三菱商事みつびししょうじ、わずか3カ月かげつで利益りえき5千せん億おく円えん…日本にっぽんの経済けいざい成長せいちょう・資源しげん確保かくほに不可欠ふかけつな存在そんざい

　ここへきて、三菱商事みつびししょうじの収益しゅうえき力りょくが高たかまっている。2022年度ねんど第だい1四半期しはんきの決算けっさんでは連結れんけつ純じゅん利益りえきが5,340億おく円えんに急増きゅうぞうした。前年ぜんねん同期どうきから3,464億おく円えん（184.7％）の増益ぞうえきであり、3カ月かげつ間あいだの利益りえきとしては過去かこ最高さいこうだ。決算けっさん資料しりょうによると、5月がつ10日とおかに公表こうひょうされた2022年度ねんどの純じゅん利益りえき予想よそう（8,500億おく円えん）に対たいする進捗しんちょく率りつは63％だ。業績ぎょうせき拡大かくだいを支ささえた主おもな要因よういんとして、世界せかい的てきな石炭せきたん価格かかくの上昇じょうしょうによってオーストラリアでの原料げんりょう炭ずみ事業じぎょうの収益しゅうえきが大おおきく伸のびた。素材そざい、自動車じどうしゃ、食品しょくひん産業さんぎょう、電力でんりょくソリューションなどの収益しゅうえきも増加ぞうかした。2023年ねん3月がつ期きの業績ぎょうせき予想よそうが上方かみがた修正しゅうせいされる可能かのう性せいが高たかまっている。

　三菱商事みつびししょうじは資源しげん関連かんれん事業じぎょうを中心ちゅうしんに、世界せかい経済けいざいの環境かんきょうの激変げきへんに着実ちゃくじつに対応たいおうして付加ふか価値かちを生うみ出だす力ちからを高たかめている。ウクライナ危機ききの発生はっせい以降いこう、世界せかい経済けいざい全体ぜんたいで天然てんねんガスや石炭せきたんなどのエネルギー資源しげんの供給きょうきゅう量りょうが減少げんしょうした。当面とうめんの間あいだ、世界せかい全体ぜんたいで供給きょうきゅうが需要じゅようを下回したまわる状況じょうきょうが続つづくだろう。世界せかい全体ぜんたいで異常いじょう気象きしょうも深刻しんこくだ。各国かっこくが洋上ようじょう風力ふうりょく発電はつでんなど再生さいせい可能かのうエネルギーの利用りようや安全あんぜん性せいの高たかい原子力げんしりょく発電はつでん技術ぎじゅつの実用じつよう化かを急いそがなければならない。そうした変化へんかは三菱商事みつびししょうじのビジネスチャンス増加ぞうかにつながる可能かのう性せいが高たかい。

三菱商事みつびししょうじ・三井物産みついぶっさん、総合そうごう商社しょうしゃ初はつの純じゅん利益りえき9千せん億おく円えん超こえ…伊藤いとう忠ただし、1年ねんで3位いへ転落てんらく大手おおて総合そうごう商社しょうしゃ5社しゃは、資源しげん価格かかくの高騰こうとうで全社ぜんしゃとも純じゅん利益りえきが過去かこ最高さいこうを記録きろくした。豊田通商とよたつうしょう、双そう日びも同様どうようであり7大だい商社しょうしゃがすべて最高さいこう益えきとなった。三菱商事みつびししょうじは原料げんりょう炭ずみや銅どうなど資源しげん価格かかくの...

BJ2022.05.11

本命ほんめい視しされた東電とうでんが敗北はいぼく…三菱商事みつびししょうじ、洋上ようじょう風力ふうりょく発電はつでん「3海域かいいき」を独占どくせん受注じゅちゅうで価格かかく破壊はかい脱だつ炭素たんその流ながれは「歴史れきしの転換てんかん点てん。チャンスだ」。4月1日にち付づけで三菱商事みつびししょうじの社長しゃちょうに就任しゅうにんした中西なかにし勝也かつや氏し（前ぜん常務じょうむ執行しっこう役員やくいん）はこう語かたる。中西なかにし氏しは海外かいがいの電力でんりょく事業じぎょうや再生さいせいエネルギーを担になう...

