韓国かんこくの景気けいき、すでに本格ほんかく的てき回復かいふくが始はじまっていた…個人こじん消費しょうひ、コロナ禍か前まえの水準すいじゅんを上回うわまわる

　今月こんげつは重要じゅうような需要じゅよう項目こうもくのひとつである個人こじん消費しょうひについて取とり上あげる。個人こじん消費しょうひは3カ月かげつごとであればGDP統計とうけいを見みればよいが、毎月まいつきの動うごきをきめ細こまかく把握はあくする場合ばあいは、小売こうり販売はんばい額がく指数しすうをみることが一般いっぱん的てきである。

　韓国かんこくでは日本にっぽんの内閣ないかく府ふが毎月まいつき報告ほうこくしている「月例げつれい経済けいざい報告ほうこく」に相当そうとうするものとして、企画きかく財政ざいせい部ぶが毎月まいつき公表こうひょうしている「最近さいきんの経済けいざい動向どうこう」がある。この資料しりょうで個人こじん消費しょうひを毎月まいつき把握はあくするために使つかわれている指標しひょうが、小売こうり販売はんばい額がく指数しすうである。そこで以下いかでは、小売こうり販売はんばい額がく指数しすうについて、どのような指標しひょうであるのか説明せつめいしたうえで、その最近さいきんの動うごきから個人こじん消費しょうひの動向どうこう、さらには韓国かんこくの景気けいきについて見みていくこととする。

小売こうり販売はんばい額がく指数しすうとは？

　小売こうり販売はんばい額がく指数しすうは、日本にっぽんの小売こうり業ぎょう販売はんばい額がくに近ちかい指標しひょうである。小売こうり業ぎょうが販売はんばいした財ざいの販売はんばい額がくを合計ごうけいしたものが小売こうり販売はんばい指数しすうであるが、小売こうり店てんには規模きぼの大おおきなものから小ちいさなものまで数多かずおおく存在そんざいするため、その売上うりあげ高だかを毎月まいつき調しらべることは現実げんじつ的てきではない。そこで小売こうり業ぎょうのなかから約やく2,700業者ぎょうしゃが標本ひょうほんとして選えらばれ、この業者ぎょうしゃに対たいして売上うりあげ高だかの調査ちょうさが行おこなわれる。そして、その結果けっかから母集団ぼしゅうだんである小売こうり業ぎょう全体ぜんたいの総そう販売はんばい額がくを推計すいけいしている。

　消費しょうひされた財ざいは、1年ねん以上いじょうの使用しようが可能かのうで効果こうかな財ざいである「耐久たいきゅう財ざい」（乗用車じょうようしゃ、家電かでん、家具かぐなど）、1年ねん以上いじょうの使用しようが可能かのうで安価あんかな財ざいである「準じゅん耐久たいきゅう財ざい」（衣服いふくなど）、1年ねん未満みまんの使用しようが想定そうていされる「非ひ耐久たいきゅう財ざい」（飲食料品いんしょくりょうひん、車両しゃりょう燃料ねんりょう、化粧けしょう品ひんなど）の大おおきく3種類しゅるいに分わけられる。そしてこれら分類ぶんるいはさらなる細こまかい分類ぶんるいも可能かのうである。また、財ざいがどこで売うられたかにより、「百貨店ひゃっかてん」「大型おおがたマート」「免税めんぜい店てん」「スーパーマーケット」「専門せんもん小売こうり店てん」「乗用車じょうようしゃおよび燃料ねんりょう小売こうり店てん」「無む店舗てんぽ小売こうり」の7つに分わけられる。

　さてここで、最近さいきんの個人こじん消費しょうひの動向どうこうを2つの視点してんから見みてみよう。ひとつの視点してんは最近さいきんの動うごきであり、増加ぞうか傾向けいこうにあるのか減少げんしょう傾向けいこうにあるのか把握はあくする。そしてもうひとつの視点してんはコロナ以前いぜんの水準すいじゅんに回復かいふくしたか否ひかであり、コロナ禍か以前いぜんである2019年ねん10～12月がつの指数しすうを直近ちょっきんの指数しすうが上回うわまわっているか確認かくにんする。

