理工りこう系けい人材じんざい争奪そうだつ戦せんを始はじめた金融きんゆう機関きかんは、絶望ぜつぼう的てきなほど彼かれらを無駄遣むだづかいする理由りゆう

「Gettyimages」より

　金融きんゆう機関きかん各社かくしゃが“異い能のう人材じんざい”の獲得かくとくにカジを切きり始はじめているらしい。なかでも熱あつい視線しせんを集あつめているのが理工りこう系けいの人材じんざいだ。

銀行ぎんこうがグーグルと人材じんざいを奪うばい合あう？

　4月がつ13日にち付づけ日本経済新聞にほんけいざいしんぶんによれば、みずほフィナンシャルグループは、今年ことしから本格ほんかく的てきに大学だいがくの理系りけい研究けんきゅう室しつに採用さいよう担当たんとう者しゃを送おくり始はじめたそうだ。同社どうしゃの宇田うだ真しん也執行しっこう役員やくいんは「グーグルと奪うばい合あいになるような人材じんざいを採用さいようしたい」と言いっている。

　他たの金融きんゆう機関きかんもこぞって理工りこう系けい分野ぶんやの人材じんざい獲得かくとくに力ちからを入いれ始はじめている。三井住友銀行みついすみともぎんこうは、理工りこう系けい人材じんざいの受うけ皿ざらとして、高度こうどな数理すうりモデルを用もちいる「クオンツコース」や、デジタル技術でじたるぎじゅつで金融きんゆうサービスを開発かいはつする「デジタライゼーションコース」を新設しんせつ。日本生命保険にほんせいめいほけんや明治めいじ安田生命保険やすだせいめいほけんもデジタル専せん門もんのコースを新設しんせつした。東京とうきょう海上かいじょう日動にちどう火災かさい保険ほけんや三井みつい住友海上火災保険すみともかいじょうかさいほけんも、情報処理じょうほうしょりを得意とくいとするデジタル分野ぶんやの専門せんもん人材じんざいを募つのるとのことである。

　少々しょうしょう変かわったところでは、損害そんがい保険ほけんジャパン日本にっぽん興亜こうあは2019年ねんの新卒しんそつ採用さいようから「チャレンジコース」と呼よぶ一芸いちげい入社にゅうしゃを始はじめた。スポーツ全国ぜんこく大会たいかいの上位じょうい入賞にゅうしょう者しゃや起業きぎょう経験けいけん者しゃなど、こだわりを持もち、何なにかをやり遂とげた人ひとを募集ぼしゅうするという。

　いずれも、従来じゅうらいの大手おおて金融きんゆう機関きかんにとっては明あきらかに「異い能のう」と呼よべる人材じんざいを集あつめようとしている。

　背景はいけいにあるのは、フィンテックと称しょうされる、デジタル技術でじたるぎじゅつをベースにした新あらたな金融きんゆうサービスの流ながれだ。ネットバンキングによって支店してんはますます不要ふようになり、キャッシュレスが進すすめばATMも要いらなくなる。融資ゆうし判断はんだんはAI（人工じんこう知能ちのう）が行おこない、ルーティンワークはRPA (Robotic Process Automation)に取とって代かわられる。ブロックチェーンによって中央ちゅうおう銀行ぎんこうも要いらなくなるかもしれない。そうなれば、事務じむ作業さぎょうをこなす文系ぶんけい人材じんざいは大量たいりょうに要いらなくなり、代かわって必要ひつようになるのは大量たいりょうの理系りけい人材じんざいというわけだ。

　急速きゅうそくに進すすむこのような潮流ちょうりゅうは、金融きんゆう業ぎょうのビジネスモデルを根底こんていから変かえる可能かのう性せいがある。それに対応たいおうするためには、企業きぎょうカルチャーをも変かえ得える“異い能のう人材じんざい”が確たしかに必要ひつようだ。

本当ほんとうに異い能のう人材じんざいが必要ひつようなのは上層じょうそう部ぶ

　実じつは、金融きんゆう機関きかんが理工りこう系けい学生がくせいを採用さいようするのは今いまに始はじまったことではない。バブル崩壊ほうかい前まえの1980年代ねんだい後半こうはんにはすでに見みられたことだ。そして、当時とうじの理由りゆうも「こらからはITの時代じだいだから」だった。