BJ2022.04.16

事業じぎょうポートフォリオ入いれ替かえによる収益しゅうえき力りょく向上こうじょう

　リーマンショック後ご、三菱商事みつびししょうじは事業じぎょうポートフォリオの入いれ替かえを加速かそくした。同社どうしゃは、資源しげん価格かかくの変化へんかが収益しゅうえきに与あたえる影響えいきょうの軽減けいげんなど、より安定あんていして収益しゅうえきを生うみ出だせる事業じぎょう運営うんえい体制たいせいの確立かくりつに取とり組くんだ。それが現在げんざいの好こう決算けっさんを支ささえている。たとえば、2011年ねんに三菱商事みつびししょうじはオーストラリアにおける鉄鉱てっこう石せき鉱山こうざんの新あたらしい開発かいはつ体制たいせいを整備せいびし始はじめた。単独たんどくで権益けんえきを取得しゅとくして鉱山こうざん開発かいはつのスピードを高たかめるよりも、複数ふくすうの企業きぎょうの出資しゅっしを取とり込こんで合弁ごうべん事業じぎょうの運営うんえい体制たいせいを強化きょうかした。

　三菱商事みつびししょうじは脱だつ炭素たんそなど、加速かそくする世界せかい経済けいざいの環境かんきょう変化へんかへの対応たいおうも強化きょうかした。その一ひとつに、発電はつでんなどの燃料ねんりょうに使つかわれる一般いっぱん炭ずみ事業じぎょうの撤退てったいがある。地球ちきゅう全体ぜんたいで気候きこう変動へんどうの負まけのインパクトは非常ひじょうに深刻しんこくだ。地球ちきゅう温暖おんだん化かを食くい止とめるために、パリ協定きょうていなどをきっかけにして再生さいせい可能かのうエネルギーに取とり組くむ国くにが増ふえた。ドイツなど欧州おうしゅう各国かっこくはその先陣せんじんを切きり、洋上ようじょう風力ふうりょく発電はつでん所しょの建設けんせつが急増きゅうぞうした。その一方いっぽうで、燃焼ねんしょう時じの二酸化炭素にさんかたんそなど温室おんしつ効果こうかガスの排出はいしゅつ量りょうが多おおい石炭せきたん火力かりょく発電はつでんの削減さくげん、さらには将来しょうらい的てきな停止ていしを表明ひょうめいする国くにが急速きゅうそくに増ふえた。わが国くににとっても浮体ふたい式しき、固定こてい式しきの洋上ようじょう風力ふうりょく発電はつでんをはじめ再生さいせいエネルギーの利用りよう拡大かくだいは脱だつ炭素たんそに対応たいおうしつつ、産業さんぎょう競争きょうそう力りょくの維持いじ、強化きょうかするために欠かかせない。そうした社会しゃかいのニーズに対応たいおうするために三菱商事みつびししょうじは国内外こくないがいの企業きぎょうとのアライアンス体制たいせいを強化きょうかして価格かかく競争きょうそう力りょくの高たかい洋上ようじょう風力ふうりょく発電はつでんプロジェクトを運営うんえいする体制たいせいを強化きょうかした。

　その一方いっぽうで、コークスの原料げんりょうである原料げんりょう炭ずみに関かんしては、現時点げんじてんで代替だいたいが難むずかしい。各国かっこくの主要しゅよう製鉄せいてつメーカーは脱だつ炭素たんそに対応たいおうして生いき残のこりを目指めざすために水素すいそを用もちいた製鉄せいてつ技法ぎほうの確立かくりつに取とり組くんでいる。ただし、水素すいその製造せいぞうコストが高たかい。三菱商事みつびししょうじは原料げんりょう炭ずみ事業じぎょうを継続けいぞくした。ウクライナ危機ききの発生はっせい後ごはロシアから世界せかい各国かっこくに対たいする原料げんりょう炭ずみの供給きょうきゅう量りょうが減少げんしょうした。その結果けっか、4～6月がつ期きに原料げんりょう炭ずみの価格かかくは一時いちじ上昇じょうしょうし、三菱商事みつびししょうじの業績ぎょうせきが拡大かくだいした。そのほかにも、円えん安やすの進行しんこうやアセアン地域ちいきでの自動車じどうしゃ事業じぎょうの成長せいちょうなどが業績ぎょうせきを支ささえた。