　まず最近さいきんの動うごきである。2021年ねん6月がつ30日にちに公表こうひょうされた5月の数値すうちは、前月ぜんげつ比ひ（季き節ぶし調整ちょうせい済ずみ、以下いか同おなじ）で1.8％減げんである。ただし、その前まえ2カ月かげつは2％台だいのプラスであった。そこで傾向けいこうをつかむため、3カ月かげつ移動いどう平均へいきんの数値すうちの前月ぜんげつ比ひをみると、5月は0.9％増ぞうであり、2021年ねん1月がつ以降いこう、連続れんぞくして増加ぞうかが続つづいていることから、個人こじん消費しょうひは増加ぞうか傾向けいこうにあると判断はんだんできる。

　次つぎにコロナ以前いぜんの水準すいじゅんに回復かいふくしたか否ひかである。コロナ禍か前まえの2019年ねん12月における3カ月かげつ移動いどう平均へいきん値ちは2015年ねんの販売はんばい額がくを100とした指数しすうで114.8であったが、2021年ねん5月がつは118.9とコロナ禍か前まえを上回うわまわっている。つまり以上いじょうの結果けっかに鑑かんがみると、個人こじん消費しょうひは増加ぞうか傾向けいこうにあり、かつコロナ禍か以前いぜんの水準すいじゅんを上回うわまわっており、十分じゅうぶんに回復かいふくしていると判断はんだんすることができそうである。

耐久たいきゅう財ざいや百貨店ひゃっかてんで販売はんばいされる高級こうきゅうな財ざいの消費しょうひが好調こうちょう

　次つぎに景気けいきに敏感びんかんに反応はんのうする耐久たいきゅう財ざいや百貨店ひゃっかてんの販売はんばい額がくを見みてみよう。耐久たいきゅう財ざいについては、3カ月かげつ移動いどう平均へいきんの前月ぜんげつ比ひが4月がつは減少げんしょうしたものの、それ以外いがいの月つきは2010年ねん10月がつ以降いこう、増加ぞうかが続つづいている。指数しすうの3カ月かげつ移動いどう平均へいきんは、コロナ禍か前まえの2019年ねん12月が123.3であったが、2021年ねん5月がつには141.2と14.5％高たかくなっており、好調こうちょうであるといえる。

　また百貨店ひゃっかてんについては、3カ月かげつ移動いどう平均へいきんの前月ぜんげつ比ひは、2021年ねん2月がつ以降いこう増加ぞうかが続つづいており、特とくに3月がつは7.4％増ぞう、4月がつは6.9％増ぞうと好調こうちょうに推移すいいしている。指数しすうの3カ月かげつ移動いどう平均へいきんは、コロナ禍か前まえの2019年ねん12月が100.0であったが、2021年ねん5月がつには110.9と10.9％高たかくなっているなど、耐久たいきゅう財ざいと同様どうように好調こうちょうといえるだろう。

　小売こうり販売はんばい額がくがGDPの個人こじん消費しょうひと最もっとも違ちがう点てんは、財ざいのみがカバーされサービスが除外じょがいされている点てんである。コロナ禍かでは外食がいしょくや旅行りょこうといったサービスの消費しょうひが不振ふしんを極きわめており、これらが含ふくまれない小売こうり販売はんばい額がくは個人こじん消費しょうひの回復かいふくを過大かだい評価ひょうかしている可能かのう性せいはある。このような限界げんかいはあるものの、財ざいの消費しょうひはサービス消費しょうひより総そうじて景気けいきに敏感びんかんであり、財ざいのなかでも景気けいきに敏感びんかんである耐久たいきゅう財ざいや百貨店ひゃっかてんで販売はんばいされる高級こうきゅうな財ざいの消費しょうひが好調こうちょうである点てんに鑑かんがみれば、韓国かんこくの景気けいき回復かいふくはかなり本格ほんかく的てきなものであると判断はんだんすることができる。

（文ぶん＝高安たかやす雄一ゆういち／大東文化大学だいとうぶんかだいがく教授きょうじゅ）