格子状の同盟関係は「アジア版NATO」ではない|神保 謙 Ken JIMBO
アジアの安全保障を考える上で、従来の二国間の同盟関係が互いに連携を深める構図が進展している。日米...
アジアの安全保障を考える上で、従来の二国間の同盟関係が互いに連携を深める構図が進展している。日米韓・日米比・日米豪のそれぞれの安全保障協力が深まっていると同時に、日米豪印クアッド協力や、米英豪AUKUSといった新たな枠組みも関係性を強化している。こうした延長線上に「アジア版NATO」の形成が試みられている、という解釈を耳にすることがある。 第二次大戦後のアジアの安全保障を基本的に構成したのは米国と同盟国との二国間の同盟・パートナーシップ関係で、これを米国を要とするハブ・スポークス関係と形容されてきた。「欧州における北大西洋条約機構(NATO)のような枠組みが何故アジアにはないのか」という問いは、安全保障論を受講する学生へのレポート課題としては格好の題材である。 この問いへの答えは、国際関係論の学派や歴史解釈によって幅はあれど、おおよそ以下のように形容できる。欧州とアジアでは戦略環境が根本的