さらなる業績ぎょうせき拡大かくだいの可能かのう性せい

　当面とうめん、三菱商事みつびししょうじの業績ぎょうせきは拡大かくだいする可能かのう性せいが高たかい。注目ちゅうもくしたい分野ぶんやがLNG事業じぎょうとアジア地域ちいきでの事業じぎょう運営うんえい体制たいせいの強化きょうかだ。まず、ウクライナ危機ききの発生はっせい以降いこう、ロシアから欧州おうしゅう各国かっこくなどに対たいする天然てんねんガスの供給きょうきゅう量りょうが減少げんしょうした。

　アジア地域ちいきでは中国ちゅうごくの景気けいき失速しっそくによって需要じゅようが徐々じょじょに緩ゆるむ兆きざしは出でているが、ユーロ圏けんの天然てんねんガス先物さきもの価格かかくは高騰こうとうし続つづけている。米国べいこくのヘンリーハブ天然てんねんガス先物さきもの価格かかくも上昇じょうしょうが鮮明せんめいだ。今いますぐに世界せかい全体ぜんたいで天然てんねんガスの需要じゅようと供給きょうきゅうが均衡きんこうすることは難むずかしいと考かんがえられる。欧州おうしゅう各国かっこくで節電せつでん規制きせいが実施じっしされ、脱だつ炭素たんそのために急速きゅうそくに削減さくげんされた石炭せきたん火力かりょく発電はつでん所しょなどの再さい稼働かどうが目指めざされているが、電力でんりょく価格かかくは上昇じょうしょうしている。ガス不足ふそくを補おぎなうために、ドイツなどが急速きゅうそくにLNGの受うけ入いれ体制たいせいを強化きょうかしなければならなくなっている。

　それはLNG関連かんれん事業じぎょうを運営うんえいする三菱商事みつびししょうじの収益しゅうえき獲得かくとくチャンスになるだろう。一ひとつの取とり組くみとして同社どうしゃは、国内外こくないがい企業きぎょうと合弁ごうべんで米国べいこくのキャメロンLNGプロジェクトを運営うんえいしている。浮体ふたい式しきLNG貯蔵ちょぞう再さいガス化か発電はつでん設備せつび（FSRP、洋上ようじょうでLNGを再さい気化きかし、発電はつでんして陸上りくじょうへ供給きょうきゅうする設備せつび）などの運営うんえい技術ぎじゅつを持もつ企業きぎょうとの連携れんけい強化きょうかによって、欧州おうしゅうなど資源しげん輸入ゆにゅう国こくのエネルギー資源しげん確保かくほのニーズに三菱商事みつびししょうじがより機敏きびんに対応たいおうすることは可能かのうだろう。

　それに加くわえて、アセアン地域ちいきにおいて三菱商事みつびししょうじは事業じぎょう規模きぼが比較的ひかくてき小ちいさい企業きぎょうの経営けいえい支援しえんを強化きょうかしている。商社しょうしゃのネットワークを生いかしてヒト、モノ、カネの新あたらしい結合けつごうの加速かそくが目指めざされている。現在げんざい、中国ちゅうごくでは不動産ふどうさんバブル崩壊ほうかいなど複数ふくすうの要因よういんによって経済けいざい環境かんきょうが非常ひじょうに厳きびしい。中長期ちゅうちょうき的てきな中国ちゅうごく経済けいざいの成長せいちょう期待きたいは追加ついか的てきに低下ていかしている。台湾たいわん問題もんだいの懸念けねんも高たかまっている。そうしたリスクを避さけるために中国ちゅうごくからアセアン各国かっこくやインドに事業じぎょう拠点きょてんを移うつす多た国籍こくせき企業きぎょうが増ふえている。世界せかい経済けいざいの供給きょうきゅう網もうにおいてアセアン地域ちいきの役割やくわり期待きたいが急速きゅうそくに高たかまっている。米国べいこくのFRBがインフレ退治たいじのために追加ついか利上りあげを徹底てっていしなければならない状況じょうきょう下か、三菱商事みつびししょうじが資金しきん、事業じぎょう運営うんえいのノウハウなどの観点かんてんからアセアン地域ちいきの企業きぎょうに対たいする支援しえんを強化きょうかすることは、当該とうがい地域ちいきにおける成長せいちょうのダイナミズムをより効率こうりつ的てきに取とり込こむことにつながるだろう。

