希望きぼうの党とう、自民党じみんとうに賛成さんせいし「残業ざんぎょう代だい不払ふばらい容認ようにん＆解雇かいこ容易ようい化か」法案ほうあん成立せいりつの可能かのう性せい

写真しゃしん：Natsuki Sakai/アフロ

　今回こんかいの衆院しゅういん選せんの結果けっかを待またずとも、すでに「憲法けんぽう9 条じょうの改正かいせい」が現実味げんじつみを帯おびている。当初とうしょは安保あんぽ法案ほうあん廃止はいしや憲法けんぽう改正かいせいを争点そうてんに与野党よやとうが激突げきとつするはずだったが、民進党みんしんとうが分裂ぶんれつし、大だい部分ぶぶんの同どう党とう議員ぎいんが希望きぼうの党とうに合流ごうりゅう。その希望きぼうの党とうをはじめ日本にっぽん維新いしんの会かいも憲法けんぽう改正かいせい推進すいしん派はとくれば、国民こくみん投票とうひょうを実施じっしする国会こっかい発議はつぎ（国民こくみんへの提案ていあん）に必要ひつような衆参しゅうさん国会こっかい議員ぎいんの3 分ぶんの2の確保かくほが容易よういになるからだ。

　だが、憲法けんぽう改正かいせいだけではなく、民進党みんしんとう分裂ぶんれつ劇げきによって労働ろうどう規制きせいの緩和かんわが一挙いっきょに進すすむ可能かのう性せいがある。その一ひとつが、時間じかん外がい労働ろうどうの上限じょうげん規制きせいと並ならんで秋あきの臨時りんじ国会こっかいで審議しんぎ予定よていだった労働ろうどう基準きじゅん法ほう改正かいせい案あんの「高度こうどプロフェッショナル制度せいど」（高こうプロ制度せいど）と裁量さいりょう労働ろうどう制せいの拡大かくだいだ。

　この法案ほうあんは民進党みんしんとうなどの野党やとうが「残業ざんぎょう代だいゼロ法案ほうあん」だと批判ひはんし、臨時りんじ国会こっかいでの“与野党よやとう激突げきとつ法案ほうあん”と見みられていた。だが、民進党みんしんとうの分裂ぶんれつによって来年らいねんの通常つうじょう国会こっかいで法案ほうあん成立せいりつの可能かのう性せいが高たかくなった。

　すでに「高こうプロ制度せいど」を盛もり込こんだ法案ほうあんは閣議かくぎ決定けっていされ、2015年ねんに労基法ろうきほう改正かいせい案あんとして国会こっかいに提出ていしゅつされていた。だが、国民こくみんの批判ひはんを恐おそれた与党よとうが審議しんぎ入いりしないまま“塩漬しおづけ”されていた。ところが、昨年来さくねんらいの政府せいふの働はたらき方かた改革かいかく実現じつげん会議かいぎを含ふくめた一連いちれんの会議かいぎでも議論ぎろんされることがなかったにもかかわらず、成立せいりつに向むけた動うごきが突然とつぜん始はじまり、残業ざんぎょう時間じかんの上限じょうげん規制きせいと抱だき合あわせた「働はたらき方かた改革かいかく関連かんれん法案ほうあん」として臨時りんじ国会こっかいで審議しんぎされる予定よていになっていた。

高こうプロ制度せいど

　高こうプロ制度せいどは管理かんり職しょくを除のぞく会社かいしゃ員いんを労働ろうどう時間じかん規制きせいの適用てきよう除外じょがいにするもので、アメリカのホワイトカラー・エグゼンプション（適用てきよう除外じょがい制度せいど）の日本にっぽん版ばんだ。日本にっぽんの労働ろうどう時間じかん規制きせいは「1日にち8時じ間あいだ、週しゅう40時じ間あいだ」以上いじょうの労働ろうどうを原則げんそく禁止きんししている。それでも働はたらかせたい場合ばあいは、時間じかん外がい労働ろうどうは25％以上いじょうの割増わりまし賃金ちんぎん（残業ざんぎょう代だい）を支払しはらうことを義務ぎむづけている。高こうプロ制度せいどは時間じかん外がい、深夜しんや・休日きゅうじつの残業ざんぎょう代だいを一切いっさい支払しはらわなくてもよいとする制度せいどだ。

　対象たいしょう者しゃになるのは「高度こうどの専門せんもん的てき知識ちしき等とうを必要ひつようとし、職務しょくむの範囲はんいが明確めいかくで一定いっていの年収ねんしゅう要件ようけん（少すくなくとも1000万まん円えん以上いじょう）を満みたす労働ろうどう者しゃ」（法案ほうあん要綱ようこう）となっている。年収ねんしゅう要件ようけんは「平均へいきん給与きゅうよ額がくの3倍ばいを相当そうとう程度ていど上回うわまわる」ことが法案ほうあんに書かき込こまれ、具体ぐたい的てき金額きんがくは法律ほうりつより格下かくしたの省令しょうれいで「1075万まん円えん以上いじょう」にする予定よていになっている。

　だが「年収ねんしゅう1075万まん円えん」の人ひとは少すくない。もちろんこれまで制度せいど導入どうにゅうを主張しゅちょうし続つづけてきた経済けいざい界かいはこれに決けっして満足まんぞくしているわけではない。なぜなら、経団連けいだんれんは第だい一いち次じ安倍あべ政権せいけんの検討けんとう時期じきには年収ねんしゅう400万まん円えん以上いじょうの社員しゃいんを対象たいしょうにすべきだと主張しゅちょうしていた。また、経団連けいだんれんの榊原さかきばら定じょう征せい会長かいちょうは法案ほうあん検討けんとうの当時とうじ、「労働ろうどう者しゃの10％程度ていどを対象たいしょうにしてほしい」と記者きしゃ会見かいけんで公言こうげんしていた。法案ほうあんを審議しんぎする厚労省こうろうしょうの審議しんぎ会かいでも、中小ちゅうしょう企業きぎょうの代表だいひょうは「1000万まん円えん以上いじょうでは中小ちゅうしょう企業きぎょうでは活用かつようできない。もっと下さげてほしい」と要望ようぼうしていた経緯けいいもある。