アマゾンの一挙一動いっきょいちどうが、あらゆる業界ぎょうかいの構造こうぞうを決定けってい付つけ始はじめた…小売こうり業ぎょう全体ぜんたいが衰退すいたい

アマゾンの倉庫そうこ（「Wikipedia」より／Asacyan）

　2017年ねん4～6月がつ期きの米国べいこく主要しゅよう企業きぎょうの決算けっさん発表はっぴょうがほぼ一巡いちじゅんした。米国べいこく株式かぶしき市場いちばの価格かかく水準すいじゅんやその推移すいいを示しめすS＆P500株価かぶか指数しすうベースでは、前年ぜんねん同期どうき比ひで12％の増益ぞうえきが達成たっせいされた。全体ぜんたいとしては、良好りょうこうな決算けっさんであったことが伺うかがえる。

　今回こんかいの決算けっさんで最もっとも注目ちゅうもくされるのは、百貨店ひゃっかてんなど小売こうり業ぎょうから先行さきゆきへの不安ふあんが示しめされたことだ。なかには、かなり悲観ひかん的てきな見方みかたや、今後こんごの経営けいえいの立たて直なおしが容易よういではないとの認識にんしきを示しめす経営けいえい者しゃもいた。

　この背景はいけいにあるのが、世界せかい最強さいきょうのネットワーク企業きぎょうであるアマゾンの躍進やくしんだ。アマゾンは買収ばいしゅうや事業じぎょう面めんでの提携ていけいなどを通とおして、生活せいかつ必需ひつじゅ品ひんから耐久たいきゅう財ざい、各種かくしゅサービスなど多様たような業種ぎょうしゅが提供ていきょうしてきたビジネスを取とり込こんでいる。その結果けっか、多おおくの消費しょうひ者しゃが既存きそんの小売こうり店てんなどからアマゾンに流ながれ、アマゾンのシェア拡大かくだいと、その他た企業きぎょうのシェア縮小しゅくしょうが進すすんでいるとみられる。

　この流ながれをどう食くい止とめるか、多おおくの企業きぎょうが妙案みょうあんを見みいだせていない。今後こんごも、アマゾンは自社じしゃのプラットフォームに企業きぎょうを取とり込こみ、自社じしゃの事業じぎょう範囲はんいとシェアの拡大かくだいに注力ちゅうりょくするだろう。アマゾン以外いがいのIT企業きぎょうも、同様どうようの取とり組くみを進すすめている。企業きぎょうは競争きょうそうのさらなる激化げきかに直面ちょくめんする可能かのう性せいがある。

アマゾンが狙ねらうさらなる“ネットワーク”の拡大かくだい

　一般いっぱん的てきに、アマゾンのビジネスモデルは生態せいたい系けいに似にているといわれる。それは、ある種しゅの生物せいぶつが徐々じょじょにその活動かつどう範囲はんいを広ひろげていくように、アマゾンが小売こうりやドラッグストア、スポーツ用品ようひん関連かんれん企業きぎょうなどをオンラインのショッピング・プラットフォームに取とり込こんで事業じぎょうの範囲はんいを広ひろげ、自社じしゃの成長せいちょうにつなげることをいう。

　ただ、アマゾンの狙ねらいを“生態せいたい系けい”という概念がいねんだけでとらえることは難むずかしいだろう。同社どうしゃが目指めざしているのは、自みずから市場いちばを生うみ出だし付加ふか価値かちを獲得かくとくし続つづけることだ。昨日きのうとは異ことなるビジネスを行おこない、明日あしたにはまた新あたらしい事業じぎょうに進出しんしゅつするという貪欲どんよくな拡大かくだい志向しこうである。つまり、同社どうしゃは常つねに“イノベーション”を生うみ出だすことを目指めざしているのである。
　
　この目的もくてきのためにアマゾンが重視じゅうししているのが、情報じょうほうシステムとしてのネットワークを広ひろげることだ。アマゾンの生態せいたい系けいの拡大かくだいとは、自社じしゃの情報じょうほうネットワークに多おおくの企業きぎょうや個人こじんを取とり込こむ手段しゅだんの一ひとつなのである。そこで重要じゅうようなことは、買収ばいしゅうや提携ていけいなどのさまざまな手段しゅだんを用もちいてアマゾンの提供ていきょうするサービスの利用りよう者しゃを増ふやすことだ。