注目ちゅうもくされる成長せいちょう期待きたいの高たかい分野ぶんやでの取とり組くみ強化きょうか

　今後こんご、三菱商事みつびししょうじは脱だつ炭素たんそなど成長せいちょう期待きたいの高たかい分野ぶんやでの事業じぎょう運営うんえい体制たいせいの強化きょうかに、これまで以上いじょうのスピードで取とり組くむだろう。コロナ禍かの発生はっせいやウクライナ危機きき、台湾たいわん問題もんだいの緊迫きんぱく化か懸念けねんの高たかまりなどによって、世界せかい経済けいざいの環境かんきょう変化へんかのスピードが一段いちだんと高たかまっている。中国ちゅうごく経済けいざいが高度こうど成長せいちょう期きから安定あんてい成長せいちょう期きへ曲まがり角かどを曲まがったこと、米べい欧おうでの急速きゅうそくな金融きんゆう引ひき締しめの可能かのう性せいの一段いちだんの高たかまりなどによって、世界せかい経済けいざいの環境かんきょう変化へんかはさらにスピードアップするだろう。それは、三菱商事みつびししょうじが収益しゅうえき源げんを多角たかく化かし、事業じぎょう運営うんえいや財務ざいむ面めんのリスクを分散ぶんさんするチャンスだ。

　例たとえば、世界せかい各国かっこくが近年きんねんに経験けいけんしたことがないほど電力でんりょく不足ふそくの懸念けねんが高たかまっている。安定あんていした電力でんりょく供給きょうきゅうのためには、複数ふくすうの発電はつでん源げんのミックスが欠かかせない。具体ぐたい的てきには、発電はつでん効率こうりつがより高たかい石炭せきたんやガス火力かりょく発電はつでん設備せつびの導入どうにゅう、洋上ようじょう風力ふうりょくなど再生さいせい可能かのうエネルギーの利用りよう増加ぞうか、さらに1基き当あたりの出力しゅつりょくを小ちいさくし冷却れいきゃくをより容易よういにした安全あんぜん性せいの高たかい小型こがたモジュール炉ろ（SMR）の導入どうにゅう、などがある。

　それに合あわせて、二酸化炭素にさんかたんその回収かいしゅう、利用りよう、貯留ちょりゅう（CCUS）技術ぎじゅつの実用じつよう化かも加速かそくする。再生さいせい可能かのうエネルギーや水素すいそ利用りようのためのインフラ整備せいびも世界せかい的てきに増ふえるだろう。そのために総合そうごう商社しょうしゃが果はたす役割やくわりは急速きゅうそくに増ふえ始はじめている。

　総合そうごう商社しょうしゃは、日本にっぽん独自どくじのビジネスモデルとして成長せいちょうしてきた。資源しげんや穀物こくもつなどを輸入ゆにゅうに頼たよる日本にっぽんにおいて、三菱商事みつびししょうじは経済けいざい運営うんえいと経済けいざいの安全あんぜん保障ほしょうに不可欠ふかけつな鉱山こうざん、エネルギー資源しげん、食料しょくりょう、より効率こうりつ的てきな発電はつでん技術ぎじゅつなどの導入どうにゅうを支ささえた。その一方いっぽうで、国内こくないで生うみ出だされた商品しょうひんを海外かいがいに輸出ゆしゅつし、需要じゅようを喚起かんきするための取とり組くみも強化きょうかして成長せいちょうを実現じつげんした。安定あんていした天然てんねんガス供給きょうきゅう体制たいせいの確立かくりつを渇望かつぼうするドイツのように、主要しゅよう先進せんしん国こくは経済けいざい運営うんえいに必要ひつようなエネルギー資源しげんの確保かくほに必死ひっしになっている。そうしたビジネスチャンスを確実かくじつに取とり込こむために、三菱商事みつびししょうじがロシア関連かんれん事業じぎょうのリスク管理かんりを徹底てっていしつつ、世界せかい各国かっこくの企業きぎょうとの連携れんけいをより強化きょうかする展開てんかいを期待きたいしたい。

（文ぶん＝真壁まかべ昭夫あきお／多摩たま大学だいがく特別とくべつ招聘しょうへい教授きょうじゅ）