育成いくせい就労しゅうろう、人手ひとで確保かくほに期待きたい＝外国がいこく人材じんざい、転籍てんせき容易よういに―地方ちほうは流出りゅうしゅつ懸念けねん

　技能ぎのう実習じっしゅうに代かわる新あらたな外国がいこく人じん人材じんざいの受うけ入いれ制度せいど「育成いくせい就労しゅうろう」が２０２７年ねんまでに開始かいしされる見通みとおしとなった。新あらたな制度せいどでは、転籍てんせき制限せいげんの緩和かんわなどで働はたらきやすさの向上こうじょうが見込みこまれ、人手ひとで不足ふそくに悩なやむ企業きぎょうは労働ろうどう力りょくの確保かくほに期待きたいを寄よせる。ただ、地方ちほうからはより賃金ちんぎんの高たかい都市とし部ぶへの人材じんざい流出りゅうしゅつなどの懸念けねんも生しょうじているようだ。

「人手ひとで不足ふそくが深刻しんこくなので、外国がいこく人じんが働はたらきやすくなる制度せいど改正かいせいは非常ひじょうに助たすかる」。自動車じどうしゃ整備せいびの板金ばんきん工場こうじょうなどで構成こうせいする業界ぎょうかい団体だんたい、日本にっぽん自動車じどうしゃ車体しゃたい補修ほしゅう協会きょうかいの吉野よしの一いち会長かいちょうは、育成いくせい就労しゅうろう制度せいどの新設しんせつをこう歓迎かんげいした。

　吉野よしの氏しによると、板金ばんきん工場こうじょうは重労働じゅうろうどうを理由りゆうに日本にっぽんではあまり人気にんきがないという。一方いっぽう、東南とうなんアジアを中心ちゅうしんに新興しんこう国こくでは、日本にっぽんの技術ぎじゅつを学まなびたいニーズが依然いぜん高たかく、吉野よしの氏しは若者わかものの就労しゅうろうに期待きたいを寄よせる。

　建設けんせつ現場げんばでも、外国がいこく人じん労働ろうどう者しゃの重要じゅうよう性せいは年々ねんねん増ましている。ゼネコン大手おおての鹿島かしまでは、全国ぜんこくの施工しこう現場げんばに入場にゅうじょうする技能ぎのう実習じっしゅう生せいは１日にち当あたり約やく１０００人にんに上のぼる。

　これまで技能ぎのう実習じっしゅう生せいは国際こくさい貢献こうけんのための人材じんざい育成いくせいを目的もくてきとしていたが、実際じっさいは労働ろうどう力りょくを補おぎなうため人材じんざいを雇用こようするケースが多おおかった。育成いくせい就労しゅうろうでは明確めいかくに育成いくせいと確保かくほを目的もくてきとしており、鹿島かしまは「実情じつじょうに沿そった制度せいどになるのは大おおきな変化へんか」と評価ひょうか。日本にっぽんマクドナルドホールディングスも「長期ちょうきにわたり、優秀ゆうしゅうな人材じんざいを確保かくほできることが大おおきなメリットだ」と歓迎かんげいした。

　新あらたな制度せいどでは、これまで原則げんそく禁止きんしだった転籍てんせきについて、同おなじ業種ぎょうしゅに限かぎり、１～２年ねんの就労しゅうろう期間きかんなどの条件じょうけんを満みたせば認みとめられることも大おおきい。技能ぎのう実習じっしゅう制度せいどでは劣悪れつあくな労働ろうどう環境かんきょうに耐たえられず、実習じっしゅう生せいの失踪しっそうが頻発ひんぱつしていた。今後こんごは、育成いくせい就労しゅうろうと、一定いっていの技能ぎのうを持もち最長さいちょう５年間ねんかん働はたらける「特定とくてい技能ぎのう１号ごう」の対象たいしょう職種しょくしゅや分野ぶんやを原則げんそく一致いっちさせることで、育成いくせい就労しゅうろうから移行いこうしやすくする。

　就労しゅうろう環境かんきょうの改善かいぜんにつながる一方いっぽう、人材じんざいの獲得かくとく競争きょうそうは激はげしくなりそうだ。商船しょうせん三井みついはフィリピンの現地げんち企業きぎょうと協力きょうりょくし、これまでホテルなどに約やく１００人にんの技能ぎのう実習じっしゅう生せいの日本にっぽん企業きぎょうへの送おくり出だしを支援しえんしてきた。同社どうしゃで外国がいこく人じん人材じんざい事業じぎょうのチームリーダーを務つとめる小池こいけ秋乃あきのさんは、「特とくに地方ちほうの企業きぎょうは、より賃金ちんぎんの高たかい都市とし部ぶに人材じんざいが流出りゅうしゅつしないか懸念けねんしている」と話はなす。

　諸しょ外国がいこくと比くらべ「選えらばれる国くに」になることも重要じゅうようだ。高度こうどな日本語にほんご能力のうりょくが求もとめられることや円えん安やすによる収入しゅうにゅう減げんなどがネックになるとされる。小池こいけさんは「マニュアルを英語えいごにすることや賃金ちんぎんアップも必要ひつようになる」と指摘してきする。　（了りょう）
（記事きじ提供ていきょう元もと＝時事通信社じじつうしんしゃ）
（2024/06/17-19:53）