bitイメージを表示ひょうじ」と「Macディスプレイカラープロファイルをビューアに使用しよう」にチェックをける。あとは素材そざいたいしてHDRようLUTを適用てきようすると、プレビュー画面がめんじょうがHDR表示ひょうじとなる。

プレビュー画面がめんのみHDR表示ひょうじにできる

OSまわりで実務じつむじょうこまったことが1つだけある。筆者ひっしゃはクラウドストレージにDropboxを使つかっているのだが、MacOS 13以降いこうではDropboxフォルダの位置いち変更へんこうできなくなり、”~/Library/CloudStorage” 以下いか固定こていされた。それ以前いぜんはユーザーのホームディレクトリ直下ちょっかがデフォルト位置いちであり、まえOS時代じだいから使つかっているM1 MacBook Airでは、MacOS13にアップグレードしてもDropboxフォルダはいま以前いぜん位置いちにある。MacOS 13ネイティブのマシンからこの仕様しようになるようだ。

Dropboxフォルダが”~/Library/CloudStorage” 以下いかからうごかせないことで、筆者ひっしゃ写真しゃしん整理せいりよう使つかっている「PhotoScape X」がDropboxフォルダを参照さんしょうできなくなった。このソフトではセキュリティの関係かんけいから、ホームフォルダ直下ちょっかのフォルダ以外いがいを「フォルダーを追加ついか」できない仕様しようとなっている。

「PhotoScape X」ではユーザーホーム直下ちょっか以外いがい場所ばしょ直接ちょくせつ参照さんしょうできない

シンボリックリンクをつくっても参照さんしょうできるようにはならず、いまのところ”んで”いる。写真しゃしん編集へんしゅうツールならほかにいくらでもあるだろうとおもわれるかもしれないが、「PhotoScape X」はファイルめいれんばん変換へんかんとかフォーマットの一括いっかつ変換へんかんとかができるので、画像がぞうにゅう稿こう便利べんりだったのである。ほかにもディレクトリを表示ひょうじ参照さんしょうできるソフトではおな影響えいきょうけるかもしれない。

基本きほんてきには「PhotoScape X」のアップデートをつしかないのだろうが、いますぐ解決かいけつできる方法ほうほうがあればTwitterとうおしえていただけるとたすかる。

総論そうろん

首都しゅとけんらして電車でんしゃ移動いどうがメインであれば、2.15kgの16インチをあるくなど普通ふつうやらないところだが、地方ちほうではほぼくるま移動いどうなので、重量じゅうりょうはあまり問題もんだいにならない。このあたりはアメリカ社会しゃかいつうじるものがある。

個人こじんてき今年ことしワーケーションがえる予定よていなのは、昨年さくねんまつに110Wのソーラーパネルとポータブルバッテリーを購入こうにゅうしてどこでも発電はつでんできるようになったからである。バッテリーは最大さいだい300W出力しゅつりょくできるので、140Wのほんアダプタも使用しようできる。仕事しごと使つか電気でんきだいはタダ、というのが理想りそうである。

プロセッサ以外いがいあんまりわってないとわれている2023年版ねんばんMacBook Pro 16だが、Display P3がらみの問題もんだいについては、ぜんモデルで評価ひょうかをおりした程度ていどではがつかなかった。今後こんごはこれを自分じぶんごととしてむことになる。このてんでは、「めしたねえた」ともえる。

今回こんかいはほぼ大型おおがたLiquid Retina XDRディスプレイのためにったようなものなので、今後こんごはこれをかしたコンテンツ制作せいさく態勢たいせい移行いこうしていきたいとおもっている。

小寺こでら 信良のぶよし

テレビ番組ばんぐみ、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10すうねんのキャリアをち、「むずかしいはなし簡単かんたんに、簡単かんたんはなしむずかしく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広はばひろ執筆しっぴつおこなう。メールマガジン「小寺こでら西田にしだのマンデーランチビュッフェ」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評こうひょう配信はいしんちゅう